福田弥夫の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(福田弥夫君) 御紹介いただきました日本大学危機管理学部長の福田弥夫でございます。この度の自賠法改正に関し参考人としての意見を陳述させていただく機会を与えてくださったことにお礼申し上げます。
 参議院における参考人としての陳述は実は二回目でございます。前回は、保険法制定に際し、平成二十年五月二十七日の法務委員会にお招きいただきました。当時は福田康夫氏が首相を務めておりましたので、漢字は違いますが、同じフクダヤスオということでお招きいただいたと申し上げましたが、今日は日本で唯一、財務大臣にお金を返してくださいと言うことができる会の代表としてお招きいただいたかと思います。
 初めに、今回の改正には賛成であるとの意見をまず述べさせていただきます。我々の会としても賛成で意見は一致しております。
 まず、自動車損害賠償保障制度を考える会についてお話しいたします。
 この会は平成二十二年に結成されました。民主党政権の下で事業仕分と埋蔵金の発掘が話題となりまして、交通事故被害者救済事業の原資である交通安全特別会計がその対象となるのではないかとの危惧感から、被害者救済事業を守るために、当時の自賠責保険審議会委員を中心に結成されたものです。自動車総連や日本自動車会議所、そしてJAFなどのユーザー団体や複数の被害者団体の代表、あるいは有識者などから構成されております。
 平成二十九年からは、特別会計へ繰り戻されていない約六千億円の早期繰戻しを求めて、財務大臣、国土交通大臣などへ働きかけてまいりました。平成三十年から継続しての繰戻しが実現し、昨年十二月には大臣間合意で向こう五年間の繰戻しが約束されておりますが、元利合計で現在の残高が六千億円を超えており、将来にわたっての被害者救済事業の継続実施への影響を心配してきたところであります。
 当時は運輸省でございましたが、私は平成十一年から自賠責保険制度の在り方を考える大臣懇談会のメンバーとして自賠責保険に関係しており、平成十七年から十年間、自賠責保険審議会の委員を務め、現在でも国土交通省の自動車損害賠償保障制度の在り方を考える検討会のメンバーであります。足掛け二十三年間、この問題に関係しております。四十だったんですけど、六十三になりまして、頭も真っ白になりました。
 今回の自賠法の改正は、平成十三年改正において積み残しあるいは将来の課題とされた点についての改正です。平成十三年改正前の自賠責保険は、国が六割の再保険を引き受ける形になっておりました。自賠責保険が昭和三十年に創設された当時は、日本の損害保険会社の財政的基盤が十分ではなく、リスクヘッジ及び被害者保護の観点から、政府が再保険によって六割を引き受けるという形で運営されてきました。保険料の六割を国が預かり、保険金の支払に際してもその六割を国が支払うという形です。四割は民間の保険会社です。損害保険というものは、保険料が入ってきても、それがすぐに保険金として出てはいきません。その間のタイムラグによって資金運用による運用益が発生します。もっとも、ノーロス・ノープロフィットの原則の下に運用される自賠責保険は、損害率の検証によって定期的に見直しが行われます。
 平成十三年当時ですが、それ以前の運用利回りが好調であったところから、特別会計へ滞留した運用益が約二兆円ございました。損害保険会社の財政的基盤も強固となり、再保険制度を維持する必要性が減少しましたので、平成十三年の改正で再保険制度を廃止することとなり、この運用益の処理が問題となりました。二兆円を二十分の十一と二十分の九、すなわち一兆一千億と九千億円に切り分け、一兆一千億円はユーザー還元を目的として自賠責保険料への充当を行い、残りの九千億円を運用して被害者救済事業に充てることとなりました。
 当時の試算では、約九千億円を運用すれば被害者救済事業に必要な額は確保できると考えられました。既に一般会計への元本残高が約六千三百億円となっておりましたが、それは短期間で繰り戻されるものと考えられておりました。平成六年と平成七年に繰り入れられたものの、平成八年以降、毎年ではないのですが順調に繰り戻されておりました。ところが、平成十五年の五百八億円を最後に、我々が働きかけを行った平成三十年まで繰戻しは行われませんでした。運用によって賄うはずであった被害者救済のための原資は切り崩されてまいりました。
 今回の改正で導入される予定の賦課金ですが、再保険制度を廃止した平成十三年改正に際しての衆議院及び参議院の附帯決議において、社会経済情勢の推移等を踏まえ、施行後五年以内の賦課金導入の可能性の検討と示されております。あれから二十年を経過し、今回はこの賦課金を選択する必要が生じたための改正であると理解しております。
 自賠責保険は、交通事故の加害者の賠償資力を確保することを目的として昭和三十年に制定された強制保険です。戦後の経済成長に伴い、自動車の数が増加するモータリゼーションが進むと同時に、交通事故件数は増加し、死者数も増加しました。ところが、加害者には十分な賠償能力がなく、泣き寝入りをせざるを得ない被害者が続発して、大きな社会問題となりました。それを解決する手段として強制保険としての自賠責保険が導入され、被害者に対する基本的な保障を提供することになりました。なお、スタートしたときの保険金の上限は死亡で三十万円です。
 その後の日本の経済発展とモータリゼーションの発展は先生方御存じのことだと思います。日本の経済成長を牽引する産業の一つとして、自動車産業は日本が世界をリードする基幹産業へと大きく成長しました。自動車台数の増加とともに不可避的に交通事故は発生します。そのため、ある意味で交通事故の被害者は国の政策の犠牲者とも言うべき存在です。ところで、自賠責保険が誕生した頃は、歩行者が被害者というのが中心でした。しかし、モータリゼーションの発展により車対車の事故が増加し、乗車中に死亡する被害者が増加してきました。言わば走る凶器型の事故から走る棺おけ型の事故への変容です。ここで、自動車ユーザーは加害者にも、そして被害者にもなるという位置に立つことになります。
 積立金を活用して実施されている自動車事故対策事業は、安定した運用益が確保され始めた昭和四十二年からスタートし、昭和四十八年に自動車事故対策センター、現在の自動車事故対策機構が設置されてから本格化します。現在の被害者救済対策事業の柱は、重度後遺障害者への支援事業であり、療護施設の設置、運営、介護料の支給、訪問支援などが実施されています。
 私は、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会の座長を務めましたが、これは当時の赤羽国土交通大臣の被害者救済に寄せる強い思いによって設けられました。これまでは、最重度の後遺障害である遷延性意識障害に遭われた方を中心とした対策でありましたが、社会保障制度の変化や介護者の高齢化等を踏まえたとき、きめの細かい被害者救済対策の在り方について検討を加えたものです。
 報告書の概要は、一、療護施設の充実、二、リハビリ機会の確保、三、介護者となる家族の高齢化の進展等により介護が困難になった後、いわゆる介護者なき後への備え、四、事故後の支援、そして今後留意すべき事項から成ります。その中でも私は、介護者なき後への備えが特に最優先課題ではないかと考えています。
 先ほど、自動車ユーザーは交通事故の被害者にも加害者にもなると申しましたが、このことが、自動車ユーザーが負担する自賠責保険料を被害者救済事業にも利用することが許される理由です。自賠責保険は、単に加害者に対する賠償資力の確保だけではなく、被害者救済事業とセットになった、自動車ユーザーによる言わば自助、共助の仕組みだということです。自賠責保険と被害者救済事業は表裏の関係に立ち、このような自動車保険制度は比較法的に見ても例がなく、世界に誇ることのできる被害者救済のための制度であると言うことができます。
 今回の賦課金の導入により、これまでは附則として、言わば限りのある積立金を原資として当分の間実施するものとされていた被害者救済事業を、本則によって恒久的に実施することとなり、この制度の安定的かつ継続的な維持が可能となります。その意味でも、賦課金の導入は必要であると考えます。
 なお、賦課金導入によって安定的な財源は確保することができますが、五点ほど指摘させていただきます。
 まず、繰戻しの問題です。
 先ほど、藤田先生も小沢さんも御指摘のとおり、一般会計へ繰り入れられていていまだ繰り戻されていない約六千億円は、自動車ユーザーが自助、共助のために支払った自賠責保険料が原資であって、税金ではないということです。この法改正の当然の前提として、繰戻しの継続及び早期の返済があると考えます。
 次に、被害者救済事業の効果検証の必要性です。
 被害者救済のレベルを下げることは決してあってはなりませんが、医療技術などの進歩によって新たな施策が必要となる一方、必要性や効果の乏しいものも出現することが予想されます。その必要性や効果を定期的に検証する仕組みは必要だと考えます。事故件数や死者数は減少していますが、支援を必要とする重度後遺障害者は必ずしも減少しておらず、脊髄損傷、高次脳機能障害、あるいは被害者の遺族など、この制度による支援が必要な方はいまだ増加しているのです。
 三番目は、賦課金導入に際しては、新たな負担を自動車ユーザーに求めるわけですから、中間とりまとめにも記載があるとおり、負担者である自動車ユーザーの納得感が得られるようにすべきであることは言うまでもなく、自動車ユーザーへの丁寧な説明と広報などによる理解を得る活動が必要だと考えます。
 四番目として、繰戻し額とも連動しますが、賦課金のレベルは自動車ユーザーに負担感を余り与えることがないレベルであるべきだと考えます。
 五番目として、今回の法改正は令和五年四月一日からの施行となりますが、実際の賦課金額等については、引き続き国土交通省において開催される検討会において議論されることが予定されており、そこで慎重な議論がされることを望むとともに、三点目にもお話ししたとおり、負担者となる自動車ユーザーの納得感、理解を得ることが、本制度を真に維持していくには必要だと思います。
 最後に、私と一緒にこの会を立ち上げた桑山雄次さんは、交通事故に遭われた遷延性意識障害の息子さんの自宅での介護を二十五年以上続けています。高校教師の職も介護のために辞めました。今最大の心配は、介護者なき後の問題です。なかなか結論が出ない問題ですが、そう言っているうちにも時間は経過します。先ほど申し上げましたように、交通事故の被害者は国の経済的繁栄の犠牲者とも言えます。一刻も早い対応が必要です。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 福田弥夫

speaker_id: 23397

日付: 2022-04-07

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会