藤田友敬の発言 (国土交通委員会)
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○参考人(藤田友敬君) 東京大学の藤田と申します。
本日は、このような機会、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私は、金融庁において自動車損害賠償責任保険審議会の会長を拝命しているほか、今回の制度改正に係る関係者における議論の場となりました今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会の座長も務めさせていただいておりました。この検討会は、令和三年八月から検討を開始し、本年一月に中間とりまとめを公表しております。本日は、この検討会の審議に関与した立場から、中間とりまとめの内容を御紹介しつつ、今回の制度改正について意見を述べさせていただきます。
簡単なものではございますが、お手元に自動車事故対策勘定のあり方についてという資料をお配りさせていただいておりますので、これに基づいて説明させていただければと思います。
まず、このような検討を始めることとなった経緯でございますが、令和二年八月に国土交通省におきまして、福田先生を座長とする今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会が設置され、今後の被害者支援の在り方について、被害者の方々の声を丁寧に伺ったところ、施策を充実し維持する必要があるということが分かりました。
他方、被害者支援等の財源に係る現在のスキームは、平成十三年に積立金の運用益を活用する、そういう形で確立したものですが、これが将来に向けての財源の裏付けとしては破綻しており、これによって被害者支援等を継続していくことは不可能であるということも明らかになってまいりました。
これが今回の検討が行われるに至った経緯でございます。
そこで、二点目としまして、議論の前提となる被害者支援、事故防止対策をめぐる現在の状況を確認させていただきます。
まず、財源ですけれども、施策を行う財源となる積立金の運用益は金利水準の大幅な低下等により施策を実施するには全く不足しており、毎年施策実施を積立金の取崩しによって行うという状態が続いております。このため、積立金額の、積立金の総額は大きく減少を続けておりまして、このままですとそう遠くない将来には枯渇してしまうことが避けられません。
他方、交通事故の減少に伴い負傷者数は減少しているものの、毎年発生する重度後遺障害者数は横ばい状態でありまして、このような被害者の方に対して今後も長期間にわたって支援を行う必要があります。また、事故被害者をケアする家族が高齢化し被害者を介護する人がいなくなってしまう、いわゆる介護者なき後の事故被害者の生活支援の問題ですとか、被害者のリハビリ機会の充実など、更なる対策が必要となる問題がいろいろあり、今後の被害者支援の充実が強く求められております。また、依然痛ましい交通事故も度々発生し続けて、被害者やその家族、御遺族から、同じ思いする人を一人でも減らしたいという強い声をいただいており、事故防止対策の充実を求める声も大きくなってきております。
このような状況を踏まえ、交通事故被害者等が安心して生活できるようにするためには、被害者支援、事故防止対策のための財源が近い将来枯渇してしまうといった不安が残る状態、これを速やかに解消し、持続可能な仕組みへの転換を図る必要があるという問題意識が生まれたわけであります。
このような状況の下、今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会における検討が開始されました。この検討会には、学識経験者のほか、交通事故被害者の団体及び自動車ユーザーの団体の御参加をいただいておりました。
以下、検討会における関係者の意見について簡単に紹介させていただければと思います。
まず、全ての委員に共通していたのは、被害者支援、事故防止対策を更に充実させつつ維持していくべきであるということです。逆に言うと、財源が厳しいんであれば縮小、廃止しても構わないといった発想はありませんでした。
議論が分かれたのはそのための財源確保の在り方でありまして、こちらについては若干温度差がありました。
つまり、一部の委員からは、過去に自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられた繰入金の問題が重要視されました。この繰入金は元々自動車ユーザーの保険料を原資とした運用益なのであって、ユーザーに負担を求めるんであれば、まずは令和四年度における一般会計からの繰戻し額の増額と令和五年度以降の繰戻しの継続を約束していただくと同時に、今後の繰戻し額返済のめどをロードマップとして示してもらいたいと、こういう声が一方で提示されました。
これに対して、厳しい財政状況を踏まえると、被害者支援の施策を継続していくための安定的な財源を別途確保することは避けられないこと、車社会において誰もが加害者、被害者となる可能性がある中、その被害者を救済する仕組みが今後長く続く社会でなければならないといった観点から、もう繰戻しの議論とは別に、被害者支援や事故対策、事故防止対策が持続可能な仕組みを直ちに議論すべきであるという意見もありました。
このように、財源確保の在り方についてはメンバーの間で若干の温度差はあったのですが、令和三年十二月に至り、財務大臣と国土交通大臣の間の大臣間合意がなされ、この合意において令和四年度予算における繰戻し額の増額、令和五年度以降の繰戻し額の目安とその継続という返済計画の大枠が提示されました。
これを受け、その後の検討会においては、現実的な選択肢として、賦課金制度を導入して財源を確保することにより被害者支援や事故防止を長い将来にわたって安定的、継続的に実施するようにしてはどうかという方向性が示され、関係者間での真剣な議論を経て、最終的に本年一月、中間とりまとめとして合意に至ったわけであります。
以上が検討会の中間とりまとめに至る経緯ですが、次に、四点目として、検討会の中間とりまとめの提言内容について若干の補足をさせていただきたいと思います。
中間とりまとめは、財源の確保方法として賦課金方式を提案してございます。財源確保の方式としては、これ以外にも例えば租税方式といったことも論理的には考えられるのですが、自賠責保険料の中に賦課金を設ける方が、車社会の利益を享受する者の負担により車社会の犠牲となる被害者を支援するという受益、負担の関係が明確になること、また、自賠法においては既に事故被害者のために政府保障事業の財源を徴収するため賦課金が用いられていることなどから、現実的な選択肢としては賦課金方式の方がより受け入れられやすいだろうと考えたからでございます。
ただし、賦課金の導入に当たっては、ユーザーの負担が不当に増加しないような配慮が必要でございます。
具体的な金額については、事業規模や自動車事故対策勘定の積立金として確保すべき水準を勘案して検討することになりますが、保障勘定の剰余金をひき逃げ等の損害の填補に支障がない範囲で活用するほか、早い段階で賦課金を導入し、将来の負担軽減を図るべきだという意見も踏まえ、積立金の取崩しによる財源の確保も並行して行うといった措置によって賦課金の水準は抑えて、ユーザー負担の軽減、抑制を図るということが必要となってきます。
以上のような観点を踏まえ、具体的な賦課金額としては、現時点で試算し想定される最大値である百五十円を超えない範囲で、できる限りユーザー負担の抑制を考慮した水準を長期にわたって維持するという観点から更に引き続き検討するということにしてございます。この点については、また後で少し触れさせていただきます。
五点目として、安定的な財源の使途について申し上げます。
自動車ユーザーに新たな負担を求める以上は、これを財源として行われる被害者支援、事故防止対策の内容が自動車ユーザーの納得感が得られるように配慮されなければならないということは論をまちません。今後の被害者支援や事故防止対策の具体的な使途の選定に際しては、費用対効果を意識し、無駄を排することが重要となってまいります。このため、できる限り施策の見える化を行い、その効果検証を定期的に行う必要があります。
さらに、安定的な財源の確保が野方図な歳出の拡大につながらないように、中間とりまとめでは法律その他の措置によりその使途を明らかにすることを提言しておりますが、今回の法案ではこれに対応するための規定の整備が含まれていると理解してございます。
六点目の導入時期について、中間とりまとめは、令和五年度以降の可能な限り速やかな導入に向けて可及的速やかに制度設計を行うべきであるとしてございます。検討会では、介護者なき後の対策、被害者支援の充実が喫緊の課題となっていることなど、現状では決して時間的余裕はないという強い声が聞かれ、円滑な導入のための準備期間が必要であることは踏まえつつも、今申し上げたように、可及的速やかに導入するという結論になってございます。
もちろん、導入に際しては、自動車ユーザーへの丁寧な説明を行い、納得を得るための努力を続けることは大前提ですけれども、制度の速やかな導入により、被害者、御遺族の先行き不安をできるだけ早く払拭していただきたいというのが中間とりまとめの立場でございます。
最後に、七点目として、継続して検討すべき課題についても触れておきます。
中間とりまとめの提言は、今後も一般会計からの繰戻しを着実に行うことを前提として、賦課金を導入することにより被害者支援や事故防止対策を恒久的な仕組みの下で実施できる体制に転換するというものですが、具体的な財源の使途や詳細な賦課金額の水準について更に十分な検討をする必要がございます。また、先ほど触れました実施される被害者救済、事故防止対策に関する効果検証の在り方についても更なる検討が必要となってきます。これらにつきましては、今後、ユーザー団体、被害者遺族団体等の御意見も十分伺いながら、更に議論を深めていきたいと考えております。
また、検討会では、これまで多くの委員より、被害者支援や事故防止に積極的な情報発信と丁寧な説明を行うことで自動車ユーザーの理解を得る努力が必要であるという、そういう意見を数多くいただきました。例えば、被害者支援、事故防止の実施の中核を担う独立行政法人自動車事故対策機構、NASVAと呼ばれていますが、この認知度が低いといったことは大変大きな問題だと認識しております。さらに、情報の積極的な発信は、現実に支援を必要とする方へのアウトリーチという観点からも必要です。したがって、制度改正に際しては、是非とも関係者において広報の充実にも積極的に取り組んでいただきたいと考えております。
以上、自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会における検討内容について御説明させていただきました。
今回の法案は、自動車ユーザーの団体、被害者、遺族団体を始めとした関係者の方々による長年の真剣な議論と調整の結果を反映していただいていると理解しております。この法案が成立し、新たな制度の下、中間とりまとめで示された観点を踏まえた適切な運用が行われることにより、ユーザーの理解の下、今後とも充実した被害者救済、事故防止対策が安定的に継続されることを期待して、私の意見陳述を終わらせていただきます。
本日はありがとうございました。