武見敬三の発言 (外交防衛委員会)

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○武見敬三君 こういう安全保障という観点からもこのマルチの外交が物すごく重要になってきたということを、私はあえてここでまた申し上げておきたいと思います。
 その上で、我が国の安全保障を考えたときにも、この我が国が実際にこうした危機に直面した場合、国際世論の支持をそうした際には確実に得られるように、こういったマルチの外交の現場で一つの大きな柱となるような理念を我が国がきちんと確立をして、そしてそれが我が国のいわゆる国柄になるということが私は必要だと思います。こうした国際社会の中における国柄というのは、実は物すごく大きな私は重い意味をこれから持ってくるというふうに思います。
 じゃ、その国柄というのはどうやってつくれるのか。その一つは、やはりマルチ外交の舞台というのは、大きくやはりSDGsの持続可能な開発といった人類社会全体の課題設定であり、そのための解決策としての目標の設定です。我が国は、安倍内閣のときに、このSDGs採択に際して、より多くの目標を同時に達成する概念として、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジというものを重要な政策概念として提唱をしました。これは、全ての人々が負担可能なコストで予防を含む適切な医療にアクセスすることができる状態と定義されています。この政策概念を追求すると、貧困の削減や所得分配等も同時に行われることによってSDGsの幾つもの目標が一気に達成されます。
 しかし、それだけでも十分でないことが今日分かってまいりました。SDGsの目標年度はこれ二〇三〇年です。ちょうど我々は今、その中間年度に入ろうとしています。改めて、こうしたSDGsを達成するために、全体を底上げするより幅広い政策概念というものが今私は国際社会に求められてきていると考えます。
 しかも、気候変動の深刻化や危険な感染症のパンデミック、さらにはデジタル化の進展による社会の格差の拡大といったネガティブな側面、これらの地殻変動というものは、いわゆる地政学の中で言われておりますアンソロポセイン、人新世と言われるような長期的な時間軸に基づく問題として提起されるようになってきているわけであります。
 そこで、国連開発計画、UNDPは、毎年発表する人間開発報告書に加えて、従来の人間の安全保障を進化をさせて、次世代の人間の安全保障に関する特別報告書を二月の上旬に発表いたしました。実は、私もこのUNDPの方から御依頼を受け、この次世代の人間の安全保障の特別報告書を起案するアドバイザリーボードの共同議長をさせていただきました。その中で多くの世界の識者と議論をすることができました。
 二〇〇二年、この現在の人間の安全保障の概念の形成の中では、主権国家の安全保障の考え方をミクロ化して、一人一人の人間の、対する脅威、そしてそれをいかに克服をし、しかもその政策目的として、一人一人の人間がより有意義な人生を営むことを目標とした政策設定になり、そのための選択肢をいかに増やすかということが実際大きな具体的な政策分野となり、その中で、コミュニティーを単位としてヒューマンエンパワーメントとヒューマンプロテクションを組み合わせて、その政策概念が一人一人の人間を対象として組み立てられたというのがその特徴であります。
 しかし、その後の気候変動やこのパンデミックや、あるいはデジタル化等、新しいこうした地殻変動、時代の変化の中で改めて議論されてきたことは、そうしたミクロ化した安全保障の考え方というのを今度は一気にマクロ化して、そして、主権国家の安全保障の枠を更に超えて、人類社会全体にとってのエマージングスレットとして、この浮上する脅威としてこれらの気候変動やパンデミックを捉えて、そしてこの人類社会全体の安全保障を考えようという考え方に大きく進化をしてまいりました。その中で、人類社会と地球との共存もしっかりと視野に入れた新しい人類の生存秩序というものをつくり上げようとする大きな問題提起がそこでなされるようになってきました。
 プーチン大統領のロシア侵略とは裏腹に、国連等でこうした大きな議論をするときの識者たちの考え方というのは、確実にこういった未来志向で、大きく人類社会全体を考えるようになってきております。我が国も、そうした中で主導してこうした考え方を、この人間の安全保障という考え方を進化させる形でつくり上げ、その理念をもってして我が国の国柄とするということが、私は、安全保障上もいざというときにこうした多くの国々が我が国に対し理解をし、そして支持をする一つの大きなベースにも結果としてなってくるというふうに思います。
 このような大きな総合的な安全保障、外交政策のグランドデザインというのが改めて今我が国に求められている。この開かれたインド、アジア太平洋の戦略というのは、まさに地政学的に見て適切な戦略であろうかと思いますが、こういったマルチの外交分野の中で、進化させた人間の安全保障を新たな柱としてこうした我が国の国柄を示す外交を展開していくことが私は非常に重要になってきたというふうに思います。
 それだけに、この二月上旬に発表されたこの次世代の人間の安全保障に関わるこのUNDPの特別報告書、発表された後、我が国として、これ外務省も大変緊密にUNDPと連携をされて作った新たな政策文書であります。これをどのように外務省としてフォローアップして、単に国内においてのみならず国際的にもしっかりと理解されるようにマルチの外交を展開する必要性があると考えますが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

発言情報

speech_id: 120813950X00220220308_188

発言者: 武見敬三

speaker_id: 849

日付: 2022-03-08

院: 参議院

会議名: 外交防衛委員会