平野正雄の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(平野正雄君) 早稲田大学の平野正雄でございます。
本日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。
私の専門は経営戦略でありまして、必ずしもエネルギーの専門家ということではございませんが、しかしながら、現在、資源エネルギー調査会のメンバー、その下の石油・天然ガス小委員会の委員長、その他、グリーンイノベーション・ワーキンググループの座長等々、資源エネルギー庁のエネルギー政策の立案に関わってきております。
今日は、私の方から、新たなエネルギー危機とその戦略的対応についてということで、簡単に意見を述べさせていただきます。この資料の中で下線部が引いてあるところが本法案にも関係があるところということですので、御参照いただければと思います。
私は、現在、新たなエネルギー危機に我が国は瀕しているという、こういう認識でおります。それは大きく分けると三つあるというふうに考えており、一番目が国内電力の安定供給の確保、二番目が、これが非常に今ハイライトされているエネルギー安全保障の確立、それから三番目、これは、やっぱりカーボンニュートラルの達成というのは、ただいま佐々木先生の御説明にもありましたけど、非常に超長期のトランジションであり、様々なやはりリスクを含包しているものという意味においてはこれもリスクファクターとして考えていく要素も必要だろうということで、この三つが我々が直面している大きなエネルギー上の課題。今日は、この一番目と二番目を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。
一番目の国内電力の安定供給ということに関しましては、御承知のように、電力自由化により、安定供給責任というのがかつての旧一電と言われるほぼ独占的な電力会社からシステム全体で担うようになったということがございます。
しかしながら、これは当初の狙いでもあるわけですけれども、多様なプレーヤーが参入した結果、旧一電と呼ばれるような電力会社の経営体力というのは徐々に低下をしていくという中において、現在彼らは経営の合理化という視点において不採算発電所の破棄等が行われています。
結果として見ると、我が国の電力の供給の余力というものが徐々に失われてきて、昨今でもこの三月に停電の危機がこの東電管内、関東一円で叫ばれるようなことにもなったわけですが、そういう意味におきましては、一定の目的を持って進めている電力の自由化ですけれども、電力供給の余力という意味においては、それが弱体化し、システム全体が脆弱化しているという点は指摘をしておくべきだろうというふうに思います。
その大きな方針としては、やはり電力というものが、これは電力として消費する形においては極めてクリーンなエネルギーでありますので、今後も主力のエネルギー源であることは変わりないわけですが、その元となる電力の生成の形態として見ると、やはり複数のもの、一つのものに依存するのではなく、それぞれ役割が違う複数のものに分散してやっていくことが重要だろうと思います。
今後の中心というのは間違いなく再エネということで、日本の国情を考えると、元からの水力と太陽光、それからここに徐々に風力ということになっていきますけれども、これはそのエネルギーの地産地消を進めるという安全保障上も望ましいという観点がございます。そういう意味におきましては、再エネの主力電源化の推進というのは、これは着々と進めていくべきものだという認識をしています。
一方、御案内のように、再エネの電源というのは極めて不安定な電源でもあります。そういう意味におきましては、安定的な電力供給を果たしていくある種のバッファー役、調整役、それから、先ほど申し上げました超長期のカーボンニュートラルを実現していく、そのトランジションを支えていくための熱源として、やはり化石燃料、具体的には火力発電、特にその中においてもCO2の発生力が低い天然ガスというものの重要性、戦略的重要性というのは一層増しているという認識であります。
なおかつ、天然ガスも炭素を含みますからCO2を発生いたしますけれども、そこに脱炭素化の技術、CCS等を加えることによってクリーンな形で天然ガスを使い続けるという道、この一定量をやはり電源として、あるいは熱源として天然ガスを残していくという意味においては、柔軟性の観点、戦略性の観点でも大事だろうと思います。
また、原発活用に関しては様々な意見があろうとは思いますけれども、しかし諸外国を見ていますと、今回のウクライナ危機でも欧州なんかは非常に、もう一回原発の強化ということで、英国、フランス等は新設等も考えているということであります。この位置付け、我が国は非常に固有の難しい課題があることは認識していますけれども、政治の皆様方にはしっかりとこの原発利用に関する道筋を開いていただければというふうに思います。
政策という意味におきましては、このシステム安定化という観点におきましては、現在既に、例えば容量市場、先物市場を立ち上げる。それから、本法案にも入っておりますデマンドレスポンス、需要シフトですね。すなわち、今実際に、太陽光の割合が増えてくると、日中に非常に電力が発生してそれが余剰になる、逆に夕方、夜、要するに日が陰って夜になってくると電力が不足するということで、かつては夜電力を使えということでしたけど、それが逆転したと。それに合わせて当然需要サイドの方もシフトをしていただきたいということでデマンドレスポンスという概念が出ていますけれども、こういう需要シフトというものも重要ですし、PPAというのは、直接的に需要家と、それから主に再エネですけれども供給者が契約するということで、システムから切り出すことによって安定した電源を各社が獲得していく、こういう制度ももう既に整備をされています。
それから、先ほど申し上げましたように、火力の一定量維持ということに関しましては複合的な支援が必要だろうと思います。
そういう中においては、例えば石炭を利用していくという意味にも、ベースロードという意味でも石炭は一定の役割はあるかと思いますけど、これはアンモニア混焼、やがてアンモニア専焼することによって、実は石炭火力というものがクリーンなアンモニア火力に転換していくという技術的な道筋はあります。同様に、天然ガスに水素を混ぜていく、あるいは出てきたCO2をCCSということで回収していく、こういうことをする。
それから、この後も申し上げますけれども、一方で天然ガスというのは、非常に今競争が激しくなり価格も高騰しています。こういう中で、安定的に天然ガスあるいは化石資源というものを引き続き日本は確保していくという努力もすべきだろうということを申し上げておきたいと思います。
二番目、エネルギー安全保障の確立ということでは、先ほどの再生可能エネルギーの推進というのはもちろん大きな貢献をするわけですけれども、同時に、安定的に海外資源調達、特にLNGを中心に実現していくことは重要だろうと思います。
御案内のように、昨今のこのロシアのウクライナ侵攻に伴い、そしてEUが一気に今資源の脱ロシア化が進行しているということは、ほかのところに今燃料源を求めてきているということで、とりわけLNGの需給が逼迫しています。石油と違いまして、LNGというのは、供給の余力がなく、なおかつ備蓄がコストが掛かり難しいということがありますので、非常にタイトでボラティリティーが大きいマーケットになっております。こういう中において、今後もLNGというのは非常に価格が高止まりしていく、あるいは玉不足ということが懸念されます。
また、サハリン1、2は今もうまさに焦眉の課題でありますけれども、これは今は権益を維持するという方針だと思いますけど、途絶リスクというのも十分に想定して我が国は対応を短期的には考えていくべきだろうと思います。
課題ということでは、長期の、特にLNGの安定確保という意味においては二つの構造的な課題があるというふうに私は認識しております。
一個は、これまで、先ほど佐々木先生もおっしゃいましたけど、日本はLNGを比較的安価に、安定的に調達できていたのは長期契約なんです。ところが、この長期契約の更新というのがほとんど起きていません。なぜかといえば、電力各社にとってみると、LNGを長期的に使い続けるという道筋が見えない。すなわち、再生可能エネルギーに転換していくとすると、これも不採算資産になってしまうという経営上のリスクがあるわけです。ですから、そこの部分に関しましては、例えば、買い込んだ長期の契約というものが、将来もし余剰になったらそれが転売できるような市場を整備する、その他の手当てが必要だということです。
もう一個は、日本はかつては世界で最大のLNGのバイヤーでした。これが、もう御案内のように、今、中国に昨年抜かれたと思いますけど、バイイングパワーというのが喪失しています。日本は、経済の発展のペース等も含めて、それから省エネ化の推進も含めて、実は燃料あるいはエネルギーに対する需要というのは徐々に徐々に漸減していっていますけれども、それにつけても、中国や欧州に対してバイイングパワーを喪失してきているということは構造問題だというふうに認識すべきだというふうに思います。
したがって、政策としましては、今回の法案にも入っておりますけれども、やはり資源の上流開発というのは、座礁資産化を恐れる企業単体に行っていくということは、特に三十年とか五十年というような長期の開発ということに関しましては、やはり公的金融の拡充というのは必要だろうと思います。
それから、余剰ガスの転売、一部価格補填などは、仕向地条項の緩和、それからトレーディング事業に向けてのやはり制度整備、こうしたLNGの流通市場の形成ということをやることによって、実は我が国にとってみるとLNGの入手可能性、安定性というのを高めていくと。その上で鍵になるのはアジアだと思います。
アジア連携でLNG流通市場形成、流動性確保と書きましたけれども、アジアは、御承知のように、カーボンニュートラルはもちろん取り組んでいくわけですけれども、彼らはまさに今経済発展のたけなわ期にあります。そういう中におきましては、化石燃料を安価に使い続けたいという意欲が実は欧米あるいは先進国とは違います。そういうところに対して、我が国が、まずは天然ガスを使い続けるための輸送、備蓄などの技術、それから、実は、天然ガスであっても、あるいはほかの化石燃料であっても、こうした脱炭素の技術を我が国が提供することによって、彼らの、言ってみれば安定的な、しかもクリーンな発展を支えていくという、こういう役割を日本は果たせるはずです。
結果として見ると、アジアとの連携ができ、そこでLNGの流通市場が形成されますと、これは一定以上安定した供給というもの、あるいは安定した調達につながるということですので、これは資源外交も含めて極めて戦略的な政治の命題だというふうに思います。
最後に、その他ということで掲げました自国の資源開発という意味においては、これはまた超長期になりますけれども、これこそリスクが大きい部分ですので、公的な資金投入をしながらメタンハイドレート等の開発、それからイノベーションの促進、そして、これも法案にいろいろとちりばめられていますけど、一段の省エネ推進というものを確実に進めていくということで、需給両面でエネルギーの構造転換を果たしていくということが安定的な我が国のエネルギーの環境を整える道だというふうに思っております。
私からは以上でございます。