松浦満晴の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(松浦満晴君) ありがとうございます。
 全日本海員組合組合長の松浦でございます。
 まず、本調査会委員の皆様方におかれましては、意見陳述という大変重要な機会をいただきましたこと、まずもって感謝申し上げます。
 本日は、海運・水産産業の現状と人材確保の必要性、本組合の海事広報に関する活動の概要、さらに、後継者の確保、育成に向けた要望、提言につきまして、船員の立場を代表して発言をさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 私ども全日本海員組合は、海運・水産産業で働く船員中心に構成をされた我が国唯一の産業別単一労働組合であります。前身となる日本海員組合が大正十年に神戸で設立された以降、戦時中に一度解散を余儀なくされましたが、昨年で設立百周年を迎えるに至りました。
 本組合に加入している船員は、主に外航、国内、水産の三つの部門に分かれており、全部門を合わせて約二万三千人の日本人船員とともに、外航と水産部門では、日本人船員の重要なパートナーである約六万人の外国人船員が我々の仲間として我が国の物流や水産資源の供給を支えるべく、日夜洋上で就労をいたしております。
 御存じのとおり、四面を海に囲まれた我が国は資源、エネルギーなどの大部分を海外に依存しており、九九・六%もの貿易量を外航海運が担っております。また、国内貨物輸送全体の約四割、産業基礎物資輸送の約八割を国内海運が担っているほか、フェリー、旅客船は、住民の移動権を保障する海の国道とも言える役割を有しています。さらに、漁船漁業を通じて食用水産物の安定的な供給が行われるなど、まさに海運・水産産業は我が国の安定的な国民生活や経済の維持発展に大きく寄与しているところです。
 また、平時における重要性のみならず、過去には、阪神・淡路大震災や東日本大震災など大規模自然災害が発生をし陸上の交通網が断絶をされた際に、船舶によって物資や人員の緊急輸送が行われるなど、国民のライフラインの確立にも重要な役割を果たしてまいりました。
 こうした海運・水産産業の基盤を支えているのが船員でございます。この数十年の間、その規模は大きく縮小してまいりました。全部門を合わせました船員数は、昭和四十九年に約二十五万七千人であったところ、直近の令和二年には約四万七千人まで落ち込んでおります。そのうち、ピーク時に約五万七千人いた外航日本人船員は、プラザ合意以降の急激な円高に伴う国際競争力激化により大きく減少をし、ここ十年間は約二千人強という人数で横ばいの状態が続き、日本商船隊に乗り組む船員の約九八%がフィリピン人を始めとする外国人船員となっております。
 一方、水産関係につきましては、排他的経済水域の設定など国際的な資源規制強化の中で、戦後隆盛を誇った我が国の遠洋漁業は衰退の一途をたどり、そこで働く漁船員も大きく減少をしております。また、近年の少子高齢化の影響を受けまして、海運・水産産業におきましても、後継者不足とともに、とりわけ国内海運と水産業で高齢化が深刻となっており、国を始め関係者が一体となって船員の確保、育成を図っていこうということが喫緊の課題でございます。
 私どもといたしましても、この問題に対する強い危機意識を持ち、これまで組合の活動方針の重点課題の一つに据えて、子供たちが海に親しむ活動を推進してまいりました。この場をお借りして、その活動の一端を紹介をさせていただきたいと思います。
 まず第一に、体験乗船や地引き網体験があります。これは、児童生徒が実際に乗船をし、船内の設備を見学したり、砂浜での漁労を経験することを通じ、海や船を身近に感じてもらうために行っている体験型活動でございます。
 体験乗船については、教育委員会と連携をし学校ごとの職業体験プログラムの一環として行ったり、一般公募により広く参加者を募るなどの方法で行っており、平成二十一年以降、これまで一万人を超える方々に参加をいただいております。参加者は主に初等教育の小学生をターゲットとし、湾内クルーズや船内見学、ロープワーク体験、船員による講話、クイズ大会など、海上から陸を眺めるといった日常では得られない機会を提供したり、船舶のスケールの大きさを肌で感じるなど、子供の感性に訴えるようなプログラムを企画し取り組んでまいっております。
 続きまして、部門に特化した広報活動といたしまして、外航船員の魅力を発信し志望者の裾野を広げることを目的に、国際船員労務協会と共同で平成二十四年にJ―CREWプロジェクトを立ち上げまして、アニメーション、地上波放送のドラマ、学習用図書など書籍の制作や全国の学校への寄贈などの活動を行っております。
 水産部門では、全国の水産高校やその船員養成教育機関を訪問をし、漁船の種類や漁船漁業での労働条件、就業、船内生活、船内コミュニケーションの取り方などの実態について出前授業を行っているほか、官学労使の漁船乗組員確保養成プロジェクトにより、水産高校での就職ガイダンスにも積極的に参画をしているところでございます。
 こうした海事広報や海洋教育の推進と併せまして、組合独自の取組として、船員職業を志望し船員養成教育機関への進学を希望する生徒や学生を支援するために、平成二十二年に奨学金制度を創設をし運用を図ってまいりました。令和三年度までに約千四百人の奨学生を採用し、約八割の卒業生が船員に就業しているという状況でございます。
 以上、紹介してまいりましたように、本組合としても、広く関係者と連携を図りながら海事広報の取組を鋭意展開しているところでございますが、今後、船員後継者の確保、育成を確実に図っていくためにも、国への要望、提言といたしまして、大きく四点について申し上げたいというふうに思っております。
 一点目は、船員養成教育機関の充実についてであります。
 船員養成教育機関は、主に外航船員の養成を対象としている文部科学省所管の商船系の大学や高等専門学校のほか、主に国内海運に従事する船員養成を目的とする国土交通省所管の独立行政法人海技教育機構によって設置、運営をされている海技大学校、海上技術短期大学校、海上技術学校などがございます。また、漁船漁業を始めとする水産業の担い手を養成する機関として都道府県に水産系の高等学校が置かれており、船員の志望者はこれらの学校を経て海技免状を取得していくこととなります。
 このうち、海技教育機構については、国土交通省の検討会が取りまとめました内航未来創造プランの中で、五百人規模を目標に掲げて、養成定員を段階的に拡大する方針が示されております。
 一方で、同機構の運営費交付金については毎年削減され続けているという状況であり、このことは、平成二十八年の海技教育機構と航海訓練所の統合時の国会附帯決議、「日本人船員の増加に資する体制の強化や支援措置の充実など万全の措置を講ずること。」との趣旨に逆行するものと言わざるを得ません。練習船や学校施設の拡充、船員の確保など、具体的な施策を講ずるための予算措置と併せて定員拡大を図っていただく必要がございます。
 また、外航日本人船員確保という国の政策目標を具現化するためには、文部科学省所管の船員養成教育機関についても必要な予算の確保が欠かせません。
 一方、水産高校につきましては、少子高齢化や地方の過疎化が進む中、これまで統廃合が幾度となく行われ、水産教育を受ける機会が減少しており、水産高校は、水産物を国民に安定供給する水産業を担う人材を養成し、子供たちが職業的専門性を学び漁業で活躍できる教育を提供する重要な教育機関であり、維持、存続に向けた支援が必要であります。
 要望の二点目として、船員職業の社会的地位の向上に関連して、国策として税制上の措置についてであります。
 平成二十年七月に成立した海上運送法及び船員法の一部を改正する法律に基づき、安定的な海上輸送の確保を図るために必要な日本船舶の確保、日本人船員の確保、育成の目的に、国土交通大臣より日本船舶・船員確保基本方針が定められました。
 これに先立ち、国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会は、必要な外航の日本籍船、日本人船員の規模について、それぞれ約四百五十隻、約五千五百人と試算した内容を答申しました。この試算を踏まえ、基本方針では、平成二十年から日本籍船を五年間で二倍に、日本人船員を十年間で一・五倍にする目標が明記をされております。
 日本船舶及び船員の計画的増加を図り、安定的な国際海上輸送を確保するために導入をされましたトン数標準税制は、認定事業者につき、みなし利益の概念を導入することによって優遇を図るものでありますが、これまで日本籍船は着実に増加してきた一方で、日本人船員については横ばい状況であり、当初の目標達成には程遠い状況となっております。改めて、日本人船員確保の意義について関係者間でしっかりと共通認識を図り、確保、育成を図るための検討を行っていく必要があると考えております。
 海洋国家である我が国において、船員という職業なくしては経済安全保障、食料安全保障を維持することはできませんが、船員職業に関する国民の意識、社会的認識度、認知度は必ずしも高いものではございません。本組合は、船員に対する税制上の措置を継続的に求めてまいります。
 他の国を見てみますと、英国、ノルウェー、フランス、韓国などでは、所得税や社会保障制度における一定の措置がなされております。もちろん国ごとに租税体系の違いはあるにせよ、船員の確保という観点からも、我が国における船員に対する税制上の取扱いについて御審議をいただいて、船員の社会的な地位や船員職業の認知度の向上を図っていくことが不可欠であるというふうに考えております。
 要望の三点目といたしまして、職業環境の改善を通じた船員職業の魅力向上についてでございます。
 御存じのとおり、船員は長期にわたり陸から離れた海上を職場や生活の拠点としております。船員労働の特殊性について、こうした離家庭、離社会性とともに、船員には労働、生活の自己完結性が求められるほか、厳しい気象、海象条件など海上の危険に直面をし、船舶という一つの共同体で対応することも必要となります。
 外航船、内航船、あるいは船舶の種類によって異なるものの、船員は、三か月の乗船後に一か月の休暇、六か月の乗船後に二・五か月程度の休暇など、多様な運航サイクルの中で就労しております。こうした船員労働の特殊性に起因する長期の連続乗船については、まとまった休暇が得られることや衣食住に要する費用が掛からないといったようなメリットもある一方で、離職における主要な原因の一つとなっていることも一面としてございます。
 今後、船員志望者を増加させていくとともに、就労後の定着率を高めていくという観点からも、国を始めとする関係者が一体となって船員職業をより魅力あるものにしていくための努力が欠かせないというふうに考えております。
 そのためにも、船員の働き方改革を着実に進めていくことが必要です。陸上の諸産業では、平成三十年六月に成立をいたしました働き方改革関連法に基づき、働き方改革の実現に向けた取組が順次進められているところです。
 一方で、原則として陸上一般の労働法制の運用を受けない船員についても、陸上の取組を参考にしながら、あらゆる層にとって船員職業をより魅力あるものにしていくために、平成三十一年二月より、本組合も委員として参画をしている交通政策審議会海事分科会船員部会の場で審議が重ねられてまいりました。令和二年九月の取りまとめでは労働環境の改善と船員の健康確保についての方向性が示され、今後、関連法案施行に伴って、船員職業の魅力を高めるべく、行政を中心に関係者が一体となって船員の働き方改革の取組を一つ一つ着実に進めていくことが重要であります。
 また、情報通信インフラの整備を図っていくことも、船員環境の改善の上でも極めて重要な課題でございます。今や年齢を問わず携帯電話は日常生活に欠かせないツールになっておりますが、原則として陸上利用として想定されているため、利用可能な海域は陸上の基地局から電波が届く沿岸部となっております。よって、沿岸から離れた海域では衛星通信による電波を利用せざるを得ない状況にございます。
 最後に、要望事項の四点目でございますけれども、国民の海離れ対策として、若者を含め、あらゆる世代が海に親しむ機会を充実させていくという重要な課題です。そのためにも、海事業界の総意として、国民の祝日海の日を七月二十日に固定をすることが必要であると申し上げておきます。
 現行のハッピーマンデー制度の下で海の日の本来の制定趣旨は薄れつつあり、国民の海離れが一層進んでいるのではないかと強く危惧しているところでございます。古来より海から恩恵とともに発展してきた海洋立国日本の将来を担う人材の確保という観点からも、海の日を七月二十日に固定し、そこを基点としながら、国民一般への海事思想の更なる普及を図っていくことが不可欠であります。
 結びに、後継者の確保、育成に向けた要望、提言としてるる申し上げてまいりましたが、我が国の国民生活と経済を支える海運・水産産業の基盤はそこで働く船員が担っているのだという事実は、これまでもそうでしたし、今後いかなる高度な技術革新が進もうとも揺るがないものだと確信をいたしております。
 現政権では、主要な政策の柱の一つとして経済安全保障がキーワードとなっており、次期海洋基本計画策定の構想でもそのことを踏まえた論議がされているものと承知しております。平時には想定し得ないような大規模自然災害が発生したとき、いざというときに一定の規模の日本人船員がいなければ、資源、エネルギーなどの供給を担う物流はストップし、国民生活は大きな混乱に陥ることになります。
 船員は特定の教育機関での養成を経て海技免状の取得が求められるプロフェッショナルな存在であると、自負を私自身も持っておりますし、私どもの仲間もそういった誇りを持って日夜働いております。船員養成は一朝一夕になし得るものではなく、児童生徒の海洋教育に始まり、専門教育を行う船員教育、さらには船員としてのオンジョブでの教育訓練に至るまで、長い年月を掛けて大局的かつ計画的に行われるものです。
 したがって、平時から問題意識を持ち、経済安全保障の観点から、緊急時に必要とされる船員数を充足できるような実効性ある施策、対策を後手を引かずに講じていくことが海洋立国である我が国にとって急務の課題であるということを最後に強く申し上げまして、私の意見陳述を終了させていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 松浦満晴

speaker_id: 18428

日付: 2022-02-02

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会