山田久の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(山田久君) 日本総合研究所の山田でございます。本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私の方からは、雇用保険を始めとした雇用セーフティーネットの在り方ということで、少し大きな視点からお話をさせていただきたいと思います。資料がございますので、それを見ながら御説明を聞いていただければと思います。
 まず、改めて現状認識、課題認識のところから整理をさせていただいております。
 今回のコロナ禍で非常に様々な問題が起こったわけですけれども、失業率というところで見ますと、結果的には当初懸念されたほどは上がらなかったということかと思います。これは、雇用調整助成金始め、まさに様々な対応が取られた成果というところがあると思うんですが、一方で、統計は、表面的には表れないような厳しさというのが現状でも残っているというのが実態かと思います。
 ここでは主なものを三つ示しております。一つは、長期失業者というのがやはりじわじわと増えてきているということでございます。
 それから二つ目は、シフト労働者の問題というのが今回かなり大きな問題になったんじゃないか。その非正規の方で、労働時間、雇用の実際にいつどれぐらい働くかというのがあらかじめ決まっていない人たちが今回非常に仕事が減ったと、特に飲食店なんかで働く方が大変な状況になったということかと思います。
 関係の図表として、このお配りしていただいている資料で、週十四時間未満、それがすなわちシフト労働者ということではないんですけれども、その中に入っているということだと思うんですけれども、特に飲食、宿泊のところでいまだにかなりの数が高止まっているということかと思います。
 それから、いわゆるフリーランスの方がかなり増えてきていると。フリーランスというのは非常に多様ですので、これ自体が全て不安定ということではないんですけれども、やはり様々な状況の中で事実上不安定な方も増えている。この辺りというのはなかなかいわゆる失業率のところに出てこないんですけれども、その問題あるというのはやはりしっかり認識する必要があると思います。
 それから、先行きを考えますと、世界情勢、もう今ウクライナの情勢もそうです、あるいは米中の対立、非常に大きく変わってきております。それから、技術の環境がDXでありGXということで大きく変わる中で、これ当然産業とか事業構造が大きく変わっていく、これまでも変わっていますけれども、更に変わっていくと。当然、そうなりますと、働く人たちの技能の転換であったり必要に応じてやはり労働移動ということも求められてくるということです。
 そういう意味では、やはり雇用のセーフティーネットということを強化していく必要があるということかと思うんですけれども、この一枚目の左側のところを見ていただきますと、この積極的施策と消極的施策ということで、積極的というのは就業支援、まあ職業訓練なり就職支援なんですけれども、いわゆる単純な失業給付というのは消極的施策の方に入りますけれども、この主な先進国の数字を示しておりますけれども、日本はこの諸外国に比べると低いという状況にございます。これは、もちろん日本は失業率が低いので当然これ低いというところはあるわけですけれども、ただ、その失業率の、失業手当のカバー率というのも二割から三割程度にとどまっているということで、今の現状のものだけではやはり不十分な部分がやっぱりあるんじゃないかということがあるというふうに思います。
 次のページを御覧いただき、そういう中で、じゃ、今後の方向性ということで、今般のコロナ禍の中でも一つ問題提起されていると思うんですけれども、特にヨーロッパを見ていますと、まず失業保険ですね、日本でいうと雇用保険になるわけですけれども、これがあって、それと、本当にもう就業もできないということになりますと、これは生活保護で救済されるということで、その間に失業扶助であったり第二のセーフティーネットと言われる部分がございます。ここがやはり、かなり、特に北欧であったり北部のヨーロッパというようなところは、この辺りが様々なメニューがあって、多様になっているということです。
 日本もリーマン・ショックの後これ問題化されまして、例えば求職者支援制度などというものがつくられて、対応は進めてきたところなんですけれども、今回やはり、ちょっとまだ十分じゃないのかなということが改めて問題になっているんじゃないかなと思います。
 そういう中で、特に、既に申し上げました中長期の産業構造の転換ということを考えますと、やはり働き手に求められるスキルということをどう新しくしていくのか。それは、転職者とか再就職者は当然なんですけれども、在職者も含めて、広い意味での積極的労働政策というふうに言われますけれども、こういうものの強化ということが大事になってくるんではないかなと思います。
 左側の図表ですね、これ図表四になっていますけれども、これ、様々な雇用対策の主なものを、日本とドイツとスウェーデンを比較しておりますけれども、メニュー的にはやはり日本はまだ十分ではないというところがあるんではないかなということでございます。
 そういう状況ですけれども、今回のコロナの中では、ある意味必要に迫られて様々な対応が取られたということだと思います。例えば休業支援金、コロナウイルス対応の休業支援金・給付金ですね、それから産業雇用安定助成金、こういったものも創出される、あるいは求職者支援制度自身も拡充化されるということで、様々なやっぱり対応されたこと、これは非常に評価できることだと思います。今後、そういうものも含めながら、改めて、その制度を恒久化する必要があるものはしていくという、この作業をやる必要があるんじゃないかなというふうに思います。
 ただ、先ほどの課題認識から見ますと、これは改革のプロセスの始まりであって、引き続きこういう検討はやっぱり進めていく必要があるんではないかなと思います。
 一つは、具体的には、これアクティベーションプログラムというふうに書いていますけれども、これは北欧の雇用政策ということで、基本的には失業保険が終わったり、あるいは失業保険ではなくて積極的に職業訓練を受けたりするケースはこのアクティベーションプログラムということに入っていくんですけれども、ここが実は多様なものがあります。職業訓練もあれば、コーチングといって伴走型で再就職をすることをいろんな形でリードしていったり、あるいは、実際にやはり職場で働いてみるという経験が再就職には非常に重要ですから、そういうふうなところをサポートするようなプログラムがあったり、非常に多様なものがございます。こういうふうなところを日本も参考にしていくということが大事じゃないかなと思います。
 日本は、求職者支援制度ができて、求職者支援制度は雇用保険の対象外の方が、救済措置ですけれども、このときにいわゆる生活給付が出るわけですけれども、ただ、どうしても職業訓練を中心にするとキャパシティーが限られてくるということですから、そういうふうに考えますと、例えば先ほど申し上げましたような北欧にあるような様々なメニューを整備しながら、そういうものにもうちょっと汎用に使えるような給付、生活給付制度みたいなもの等も検討に値するんじゃないかなというふうに考えております。
 それから、やはり重要なのは、実は職業紹介をするときに伴走型の支援ということもやはり大事だということかと思います。特に、日本でいいますとキャリアコンサルタントというか、今回の法制改正の中にも入っていますけれども、こういうものを実効性のある形で改善を進めていくということが大事だと思います。
 それから、雇用保険そのものもやはり、例えば雇用保険の対象の拡大、現状でもかなりされてきましたので、ちょっとこれはいろんな整備をしないとすぐにはできる話ではないと思うんですけれども、中長期的に見たときに、これを例えばいわゆる複数で仕事をやっている人たちをどう救済していくか、これは技術的に結構難しいところがあるのですぐにはできないと思うんですけれども、そういうものを考えていったり、ある意味そのための救済措置なんですが、スウェーデンなんかには労働時間が大きく減ったときにその減った部分だけ救済するような仕組みというのもございます。こういうことも、これも中長期の観点ですけれども、検討していく。
 それから、フリーランスも今回いろんな問題が出ていますけれども、例えば、これ一例を示しますと、ヨーロッパでは、プラットフォーム経由の仕事について、案件ごとに報酬の一定率を発注企業と受注ワーカーが折半で拠出して、これは雇用保険だけじゃないんですけれども、労働保険、社会保険全体の仕組みを、拠出するような、まあこれは提案段階なんですけど、こういうものも見ながら中長期の課題として考えていくということが大事じゃないか。
 それから、積極的労働市場政策ということでいいますと、やはり本当にその企業のニーズにマッチした実践的な職業訓練の仕組みというのが大事なわけですけれども、このためにはやはり使用者のいろんなニーズ、それを酌んだ形で当然地域が連携していく。今回、地域訓練協議会というのが法制化されるということです。これは望ましい第一歩だと思います。これもPDCAを回しながら改善していくということが大事だと思います。
 それから、もう一点申し上げておきますと、今回、雇用調整助成金の特例措置は非常に活躍したというか、効果を持っているとは思うんですが、ただ、これ昔から言われておりますけれども、余りに長期になると産業、事業構造の転換をやはりそいでしまうという当然副作用があると。
 これは一つの提言ですけれども、例えば、一定期間以上になったときは教育訓練とか在籍出向、こういうものを原則そちらの方に移していくというのは既に今の仕組みの中にこれはあると思うんですけれども、そういうふうなものを少しルール化していくというような、要件化していくということも一つのアイデアなんじゃないかなというふうに考えてございます。
 最後に、ちょっと残りの時間で財源問題についてコメントさせていただきたいと思います。
 これは、財源問題というのはいろいろ、どうその労使と、それと国、あるいはその公のところで分担するかということで様々な考え方があると思うんですけれども、欧米のその状況を見たときからの比較の観点から少し申し上げたいと思います。
 それから、これからのやはり在り方みたいなことを言ったときに、原則論でいうには、やはり全ての労働者には職業キャリア形成の権利もありますし必要もあるということかと思います。それから、労働力が希少化する中で、企業にとって全ての労働者が貴重な戦力であるというふうな認識はやっぱり事業者にとって重要になっていると思います。それからさらに、サプライチェーン全体で考えれば、実は取引企業の労働力の質自身も自社の製品競争力につながる、そんなことを考えれば、雇用保険を中心とした労働政策の財源というのは原則やっぱり労使の保険料で賄うという考え方、私はこれは原則論としてはあるんじゃないかなというふうに考えます。
 実は、欧米を見ると、失業保険の財源は原則労使で負担しているケースが多いです。例えば、ただ一方で、ヨーロッパの場合は、先ほど言いました第二のセーフティーネットですね、失業扶助のようなところがあって、ここは国費でやっているというのが原則的な切り分けということになっています。ただ、スウェーデンのように、かなり雇用に対しては最終的に労使、特に事業者が負担しているというケースもあるということで、その辺り、やはり国際比較の観点から、中長期の視点では見直してみるということも大事じゃないかなと思います。
 ただ、ここで大事なのは、経済の活力はやはり大事ですから、事業者に全部、が持つというのはこれはまた違うわけだと思います。例えば、法人税の負担ということでいいますと、今、国際的な議論の中では最低の部分を入れようという議論になっていますが、日本は国際比較をすると、実はGDPベースでいうと日本は比較的多い形になっているというのがございます。ですから、その辺り、全体の税負担とのバランスも含めながら議論を冷静に進めていくということが大事だと思います。
 それから、以上はこれ平時の話なんですけれども、やはり近年、いろんな形で経済危機が結果的にはやっぱり発生しているわけですね。そんな中で、危機時の機動的な対応というのはやはりこれは国の役割だと思います。ですから、今回、そういう意味では、法制改正の中で、国が臨時的に国保やら雇用保険のところに資金が出されるという、こういう拠出の仕組みというのは非常に評価できるということじゃないかなと思います。
 以上が、これは私の個人的な見方になりますけど、欧米の比較から見たときの大きな方向性ではないか。
 もちろん、過去の経緯というのもございます。それから連続性ということも非常に大事だと思います。最後は、やはり実効ある制度運営には、労使の納得感、これが非常に大事になってきますから、そういう意味では、丁寧な議論をしながら、できれば、やはり環境は大きく変わっておりますので、雇用のセーフティーの、セーフティーネットの全体像のあるべき姿、これを改めてやはり公労使で議論し、共有認識を取って継続的に見直す。で、できるだけやはりシンプルにしていくという観点も重要じゃないかなと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 山田久

speaker_id: 26943

日付: 2022-03-25

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会