脇田隆字の発言 (厚生労働委員会)

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○脇田参考人 本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 新型コロナウイルス感染症流行が始まりまして、これまでほぼ七回にわたる感染拡大があり、また、異なる変異株による流行で、重症度それから感染伝播力、これが変化してまいりました。
 今年の初めからは、オミクロン株の流行によりまして、感染伝播力が強く、また、潜伏期間、世代時間の短縮によって感染拡大の速度が非常に速くなり、急速な感染拡大となりました。一方で、ウイルスそのものの重症度は従来株よりも下がり、また、ワクチン接種、治療の進歩によっても重症度が下がってまいりました。
 しかし、重症度だけではオミクロン株流行のインパクトは評価ができません。感染者数の圧倒的な増加によって、死亡者数はこれまでの波と比べて最大となりました。
 今後、この新型コロナウイルス感染症にどう対応していくのか、また、新たな感染症の流行にどう準備をしていくのかが問われていると思います。
 さて、これまでの三年弱の流行における経験と教訓がありました。
 当初の新型コロナウイルス感染症の流行において、一般に想定されていた新型インフルエンザとは異なり、ワクチンも治療薬もない新たな感染症であったため、指定医療機関中心に勧告入院を継続しました。そのため、指定医療機関と協力医療機関の対応能力を超える感染者は、宿泊療養、自宅療養の対応が必要になりました。
 また、二〇〇三年のSARSとは異なり、新型コロナウイルス感染症は、発症前から感染性があり、発症者を全て隔離するだけでは蔓延防止は困難という対応の難しい感染症です。これまで、保健所中心の積極的疫学調査、クラスター対策、検査による陽性者の同定と隔離が行われてきました。
 今回の感染症法の改正においては多くのポイントがあると思いますが、幾つかの論点について、私の考えを述べたいと思います。
 まず、医療提供体制でありますが、医療の先生方がいらっしゃいますので多くは述べないところですけれども、流行の規模に応じて柔軟に拡張できる体制は、医療が必要な感染者を取りこぼさないために何より重要であります。
 ただ一方で、私が強調したいのは、流行初期に、重点医療機関において、診療体制の確保とともに、未知の感染症の調査研究を進めることが重要です。新たな感染症流行においては、最初の数百例、ファースト・フュー・ハンドレッドといいますが、迅速に解析をすることが求められます。医療機関の医師は診療で手いっぱいになりがちですが、初期から感染症制御のための知見を得るためには、臨時に人員を投入してでも調査研究できる体制を確保することが必要です。
 また、多数の軽症者、無症状者が発生するような場合には、宿泊療養、自宅療養で医療が提供できる体制の構築が重要ですけれども、特にオミクロン株になってからは、脆弱な高齢者の医療が課題となりました。入院できず、宿泊療養も困難な高齢者が、自宅や施設で安心して介護を受けながら療養できる体制も重要と考えます。
 次に、検査体制です。
 我が国の感染症検査体制は、地方衛生研究所、それから国立感染症研究所のネットワークにより維持をされています。新規感染症発生時には、主として感染研が検査法を開発、地衛研に配布、技術研修を実施、そして地衛研も検査法を検証して担当します。感染研もそれを補完するという形になっております。検査ニーズの拡大の必要があればコマーシャルラボへ拡大、移行することになります。この流れを流行拡大時にもスムーズに進めることが重要です。
 この検査体制において、地方衛生研究所の役割が何より重要です。地衛研は八十五か所の自治体に設置をされていますが、設置根拠が事務次官通達の設置要領に基づくなど、法令上の位置づけが明確ではないとされています。また、病原体検査、環境検査、食品衛生、地方感染症情報センター機能など、様々な機能を担っていますが、予算と定員は削減されてきたという声も多く聞きます。職員は、必ずしも感染症業務に固定されているわけではなく、多くの地衛研では他業務とのローテーションがあります。地衛研の間で可能な検査についても差があります。
 地衛研の検査能力を維持向上するために、地衛研の組織の位置づけを明確化し、予算配分、定員配置を強化して、必要な体制を整備する必要があります。また、検査だけではなく、感染症の専門人材育成のために、地衛研の調査研究能力を平時から強化、維持することが必要です。コロナで、ゲノムサーベイランス、変異株スクリーニングなど先進技術の導入が必要で、業務の専門性が高いことも明らかとなりました。
 保健所についてです。
 今回のパンデミックで保健所機能の重要性が再認識されましたが、保健所職員は、感染者の入院、宿泊療養、自宅療養の調整や、感染者の健康観察、陽性者の搬送、検体の輸送などに多くのリソースを割くことになりました。本来は、蔓延防止のために、積極的疫学調査、濃厚接触者の行動制限、情報収集などの業務に専念できる体制が必要と考えます。そのためには、保健師が本来するべき業務とそれ以外を整理して、また、感染者急増に対応できる、本庁あるいは大学等の外部からの応援体制の確保も重要と考えます。
 調査研究体制についてです。
 従来、感染症研究は、様々なイノベーションを生み出してきました。古くは、細菌感染症に対する血清療法の開発、ポリオウイルス研究における細胞培養技術、レトロウイルス研究における逆転写酵素の発見など、ノーベル賞になった研究も多くございます。
 平時においては、病原体研究も重要ですが、関連する横断的な研究、例えば感染症疫学、病原体ゲノム、ヒトゲノム解析、数理モデル解析、構造生物学、治療薬開発、感染症免疫学、ワクチン開発、オミックス解析など、感染症に関わる研究領域を含めて学際的な研究を進める必要があります。
 先ほど述べましたとおり、有事にはまず重点医療機関などにおいて新たな感染症を調査研究、最初の数百例の研究体制を確保することが重要です。また、そこから病原体研究、横断的な研究領域の研究者が迅速に研究を進められる体制が重要と考えます。
 また、流行対策に必要な研究をどこで誰が行っているのか、研究費を出している部局だけが知っているのではなく、感染症対策に関わる専門家との情報の共有が重要と考えます。
 また、検査で得られる臨床検体を研究に活用できる仕組み、平時から感染症研究をより強化する仕組みが重要です。診療に当たる医療機関における臨床研究を振興すること、地衛研の感染症研究能力、保健所の疫学調査能力の強化が我が国の感染症対応能力向上には重要です。
 次に、サーベイランス体制です。
 サーベイランスは、感染の状況を複合的、多重的な情報源から分析していくべきものであります。我が国では、診断時の発生届に依存してまいりました。このため、発生時の届出の状況は分かりますが、その後の重症化等の推移が分からないなどの問題がありました。複数の手法による重層的なサーベイランスを構築するための議論と研究を進めるべきと考えています。
 また、国と自治体の間、あるいは自治体同士の間で必要なデータのタイムリーな共有ができる体制整備が必要です。サーベイランスの専門人材、疫学専門家を育成して、地域に配置することも必要です。
 ワクチンについてであります。
 今回、ワクチンを迅速に開発して臨床に導入することが感染症対策として重要であることが再度認識されました。現在の自治体による接種券の発行に依存するのではなく、マイナンバーカードなどをワクチン接種に活用して、より迅速な接種体制を構築できないかという議論があります。
 また、予防接種に関する審議会では、今回のパンデミック以前から、予防接種施策の見直しに関する議論がありました。この議論を再開する必要があると思います。様々な論点がありましたが、予防接種に係る費用の効率化、コミュニケーションの強化、接種記録、研究開発などについての議論がありました。
 今回、ワクチン忌避の問題も再度認識されました。コミュニケーションの強化によりワクチンの正しい情報を提供して、国民がワクチン接種を適切に判断できるようにすることが必要と考えます。
 また、接種記録についても、接種記録の電子化とレセプト情報の連結が議論されていました。さらに、副反応データベースの連結によって、ワクチンの有効性と安全性の調査研究がより迅速に進むことが期待されます。また、このデータベースを広くアカデミアが利用して研究が可能となる体制も重要と考えています。
 ワクチンの研究開発も重要であります。重点感染症のワクチン開発はAMEDのSCARDAが行いますが、そのほかの定期接種化が必要なワクチン開発も進める必要があります。
 また、予防接種に関して感染症研究所が行う調査研究を強化するための体制整備も必要と考えます。
 今後、新型コロナウイルス感染症への対応、また、新たな感染症の流行への準備などのために、感染者の診療体制、検査体制、情報収集体制、研究開発体制、予防接種の体制などを強化することが必要で、そのために人材育成が何より重要と考えております。
 私の意見はこれまでであります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 脇田隆字

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日付: 2022-11-01

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会