花井十伍の発言 (厚生労働委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(花井十伍君) 本日は、このような機会を与えていただいて、ありがとうございます。
私は、特定非営利活動法人ネットワーク医療と人権の理事をやっています花井十伍と言います。このNPOは、薬害エイズ原告団、大阪HIV訴訟原告団の呼びかけによってつくられたNPO法人で、主に薬害や人権問題に関する調査研究事業、あるいは薬害エイズの被害者の支援、あるいは患者会の支援ということを行っているNPOです。また同時に、全国薬害被害者団体連絡協議会、おめくりください、一枚。この十薬害十二団体によって構成される薬害団体を構成しています。
本日のお話は、残念ながら、この十二団体の意思統一というのはなかなか時間的には難しいので、おおむね、薬害エイズ被害者あるいは患者としての立場からのある種個人的な見解だというふうにお受け止めいただければ幸いです。
薬害という概念自体は日本固有の概念でありまして、英訳だとドラッグ・インデュースド・サファリングスというふうに英訳されますが、例えばエイズの被害者は世界的にいるわけですけれども、世界で交流しても、サリドマイドの被害者とは、そちらは交流していないということで、日本の場合は、この薬害というコンセプトと、それからそれぞれの被害の経験世界に共感があり、このような十二団体が薬害根絶を目指して活動を展開しております。
次のスライドをお願いします。
薬事制度と薬害の関係なんですが、私たちはこの被害を二度と起こしてほしくないということで、薬害被害の教訓を生かしたいというふうなことをこれまでも申し上げてきたんですが、実は世界的にもそうですし、国内の行政機関においても実は教訓は生かされているというのがこのちょっとビジーなポンチ絵です。
上にあります色付きの赤い系統の線が、被害が、被害者が増えている期間ですね。ブルーの線は訴訟をやっている期間であります。そうやって、こうやって見ますと、大体一九六〇年代から今に至るまで、継続していろいろ起こってきているというのが分かると思います。一方、下で示しているのは、それに関連した薬事制度の変遷です。特にサリドマイド被害は世界的なインパクトがありまして、下にあります、日本でいえば一九六七年に、ここは通知なんですけれども、世界で医薬品というのはやっぱり有効性と安全性が大事なんだという今の常識ですね、これがまさにサリドマイドによって世界が自覚したということで、いまだにこの一九六七年が今の薬事行政の原点と言えると思います。
さらに、スモンを踏まえて、その後の薬事法改正ですね、七九年改正ですが、これこそが、今でも常識である副作用の報告義務とか緊急命令、回収命令などという今の立て付けですけれども、これがまさに世界的にもこの一九六〇年代から七〇年代にかけて、今の常識的な枠組みというのが形成されたと言えます。
それからその後、エイズ、ヤコブということが起こりますけれども、そこでいわゆる生物由来製品という概念ができるわけですけれども、原料の上流ですね、病原体があるかないかということの規制ということを必要だと。血液でいえばルックバック、遡及調査システムですね、こういったものが二〇〇二年法によってつくられているわけです。
その後も、薬害が起こるたびに見直して、どこが悪かったんだろうということになっているというのがこの図であって、薬害被害というのは、やはり薬事制度とある意味密接に関連してきたというのがこの図です。
ただし、特に二〇〇〇年代、つまり、この右下の緑の二〇一四年改正の議論の辺りから、まあ医薬品を安全にしようと思ったら、臨床試験の数を増やして、サブグループを山ほどつくって、時間を掛けて安全性を調べればいいわけですけれども、それをどんどん増やしていくということになると、コストもそうですし、時間も掛かるわけですね。この辺りから実はドラッグラグという問題が生じてきます。すなわち、欧米で使える医薬品が日本で使えないじゃないかと。それを何とか改善するという問題が出てきます。つまり、より良い薬を、より安全な薬をより早くというのは誰もが賛同しますけれども、意外にここはコンフリクトするということですね。だから、急いで出すと安全性はどうかと、かといって、ゆっくり出したら、じゃ、逆にそれを待っている患者さんが疾病によって死亡しては元も子もないと。このバランスというのが非常に難しいということになります。
日本においては、この二〇一四年、二〇〇〇年代にかかってから、おめくりください、このドラッグラグの解消、特にはPMDAの組織の強化による審査機関の向上であったり、それから、特に二〇一四年改正においては再生医療等製品という仮免許制度ですね、仮承認制度を導入したり、期限付の早期承認、それから、二〇一九年には先駆け審査指定制度、条件付早期承認制度という運用で行っていた制度の法制化という形で、ドラッグラグの解消ということでより良い薬を早く出すという制度も整備してきたと。
これは、開発メーカーにとってもある程度、制度化によって計画性が立つということで歓迎されている制度であります。ただし、このたびごとに私たちは、やはり、だからといって安全性を損なってはいけないということは繰り返し申し上げてきたということになります。
おめくりいただいて、次のスライドですが、今回は特にこの緊急承認制度というものについて中心に意見を述べたいと思いますが、これは、実は患者さんが待っている薬を早く届けようという早期承認制度とは筋の違うお話であるというのがこのスライドです。
いわゆる特例承認制度というのは一九九六年改正で導入された制度ですけれども、これ言わば緊急時に欧米で実績のある医薬品を緊急輸入できるようにしようというのが一つの理由付けで導入されたものです。
似たような制度のように思える今回の緊急承認制度ですね。これ、特例承認制度の思想的には延長線上にあると解すことは問題ないと思いますし、私もそう考えますが、問題なのは、緊急承認制度は国内開発新薬等にも適用されるわけですから、新薬にも対応するわけですね。そうすると、医薬品承認における有効性、安全性評価基準が本質的に緩和するという問題がここに生じるというのが大きな問題です。
先ほど赤池参考人の方からもありましたし、同じ検討会に私も同席しておりましたので、その辺のことは理解するところですけれども、ただ、この緩和というのをどの程度すべきかというところで、一応、有効性の推定と確認という言葉を使い分けていますけれども、事実上、推定と確認というのは、言葉上は異なっていますけれども、実際の運用になると、やはりどこまで行けば推定されたとするかというクライテリア、無限のグラデーションの中で決めていかなきゃいけないという問題になるので、やはり、このような制度をつくることによっていわゆるセキュリティーホール的なものになっては困るというのが私どもの主張であります。
次のスライドをお願いします。
実は、この法律にはちょっと問題がありまして、薬機法という法律自体がこういう制度になじむか問題というのが私も検討会で繰り返ししつこく主張してきたことであって、これは、基本的には薬機法というのは製販業者に対する規制法なんですね、もちろん薬局に対する規制も入っていますけど。基本的には規制行政なのであって、そうすると、薬機規律というものは元々、製販業者が医薬品として上市したいという動機付けからスタートします。それをするために必要なデータを出す、RCTとか第三相試験とかそういう話がその中身ですが。で、国がどれどれと、このデータを評価、審査し、ちょっと足りないのでこれを追加しろとか、それから、承認はするけど市販後に承認条件で、こういうところにしか売っちゃ駄目よとか、それから添付文書はこういうふうにちゃんと書きなさいとか、それからリスク管理計画、RMPですね、RMPの中身をちゃんとしましょうということで、注文を付けて国が承認するということですね。
ところがです、今回の制度は国が導入をお願いする局面があるわけですね。現にワクチンは優先的に売ってほしいとか日本に出してほしいとお願いするわけですから、これ全然出発点が異なっているので、本来、薬機規律ではクリアできない問題があるんですね。
ここに書いてあるように、国が導入をお願いするような局面においては主導権が入れ替わるかもしれない。売ってあげてもいいけど余りうるさいことを言ってもらっては困るとか、いろいろ条件付けられたら、じゃ、ほかの国の、欲しい国はたくさんあるとか、そういうことになることを懸念しています。この薬機規律が機能しなくなるんですね。
あくまで薬機規律というのは製販業者発で売りたい商品を承認するという立て付けなので、国が欲しい医薬品を世界のどこかから手に入れてきて、持ってきたいから早く承認するというのにはなじまないようになっています。
なので、原則を言えば、緊急承認制度は、承認ではなくてやっぱり暫定使用許可とするのが筋であるというふうには考えます。これは、論理としてはそうしかあり得ないというふうに繰り返し私は主張しております。
アメリカのエマージェンシー・ユース・オーソライゼーションというものの立て付けというのがありますけれども、あれと比較して、日本型というふうにするのはちょっと難しい問題があります。それは次のスライドであります。
今回、検討会でも結局、いろいろ意見はありましたけれども、取りまとめに最終的には賛成したわけですけれども、その理由は、ここにちょっと細かいいろいろ法律が書いていますけど、現行医療関連法と統制技術的整合性という問題が常に日本の医療の場合生じてしまうという問題があります。つまり、例えば承認した医薬品が全部薬価収載されて保険でカバーされるというのも日本の特徴なわけであって、つまり医療システムと薬事承認というのはリンクしているんですね。
そういうことから考えて、もしその適応外で使う、承認されていない形で使うという用い方を、例えば特例承認、あっ、済みません、緊急承認ではなくて緊急使用許可とした場合は、ほかの法律でどう扱うか問題というのは常に生じてしまうので、統制技術的整合性の観点からは今回のように薬機規律を利用するという考え方にも一定の理解は示すということが言えるかなと思います。それがゆえに検討会でも最終的には賛同させていただいたわけです。
下にあるように、もうこれは先生方にはもう釈迦に説法でございますけど、特に保険療養のシステムというのは日本固有の皆保険制度で成り立っていまして、これ自体も相当細かい制度になっているので、こうしたこととの関連とか、あと臨床研究法のようにオフラベルが特定臨床研究になるとか、そういった薬機制度と関連して医療、ヘルスケアシステムを統制する法律が並んでいるので、そことどう整合させるかという話なので、逆に言えば、このようなテロ対策とか、例えばこんなパンデミックに対するいわゆる医薬品の使用というのは、本来は国家、政府レベルの統制システムの設計の問題であって、薬機、中身だけで議論する問題ではないということはここで留保していただきたいというふうに思います。
次のスライドをお願いいたします。
以上の懸念を踏まえまして、この制度を薬機改正に盛り込むに当たってはこのようにしていただきたいというこれはお願い、若しくは意見ですが、一つ目は、緊急承認品目の承認はできるだけ速やかに対照群を設定したプロトコルによって安全性評価を求めると。ただし、RCTを厳密にやると時間も掛かるので、じゃ五年後に分かりましたというのも困るので、ここはルールを決めて割と早期に有効性の評価ということをしてほしいと。
それから、安全対策については、原則、ワクチン何千万人は難しいかもしれませんが、原則全数登録というのを原則としつつ、対照群を設け、検出したシグナルを評価できる体制整備、これは国の責任においてすると。
これは実は前にも議論をしておりまして、ワクチンに関して、結局、対照群、つまり住民台帳があるんですね。あれを対照群とすれば、対照群を据えて、いや、ワクチンの安全性評価は日本でもできるんですけれども、実はそれができていないし、現状それをお願いしてはいるんですが、やはり市町村との関係になるので医薬当局がいろいろ言ってもなかなか協力も難しいし、それからAMEDというところで研究でやっている部分もありますが、そういうレベルじゃないでしょうというのが私の主張で、国家的に緊急事態に対応するものなのだから、その安全についても国家的にやはり保障するために、やっぱり国家が持つ制度を動員してこのようにシグナル評価をできるようにするのは、もうこれ政府の責任だろうということを繰り返し主張しておりますし、ここでも一番強く主張したいと思います。
リアルワールドデータという言葉が出ていますけれども、現にあるものを使わないというのは非常に問題があると思います。なので、そこら辺のところは是非先生方に御理解いただきたいということです。
それから、次にです。先ほど言ったことと同じですけれども、企業と国とが優先契約交渉する、優先供給契約とかするわけですよね。そうすると、企業は何言うかというと、いや、安全対策でいろいろ注文付けられるといろいろコストが掛かるからそれは勘弁してくれなんということを言う可能性がありますよね。それを聞いて政府がPMDAに、いや、配慮するようになんという話は、これも薬機統制がゆがむのでやめていただきたい。
それから、緊急承認品目であるということを国民がやっぱり分かっていなきゃいけないということで、情報提供、できれば緊急承認品目という表示があるべきですし、それからインフォームド・コンセントはやはり書面によって、これは普通の医薬品と違いますよということを患者に徹底していただきたい。
それから次、おめくりいただいて、救済制度ですね。もちろんそういうものを導入する、日本には世界に誇る医薬品副作用被害救済制度がありますし、予防接種法に基づく救済制度がありますが、因果関係を完全に否定できない症例というのをやはり救済されないとセーフティーネットになりませんので、この運用を徹底していただきたい。
ただし、これも疑念があるんですけれども、HPVワクチンあるいはCOVID―19のワクチン被害救済においては、本来救済されるべき国民が政策的意図によって除外されるようなことはあってはならないというふうに思います。もちろん、こういうグレー、救済なので、メーカーの拠出も入っているとかいろいろあると思いますけれども、基本的には因果関係を完全に否定できない場合はこれはやめていただきたいと。
最後のスライドになります。
あと、臨床研究法という関連法で、医師主導治験以外の医薬品開発においてもPMDAが対応する範囲を拡大するということが今議論されていて、それはいいことだなと思っています。
国際的にはFDAが一括して、臨床研究も治験も同じなわけですよね、やっていることは、なので、やるのが理想なので、今後はそうしていただきたいと。また、日本版のNIHを構想したAMEDですね、これ、今は単なるファンディングエージェンシーなんですけれども、それがゆえに研究支援機能や評価機能が不足していますし、それから、HTA機関は存在していなくて、保健科学院の一セクション、C2Hが費用対効果を行っていますと。これも、イギリスのNICEのようなものが日本にないということであって、これらの機関が十分にやっぱり機能するような体制が必要だと思います。
また、これらの機関が過去の薬害の歴史をちゃんと理解してほしいと思います。単に僕は被害者だから言っているんじゃなくて、やっぱり薬害を学ぶと、いわゆる今の安全性向上にいろいろ示唆するものがあるということを私たちは思っていますので、是非、歴史を踏まえた上で、これはレギュラトリーサイエンスでもあります、日本の医療、国民の健康に寄与することを切望しております。
以上です。ありがとうございました。