蓮見雄の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(蓮見雄君) 立教大学の蓮見でございます。
 私は、脱ロシア依存を決断したEUの政策からどのような示唆が得られるのかという観点からお話をしたいと思います。(資料映写)
 と同時に、まず、今般のエネルギー危機の問題というのは、オイルショックの頃と違っていて、多極化の時代において起こっているということを確認したいと思います。その上で、脱ロシアを選択したEUの政策の可能性と問題点をお話しすると。実はそれが結果的にはEUの経済的安全保障問題というのにつながってきていて、特に恐らく重要になってくるのが対中国関係ということになろうと思います。最後に、日本の選択はいかにというお話をしたいと思います。
 この図なんですけれども、IMFが出しているGDPの世界シェアということで、まず折れ線グラフの部分ですけれども、G7全体としてもそうですし、EU、アメリカ、日本、ドイツ、軒並み基本的にはシェアを落としていると。この棒グラフのブルーの部分は、欧米、それから制裁に参加をしている国々のGDPを足し合わせたものです。それに対して、中国と香港、インド、それからASEANを加えたものが緑色の棒グラフです。黄色い部分が日本ということで、そうしますと、実は世界中全てが今ロシアを制裁しているわけではないということが分かってきます。
 これはあくまでもイメージ図ですけれども、もう以前から始まっていた問題なんですが、やはりG7を中心とする世界に対して、G20の時代になって、特にインドや中国そしてロシアというものがある種対応、対抗してくるということは今までも起こってきたということです。
 次は飛ばしますが、非常に面白いのは、ファイナンシャル・タイムズに面白い記事がありまして、世界の大半は一歩引いた立場を取って成り行きを見守っていると、あるいはロシアを非難したサウジアラビアも実際には人民元の原油決済をもう検討し始めているということで、かなり世界は冷静に見ているということをやっぱり確認しておくべきだということであります。
 もう一つ、ではEUはどうなのかというと、一言で言うと、実はロシアのおかげでと言ってはいけませんが、EUのエネルギー政策は大変強化されております。
 この図ですけれども、現在EUが取り組んでいるのが欧州グリーンディールというものでございますけれども、これ成長戦略であります。残念ながらEUは、過去二回のリスボン戦略、欧州二〇二〇戦略においては余り成果を上げていないんですけれども、今回、その反省を踏まえて、グリーン成長を中心に置いた戦略を打ち出しております。
 注目すべきは黄色くなっている部分ですけれども、ウクライナ、ロシアのガス紛争を契機に、実はEUのエネルギー政策というのは格段に強化されます。それ以前は各国がばらばらにやっていたんですけれども、その二〇〇九年のリスボン条約、基本条約の中に、百九十四条でEUレベルでできるエネルギー政策というのが組み込まれているんですね。これが全てのEUの基礎ですし、今回、脱ロシアを決断するということも打ち出せる一つの秘密であります。ただし、そのベルサイユ宣言あるいはリパワーEUというのは、ロシア依存脱却がスムーズにいくかどうかというのはちょっと分からないところです。いずれにしても、黄色く書いた部分、印をした部分ですけれども、この百九十四条の部分でEUとして強力なエネルギー政策を行えるという法的な根拠があるということであります。
 もう一つは、再生可能エネルギーは高いというのは十年前の話でありまして、この十年間でコストが十分の一になっていると、その限りにおいては、EUのグリーンディールというのは成功する可能性は多少はあるということであります。
 これが全体の図なんですけれども、基本的には、産業界全体を総動員してグリーンビジネスに展開をするというような壮大な構造になっております。問題は、その具体策として出ているのが欧州新産業戦略です。これ非常に面白いことを言っておりまして、グリーンとデジタルへの移行は競争の本質に影響する地政学的プレートが動く中で生じると言っていまして、これはもう欧州の主権に関わるんだと言っていて、あたかも今日の事態を想定していたような策を出しております。
 そのこと自体はすばらしいんですが、そのために、実はヨーロッパの市場統合をベースに、機動的な官民パートナーシップによって、例えばバッテリー同盟であるとかあるいはクリーン水素同盟などというのを始めていますし、産業の移行支援というのも始めているんです。対外的にはオープン・ストラテジック・オートノミーという、開かれた戦略的自律性を追求するルールメーキングを目指す戦略を打ち出しています。
 これ自体は大変すばらしいと私は思っていますが、問題なのは、じゃ、具体的に各産業が本当にスムーズに脱炭素できるんですかと、そこの部分は実は非常に曖昧です。それが実はガス価格高騰につながっております。
 で、ポイントだけお話ししますと、なぜ秋の段階でガス価格が高騰したのかというと、やはりグリーンへの期待とともに不安が広がったと。実際に産業が欧州委員会が打ち出しているような政策に従ってグリーン化ができるんですかと、それから、化石燃料が本当になくなるんですかということになって、かえって市場の不安を高めてしまったということです。それがガス価格の高騰につながっていくわけです。さらに、今回のウクライナ戦争によって更にガスが上がると、石油が上がるということになって、様々な議論が出ています。
 じゃ、グリーンディールを進めればいいじゃないかという議論があるんですけれども、ところが、実はデジタル化とグリーン化というのは新しい資源への依存というのを生み出すんですね。これまさに経済安全保障問題で、もうちょっと後でお話をしますけれども、実はそれをたくさん持っているのが中国だということであります。
 その後の資料はちょっと参考にということで御覧いただきたいですが、あと、この十八ページ目の資料は、備蓄がやはりすごく減ったので、当然ガス価格は上がりますというお話です。
 それから、その移行経路がなぜ重要なのかということを申しますと、十九枚目のスライドにありますように、一応その脱炭素を目指すということで、温室効果ガスを減らす過去の経緯と展望が描かれているわけです。一番大きいのが、輸送と工業部門と発電です。実績として、輸送部門と工業部門のそのCO2の削減は進んでいません。これを本当にできるんですかという問題と、発電の部分では確かに順調に風力発電、太陽光発電によって減ってきたんですが、もっとたくさん再生可能エネルギーを使うようになると、エネルギーシステム全体を統合すると、デジタル化するということが必要になってきていて、これからが実は大変なんですね。そういう意味では、そんなに簡単ではないと。
 で、一応この画面の一番右側の棒グラフが、二〇五〇年の段階でのEUが想定しているエネルギーミックスです。これを見ていただくと、風力、それから太陽光、さらにバイオ燃料をもう劇的に増やすと。その代わりに石油とかガス、特にガスはほとんど要らなくなると。これがもしできるんだったら、そもそも脱ロシアという問題を考えなくても自然にそうなるということになっているわけですけれども、実際には、秋に起こったような問題、風力発電が足りないとガス火力が必要であったというような問題があるということです。その結果として、やはりガスと原子力は当面使わないといけないよねという結論に至ったというところでございます。
 さてそれで、ロシア、今回脱ロシア依存ということを打ち出したわけですけれども、これもう一言で言いますと、天然ガスをロシア依存をやめるのはいいんですけど、アメリカのLNGに依存するということです。しかも、アメリカは、それを実は確約していません。そこが大きな問題ですし、じゃ、かといってグリーン化を進めるとどうなるかというと、中国依存です。それを避けるためには実は自律的な産業をつくらないといけないという問題に直面をしております。
 こちら、ベルサイユ宣言ということで、特にやはり重要なのがより強力な経済基盤の確立だと私は考えているということでございます。
 こちら、この辺りはちょっと参考ということで、二十四ページ、二十五ページ、エネルギーミックスが物すごく違う、ロシア依存度が違うというものの参考資料でございます。
 頼りのアメリカのLNGですが、これは実はトランプ大統領の時代から始まっていって、アメリカが売り込んで、ヨーロッパは多角化をしたいのでそれに応じたということです。
 さらに、今年三月二十五日に、欧州エネルギー安全保障に関するEU米国共同声明というのが出ています。それを読んで私は驚いたんですが、二〇二二年に十五bcmを供給する努力をしますとしか書いていないんですよ。それは過去の実績より少ないんです。
 それから、アメリカがヨーロッパに提供してきたガスというのはお値段次第なんです。ヨーロッパのガスが高ければヨーロッパに売ると、で、アジアのガスが高ければアジアに売るという形で、この実績を見ていただくと分かると思いますが、そういう意味では、ヨーロッパはアメリカのLNGを必ずしも当てにはできないという厳しい状況に置かれるということです。
 では、グリーン化を進めればいいじゃないかということになるかもしれません。ところが、問題なのは、この図にありますように、バッテリーであれ、あるいは風力発電であれ、太陽光パネルであれ、ほとんどのものはいわゆるクリティカルローマテリアルズと言われる希少資源、レアメタルというようなものに依存しているんですね。これは既にもう相当に価格が高騰しております。それが、その問題が起こってくると。
 それ誰が持っているかというと、この二十八枚目の図が非常に明らかでありまして、ここではEUが指定しているクリティカルローマテリアルズですが、中国が六六%、さらにEU自身も四四%をそれに依存しているという状態があります。なので、グリーン化はすなわち中国依存という可能性があるということです。
 二〇二〇年の新産業戦略を二〇二一年にアップデートしているんですけれども、五千二百品目を調べました。そうすると、百三十七品目については、非常に重要な部分を海外の輸入に依存しているということが分かりました。これも御覧のとおり、中国五二%、ベトナム一一%というような数字になっています。これはまずいということになりまして、原料、バッテリー、医薬品原液、水素、半導体、クラウド関連のエッジ技術、これについては産官学の連携でとにかく対応しなきゃいけないというところに今あるわけであります。
 さて、もう一つの問題は、畔蒜先生もおっしゃったように、やはり中国です。簡単に言うと、ロシアはヨーロッパ離れをしてきたんですけれども、それは、一言で言うと、ドイツ依存から中国依存に変えたということです。これは、近年の中国への依存とかインドへの依存というのの変化、若干増えているというお話の確認ですが、それから、中国は、特に二〇一〇年以降、やっぱり急速にロシア、中国の貿易関係は増えていると。この背景には、そこに若干書いてありますけれども、やはり石油であるとか天然ガスのパイプラインをアジア向けに敷設してきたという事実があります。これ、二〇〇一年と二〇二〇年のロシアの資源、これは石油、天然ガスだけではないですけれども、いろんな資源を見ますと、やはりアジア向けが増えているということです。
 驚くべきことは、産業用機械、設備、これが二十年の間にドイツではなくて中国に依存すると、それから、電気機器、設備においてももう圧倒的にドイツから中国へと、さらに、半導体についてもドイツから中国へということで、この二十年の間にドイツと中国の価値がロシアにとっても完全に逆転したということです。
 こちらが問題になっているシベリアの力とシベリアの力2という天然ガスのパイプラインなどのお話ですけれども、画面上の緑色のライン、これが石油のパイプラインですが、これを造ることによって、ロシアはヨーロッパ向けの資源輸出からアジア向けという体制を整えつつあるということです。紫色のシベリアの力2というのは、すぐにはできないです、五年ぐらいは掛かりますが、しかし、もしこれができたら、今までヨーロッパ向けに送られていた西シベリアのガスが中国に向かうということになります。もちろん交渉力は明らかに中国の方が高いですから、相当にロシアは買いたたかれるとは思いますが、ロシアとしてはやらざるを得ないというふうになっていると思います。
 もう一つ、これは金融制裁とも関わりますけれども、ロシアは近年、脱ドルを模索してきました。中央銀行の外貨準備で見ても、ドルを思いっ切り減らして、金と人民元に替えていると。現実には、ユーロ、ドルは凍結されて使えないので手元には金と人民元しかないわけですが、これ、でも、BRICS諸国に対する貿易についてもやはりルーブルであるとかユーロであるという対応を取ってきたということです。
 中国との貿易でいいますと、やはり圧倒的に実はユーロが多くなっていたわけですが、既にルーブル建てや人民元建ての決済も行われているという事実があります。
 この問題は、実は金融制裁、SWIFT排除という問題とも関わるわけです。皆さん御案内のとおり、SWIFTは圧倒的に強い力がありますから、とてもロシア、中国、対抗はできませんけれども、しかしながら、ロシアとしてもSPESという独自のシステム、それからCIPSという中国のシステムなどがあります。それから、暗号資産についてはG7がそれを塞ぐということをやっているので、相当にロシアが苦しいのは確かです。ただし、ルーブル決済、人民元決済、それからルピー決済、場合によってはドンであるとか、そういう国民通貨建ての決済を行うということは不可能ではないので、そういうことをロシアは何とか考えていると。
 それとの関係で恐らくガスをルーブルで払えというような話が出てくるんですが、これ、スキームとしてはここに説明しているので御参考までということです。
 で、大事なのはこちらですけれども、まず、四十四枚目、ロシアの経済制裁に関してですが、ロシアに対して主なもので特に重要なのがアメリカのSDNですけれども、これ二次制裁も含まれますので、これ中国への警告になっているということと、それから、輸出規制に関しても直接製品規制の拡大適用というのをやっていまして、これファーウェイなんかが対象にしたものなので、中国への警告になっているので、大変効果があるのは間違いがないです。
 さてそれで、この四十五枚目と四十六枚目が非常に重要なんですが、まずエネルギーミックスが国によって全然違う、それから自給率も全然違うということですけれども、一番上に書きましたアメリカ、イギリス、まあカナダもそうですけれども、こちらは自給率が非常に高いので、ロシアに経済制裁をしても困らないと。むしろ価格が上がれば利益が出るという状態です。
 ドイツは、一応脱原発方針ですけれども、再エネが発達をしています。EUとしての脱炭素化を主導するということによって脱ロシア依存を図るということになろうかと思います。フランスは原発大国です。重要なのは、その原発大国と再生可能エネルギー大国のドイツがエネルギー統合しているということなので、非常に補完関係が高いので、ヨーロッパは脱ロシアというのを考えることができるということです。
 ただし、黄色くなっているところに書いてございますように、秋のやっぱり価格高騰の問題というのは、実際に各産業界が脱炭素のビジネスモデルに転換していけるでしょうかと、その展望がなかったんじゃないでしょうかと。で、その結果として、天然ガスや原子力をやはり使うということも考えなきゃいけないということになったということです。
 日本はどうなのかというと、まずエネルギーインフラ、ハード、ソフト面において、これ再エネを使う条件が大変遅れています。それから、圧倒的に中東地域に依存している状態です。そうしますと、化石燃料の確保というのは本当にヨーロッパの国以上に非常に重要になると。原発についても、有事の際のリスクの問題とか、なかなか新設をするというのは難しい状況があるわけで、そうすると、化石燃料を確保するというのは日本にとっては死活問題だと私は思います。
 さて、もう一つ、では、それでも欧米の企業が撤退しているんだから、日本も撤退するべきだという議論があります。色分けしていますが、外国の企業が参加しているプロジェクトですけれども、BP、シェルなどが売却ないし撤退方針ですけれども、じゃ、売却したら誰が買うんですかという問題があります。それから、独、仏は新規投資を停止していますけれども、実は様子見の部分もあって、特にフランスのトタールの動きは着目すべきです。インド、中国系は、企業としては方針を出していませんが、国としては協力する方針です。
 じゃ、日本はどうなんですかということで、やはり、撤退した後に上流権益は誰の手に入るのかということがやはりポイントではないかというふうに思います。
 さてそれで、あと、こちらは日本がどれぐらいロシアに依存をしているかという参考資料でございますので、御覧いただいて。
 五十一枚目ですけれども、これが日本企業が参加しているプロジェクトで、確かに、例えばサハリン1からエクソンが撤退をしていると。じゃ、SODECOさんはどうするんだというのがあるわけですけれども、ただ、これインドが参加をしていますので、出ていけば当然インドがシェアを増やすだろうということになります。
 ヤマルLNGというのは、実はもう中国が助けたプロジェクトでもあります。そういうことで、日本が撤退をするということは、すなわち中国を助けるというようなことになってしまって、間接的にロシアを助けるということになるんじゃないかということです。
 最後、済みません、時間が超過していますが、まず、日本はロシアと関係を絶つという選択肢があるかないかといえば、なくはないと思います。ただ、今申し上げたように、その権益を中国やインドが手にするということは、すなわち間接的にロシアを支援することになると。そうすると、制裁効果を減じる可能性というのはあるんじゃないでしょうかと。
 それから、やはりロシアは隣国なんですね。イギリスとかアメリカの場合と状況が違っていて、例えばフィンランドなどは、制裁にはもちろん参加しているんですけれども、制裁対象以外の河川交通なんかは再開をする意向であります。
 それからもう一つは、この上流権益というのは常にリスクがあるわけですけれども、やっぱり撤退する企業に対して何らかのサポートをしてあげないと、二度とそういう事業に手を出してくれる企業がなくなってしまうと、そういう問題があります。
 いずれにしても、各国、エネルギーの事情を考慮した対応を取っているので、日本も自らのエネルギー事情をやっぱり考えると。それから、特にヨーロッパ系の企業の動向を踏まえて政策選択をすべきではないかというのが私の考えです。
 それから、やはり一番重要なのは、実はエネルギーを確保すると同時に、各産業が脱炭素化に移行できるようなサポートを実際に考えなきゃいけないと、そういうことがやはり重要ではないかということでございます。
 ということで、私のお話、以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 蓮見雄

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日付: 2022-04-06

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会