小田切徳美の発言 (農林水産委員会)

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○小田切参考人 明治大学の小田切でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 何よりも、このような場をつくっていただいて感謝しております。
 私、大学で農村政策論を研究、教育しております。その立場から、主に両法案の中で活性化法について、そして必要な限りで基盤強化法について、お話をさせていただきたいと思います。
 まず、農村をめぐる状況ですが、次の四点があると思っております。
 一つは、何といっても、中山間地域で進んだ三つの空洞化、人、土地、村の三つの空洞化でございます。
 そして、この空洞化は、いつの間にか平場に里下りしております。今や非常に多くの地域が耕作放棄に苦しんでいる、そのように言っても過言ではありません。
 しかし、一方では、これに対してあたかも対抗するように、田園回帰というふうに我々が呼んでいる、若者が農村の中で活躍する、そんな状況が生まれております。そして、そのために仕事づくりも行われております。
 ただ、四番目に問題なのは、こういった状況は一部の地域に限られておって、そのために何が発生しているのかというと、従来の都市と農村の格差、すなわち町村格差ではなく、むしろ農村内部の格差が生じているということであります。その意味で、現下の最大の問題は、この村村格差をどのように解消していくのか、ここに一つの論点があるというふうに思っております。
 一方、こういった状況の中で、農村地域でも内発的な地域づくりが進みました。特に九〇年代後半、バブル経済が崩壊してリゾート開発が崩壊することによって、地域は内発的にしか発展しないんだ、そんな思いが特に西日本の中山間地域から湧き上がってきております。それを我々は地域づくりというふうに呼んでおりますが、これは、人材づくり、コミュニティーづくり、仕事づくり、この三つが一体的に対応したものだというふうに理解しております。すなわち、内発的、総合的、革新的な取組であります。
 この地域づくりは、先ほど申し上げた田園回帰や関係人口といわば好循環をもたらしております。地域づくりがあるところに田園回帰が起こり、そして、その田園回帰が地域づくりを更に強化するという好循環であります。例えば、高知県の集落活動センター、昨日も一日私は高知県におりましたが、そこでの取組は、若い女性の仕事づくりのプラットホームにもなっております。こんな農村地域での対応が徐々に始まっているのが現状であります。
 さて、それでは、政策はどうなっているのかということでございますが、二〇二〇年の食料・農業・農村基本計画、閣議決定していただきましたが、農政に新基調が表れております。
 私自身は車の両輪農政の回復というふうに言っておりまして、後ろの方にあります参考一、これは日本農業新聞の資料ですが、こういった発言もしております。もっと言えば、農村政策がいわば補助輪化していた、つまり産業政策のための地域政策であったのが、このバランスを取り戻しつつあるというふうに言ってもよろしいかというふうに思っています。
 そして、そのバランスを取り戻すために、何といっても農村政策の体系化が行われました。このバランスのための、それを十分受け入れるような農村政策の体系化でございます。
 これが、基本計画の中では、仕事、暮らし、活力、そしてそれを下部から支える仕組みというふうに整理されております。先ほど申し上げました地域づくりの三本柱とぴったり一致しているというふうに認識しております。私自身はこの基本計画作りには関与しておりませんが、しかし、まさにこういったあるべき農村政策が体系化されたというふうに理解しております。
 その上で、農村政策の具体化が行われました。新しい農村政策の在り方に関する検討会、長期的な土地利用の在り方に対する検討会、両検討会は、約二年間の検討を経て、今年の四月一日に最終的な提言をしております。
 その内容を簡単に紹介させていただきたいと思います。新しい農村政策の在り方に関する検討会の座長も務めさせていただいたということもあって、少し思い入れを込めてお話をさせていただきたいと思います。
 まず、仕事についてですが、農山漁村発イノベーション、多様な地域資源を、多様な事業分野で、そして多様な主体で、そこで展開していくということが言われております。
 そして、暮らしについては、農村RMO、いわゆる地域運営組織ですが、ここについて農政としてもしっかりとサポートしていく、そんな方向性が打ち出されております。
 さらに、活力、これは人材になりますが、農村プロデューサー養成講座という形で自治体農政の人材育成、あるいは、農的関係人口という形で多様な農への関わり、この中には当然、半農半Xなども入ってくるわけですが、そういったものへの支援。
 さらに、土地利用について言えば、農地を含めた農村空間としての持続的確保の仕組みづくり、これがまさに今般の活性化法につながるわけですが、こういった提言がなされております。
 そして、仕組みとしては、各省庁連携した、ワンウィンドーアプローチというふうに言っていいでしょうか、アクセスを一本化することによってホットラインをつくる、こんなことも行われております。
 思いを込めて書いたこの検討会の最後の文章でございます。あえて、その一文をここに書いておりますが、読み上げさせていただきます。
 両検討会においては、農村政策は農政全般に影響を与えることから、産業政策と地域政策のバランスの取れた農政の確立、すなわち、農政の車の両輪化を意識し、議論した。ここでいう両輪化とは、この二つの政策が単に並走することを意味するものではなく、両者をつなぎ、好循環を生み出す車軸づくりが重要ということである。こんな一文を書かせていただきました。
 このまさに両輪のイメージを次のページに掲げております。単に二つの政策が走るわけではなく、ここに車軸があって、そのことによって好循環が生まれる、こういったイメージを強く持っております。これがまさに新しい農政の中心部分に位置づくというふうに理解させていただきました。
 さて、残った時間で、法案の位置づけをさせていただきたいと思います。
 まず、枠組みでございます。これについて三点申し上げたいと思います。
 一つは、農地を含めた農村空間の持続性確保を両法案が意識している点がポイントだというふうに思います。農地だけではなく、むしろ農村空間と理解する、そのように位置づけることが重要であります。そういう意味で、両法案を一体的に審議する必然性、必要性がここにあるというふうに思います。もっと具体的に言えば、集約あるいは集積を図る農地と、粗放的土地利用等に転換する農地、これが恐らく一つの地域で同時に発生する可能性もある。そうであれば、この両法案が一体的に審議される、一つの体系となっている必要性があるというふうに感じております。
 そして二番目には、先ほど申し上げましたように、本格的な体系的農村政策がこの法案とパッケージされております。法案の中には直接議論されていない、例えば農村RMOの推進などもございますが、これが、言ってみれば、この法案の背景に存在して、二つの法案を支えているというふうに言っていいでしょうか。
 そして三番目、実は恐らくこれが一番重要だというふうに考えておりますが、農村住民によるビジョニングを意識している。将来ビジョンを自らの議論によって自らつくり出していく、これがビジョニングでございますが、それが両法案の中に位置づけられております。基盤法について言えば、人・農地プランの地域計画化、そして活性化法でいえば、地域提案の行政計画化でございます。
 このような地域からのビジョニングは、新しい農政に共通する理念だというふうに考えております。私自身は、それを、かつての農水省の地域農政という言葉を理解して、新地域農政、新しい地域農政が始まったというふうに考えております。
 更に言えば、このビジョニングは国土全体の課題でもあり、現在進められております国土形成計画の議論の中でも、地域管理構想という形で、同様に、例えば、小学校区単位で将来のビジョンをつくる、土地利用の将来像を描く、そういったことが議論されております。
 更に言えば、ビジョニングのための新しい手法、これは例えばフューチャーデザインなんというふうに言われておりますが、ビジョニングをするために未来人になる、そんな手法、少し変わった手法ですが、私たちも実は新潟県の上越市でこれを現在実践しております。そのことによってどんな可能性があるのか、実験的な実践をしておりますが、恐らく、ビジョニングの新しい手法として今後確立していくのではないかというふうに思います。
 そして、各論でございます。
 まず、活性化法について言えば、農村RMO等が農山漁村発イノベーションを意識した農村空間整備の在り方を内発的に提案することが可能になっております。そして、保全管理を含む多様な土地利用の円滑な実現が可能になっております。そして、更に言えば、この活性化法は、将来、農村計画法へと大きく発展する可能性さえもあるような、そんな法律ではないかというふうに思います。
 そして、基盤法についてでございますが、先ほど横粂参考人からもございましたように、目標地図作りというのはビジョニングにまさにふさわしいものだろうというふうに思います。ただ、理解しなくてはいけないのは、大変時間がかかるものであり、あるいは柔軟な改定作業がこのプロセスの中に組み込まれる必要があるというふうに考えております。
 そして、地域計画には多様な担い手の位置づけが可能になっております。稲垣参考人がおっしゃっておりましたが、中心経営体のみではない、様々な経営体をそこに位置づけることができる、これも新しい農政だろうというふうに思います。
 そして、農地の権利取得の下限要件撤廃は、もちろん、稲垣参考人がおっしゃったような懸念事項もありつつも、多様な農への関わりを促進するものとして理解させていただきます。
 とはいうものの、この法案には幾つかの論点があるというふうに認識しております。
 取りあえず、二つの論点について掲げて私自身の考え方をまとめてみたいと思いますが、一つは、何といっても農地確保でございます。当然、ボトムアップ方式で農地利用を考える、そのことによるその集合と国家の必要な農地面積の間にはギャップが生じる可能性、これはあくまでも可能性ですが、そういった可能性があります。
 しかし、私自身は、そのギャップを明確化することが問題対応のスタートラインだろうというふうに思います。そして、そのギャップを埋めること自体がまさに農政全体の課題である、むしろスタートラインについた法律というふうに理解させていただきました。
 そして、二番目は、全国市長会等々から議論があります自治体農政への負担です。
 確かに、目標地図を作る、あるいは地域からのビジョニングは自治体に負担がかかるものだろうというふうに思います。ただし、忘れてはいけないのは、このビジョニングは政策のためではありません。むしろ地域のためのビジョニングであって、そのことが必要とされています。したがって、地方自治体自らが、国の支援を得ながら、負担感をより少なく進められる体制づくり、農林部局に対する人材の増強等々が考えられるんだろうというふうに思います。
 もちろん、現実的にはそれが難しいとするならば、近年、国レベルの政策として整備されつつある集落支援員等の、我々は地域サポート人材というふうに呼んでいます。これはもちろん、地域おこし協力隊、あるいは地域プロジェクトマネージャーなどの多様な新しい仕組みが現在形成されております。その積極的利用が期待されます。
 更に言えば、冒頭で述べました村村格差の下で、県のサポート機能が一層に重要になっているというふうに思います。今法案において県のサポート機能がどのように発揮されるのか、大いに議論していただきたいと思います。
 例えば、これも高知県で恐縮ですが、地域支援企画員制度、高知県の職員が現場に張りついていく、こういったことが地域づくりの推進のために明らかな力になっております。言ってみれば、村村格差解消の方策がそこで実現されているというふうに考えております。こういう形での県のサポート機能、これが一層重要になっている局面において、県の位置づけ、都道府県の位置づけ、これを更に議論していただきたいというふうに思います。
 恐らく論点はこれだけではなく多々あるというふうに思いますが、差し当たり、私自身が考える論点二つについて論じさせていただきました。先生方による更に奥深い議論、審議がなされることを強く期待しております。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 小田切徳美

speaker_id: 11908

日付: 2022-04-13

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会