朝比奈ミカの発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(朝比奈ミカ君) 千葉から参りました朝比奈と申します。今日はこのような機会をいただき、大変感謝しております。どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
まず最初に、お手元にカラー刷りのパンフレットを配付していただきました。こちらは、千葉県が平成十六年十月から県の独自事業として実施しております中核地域生活支援センターの活動をまとめたものです。
私自身は、この中核地域生活支援センターで平成十六年十月から相談支援の仕事に当たってまいりました。この中核地域生活支援センターの最大の特徴は、どんな方のどんな御相談でもお受けする、二十四時間三百六十五日の相談支援センターということです。その後の生活困窮者自立支援法における自立相談支援事業の一つのモデルとしても紹介をされた経緯があります。こちらの実績を基に、平成二十七年四月から生活困窮者自立支援法における自立相談支援事業を始めとした各種事業の管理者としても働いております。今日は、その二つの現場での実践の経験を基に発言をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、私が生活困窮者自立支援法の仕事をしております千葉県市川市の状況を簡単に触れさせていただきます。
人口は四十九万人、これ今でも若干増え続けております。世帯数は二十五万世帯ということですので、おおむね平均でいえば二人世帯が中心になっております。湾岸地域は、多くの倉庫、工場が固まっておりまして、外国ルーツの住民の方も大変多く居住をしていらっしゃいますが、北部はまだ梨畑などが広がるのどかな地域というふうになっております。
市川市生活サポートセンターそらは、社会福祉法人一路会という組織が事業の委託を受け、認定NPO法人、ホームレス支援の団体、それから企業組合We needという就労支援の団体と一緒に事業の運営に当たっております。
具体的には、事業の請負は一路会、社会福祉法人がしておりますけれども、職員の出向を受け入れるという形で多様なニーズに応えるための相談体制をつくっております。大体、窓口配置の職員は十三名ということで、コロナを通じて大変相談が殺到しましたので、その間に補正予算が組まれて体制の強化が図られたという経過もございます。
先ほど原田参考人のお話にありました自立相談支援事業以外は任意事業になっておりますけれども、就労準備、家計改善、一時生活、学習支援以外の事業は私どもの法人が一括して事業の運営を担っております。
こちらは直近三年間の数字を御紹介をさせていただきました。これについては、コロナで急増していて、毎年、ただ新規相談者自体も増えているという状況だけ触れておきます。
こちらは相談者の年代です。一昨年のデータを基にしておりますけれども、全国平均で申し上げますと、四十代、五十代というところが専ら生活困窮者自立支援法のそのターゲットになっておりますけれども、高齢化率の問題もありますが、私ども市川市のセンターは二十代の割合も四十代、五十代と並んで多くなっているという状況がございます。
こちらは厚生労働省が作成した資料です。現在、生活困窮者自立支援法の次期改正に向けた論点整理の検討会が進んでおりますけれども、そこの中で提示された資料です。
実は、ここの資料の中で、この水色の雲になって出てきている枠組みですね、フリーランスですとか個人事業主、外国籍、孤立、孤独といったところは新しい課題としてここに書き込まれたもので、法施行当初、生活困窮者は一体誰なのかという、運営の実施主体であります市町村の担当者の質問に答える形で、例えば福祉事務所に生活保護の相談に来たんだけれども申請に至らなかった人たちですとか、ホームレスの人たちですとか、引きこもり状態にある人といった形で、厚生労働省が対象者像を例示した資料になっております。
私、この資料で大変重要なのが、一番下にあります矢印のところですね。左に行けば行くほど既に顕在化している相談者層ですね。右に行けば行くほど見えにくい。例えば、引きこもりの方へのアプローチは社会的な課題になっておりますけれども、私たちの町のどの家にどういう方が引きこもりの状態でいらっしゃるかというところは地域からは見えにくいということになります。ですから、人数の問題ではなく、そうした見えにくいニーズ、まだ明らかになっていない課題にもアプローチをするようにということがこの厚生労働省の資料から誰何されるところです。
こうしたその例示ですね、一つここで強調をしておきたいのは、例えば税の滞納者であったり、多重債務者であったり、長期失業者の向こう側に、そこの家庭で生活をしている子供たちがいたり、それから介護を受けている高齢者の人たちがいる。ですから、生活困窮者自立支援法の中心的なターゲットは現役世代だというふうに理解をしておりますけれども、その向こう側にいる家族のことも含めて困窮者支援法についてはアプローチをしていく必要がありますし、場合によっては活用していく可能性のある法律だというふうに私自身理解しております。
私ども、市川市のそらの現場では、こうした対象者像に加えて、DV被害者で、法律に基づく安全、避難ですね、避難の対象にならない人。例えば、子供とばらばらの場所でシェルターに入らなければならないのであればそこには行かないとか、携帯電話を手放さなければならないのであればそこには行かないということで、自主避難を希望した方々については、市川市も配暴センター設置しておりますけれども、そちらの相談の後、そらの窓口を案内されて、私どもで具体的に転居資金の準備であったり、転居の実行であったり、その後の例えば住基のブロックであるような支援措置の数々ですね、それから生計の基盤づくり、弁護士さんとの連携などなど、そんなことのサポートをさせていただいております。
それからもう一つが、家族を頼れない若者たちです。二十代の人たちの相談がほかの地域に比べて多くなっているというふうに申し上げましたけれども、二十代通じて、やはり家族の問題を背負っている若者たちが非常に多いなということを感じております。もちろん、過去に虐待を受け、親子の縁を切った状態で孤立した状態で生活をしているですとか、例えば、先ほど原田参考人のお話にありましたけれども、いわゆるヤングケアラーですね、家族を支えるためにその分収入を得なければならなかったり、いろいろな手続だったり、家族のキーパーソンとしての役割をせざるを得ないような子供たち、若者たちといった方々と多く出会ってきました。
住まいの問題、仕事の問題、場合によっては虐待を受けてきたことによって精神的な症状を発症して長く治療が必要になっている場合もございます。場合によっては多くの借金を背負ってしまっている場合もある。それから、学び直しであったり、最近ちょっと気になっておりますのが、支配的な親から、親の元から逃れたい、まあいわゆる毒親というふうに表現をされていますけれども、そんな御相談も大変多くなっています。
一つ、この後少し具体的な問題提起をさせていただきますけれども、困窮者支援法に関わっておりまして、若年層への支援について課題を持っているのではないかというふうに感じております。
生活困窮者自立支援法は、それまで全国各地で取り組まれてきた様々なアプローチ、ノウハウを持ち寄って包括的に支援をしていくために作られた画期的な法律だというふうに思っておりますけれども、全国の現場、私、全国研修などもお手伝いをさせていただいておりますが、全国の現場で若年層に対する対応を意識した体制、メニューなどが整えられているのかどうかということに若干の懸念を持っております。
若い人たちについては、住まいや仕事、それから場合によっては温かい食事など、今すぐの支援があって初めて社会的な支援につながるという傾向が顕著だというふうに考えています。ある意味、子供時代に親を頼れなかった、場合によってはその虐待的な状況にある中で親以外の大人たちから助けの手が伸びてこなかった、例えば児童相談所の関与が全くなかったような子供たち、元子供たちもいます。そういう意味では、社会への信頼、大人への信頼ができていないところで相談しなさいといっても、なかなか相談にはつながらない。場合によってはSNSで今日泊めてくれる人を探してそこに駆け込んでしまったりですとか、場合によっては住まいと仕事を一緒に提供してくれるような風俗だったり、場合によってはそれが犯罪組織だったりすることもございます。私たち福祉が風俗や犯罪組織、危ない知人に対抗できていないのではないかということを危惧しております。
それからもう一つが、身寄りのない若者たちですね。もちろん、民法の改正で保証人の取扱いなども大分一時期に比べて変わってきておりますけれども、それでもまだ社会的な慣習として保証人といったことを求めるという嫌いはあるかというふうに思います。住まい、セーフティーネットの法律で居住支援法人など新しい社会資源、担い手も登場しておりますけれども、それについてもまだ一般化されているとは言い難い状況の中で、身寄りのない、親族を頼れない若者たちには親族に代わる何らかの公的な後ろ盾の仕組みが必要なのではないかというふうに考えております。これについてはまた後ほど詳しく申し上げたいと思います。
それから、先ほどの原田参考人のお話で伴走型支援について触れられていますけれども、この人たちが成長の過程で、若者たちが、親族を頼れない若者たちが成長の過程でしっかりとした基盤が得られなかったんだとしたら、まだその成長発達というのは過程にある、その分モラトリアムが長くならざるを得ないのではないかと。そうすると、支援の枠組みを出たり入ったりしながら、社会全体でその人の成長を見守っていく、支えていくという考え方や姿勢が必要なのではないかというふうに思います。やっと出会えて支援に結び付いたとしても、ほんのちょっとした言葉の行き違いから不信感が先に立って連絡を絶ってしまうといった事例は多くございます。
そのためには、この支援体制のバリエーションをどんなふうにつくっていくのか。例えば、その若年女性を受け入れるようなシェルターはもしかしたら女性専用のシェルターである必要があるかもしれないですとか、それから、その方が過去に受けてきた暴力などを念頭に置くとやっぱり性別などについても配慮が当然に必要になるだろうというふうに思っております。それから、まあ私も昭和四十年生まれですけれども、私のような母親、父親世代では大変彼らにとっては距離が遠くて、もしかしたら同年代の当事者の立場に近い支援の人材ですとか、それからSNSを含めたツールの活用、ネットワークづくりなどなど、これまで不十分であったところをもう一度精査をしてみる必要があるのではないかというふうに思います。
それからもう一点、先ほどの社会福祉法等の改正も含めて、基本的には身近な市町村を中心とした仕組みづくりが取り組まれてきたところですけれども、例えば千葉県でも工業高校だったり定時制高校は全県一区ですから、私たち、高校にも、生活が厳しい状況に置かれている生徒さんについては相談につないでくださいといって働きかけをしておりますが、市川市の生徒さんだけつながってくるというわけにはいきませんので、千葉県の遠方の自治体から通ってくる、通学をしてくる生徒についても当然にそのターゲットにはなってくる。そうなったときに、それはつながれた側の問題として、しっかりネットワークを持ってバトンを渡していく必要がありますし、身近な市町村だけでは完結しない課題というのが当然にあって、そこを視野に入れていく必要があるのではないかと思っております。
三つ、三点、問題提起をさせていただきたいというふうに思います。
先ほど申し上げた一点が、公的な保証の仕組みづくりです。
一つは、社会的孤立ということが大きな政策のテーマになってきております。関わりの中で生活をしていただくということで、今も、それからこれからも地域の中での、例えばサロンのような活動ですね、居場所づくりは盛んに取り組まれていくというふうに思っておりますけれども、その居場所につなぐということだけでは限界があるということを感じています。もちろん、御本人がそこに行きたいと言わなければそうはならないということもございます。
それから、生活が変わっていく、例えば移動に制限を受けるとか不自由が起きてしまうとか、場合によっては人間関係や暴力によってその地域を離れなければならなくなるといったことも起きてくるかもしれません。
それから、多様なニーズに応えるための居場所の受皿づくりというのはまだまだ不十分です。それから、多くの場合、居場所は日中の時間帯に開設をされていますので、働いていて時間に余裕がなかったり精神的に余裕がなかったりするとなかなかそこにはつながらない。そうすると、例えば生活困窮者自立支援法は孤立の解消ということも一つのゴールにしていますけれども、孤立は解消せず、困窮者支援の事業を始めとした各種相談事業における継続支援が増加をしていくということになります。何らかの出口づくりをもう少し検討していく必要があると思います。
それから、保証人や緊急連絡先。保証までは求めないとしても、例えば居住支援法人さんにしても、緊急連絡先として親族を求めるケースというのが大変多くございます。保証人や緊急連絡先がなければ住所が置けなかったり、場合によっては就職も阻害されてしまうということがあります。社会から排除されていく人を包摂をしていくということが重層的体制整備支援事業でも課題になっていますけれども、こうした居場所以外のつながり方についてもう少し検討していく必要があるだろうというふうに思っています。
それから、社会的に身寄りのない人ということもたくさん見えてきていて課題になっていますけれども、その身寄りのない方々というのは、場合によっては、契約上、情報をどれだけ持っているかという点では非常に不利な状況に置かれている。その中で、選択肢がないまま居住支援法人さんに預けるということで、非常にそこで何らかのリスクが発生する可能性もあるのではないか。そういう意味では、居住支援には公共性の基盤が必要で、現行の住宅セーフティーネット制度だけでそれが対応できるかどうかということを心配をしております。
その人に何かあったときに誰が動くのかということを明確にして、これまでどんな経過があったのか情報をストックしておく、で、その方に何かがあったときにそのSOSがキャッチされて、しかるべきところにつながっていく、そうした公的な保証の仕組みづくり、これ長野県社協さんなどが先駆的に取り組んでおられますけれども、そんなことを地域で是非取り組んでいきたいと思っているところです。
問題提起の二つ目です。多様な相談者像に対応するための体制の在り方です。
困窮者の各種事業は、実施自治体と委託契約を結ばなければ参入できない、例えば介護保険や障害福祉のように、基準を満たして指定を受けて参入をするという、そうした形態を取っていません。そういう意味では、どんな人たちが担い手として動くのかということで、アプローチの仕方も、それからターゲットも変わってくるということになってしまいます。多様な相談者像というところを想定するのであれば、自治体がそのビジョンを明確にしながら、どんなふうにその体制づくりをしていくかということについて戦略が必要だろうというふうに思っております。
例えば、私が仕事をしている市川市は学習支援事業の、競争入札でやったんですけれども、実績があることというふうにその条件に加えたんですね。これまで公的な学習支援事業をやっていませんでしたから、じゃ、その実績はどこにあるかといったら、市川市以外の地域で学習支援をやっていた法人さんしか手が挙げられない。そういう意味では、それまで無償で取り組んでこられたNPO団体、市民活動団体は、そこには参入できないということになります。それで、じゃ、社会資源が育っていくのかということは、大変重要なテーマではないかなというふうに思っております。
多様なニーズに応えるためには、委託という形態だけではなくて、例えば出来高払を組み合わせた柔軟な体制づくりなどができないかどうか。実績ができれば参入の足掛かりにもなりますし、その地域の様々な組織の得意が持ち寄れる仕組みを望みたいというふうに思っております。
それから、先ほど申し上げました広域の体制づくりをどうしていくかということです。
都道府県に中核地域生活支援センターのような個別支援の機能を持たせることが必要ではないか。身近な地域だからこそ相談できないテーマがあるかもしれない。例えば家庭の中の暴力であったり、例えば性暴力の被害であったり、身近な関係だからこそ相談できないというテーマがあったときに、例えば厚生労働省の補助事業であるよりそいホットラインであったり、それから四年前ぐらいから取り組まれている自殺対策のLINE等を含めたSNS相談事業ですね、こうしたところからつながってくるということももちろんあって、そうしたところと連動した広域の体制づくり、こうした観点を含んで初めて重層的というところが本当の意味でのその実現になるのではないかと思います。
最後の問題提起になります。相談支援の事業における人材の確保と育成です。
子供から高齢者まで、困窮者事業も含めまして公的な部門における相談支援の民間委託はどんどん進められてきております。この潮流は今後も変わるところはないだろうと思っております。そのときに、委託契約の在り方、それから地域全体で相談支援に携わる人材の確保、育成をどのように考えていくかという点です。
中核地域生活支援センターも、それから市川市の困窮者事業も、一年の単年度の契約になっております。仮にこれが二年、三年という数年の契約であったとしても、例えば昇給財源が持ち越しができなかったり、ある意味では、その委託契約の中で相談支援に携わる待遇やキャリアをどう保障していくかということに大変腐心をしております。
それから、もちろん、相談支援は社会福祉士や精神保健福祉士を中心とした専門職で構成されることが多いんですけれども、社会福祉にはこれまで培ってきたケアの経験があります。こうした人材とクロスさせていくということもとても重要でありますし、先ほど申し上げましたように、次世代を育てていく上でも、それから若年世代のニーズに対応していくためにも、若い人たちをどういうふうに呼び込んでいくかということが大事になってきます。
それから、改めまして、私どもは一貫して複数法人による連携協力体制をつくってきましたけれども、隙間をつくらない、断らない相談支援体制づくりには人材が分野や組織を超えて動いていくというような、そうした働き方が大変有効だというふうに思っております。その点についても、是非今後、俎上に上げていただければと思います。
どうもありがとうございました。