小黒一正の発言 (予算委員会公聴会)
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○小黒公述人 法政大学教授をしております小黒と申します。
本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
お手元の方に資料をお配りしてございますので、そちらの資料を使いながら説明させていただきます。
なお、本日は、内閣府の一次速報が今日ございましたけれども、実質GDPが十月から十二月で年率五・四%という形で、二期ぶりにプラスになったということで、直近の七月から九月までのGDPですけれども、ピーク時が大体五百六十兆円だったものが五百三十八兆円という形で落ち込んでいる中で少し心配してございましたが、昨今のオミクロンの感染拡大もございますけれども、経済は何とか持ちこたえているのかなというふうに思っております。
お手元の方の二ページ目、少し見ていただきますと、こちらの方に私の本日の主な意見が書いてございます。ここで、釈迦に説法でございますけれども、今、日本の財政、非常に厳しい状況の中で、しかも、感染拡大がまだ収まらないという中にございます。そういった中で、財政再建を進めながら、同時にコロナ問題にも対応していかなければいけないというような状況になっているということでございます。
そこで、やはり、現政権もでございますけれども、まずコロナ問題について早急に解決するということが重要ではないか。そういった中で、財政的にはなかなか厳しい状況でございますが、思い切った財政政策も含めて、機動的な財政出動を行うということについて、これは致し方ないのかなというふうに思ってございます。
他方で、今の財政状況を考えますと、これは昨今ずっと問題になってございますが、やはり、平時と非常時の財政を切り分けるという意味で、東京財団で我々が提言してございますように、東日本大震災の復興のときに特別会計をつくってその債務を処理してございますが、新型コロナ対策特別会計といったものを設置して、きちっとその債務を償還していくというようなことについても御検討いただけないかなというふうに思ってございます。
それから、あともう少し中長期的な問題でございますけれども、人口減少それから少子高齢化の問題、それから経済成長率が低迷しているという問題、それから貧困化が進んでいるというこの三つの問題について、きちっと対応した予算を作っていくということも非常に重要な問題ではないかというふうに思っております。
そういった意味で、二〇二二年度の今回の予算でございますけれども、完璧な予算というものは存在しませんので。ただ、実際は、限られた時間の中で予算編成をしなければいけないということもございます。
ですので、この本予算に対して反対するものではございませんけれども、先ほど申し上げました新型コロナウイルスの対策の特別会計の創設みたいなものも含めて、あるいは、これからもう少しお話しさせていただきますけれども、やはり、社会保障費や国債費が膨張する中で財政が非常に硬直化してございますので、そういった中で、少子化対策であるとか成長促進のための予算の方に一部予算を組み替えていくというようなことも少し御審議いただけないかなというふうに思ってございます。
ページを少しおめくりいただきまして、釈迦に説法でございますが、少し財政の現状についてお話しさせていただきます。
四ページ目を御覧ください。
これは政府が出している資料でございますけれども、令和四年度の一般会計の予算。ここで、政府は、二〇二五年度までにプライマリーバランスを黒字化させるという目標を掲げてございますが、その一般会計の予算から計算しますと、右側に赤いところがございますけれども、公債金が大体三十七兆円、それから国債費が二十四兆円でございますので、差引きしますと十三兆円がプライマリー赤字という形になってございます。
ただ、ページを少しおめくりいただきますと、こちらの方に少し赤線で枠をくくってございますが、もしこのコロナ問題を脱却することができますれば、新型コロナウイルス対策予備費五兆円分は自然と消えていくということになりますので、実際は八兆円というふうに見ることもできるのではないかなというふうに思っています。
そうしますと、かなり厳しい状況でございますけれども、財政の方、この当初予算ベースではかなり財政規律が働いたような形で今編成されているのではないかというふうに思ってございます。
次のスライドになりますけれども、ただ、そうはいっても、今回当初予算を出してございますけれども、補正予算が組まれたりする中で、財政がまた膨らむということに多分なるということは当然あり得る。ただ、足下、この赤い線で示してございますが、法人税を中心として税収が増えてきているという中で、二〇二五年度のプライマリーバランスの赤字の方については何とか維持できるような状況に今進んでいるのではないかというふうに思ってございます。
次のページになりますけれども、じゃ、本当に二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化が達成できるのか、あるいは債務の膨張を今のコロナ禍の中でどうにか安定的な水準に維持できるのかということでございますけれども、七ページ目が直近の内閣府の中長期試算でございます。
こちらの右側の上のところに名目GDP成長率がございますけれども、赤い線が成長実現ケースでございますけれども、大体三%ぐらいの成長率になっていくと。他方で、青い方でございますけれども、二〇三〇年度ぐらいに一%ぐらいの成長率になっていくというような形になってございます。
政府の方ではプライマリーバランスの黒字化目標を重要視してございますが、やはり、債務水準のGDP比を安定化するという意味では、国、地方の財政収支のGDP比がどうなっていくのかということの方が重要だということでございます。
これは後の方でドーマー命題との関係で御説明させていただきますけれども、赤い方の成長実現ケースですと、若干マイナスのGDP比の赤字が二〇三一年度に残ると。他方で、一%の成長率のベースラインケースですと、一・七%の赤字幅が残るというような形になってございます。
上の、その名目GDPの成長率ですけれども、次のスライドを見ていただきますと、政府が出しております名目GDPの成長率、これは実現できればいいわけですけれども、実際は、先ほども日本経済の問題ということで、低成長が続いているということでございますが、こちらの方は、一九九八年度から二〇一八年度までの政府の経済見通しと実績を見比べたものになってございます。実績の平均は〇・一六%ですけれども、政府の見通しの方の平均は一・六%という形で、大体十倍ぐらい違っているというような形になってございます。
そうすると、一%もないようなのがここ最近の成長率になってございまして、次のスライドになりますけれども、この九ページ目のスライドを見ていただきますと、黒い実線が名目GDPの成長率の推移の平均になってございます。他方で、赤い線それから青い線が成長実現ケースとベースラインケースになってございますけれども、黒い線の平均をこの期間で取りますと、〇・三七%という形でやはり一%もないという形になってございます。
したがいまして、足下ではかなり財政規律が働いた形で御努力いただいてございますが、次のスライドになりますけれども、ドーマー命題を使って長期的に収束する債務残高を計算しますと、こちらのような形になってございます。
基本的に、今後大体これぐらいの財政赤字のGDP比が国、地方であるというものをqとしまして、それから、成長率の平均を今後大体これぐらいがnという形にしますと、n分のqというのを計算すると、どの辺に債務残高GDP比が収束していくのかということが分かります。nがここでは例えば〇・五%でGDP比の赤字幅が例えば一・七%というふうに計算しますと三・四という値が出ますので、三四〇%ぐらいまで膨らんでいくというような状況に今なっているということではないかというふうに思っております。
したがいまして、名目GDP成長率が例えば〇・五%で推移するのであれば、債務残高GDP比をまず二〇〇%ぐらいにとどめようとすると、財政赤字のGDP比を一%水準程度まで、もう少し努力して圧縮するということが必要ではないかというふうに思ってございます。
次のスライドの十一ページ目でございますけれども、これは過去の実績が黒い線になっておりまして、ほかのカラーリングされている線が、内閣府が出しております、過去の中長期試算の予測になっております。見ていただければ分かりますけれども、比較的、予測では全部なだらかに下がっていくというような形になってございますが、実績はどんどん膨らんでいるというような状況になってございます。
次に、社会保障改革について、少し私の私見も交えて御説明させていただきます。
十三ページ目になりますけれども、先ほど東京大学の川口先生がミクロ的な分析をされてございましたが、やはり、今、コロナ禍で経済が二極化していて、困っている方々もそれなりにいらっしゃるということだろうと思います。そういった中で、やはり、デジタル政府、デジタル庁をつくられましたけれども、こういったデータを使って、きちっと本当に困っている方々に手を差し伸べていく。そういう意味では、十四ページ目のところにございますけれども、プッシュ型の行政サービスをきちっと構築していくということが重要ではないかというふうに思ってございます。
時間が限られてございますので余り細かいことは申し上げませんけれども、二つ、重要なことがあるのではないかというふうに思っております。
一つは、やはりリアルタイムの所得情報をきちっと把握できる体制をつくるということです。
このためには、日本にはイギリスとオーストラリアと同じような形で源泉徴収制度がございますので、この仕組みを、企業の方を使いながら、ソフトウェアでデータをタイムリーに報告させる仕組みをつくる。その場合、国税庁は、現在、大体年収が五百万円以下については源泉徴収の方を国税庁というか税務当局の方に提出する義務を免除してございますけれども、この部分の見直しということも考えていくということも重要ではないかというふうに思っております。
そういった形でタイムリーな所得情報が手に入れば、もしソフトウェアで手に入ることができれば、年ごとではなくて、例えば月ごととか半月ごととか、そういった形でタイムリーな情報を集めることによって、本当に困っている人に集中的に支援するというようなことも次第に可能になっていくのではないかなというふうに思ってございます。
それから、ページをおめくりいただきまして、十五ページ目になりますけれども、これは私が従来から少し提言しているものでございまして、今の話も、比較的モディファイ、モディファイというか、余り難しい改革をしないでできるような話をしたんですけれども、社会保障についても、大胆な改革というのはいろいろ提言することができますが、なるべくグラデュアルで、実現可能な改革というものがないかと。
今回御提言させていただくのは、一番問題になるのは、十六ページ目でございますけれども、医療の方に年金と同じようなマクロスライドを導入することができないかという御提案でございます。
今、財政の方で一番大きな問題になっているのは、こちらは二〇一八年に政府が出しているベースラインケースでの社会保障給付の見通しでございますけれども、二〇一八年に百二十一兆円であった社会保障給付費が、二〇四〇年になりますと百九十兆円に膨らむ。他方で、年金を見ていただきますと、五十七兆円から七十兆円という形で年金も膨らんでいるんですけれども、GDP比で見ますと、大体一〇%から九・三%という形で、それほど大きく伸びていない。
政府は今、基本的には、医療費と介護費が伸びていくということで、ここについて大きなターゲットにしているわけですけれども、医療費を見ていただきますと、二〇一八年で三十九兆円だったものが大体、二〇四〇年度になりますと七十兆円ぐらいになるということで、これは年金と同様に膨らんでいるわけですね。
ですけれども、医療の方が問題だと言っている最大の理由は、GDP比で二〇一八年は七%だったものが、二〇四〇年になりますと大体九%弱ぐらいまで膨らむという形になってございます。
このGDP比で二%ポイントぐらい膨らむところは、これは財政的に裏側に、税収であったり社会保険料が、経済成長率が増えれば当然増えるわけですけれども、それ以上にGDP比で見て医費費が増えるということで、改革のターゲットにしているわけでございます。ここをコントロールすることができれば、もう少し違った方法で解決できるのではないかというふうに思ってございます。
次のスライドを見ていただきますと、今お話しした内容が書いてございます。
大体二十年間で、二〇一八年度から二〇四〇年度で、年金は大体一〇%から九・三%という形でGDP比が伸びていくわけでございますけれども、医療は七%から九%ぐらいまでという形で伸びていくわけです。
次のスライドがお話ししたい内容でございまして、十八ページ目になります。
じゃ、医療費のGDP比というものを見た場合、どういうものなのかということでございますが、これは名目GDPで医療費を割ったものでございますけれども、医療費は、ちょっと大ざっぱに申し上げれば、釈迦に説法ですけれども、診療報酬という公定価格Pに使った量のQを掛けたものでございます。
これが、要は、価格を二十年間で二%調整できれば、GDP比で見た医療費をコントロールすることができる。じゃ、診療報酬をマイナスにしろということではなくて、現状でも診療報酬は若干プラスで改定していますので、その伸びを少し、若干緩めにするだけで、GDP比で見た医療費を安定化できるのではないかというふうに考えてございます。
そのイメージを示したものが、十九ページ目のスライドになります。
診療報酬本体全部ではなくて、一番大きなのは七十五歳以上の後期高齢者医療制度、これが高齢者の伸びに従って伸びていきますので、この部分の診療報酬について、例えば今回、診療報酬本体で〇・五五%伸ばすとすれば、それを例えば〇・四%ぐらいの伸びに抑えるというような形で少し伸びを抑えていくというようなメカニズムを入れたらどうかということの御提案でございます。
二十ページは、令和二年度のときの診療報酬改定の実際のイメージを書いてございますけれども、今申し上げましたように、この〇・五五%というのを例えば〇・四%に抑えることができれば安定化できる。
今の話は、次のスライドの二十一ページとも関係するんですけれども、私がちょっと心配しているのは、これは財政的な帳尻合わせだけの問題ではなくて、医師の需給推計について厚労省が出してございますけれども、二〇三〇年ぐらいに需給均衡が崩れて供給過剰になるというような話が出てございます。そうすると、例えば、二〇四〇年ぐらいにGDPに連動する形で医療費を伸ばしていけば、むしろ医療費の方が安定化できる可能性もあるのではないかなというふうに考えてございます。
少し資料を飛ばせていただきまして、二十三ページ目、次世代投資や少子化対策について少しお話しさせていただきます。
先ほど少し御説明させていただいたとおり、予算は、社会保障と国債費の方で相当財政が硬直化してございますので、成長を促進するためにも、やはり次世代への投資あるいは少子化対策の方に力を入れていくということが重要ではないかというふうに思ってございます。
二十四ページ目のところで、岸田さんが総裁選のときに、日本でオーストラリアのようなHECS、要は出世払いの奨学金みたいなものを導入できないかということをおっしゃられていましたけれども、私もそれは非常に賛成で、そういったようなものを日本でも是非検討していただけないかというふうに思ってございます。
これは、今コロナ禍で学費が払えなくて困っている学生さんもいらっしゃいますけれども、そういった方々の救済にもなる。可能であれば、ポートフォリオの中になるべく多くの学生が入った方がいいですので、例えば全大学生に一回全部入っていただくというようなことも、ちょっと暴論かもしれませんけれども、検討いただければというふうに思ってございます。
それから、二十五ページ目と二十六ページ目でございますけれども、これはかなり奇策というか、今の非常に限られた財政の中で少子化対策に力を入れようとしますと、やはり財源的な面、これは例えば国債発行でやるのか、あるいは税収を新しく取ってきて増税をするのかという議論になると思います。非常にそれは難しい。
でも、他方で、この資料の方に書いてございますけれども、元々、国立社会保障・人口問題研究所が予測していた人口減少のスピード、これは、出生数が大体八十万人を割るのが二〇三〇年ちょっと先だという話だったわけですけれども、もう既に割りそうになっているということでございます。
そうすると、異次元緩和というのがございましたけれども、異次元の少子化対策として、例えば出産手当というものを創設して、子供一人当たりだと五百万円ぐらい、思い切った支援をしていくということも考えてもいいのではないかなというふうに考えてございます。仮に、年間の出生数が二百万人になりますと、これだけで年間十兆円になります。これを例えば十年間続けると百兆円ですね。二十年間続けると二百兆円ということで、これを全部国債発行あるいは増税でするというのは相当難しい。
そういった中で、一つ可能性があるのが、デジタル通貨というものを今、日本銀行も考えてございますけれども、十年間で償却されてしまうというような通貨を発行してこの手当を出していくということも考えてもいいのではないかなというふうに考えてございます。
詳細は二十六ページの方に書いてございますけれども、十年間で償却するデジタル通貨を出しますと、例えば出生数が毎年二百万人、今は大体もう八十万人近くになっていますけれども、これが二百万人になったとしても、最大ピーク時で発行する通貨の量は大体五十兆円ぐらいということになります。
あるいは、累進型の出産手当というものも考えられるのではないかなというふうに考えてございます。
それから、最後に二点だけ、厳しいお話と朗報を少しお話しさせていただければと思います。
二十七ページの、まず、注意すべきリスクとして挙げてございますけれども、二十八ページ目、これはもう議員の先生方、釈迦に説法でございますが、今、金利がアメリカを中心にして上がり始めている。インフレも出てきてございます。そういった中で、もし金利が正常化しますと、政府と日本銀行を一体で見た場合、日本銀行が持っている超過準備、これはスーパー短期の国債みたいなものですから、政府と日本銀行を一体で見ると、やはり財政的なコストが顕在化してくるということになると思います。そういったところで、この問題をちゃんと処理していくようなところも少し考えていただければというふうに思ってございます。
それから、二十九ページ目、三十ページ目でございますけれども、我々は今ちょっと自信をなくしているんだと思いますが、こちらの方は、頑張れば実は一人当たりGDPで見ても先進国の中でもう一度最高水準を取り戻せる可能性があるというような試算になってございます。
これは三十ページ目に、ちょっと見ていただきますと、試算の概要が書いてございますが、例えば、一九九〇年、日本の一年間の平均、労働者が大体どれぐらい働いていたかといいますと、二千三十一時間働いていたわけです。この当時、アメリカは大体千七百六十四時間ですし、イギリスは千六百十八時間です。
その後何が起こったかということなんですけれども、次のページを見ていただきますと、一九八八年、これはちょっと大分前の話ですけれども、閣議決定で、一人当たりの年間労働時間を千八百時間程度とするという、これは日米構造協議の中で日本の経済力を、ちょっと余り踏み込んで言うのはあれですけれども、そぐために突きつけられたもので、その後、九二年に時短促進法が制定されて、九四年に労働基準法が改正されるという流れになってございます。
これはちょっと私の仮の推計なんですけれども、三十二ページ目を見ていただきますと、仮に一九九〇年と同じ労働時間を日本の労働者一人当たりが働いたとすると、じゃ、日本の一人当たり実質GDPはどうなるのかということですが、三十二ページ目の赤い太い線が日本になってございます。ここではイギリスとかアメリカとかそういった国々がありますけれども、この中で一番高い水準になるということです。他方で、現状の日本は細い方の赤い線になってございまして、下から二番目という形になってございます。
このときにはマクロのGDPがどれぐらい増えるのかということですけれども、私の仮定計算では、大体百六十兆円ぐらい増えるというような形になってございます。
最後の話は、ワーク・ライフ・バランスの話とかと少しバッティングする話ですので、そうしろという話ではないんですけれども、自信を取り戻すという意味では、そういったような仮定計算の話もございますということでございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)