大曲貴夫の発言 (厚生労働委員会)

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○大曲参考人 国際医療研究センターの大曲と申します。
 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、現場で感染症の診療をする医師でありまして、同時に、研究開発にも関わっております。コロナには二〇二〇年の一月から対応してまいりました。そこで、現場で感じたところの所感ということで本日はお伝えをしたいと思います。
 まず一点目なんですが、今回つくづく感じたのは、やはり感染症は、ほかの健康危機、災害と同じように、明確に危機管理の対象としていただきたいというところであります。
 本当に、パンデミックの社会と医療に及ぼす影響は広域災害そのものだなというのが我々の実感であります。ただ、現実には、感染症は災害と同じようには位置づけられていないというのが現場で感じるところです。端的には、医療体制が、感染症のときには、災害向けのときのようには機動的に導入されないといいますか、という点があると思います。
 新型コロナに関しましては、特措法ですとか、あるいは感染症法、あるいは医療法を通じて対応はなされました。ただ、現実に何が行われたかといいますと、公衆衛生対応がやはり先に来ます。要は、これまでの考え方で、まずは隔離をする、封じ込めをするということが先に来まして、医療対応というのは実は余り具体的には落とし込まれていなかったと思っています。そこが、医療対応が機動的に行われなかった、行えなかった理由の一つではないかと思っております。
 今回、感染症法の改正の議論の中で、感染症法に基づくいわゆる基本指針と、そしてそれを都道府県ごとに落とし込んだ予防計画があるのと、それだけではなくて、医療法に基づく基本方針、そして都道府県レベルの医療計画があるわけなんですが、これらの両方がうまく運用されることで、公衆衛生対応が中心ではなくて、医療対応も同時に、災害対応と同じようにいずれも遅滞なく行われるようになる、そのようになることを我々としては望んでおります。
 二点目は、実際の医療の確保であります。感染症有事に医療をどう確保するかという点でございます。
 特にパンデミックの初期でありますが、入院医療を支える医療機関の数、それとベッドの数が非常に少なかったという状況がありまして、感染症指定医療機関等に患者が集中したという現実がございました。我々は東京で第一波を経験しましたけれども、我々の病院の集中治療室のベッドは全てCOVID―19の患者さんに埋め尽くされたという状況がありました。もう皆さん、人工呼吸をつけているわけです。そういう経験というのは、我々はしたことはないわけです。ただ一方で、ほかの医療機関を見ますと、医療資源はある、人もいる、しかし、現実には患者さんが入院できないという状況がありまして、やはりじくじたる思いがあったことを強く覚えております。
 やはり感染症指定医療機関のみで患者さんを受け入れていくことは不可能であって、ほかの医療機関もパンデミックの最初の段階から医療体制に組み込んでいくことが必須であると痛感をいたしました。ですので、それができるように指揮命令系統を整理をしていただいて、それとともに、病院がちゃんと参加できるように地方自治体と医療機関の間で協定を結んでいただく、そういう議論が今ございますが、それは必要であると感じています。
 また一方で、当初、医療機関の受入れが進まなかった背景には、それは感染へのおそれ等もあるのだとは思うんですが、現実には、収入の減少が十分に起こり得る予見性が高かったわけですので、その保証がない中でなかなか乗り出せなかったという医療機関の事情があったと思います。そこに対する手当ては是非お願いをしたいと思います。
 また、もう一つは、感染の早期から、診療する場所、あるいは患者さんの移動、これに関して、是非、柔軟性を持たせていただきたいというところを痛感しました。特にパンデミックの初期は、患者さんを動かすことに非常に大きな制約がありました。ですので、自宅にいらっしゃる患者さんに病院に来ていただいて診るといった対応は極めて難しくて、現実にはできなかったということがあります。隔離は大変大事なのですが、今回のパンデミックで我々が学んだのは、まずは医療だ、ちゃんと患者さんを助けることが先に来るべきでありまして、そこができるような体制は必要だと思っています。
 また、医療体制の整備に関しましては、私は感染症指定医療機関の人間なので、あえて申し上げたいのですが、感染症指定医療機関で、いわゆる封じ込めをするだけではなくて、研究対応能力の強化ということも御検討いただきたいと思います。なぜならば、患者さんがまず入るのは感染症指定医療機関だからなんですね。感染症、特に未知の感染症の発生後に、いかに迅速に研究開発を行って、ワクチンや治療薬やそして診断薬を社会に送り込めるか、これがその後の社会としての対応の成否を決すると思っています。これはもう実感であります。
 実際、今、G7で百日ミッションという計画も進められています。ただ、これを実際に達成しようとしますと、患者さんからいただいた情報と検体を直結で研究に活用する必要があります。そのためには、診療の最前線にある指定医療機関の研究機能の強化が私は必須だと思っています。
 また、日本における感染症に対応するための研究体制そのものも、やはり一度見直す必要があるだろう。従来は保健医療という中での枠組みで考えられていたんだと思うんですが、やはりもう感染症は危機だというのはコンセンサスだと思いますので、その危機管理の観点から枠組みを御検討いただきたいと思っております。
 三点目は、人材であります。特に、感染症有事における医療人材の派遣であります。
 我々、ダイヤモンド・プリンセス号の対応をいたしました。多くの職員を実際に横浜の大黒埠頭に送りました。一方で、その人員を割かれている中で、実際、入院診療を行う必要もありまして、人材の確保には非常に苦慮したことを覚えております。実際に、行政の側でもサージキャパシティーとなる人員の確保に本当に苦慮されていたということを覚えております。
 当時、私は、米国の保健省のチームが日本に来ておりましたので、一緒に仕事をする機会がありましたが、どうやって来ているのか聞きましたら、保健省内では緊急時の対応人材の登録制度がある、こういうときは手挙げをする、その中で人を選んで連れてくるということをおっしゃっていました。つまり、登録制度があるということでありました。CDCの職員も基本的には全員登録している、そういったことをおっしゃっておりました。
 日本でどうかといいますと、災害領域にはDMATがあります。ただ、感染症ではそのような仕組みはまだまだないというところであります。ですので、感染症においても、国によって定められた広域の医療人材の派遣、この仕組みがやはり必要であると思います。
 そこで問題となるのは、やはり所属施設あるいは個人の問題でありまして、所属する専門家には、その所属先からそもそも就職のときに、職務記述に感染症への有事対応をちゃんと組み込んでいただく、そうすれば、有事のときには、派遣元の機関ですとか派遣される専門家本人も心配なく派遣されるというところへつながると思いますので、そのような制度が必要だと思っています。
 また、感染症医が少ないということを大変御心配いただいておりまして、本当に申し訳ございません。ただ、少し事情がございます。感染症の診療は大きな診療報酬を生みません。ですので、医療機関としては、感染症医の雇用は極めて難しいという状況があります。ですので、専門家を増やすには、そもそも採用枠を増やすことが必要であります。保険医療の収入だけでは賄えない現実がありますので、ほかの形での支援が必要であるということも申し伝えたいと思います。
 もう一つは、感染症有事の情報の管理でございます。
 感染症法に基づく届出の電子化ですとかNDB等の既存の診療情報やワクチンのデータベースのリンクは、これで得られる情報が重要な疫学情報として国の対策に直結しますので、必須であります。一方で、このデータは、ワクチンや治療薬や診断薬の迅速な研究開発、あるいはその後のフォローアップにも必須であります。是非進めていただければと思います。
 リアルワールドデータとよく言われますけれども、本当にこの研究開発に必須でありまして、実際、米国ですとかイスラエルが、ワクチンを社会に投下した後に、その効果を実際にこのリアルワールドのデータを見ながら検証していて、政策をつくっているという現実を御紹介をしたいと思います。
 その中で、お願いが二つありまして、一つは、医療機関での入力負担の軽減を是非御検討いただきたい。端的には、医療機関には電子カルテがありますが、この情報がそのまま届出等には使えない、リンクがされていないという状況がありますので、それは進めて、リンクさせていただければと思います。あとは、二点目は、こうやって得られた、リンクされたデータをやはり迅速に利活用されることが極めて重要なので、国ですとか国家機関だけではなくて、第三者、例えば研究者ですね、でも迅速に利活用できるように是非していただければと思います。
 最後に、検査についてであります。
 都道府県の衛生研究所でのキャパシティーの拡大は極めて重要であります。ただ一方で、検査は、公衆衛生対策だけではなくて、実際には、医療体制の維持ですとか、院内や施設での感染防止対策に必須です。ですので、パンデミックの発生直後から、自治体だけでなくて医療機関でもその裁量で検査ができる、そういう体制をつくっていただければと思います。そうしないと、救急車の受入れも止まりますし、院内感染が起きても検査ができなくて広がってしまう、結果的には有事に医療が止まるということが起こりますし、実際にこれまで起こってきたことであります。
 実際、我々、二〇二〇年の三、四月には、検査を拡充しようとしたのですが、検査機器はあるんです、でも、実際には試薬が全部欧州に回ってしまって日本に何も来ないということで、自施設で検査がなかなかできなくて苦しんだことがありました。やはり、検査機器ですとか試薬というのは、地味ですが、戦略物資なんだなということを痛感したわけでありまして、その確保は重要であります。
 ですので、今後は、公衆衛生と医療の現場、両方で早期から検査が活用できるように、感染症の発生の直後から官民で連携をして、検査試薬や機器の開発、そして供給のための枠組みをつくっていただければと思っております。
 私からは以上でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 大曲貴夫

speaker_id: 2921

日付: 2022-11-01

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会