川崎政司の発言 (憲法審査会)

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○法制局長(川崎政司君) 着席したままで失礼いたします。
 参議院法制局長の川崎でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 私の方からは、お手元の資料に基づき、国会におけるオンライン出席について、議論を整理しつつ、論点、課題等に関し御説明をさせていただきたいと存じます。
 まず、先生方十分に御案内のことで恐縮ではございますが、議会の意義や憲法の国会に関する規定から確認をさせていただきたいと思います。
 表紙をおめくりいただきまして、一、二ページを見開きで御覧いただきたいと存じます。
 まず、右側の一番上のところでございますが、議会制は歴史的に形成されてきたものですが、近代議会ということでは、ラフな言い方とはなるものの、その二ページの上の方でございますけれども、議会は、国民の代表である議員が、一定の場所に集会し、国政の重要事項等について、国民に見える形で討議を行い、最終的には多数決により意思決定を行う機関と言えるのではないかと思います。
 憲法もそれを前提に国会に関し関連する規定を置いており、その主要なものを資料の一ページのところ、左側でございますが、挙げております。
 それらの中で、合議体である議院が議事、議決を行うために必要な人数を定めているのが憲法五十六条一項の定足数の規定であり、そこでは出席という概念が使われています。そして、この出席については、当然に議場に物理的に現在することを意味するものと解されてきたのであり、これは多数決の原則を規定する憲法五十六条二項でも前提とされております。
 このようなことから、一ページの一番下のところでございますけれども、参議院規則百三十五条では、「表決の際に、現に議場にいない議員は、表決に加わることができない。」とされているところです。
 また、憲法は本会議について規定したものでございますけれども、委員会については国会法で規定されております。そこでの出席も同様の理解となっております。
 他方、近年の情報通信技術等の著しい発達に伴いまして、議場に現在することなく、オンラインによる参加が技術的には可能となってきました。
 また、二ページの段落の二つ目ぐらいのところの白いところでございます、諸外国の議会では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にオンライン出席を認めるところのほか、妊娠、出産、育児等の場合の遠隔投票を認めるところも現れております。日本の地方議会でも、オンライン審議の導入の動きが活発化しております。これらを背景に、国会でもオンライン出席に関する議論が行われていると理解しております。
 もっとも、その前提として、どのようなものが憲法の定める出席に含まれ得るのか、どのようにすれば憲法五十七条の公開原則を満たすのかという問題があり、これは実務的、技術的な問題も深く絡んでまいります。この点については、その下のところで課題一、課題二と整理し、後ほど、次のページのところで説明をさせていただきます。
 さて、オンライン出席につきましては、おおむね二つの方向から論じられており、資料ではこれを論点一として示しております。二ページの真ん中より上のところでございます。
 その一つは、緊急事態的状況下においてオンライン出席を認めることが必要とするもので、これは言わば議院全体に関わる事情によるものであり、その主たる目的は緊急時における議院ないし国会の機能の維持と整理することができます。
 もう一つは、妊娠、出産、育児、障害、疾病等により物理的な出席が困難である場合にオンライン出席を認めるべきとするもので、議員個人の個別的事情によるものであり、その主たる目的は議員の権利行使の機会の確保ということになります。
 両者は、一部重なるところがありますが、やはり区別して考えることが必要ではないかと思われます。また、課題三としておりますが、それぞれオンライン出席を認める具体的な範囲、これが大きな問題となってまいります。
 そして、次に論点二ですが、その下になります。憲法五十六条の解釈として、オンラインによるものを出席とみなし、又はこれに含めることが可能かという問題がございます。この点については、憲法五十六条の規定の位置付け、一番右のところにオレンジ色の背景で書いておりますが、憲法五十六条の規定の位置付け、性格等、それから国民代表、それから議院の自律権のそれぞれの理解に関わってきますが、それらにつきましては、参考としてこの資料の五ページから七ページに主な学説等を挙げておりますので、適宜御参照いただければ幸いでございます。
 その上で、二ページの方に戻って恐縮でございますが、この点については、否定と許容の二つに分けることもできないわけではありませんが、許容の中には、例外的・限定的・臨時的な許容とそれ以外とでは、量的な問題というよりも質的に異なっていると見ることもできますので、ここでは二ページの資料のように三つに分けております。
 これらのうち、一番左、Aの否定説は、憲法の出席は物理的な出席のみをいうのであり、オンライン出席を解釈によって認めることはできないとするものでございます。
 これに対し、真ん中の例外的・限定的・臨時的許容説は、論者によって認められる範囲に幅の違いはございますが、緊急事態的状況下での議院や国会の機能を維持する必要がある場合に限り認められるとするものでございます。
 他方、許容説は、緊急時でももう少し緩やかに、例えば感染拡大防止のため密を避けるというような場合にも認められるとするものであり、妊娠、出産等の個別的事情による許容もこれに属します。考え方としては、緊急時の場合のみ、個別的事情の場合のみ、両方の場合に認めるというものが、この三つがあり得ます。なお、その場合の課題として課題四ということで書いてございますが、オンライン出席の場合の権限行使の範囲や態様の問題が出てまいります。
 それらを受けまして、オンライン出席を認める場合の実現の方策いかんというのが論点三でございます。この点、出席の解釈によることを否定する立場の場合には憲法改正によらざるを得ないことになり、例外的許容や許容の立場の場合には憲法改正は不要ということになりそうですが、その場合に幾つかの留意が必要ではないかと思われます。
 まず、例外的許容、許容の立場でも、憲法解釈上の疑義やオンライン出席をめぐる争いなどを回避するために、最終的には憲法改正によるのが妥当とする考え方があり得ます。また、憲法改正についても、緊急事態の場合であれば他の緊急事態措置との関係が問題となったり、個別的事情の場合であれば代理投票を認めるなど、他の選択肢もあり得ます。加えて、日本国憲法の規律密度を踏まえつつ、定足数という準則の例外をどう整合的に規定するかといった問題もございます。
 他方、例外的許容や許容の場合には、少なくとも参議院規則百三十五条について措置することが必要となりますが、その際にはその例外として、オンライン出席に関し、議院規則で規定する方法だけでなく、衆参両院で対応が異なるのは好ましくないとして国会法で対応すべきとの議論、あるいは臨時特例規則や議院の議決によるべきとの議論なども見受けられます。
 以上の議論は本会議の出席に関するものでございますが、国会法以下で規定する委員会の出席については、憲法ではなく法律解釈の問題であることや予備審査機関であることなどから柔軟に解することができるのか、それとも国民代表や委員会中心主義といったことから委員会も本会議と同様に考えるべきなのかも問題となり得ます。この点については二ページのところで論点四としておりますが、資料、最後七ページの一番最後のところでございますが、示しましたとおり、本審査会での参考人の間で意見が分かれたところでございます。
 以上を踏まえつつ、法制度設計上の論点として、オンライン出席に関する主な課題を資料の三から四ページで簡単に見ておきたいと思います。三ページ、四ページをお開きいただければと存じます。
 まず、課題一として、出席、公開に関する課題を挙げておりますが、これは憲法上の問題をクリアするための前提となるものであり、また、課題、右側の二ですね、課題二の実質的、技術的な課題と表裏の関係にあり、それらの問題は実務的、技術的な可能性に規定されるところがあります。
 さて、その一つ目ですけれども、憲法五十六条の出席に含まれる、含まれ得るオンライン出席とはどのようなものであり、どのような条件を満たすことが必要かという点でございます。これについては、右側の四ページの方でございますが、少なくとも物理的な出席と同程度の双方向性等が必要と考えられ、これをどこまで確保できるのかが課題となり、またその前提として、安定的な通信環境やセキュリティーの確保などが不可欠となります。
 二つ目でございます。また左の方でございますが、本人性、真正性の確保で、オンライン出席議員の本人性、自由な意思決定や表決の真正性を確保することが必須であり、その実務的、技術的な課題として、右側になりますが、成り済まし等の防止方法としてIDとパスワードによる認証、画面上の確認などで大丈夫なのか、真正性の確認・確保の仕組みや、それとの関係で議員以外の者が同室することの可否なども問題となります。
 さらに三つ目でございますが、左でございますけれども、憲法五十七条の公開性、公開原則との関係から、オンライン出席についても何らかの形で国民が見聞きできることが必要となり、技術的に大画面の活用など、その見せ方や表示の方法を工夫する必要があります。
 次に、三ページ、左ですけれども、課題三として、オンライン出席を認める範囲の問題を挙げておりますが、緊急時については、感染症、大規模災害など、どのような事態を想定するのか、また多くの議員が議場に出席できず定足数を満たせないような場合に限定するのか、感染症の感染拡大防止のため大勢の参集が難しい場合や大規模災害による参集困難な議員にも認めるのかなど、その要件や限界、その認定の仕方などが問題となります。
 他方、議員の個人的事情の場合にも、妊娠、出産、育児、介護、障害、疾病など、どこまで認めるのかという線引き、事由の有無や実質的に権限行使が可能な状況にあることの認定方法等が問題となります。
 四ページの課題四でございます。オンライン出席議員の権限行使をどこまで認めるのかがその方法とともに問題となり、特に採決方法との関係から表決の範囲のほか、選挙や内閣総理大臣の指名、発言、動議の提出なども認めるのかどうかの検討が必要となります。
 また、オンライン出席議員の現在場所については、例えば国会内、議員会館、議員宿舎などに限定するのか、自宅、病院も認めるのかなど、その範囲が問題となるとともに、その際には議長警察権等との関係の整理も必要となってきます。
 さらに、課題五として、オンライン出席を認める場合や、その範囲の関係から、例外的・臨時的なもの、一般的・恒久的なもののいずれとするかが制度化の形式や規定、認定の仕方などと絡んで問題となるとともに、物理的な出席にオンライン出席を併用するハイブリッド方式にとどめるのか、全員がオンラインによる完全オンライン審議まで認めるかなどの問題のほか、課題六の方でございますが、波及問題として、国務大臣等や証人、参考人等の出席の取扱いも議論となり得ます。
 雑駁な説明となり恐縮でございますが、私からは以上でございます。
 どうかよろしくお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 川崎政司

speaker_id: 5465

日付: 2022-04-13

院: 参議院

会議名: 憲法審査会