生水裕美の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(生水裕美君) 本日はありがとうございます。滋賀県野洲市役所の生水と申します。貴重な機会をいただきまして、本当に感謝申し上げます。
 私からは、野洲市における生活困窮者支援の取組について御報告いたします。紙芝居みたいな感じですので、正面のスライドを御覧いただければと思います。(資料映写)
 まず、野洲市ですが、琵琶湖の湖南に位置します人口五万人の町です。
 私の方が担当しております市民生活相談課の業務体制ですが、生活困窮相談、消費生活相談、市民生活相談のほか、法律相談そして行政相談などの専門相談、こちらを集約しておりまして、市役所の総合相談窓口、こういった機能を担っております。このように相談が集約されておりますことで、情報がつながるメリットというのがあります。
 例えば、離婚相談がしたいという法律相談の申込みがあった場合、よく事情を伺って、借金、DV、虐待、失業、こういったことがありましたら、予約するだけではなくて、それぞれの担当課また専門家を紹介するなど、支援の方につないでおります。
 こちらが生活困窮者支援の状況です。
 令和二年度は、コロナ禍、こちらが始まった年で、例年の二倍の相談件数となりましたが、コロナ関連は約六割です。で、今年、令和三年度は、十二月末時点で二百四十五人と前年よりは減少しましたけれども、今年の一月からまたコロナ禍、感染拡大に伴いまして増加している状況です。
 本日、私がお伝えしたいことです。それは、支援が必要な人にどうすれば支援を届けることができるのか。これは最も難しい課題ではありますが、市役所と地域の総合力、これを生かすということで取り組んでおります。本当に挑戦しているところです。
 今日は、限られた時間ですので、この市役所の総合力によります仕組みについて限ってお伝えしていきたいと思っております。
 市役所には介護、教育、保育、障害、こういった様々なサービスがそろっています。例えば、介護の現場から八〇五〇問題、そして教育の現場からヤングケアラー、そして保育の現場からネグレクト、虐待、こうした生活困窮が発見されることがあります。市役所は福祉の総合デパートです。だからこそ様々な情報をつなぎ合わせることで支援につなげていくことができるので、これを生かさないことはもう絶対もったいないと思っています。
 例えば、離婚して、子供に障害があって不登校、お母さんが認知症、自分もうつ病があって借金、税金滞納があるという相談者の方、子供で世話になっているので障がい者自立支援課に相談しても、ここは障害のことです。じゃ、お母さんのことで世話になっている地域包括支援センターに相談行くと、ここは高齢者のことです。いろんな複合化する問題についてなかなか御自身がたどり着くことは難しいです。
 そこで、相談者を発見する仕組みとしまして、税金回収の担当課である納税推進課が、何か困っていることはありませんかとプラスアルファのおせっかいで声を掛けていきます。そして、実は困っているんですということが分かれば、市民生活相談課に相談者をつないできてもらいます。これが市役所ならではのアウトリーチ機能です。そして、つながってきた相談者に対しまして、市民生活相談課の方からいろいろと関係課に声を掛けていきます。学校教育課、就学援助の制度、そして介護サービス、児童扶養手当は子育て家庭支援課、借金については地域の法律家、このように支援をつなぎ合わせていく、これが相談支援のコンシェルジュ機能です。
 これからは、こうした支援につなぐ仕組みとして、市役所の仕組みをいろいろと御紹介していきます。
 まず、野洲市の生活困窮者支援の原点です。一人を救えない制度は制度ではない。一人を支援し成功すれば普遍化すればいい。だから、一人を支援することが社会のためになる。市役所は公平性が大事だと言われています。だけれども、一人を支援することが結局は社会のためになるんだということを原点にしています。だからこそ、自治体は孤立の問題を支援する意義があると考えています。
 こうした原点をベースにして作ったのが野洲市くらし支えあい条例です。この条例は、消費者行政、そして生活困窮者支援、こういった包括的に盛り込んだ条例で、全国で初めての訪問販売登録制度、また見守り活動など、特徴のある内容となっています。
 そして、この条例の生活困窮者支援編ですが、生活困窮者の定義としまして、地域社会からの孤立、これを明確に位置付けています。そして、私が大好きな条文なんですけれども、第二十三条、「市は、その組織及び機能の全てを挙げて、生活困窮者等の発見に努めるものとする。」、こういったことをやるべきこととして市民に対し宣言しています。この発見の努め方の具体例として、税金等の滞納からSOSをキャッチしています。
 また、この条例には支援の方法も定めていまして、市は、必要な情報の提供、助言その他の支援を行うものとする、また、生活上の諸課題の解決も図る、そして、市長は、公租公課の滞納があったときは、迅速かつ的確に債権管理条例による措置を講じて生活の安心の確保に努めるものとする、こういったことを規定しています。
 これからは、この野洲市債権管理条例について御紹介していきます。
 滞納は困っていることを行政に知らせるSOSです。生活が苦しい方は本当に相談に来る余裕もありません。本当に情報を知り得る余裕がなくて、なかなか広報とかも御覧いただけない。様々な接点や情報をチャンスと捉えてこちらから働きかけなければ、最も困難を抱えた方とはつながることすらできないのが現状です。だからこそ、滞納者を悪質だということだけで捉えるのではなくて、SOSとして捉えることが必要だと考えています。
 この債権管理条例の目的は、健全な財政運営、そして市民生活の安心の確保、これを目的にしています。この特徴として五つありまして、生活困窮者を理由とする徴収停止、そして困窮を理由とする債権放棄、債務者情報の目的外利用、そしてこの二つのフィルターとなっております。
 このフィルター、二つのフィルターについて狙いを説明します。
 これについては、滞納をSOSと捉えまして、自ら相談できない生活困窮者をこちらから発見し支援につなげること。そのために必要なのは、詳細な聞き取りや相談者に寄り添う姿勢です。実は、この言葉を教えてくれたのは納税推進課回収部門の職員です。
 例えば、水道料、市営住宅家賃、給食費、こういった滞納が発生すると、市の方では債権所管課の方がよく聞き取りをしまして、その中で失業とか借金、そうした困窮状態が分かれば市民生活相談課につないで相談支援を行います。しかし、連絡が取れないとか困窮状態が分からないまま納税推進課の方に債権を移管したとしても、二つ目のフィルターとしまして、納税推進課の方が聞き取りをして困窮状態、これが分かった場合には、市民生活相談課に再度つなぎ直して、その後の処理を再検討していきます。一貫通してこの二つのフィルター、生活再建支援を行っております。これがフィルターの役割です。
 そしてもう一つ、生活困窮を理由とする債権放棄についてです。
 全国の多くの自治体にも債権管理条例、これが設置されておりますけれども、この生活困窮を理由とする債権放棄、これが困難であると聞いています。そこで、野洲市では、市民生活相談課が債務者の家計の状況や困窮の理由、これを記載した意見書を債権管理課の方に提出することで条例に基づいた債権放棄につなげておりまして、生活困窮者支援を行う市民生活相談課が関与できる体制としております。
 ちなみに、今年一月に開催されました債権管理審査会では、十三件の債権、上水道料金、市営住宅使用料、給食費、こういったことを放棄しております。
 三つ目の仕組みとして、国民健康保険の資格証明書等発見プロジェクトを御紹介していきます。
 国民健康保険法の方では、滞納が一年以上継続した場合には、医療機関の窓口で十割負担となります資格証明書、こちらを交付することとなっております。ただし、施行令にあります特別事情があると認められる場合には、保険証の交付を受けることができるとされています。
 これにつきまして、国の方からは、窓口の申出において、医療を受ける必要が生じ、かつ医療機関に対する一時払いが困難である場合、緊急的な対応として市町村の判断により短期被保険者証を交付することができるという事務連絡があります。
 しかしながら、ただし、施行令の方では、事業以外の損失などでの事情で生活困窮状況となり保険税を納付できない滞納者については、生活困窮の実態は同等ではありますが、特別な事情に該当しない者とされております。
 しかし、本当に資格証明書の交付を受けている市民の多くは生活困窮者でありまして、生活再建を進めていく上で命を守るサービス、これを届けることは重要となります。
 そこで、野洲市では、野洲市国民健康保険被保険者証の返還等に関する要綱、こちらを改正しまして、資格証明書の交付対象とならない特別事情に、生活困窮者自立支援法に規定する自立相談支援事業の適用を必要とする世帯であると認めたときは特別の事情等を有する者とみなすと野洲市の独自基準を追加しました。これによって、要綱に規定します判定会議におきまして、あらかじめ短期健康保険証や資格証明書の世帯情報を確認しまして、その中に、市民生活相談課が支援しております対象者には資格証明書を送らない取扱いとしております。
 このように、保険年金課から、短期被保険者証及び資格証となっている世帯に対しまして、どうして滞納されていますか、何か困ったことはないですかという理由を尋ねる通知書を送りまして相談者の発見につなげております。こうして相談につながった相談者につきましては、保険年金課、納税推進課、市民生活相談課が連携して生活再建に向けた支援に取り組んでおります。
 こうした仕組みを活用した事例を紹介させていただきます。
 世帯の状況は、夫五十歳代、病気で緊急入院して、二年前会社を退職し無職です。妻五十歳代、病気のため自宅で療養中です。長男さんが三十代、会社員で手取りが約十七万円、こういった三人世帯です。
 相談経緯としましては、納税推進課が夜間訪問、また預金調査を実施しまして差押予告書を送りましたが、なかなか連絡が取れない状況だったんです。ちょうど三か月後で、年末の十二月でした。息子さんの方が納税推進課の方に御相談、来所されたことで生活困窮状態、これを納税推進課の職員が発見しまして市民生活相談課の方につながり、相談として受け付けました。
 そして、納税推進課の職員と自立相談支援員が同席して聞き取りを行いましたところ、夫が病気で緊急入院し社会復帰は難しい、夫に借金があること、そして夫が退職して無職であることを家族は知らなかった、税金滞納額が百万円あり支払えないということが分かりました。
 そこで、家族の方が、もうどういう状況になっているかもう分かりませんということだったので、了解得まして、自立相談支援員が自宅を訪問させていただいて様々な書類を全て確認しましたところ、借金の請求書等が見付かりました。請求書の内容を取りまとめて生活困窮支援であります家計改善支援員の方につなぎました。そして、病院の方にソーシャルワーカーさんがおられるので連絡して、今の状態はどうですかということを聞くと、危篤からもう脱して安定していますよということが分かりましたので、自立相談支援員と家計相談支援員が病院に出向いて面談しております。
 こうして、総合病院、医療機関との連携というのを日夜行っていまして、非常に相談者がつながる大きなきっかけとなっております。
 そこで、債務整理の意思を面談で確認しまして、弁護士相談してもいいですということを了解いただいたので、法テラスを活用しまして、弁護士の先生に病院に出向いて相談を受けていただきました。そして受任となりました。
 債務額は四社で三百五十万、滞納税金は百三万という状況です。ほとんどが国民健康保険税でした。この税だけではなくて、ほかにも、借金の返済額、水道光熱費、医療費、食費、生活費に係るものを家計の収支表を作っていきます。そして、何が課題があるのかなということを見える化していく、こういったことを家計改善で行っております。
 生活困窮支援はプランを作っていきます。
 まず一つ目、社会保険についてですが、夫は二年近く無職だったので、息子さんの社会保険に加入できないかを息子さんの会社に確認いただいたところ、退職時に遡及しまして息子の被扶養者として両親とも社会保険加入となりました。二年間遡ることができますので、こういう措置ができました。これによりまして国民健康保険税分の滞納本税約六十五万円がゼロになり、滞納がなくなりました。今後も国民健康保険ではなく社会保険ですので、滞納することもありません。
 そして、医療費控除の手続なんですが、御夫婦とも医療費がかなり掛かっていたので、医療費控除を検討しました。そして、過去五年分の源泉徴収票の再発行、夫と息子の方の分を市民生活相談課で支援させていただきました。医療費の領収証も会社の健康保険組合から届いていた医療費の明細から医療機関に全部確認して、内容をリストにして、足りないものを医療機関、薬局に長男さんが、まあ有料にはなりますが、再発行を依頼されました。届いた領収証、社会保険料控除などで家族が確定申告を行っていただいたところ、市県民本税が二十八万円から十九万円となりまして、九万円の滞納金額は減額となりました。
 次に、障害年金です。
 退院後の夫の病状を考えるとお仕事は困難なために障害年金を検討しまして、病院に社会保険労務士さんに相談行っていただきました。そして、御尽力によって障害年金二級で年金が確定、そして、この夫の年金と長男さんの収入で生活していくめどが立ちました。御自宅は賃貸ではなくて、住宅ローンもありませんでしたので、この生活費で賄っていけると。
 債務整理につきましては、裁判手続等によりまして過払い金を回収することができました。そして、弁護士報酬と税の滞納金二十五万円を支払って、本人の手元には三百三十万円が渡されました。滞納税金の完納を確認して、御自宅の不動産差押えは解除してもらえました。
 生活再建に向けてですが、約百万の税金滞納がある世帯でありまして、夫の病気や借金で生活困窮に陥っていた世帯だったんですけれども、納税推進課の職員が納付相談で困窮状態を発見し市民生活相談課へつながったことがこういった結果になりました。
 弁護士や社会保険労務士、こういった専門家の協力を得て債務整理が終了し、障害年金受給ができましたことで経済基盤が整いましたから、生活のめどが立ったので終結となりました。
 助けていただいた機関は、納税推進課、税務課、医療機関、弁護士、法テラス、社会保険労務士、息子の会社、本当にいい会社でした、市民生活相談課。こういったことで連携を行っております。
 最後に、ちょっと支援会議を活用した引きこもり支援について御紹介します。
 支援会議というのは、生活困窮者自立支援法で規定されております個人情報の取扱いにおいて守秘義務の規定を作った、整備されたものです。構成員機関で本人の同意なしに情報共有が可能となっております。
 支援機関の構成員、野洲市は、総合支援推進委員会、約三十五個の課が入っております。この野洲市市民生活総合支援推進会議につきましては、本当に消費者被害、自殺、生活困窮、人権侵害等の問題については市役所が連携して対応しますよということを定めておりまして、そして、その事務局に、市民生活相談課が担っております。いわゆる庁内連携を目的に作った要綱となっております。
 引きこもりにつきましては、令和二年度、野洲市は六十七人の方を対応しておりまして、今年度は七十一人になっております。
 フロー図ですが、まずは一次窓口として市民生活相談課が引きこもり支援の相談を受けております。関係課と連携しておりますが、特にこの子供、若年層につきましては学校のいわゆる教育委員会と連携しておりまして、不登校生徒支援移行会議というのを行っております。
 これは何かといいますと、中学三年生の不登校の生徒さんが、卒業後は進路未定のままどこもつながる機関がないというところで、本当に消息不明になったり関わる機関をなくしてしまいます。そこでバトンタッチがうまくいかないことで支援が途切れる、誰がどこにいるのか分からなくなる、アフターフォローができなくなる。そこで、中学校を卒業する不登校生徒を支援先につなげるために不登校生徒移行支援会議というのを設置しまして、ここに、先ほど御紹介した支援会議の活用、個人情報の枠組みを定めております。そして、連携と情報共有をさせていただきまして、きちっとバトンがつながれるように行っています。
 この構成員としましては、市内全ての中学校の担当者、発達支援センター、そして地域の精神科の病院、家庭児童、そういう様々な機関が入っております。年二回こうした個人情報を共有して、どこがバトンをつないでいくかということで、長期の引きこもりを防ぐように実態を把握してつながりやすくさせていただいております。
 この支援会議の課題がございます。支援会議には情報を求めることができると法令に規定がありますが、ただし、個人情報の守秘義務規定が厳しいとされております地方税法二十二条、これによって、現状では支援会議において税担当との連携が困難な状況となっております。空家等対策の推進に関する特別措置法、こちらにおきましては、住民の生命や財産を守ることを目的として、固定資産税情報の具体的な内容について限定しまして地方税法二十二条の守秘義務に抵触しないとして内部利用を可能としております。
 このように、生活困窮者支援を目的とする場合においても、同様に税情報の提供が許容されると解されるように支援会議における情報共有の運用を見直すことが必要ではないかと考えております。
 以上、私からは終わります。
 最後に一言だけ。
 私は公務員です。何のために存在する自治体かということで、市民の暮らしと命を守るためにあるんだということを公務員になって教えていただきました。この言葉を胸に、本当に忘れず取り組んでいかなければならないなと思いながらこのコロナ禍乗り切っています。
 済みません、以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 生水裕美

speaker_id: 31473

日付: 2022-02-09

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会