佐々木悦子の発言 (厚生労働委員会)

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○佐々木参考人 日本医療労働組合連合会の中央執行委員長、佐々木悦子と申します。
 本日は、医療現場で働く労働者の立場で率直な意見を述べる機会をいただいていることにまず感謝いたします。ありがとうございます。
 時間の制約もありますので、三点に絞って意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず初めに、最も伝えたい点ですが、この感染症法等の一部を改正する法律案については、医療や公衆衛生現場の人員を増やす必要があるという視点がどこにもないというところです。
 例えば、法案では、平時からの備えを確実に推進するためとして、様々な体制整備について触れられていますけれども、人材の養成、そして資質の向上として、医療従事者や保健所職員等の研修、訓練回数の数値目標例を出しているだけで、圧倒的な人員不足を解消するための目標はありません。
 感染症発生、蔓延時における広域的な医療人材派遣を行うとし、逼迫していない地域の県知事が、平時の協定においてあらかじめ県外に派遣できる医療人材をリスト化して、状況に応じて派遣人材を調整するとしていますけれども、公立・公的病院はもちろん、感染症に対応する民間の医療機関も含めて、平時からゆとりを持った人員配置ができている医療機関等は恐らくないと言っても過言ではありません。どの病院でも、三百六十五日、看護師の募集をし続けているのが現実です。
 コロナ禍においても、大阪や沖縄の医療機関が感染者の受入れ困難となり、他県からの医療従事者の派遣要請を行いましたが、それでも間に合わないために、沖縄などでは自衛隊の看護官の派遣要請を繰り返していたように、必要とされていた数の医療従事者派遣にはなっていなかったはずです。
 そして、派遣要請に応えた医療機関では、自分の病院の医療体制が厳しくなり、医療縮小や、看護師は休みも取れず、長時間労働となり、夜勤回数は夜勤協定を大きく超えるような、厳しい勤務環境にならざるを得ませんでした。内容については、フリップを御覧いただければというふうに思います。
 また、第六波で臨時医療施設を設けた三十二都道府県のうち二十七道府県が、使用率が一〇%以下だったというふうに聞いています。理由は、若年層の受入れを想定したものが多く、介助などが必要な高齢患者に対応できなかったのが要因と見られるというふうに報道されていました。結局、感染者の療養施設を急ごしらえできても、実際に対応できる医療・介護従事者がいないのですから、機能できなくて当たり前というふうに思います。
 DMATについても、特定の地域での災害発生時であれば、登録している医療機関や従事者がどうにか派遣要請に応えられるように努力できますが、予備的に人材を確保しているわけではありませんので、全国的な感染拡大時にはほとんど機能できないというふうに思います。
 保健所の体制強化についても、県と保健所設置市との連携強化や、国や県の総合調整権限等の強化、そしてIHEATの活用を打ち出していますけれども、感染者や、感染を心配する人、そして濃厚接触者への対応は、圧倒的な人員不足により実務がこなせなくなっての機能麻痺であったはずです。そのことは、医療機関側からもはっきり理解できました。
 保健所との連絡が取れずに不安になっている住民への対応や、保健所機能を補う意味もあって発熱外来を設けても、その発熱外来すら逼迫する状況は、そもそもの公衆衛生体制が余りにも脆弱過ぎるということを証明したのではないでしょうか。根本的に、保健所設置数の拡充や直接雇用の保健所職員数を増やすことなしに、連携や権限強化などで解決できる問題ではないというのが現場の意見です。
 以上、複数の観点から指摘しましたが、平時から人員不足が常態化している医療や公衆衛生体制に一定の余力を持たせた人員配置を行わない限り、伸び切ったゴムが切れてしまい、またもや医療崩壊や介護崩壊、そして保健所機能麻痺を繰り返すだけであることを強く指摘したいと思います。
 次に、医療機関に対する医療提供義務の強化を行う点について述べたいと思います。
 感染症発生、蔓延時に確実に稼働する医療提供体制を構築するため、実効的な準備体制を構築するとして、指示権等を創設し、協定の履行を確保するとしていますけれども、この点でも、人員不足の対策に手をつけないまま医療機関に病床確保の計画を立てさせ、そして、感染時にはその計画の履行を罰則つきで求める仕組みをつくったところで効果は期待できないことは、この間のコロナ禍での医療崩壊が実証しています。
 フリップを御覧ください。
 昨年十月十五日に、岸田首相が、感染力が今夏の第五波より二倍になっても対処できる医療提供体制の整備を要請するとした以降に、私たち医労連は緊急現場実態調査を実施しましたけれども、重症病床を増やせた病院は九・九%、そして中軽症病床を増やせた病院は二七・三%にとどまっています。回答を寄せた医療機関は公的病院が中心であり、そのほとんどがコロナ陽性者を既に受け入れており、第六波に備えて更なる受入れ体制拡大を要請されても、それに対応できる人員体制がなく、応じられなかったと理由を述べています。
 そして、公立・公的病院に対しては、感染症発生、蔓延時に担うべき医療の提供を義務づけるとして、罰則も盛り込んでいますけれども、一方で、公立・公的病院の再編統合リストは撤回せず、地域医療構想の推進とともに病院の統廃合を進めている地域は複数見られます。強力な権限をもって義務化をしながら、一方で公立・公的病院の数や病床数を減らしていくことに、私たち医療労働者も憤りを強く持ちますし、疑問を感じない地域住民はいないというふうに思います。
 最後に、医療機関への財政的支援に関して意見を述べたいと思います。
 コロナ禍で経営的に厳しい状況に追い込まれたのは、全ての医療機関です。私たちは、この三年間、常に、全ての医療機関や介護施設への財政支援を行うべきであると繰り返し国に要請してきました。
 コロナ陽性者を受け入れる病院は、もちろん、大変な状況の中で奮闘しました。しかし、コロナ患者を受け入れることを優先するために一般医療を縮小せざるを得ない状況が発生し、その一般医療を担った地域の医療機関はたくさんあります。また、保健所機能も麻痺をして、発熱外来にもアクセスできない方々は、受診制限されても、不安が強くて一般医療機関を受診する人たちもあります。全ての医療機関が感染者対応を余儀なくされ、感染拡大で通常医療が影響を受け、患者減ともなりました。
 コロナ陽性者を受け入れる医療機関だけを財政支援し、それ以外にもコロナ禍の影響を受けている医療機関を切り捨てれば、地域医療は崩壊します。この教訓に全く目を向けずに、今回の改正案でも、初動対応等を含む特別な協定を締結した医療機関だけに財政支援の仕組みを限定していることは、国民に必要な医療が成り立たなくなることを強く懸念しています。
 実際に、公的病院の中には、コロナ禍が収束して財政支援がなくなった先の経営を不安視して、今年四月の看護師の新採用者数をゼロにした病院も複数確認しています。このような状況で、次の備えどころか平時の地域医療も成り立たなくなることは、私たち医療現場から見れば非常に危機的な問題であると受け止めています。
 また、費用負担において、公費と保険者の負担割合を半々にすることも、感染症対策費用は国の責任で行ってきた姿勢を投げ捨て、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないとする国の責任を後景に追いやることにつながると感じます。
 私たち医労連は、医療・介護現場に責任を持つ労働者の立場から、今回の改正案では今後の感染拡大に対する備えにはなっていかないと考えています。抜本的な対策は、繰り返しになりますが、医療や介護、公衆衛生の現場にもっと人員を増やすことです。平時から一定の余力を持たせた体制を確保してこそ、有事の際の確かな備えになることを強調して、意見表明とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 佐々木悦子

speaker_id: 27124

日付: 2022-11-01

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会