竹下珠路の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)

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○参考人(竹下珠路君) ありがとうございます。
 本日は、このような発言の、陳述の機会をいただきまして、御礼申し上げます。
 私の妹、古川了子は、今から四十九年前の一九七三年七月七日に、十八歳のとき、千葉県市原市の家族の前から姿を消しました。その年の春に県立商業高校を卒業し、地元の大手造船会社に就職したばかりで、私に、経理部に所属したの、仕事は大変だけどやりがいがあるし、先輩たちが優しいから仕事、会社はとても楽しいと明るい声で話していたのが私が聞いた妹の最後の声でした。
 失踪の前日にもらったばかりの初ボーナスで母と買物に行く約束をしていました。ところが、当日の昼前になって知人を介して今日の買物は行けなくなったと母に連絡が入り、妹の消息はそれ以来ぷつりと消えました。何事にも真面目に取り組む頑張り屋で、周りの人にいつも優しく、素直で明るい妹でした。母は警察に届けるとともに様々な情報提供の呼びかけをしましたが、何一つ反応はありませんでした。
 そして、一九九七年三月、横田めぐみさんの北朝鮮による拉致情報をテレビ番組で見た母が、もしかしたらうちの娘も拉致をされたのではないかと写真を一枚添えた手紙をテレビ局に送りました。番組のディレクターは韓国に亡命中の元北朝鮮工作員の安明進氏に面会して番組に寄せられた幾枚もの写真を見せたところ、古川了子の写真だけ指して、この女性は見たことがある、自分が北朝鮮の九一五病院に入院していたときに院内で出会い、言葉を掛けた女性にとてもよく似ていると言ってくれたと私たちに知らせてくれました。了子が家族の前から姿を消して既に二十四年がたっていました。
 母と私は、二〇〇五年四月には日本政府を相手に古川了子の拉致認定を求める行政訴訟を起こしました。多くの特定失踪者の御家族代表としてのチャンピオン訴訟で、安明進氏も法廷で証言台に立ってくれました。二年後に、当時の内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室室長が法廷で、善処するといった旨の内容の声明文を読み上げ、私と母は裁判を取り下げました。認定という名を取るよりも、救出という実を取りたいと思ったからです。当時、日本国民がこれほど切望している被害者奪還に日本政府は必ず動くと期待したからです。しかし、それから十五年が経過した今も状況は全く変わりません。
 妹のほかにも、北朝鮮での目撃証言や写真、情況証拠などから明らかに拉致だと思われる方もたくさんいますが、政府は、二〇〇五年に田中実さんと二〇〇六年に松本京子さんを認定しただけで、その後、誰一人として認定していません。どちらも私の裁判中の出来事でした。
 母は今から十二年前に九十四歳でこの世を去りました。晩年の母は認知症も進んでいましたが、了子のことだけははっきり認識していたようで、私は了子が帰ってくるまで頑張ろうねと声を掛けると、そうね、頑張るわ、北朝鮮にいることが分かっているのに、どうして国は了子たちを取り戻せないのでしょうね、取り返す気がないのかしらと寂しそうにつぶやいていました。命を懸けた精いっぱいの抗議の言葉だと私は思っています。
 今日六月八日の時点で、日本の警察は、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者を八百七十一名と発表しています。民間の特定失踪者問題調査会では、拉致疑惑の失踪者を特定失踪者と呼び、約四百七十名、そのうち拉致濃厚七十七名、救う会認定五名、警察断定二名を発表しています。また、国連の北朝鮮人権調査委員会、COIでは、北朝鮮の人権問題について調査した結果、少なくとも百人以上の日本人が拉致された可能性があると報告しています。これら全ての拉致疑惑の失踪者をここでは特定失踪者と呼びます。
 今、多くの特定失踪者家族は、自分たちの家族を取り戻すために、北朝鮮そのものよりも日本国内でまず大きな壁があると感じています。
 その一つが拉致認定です。特定失踪者家族会ができてから、歴代総理に何度面会を申し入れても、北朝鮮に付け入る隙を与えないためと称して面会してくれません。また、人権運動家を自称する人の中にさえ、国に認定されていないのに自分で勝手に拉致被害者だと言っていると批判している人もいます。各地の行政関係者や一般の方々でも、認定されていないのですよねと扱いが違うところも間々あります。政府の拉致認識がいかに国民に与える影響が大きく、日本国内での壁が高いかを物語るものです。拉致が明確になってからこの状況が二十年も続いており、家族は何度心が折れそうになったことかしれません。
 ここで、多くの特定失踪者家族が心配していることの幾つかを申し上げます。
 一つ、失踪から五十年も六十年もたった今、遅々として進まない拉致問題解決の途上で、本人が戻ってくるまでに家族の命がもつか、被害者本人の命がもつかが大変心配です。
 二、総理が言われている全ての拉致被害者という全ての中に特定失踪者は入っていますか。何人いますか。私の妹は入っていますか。
 三、全ての拉致被害者とは、日本政府は検証可能なのですか。北朝鮮が自分たちに都合のよいリストを出してきたときに、政府は検証できるデータをお持ちですか。
 四、目撃証言や証拠品、情況証拠などから拉致の疑いが濃厚な人が何人もいるのに、十六年間追加の拉致認定をしないのはなぜですか。それは、拉致を矮小化しているか、特定失踪者を後回しにしていることになりませんか。
 五、政府は、失踪者一人一人に関する脱北者などによる目撃証言や証拠品の確認をしていますか。被害者家族は年々衰え、記憶も記録も散逸してしまうおそれがあります。外国から主権を侵害された国として、日本国民の人権と命に関わる証拠類をきちんと一括管理するべきではありませんか。
 さらに、個人の情報はそれぞれの家族にも共有してしかるべきと思います。警察は、家族からは情報を聞き出しますが、警察の持つ情報は家族には全く知らせてくれません。これは認定被害者の御家族も同じと言っておられます。
 二〇一七年に特定失踪者家族会を結成しました。入会任意の家族会として、現在六十九家族七十五名の特定失踪者家族で構成しています。特定失踪者家族会は拉致認定の家族会とは異なるアプローチで様々な活動をしていますが、目指すところは同じです。全ての拉致被害者を一刻も早く取り戻すことです。
 今、特定失踪者の八〇%は六十歳を超えており、私の妹は既に六十七歳になりました。それぞれが自分の未来に夢と希望を持っていた若者であり、誠実に日本人として生きてきた多くの国民が外国の手によって理不尽に国外へ連れ去られて何十年もその自由を奪われ、日本国憲法に守られないこの不条理を議員の先生方にはどう思われますか。
 失踪時の年代や年齢、そして現在の年齢をグラフにしたものをお手元に配付させていただきましたので御覧ください。時間の都合で説明は割愛させていただきます。
 そのグラフでもお分かりのとおり、もはや一刻の猶予もありません。岸田総理は特定失踪者家族と面会してください。それは、日頃から認定、未認定にかかわらず全ての拉致被害者をと言っておられることを行動で示すことになり、日本の総理が拉致は許さないという強い意思を北朝鮮に示し、日本国民に対して示すことになります。
 被害者の命があるうちに、待ちわびる家族の命があるうちに、日本国政府はあらゆる手段を尽くして全ての拉致被害者を一刻も早く救出してください。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 竹下珠路

speaker_id: 17206

日付: 2022-06-08

院: 参議院

会議名: 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会