川井康雄の発言 (消費者問題に関する特別委員会)
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○川井参考人 全国霊感商法対策弁護士連絡会の事務局長をさせていただいております弁護士の川井と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に、私の資料の一番最初のレジュメのところからお話をさせていただきたいと思いますけれども、今回の審議の契機となりました安倍元首相の銃撃事件から五か月が経過しました。この短い期間、与野党の先生方には本当に御尽力いただいたと思っております。特に、被害者からのヒアリングを多数行っていただいた先生方の正義感、熱意に対しては、心より敬意を表したいと思います。
ただ、残念ながら、現在の新法、私どもが言っているこの新法というのは、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案、これを新法というふうに言いますけれども、こちらの方は、少なくとも統一教会の被害実態からすると、不足している点が幾つもあると言わざるを得ません。
統一教会が行っている加害の中核は、正体を隠して知らないうちに教義を教え込んで信者に仕立て上げるという、信教の自由の侵害行為にあります。高額献金、これは非常に大変な被害ではありますけれども、これはその植え付けられた教義によって生じる被害の一側面にすぎません。したがって、本来は、この正体隠しの違法な伝道活動、こちらを正面から規制する立法が検討されるべきと考えております。この点は、本日以降、是非速やかに検討を開始していただきたいと考えているところです。
以下では、新法の不足点全部について言及することは難しいので、重要なポイントに絞ってお話をさせていただきます。
なお、新法の問題点を一覧にしたものについては、私の資料の四ページ以下、四ページ、五ページの方でまとめておりますので、併せて御参照いただければと思います。
まず最初に、新法の配慮義務という点についてお話をさせていただきます。
今回、配慮義務として置かれている新法三条の一号、自由な意思の抑圧、それから二号、生活の維持、三号は法人等の明示あるいは寄附の使途の誤認防止というところですが、これらはいずれも統一教会の加害実態からすると非常に重要な内容を含んでいると考えております。
ただ、これが配慮義務というだけでは、では、実際に違反した場合にどうなのかというと、これが裁判所で不法行為と判断されるかどうかは、正直言って極めて不透明と言わざるを得ません。そもそも一号と三号前段は、判例上も違法性の判断に組み込まれている要素でして、これを配慮義務として規定するだけではほとんど役に立たない、意味がないと言わざるを得ないのです。こうした判例がある以上は、禁止行為にすべき立法事実が十分にあるというふうに考えております。
また、特に三号の規定なんですけれども、こちらは寄附の際に寄附をする団体あるいは使途を明らかにせよという内容ですから、非常に明確な規定になっております。したがって、これを禁止行為にできない理由はないのではないかというふうに考えております。
そして、この配慮義務に違反した場合の効果について、こちらは、与党の修正案の方では配慮義務に違反した場合に勧告、公表の対象となるというふうにされております。ただ、その要件が、配慮義務の遵守がなされていないため個人の権利保護に著しい支障が生じていると明らかに認められるという、非常にハードルの高いものになっております。この規定では、相当に深刻な違反がない限り適用されないのではないかという懸念を持っております。
また、では、具体的に勧告が出されたときにどういった内容の勧告になるのか。これは、新法の七条の方では、「当該行為の停止その他の必要な措置」というふうに元々規定としては置かれておりますけれども、配慮義務違反の寄附がなされた場合、この「その他の必要な措置」の中に当該寄附の返金まで含まれるのであれば救済につながるなというふうに思っておりますが、この点が現在の案では不明なままです。
あくまで配慮義務のために、配慮義務に違反しただけでお金を返せとまで言えるのかどうか。禁止行為であればお金を返せというのは素直な解釈だと思いますが、この点が不明だということで、明らかにしていただきたいと思っておりますし、先ほどの厳しい要件についても緩和をいただきたいと思っております。
次に、禁止行為についてです。
まず、困惑についてお話をさせていただきます。
新法の四条の禁止行為、こちらはいわゆる困惑類型ということで、一号から六号の各行為をしたことによって寄附者が困惑させられることが必要となっております。
しかしながら、少なくとも統一教会における被害のうちかなりの部分は、信仰による責任感や義務感から、その外形上だけを見れば進んでお金を出しているように見える、こういうものがかなりあるんです。最大の問題は、その信仰を本人の意思に反して不当に持たされたということにあるわけです。
この点、岸田首相は、昨日、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、取消権の対象となる、このように答弁をされました。この答弁の内容は、教義を植え付けられる入信時までの勧誘が不安を抱いていることに乗じたものであれば、その後、その教義、信仰に基づく使命感や義務感で出された寄附であっても、不安に乗じたものと言えるというものとも思われます。
これは非常に時的な問題がありまして、入信勧誘のときから実際に寄附をするときというのは何年もかかることが幾らでもあるわけです。その場合も含むのかどうか。もしそのように含むとすれば、現在の法文上は第四条の柱書きで、寄附の勧誘をするに際し、そういう禁止行為があって困惑するという規定ぶりになっているものですから、そうした何年もの長さを想定しているものとは正直読み取れない。したがって、ここは、先ほどあった逐条解説で丁寧にというところもあるかと思いますが、解釈の疑義を生じないという意味でも、法文の方を修正していただきたいなというふうに考えているところです。
また、必要不可欠というところですけれども、統一教会の被害に限らず、違法に献金をさせられるような被害では、不安をあおったり不安に乗じた上で、その献金や祈祷などのサービスを受けることが必要であるという程度の言い方、これはされますけれども、不可欠だ、あるいはこれと同程度の必要性あるいは切迫性が示されるケースというのは多くありません。
不安をあおったり不安に乗じて献金が必要だ、そしてそれによって相手が困惑させられていれば、これは十分に違法だと言えるはずです。不可欠という文言は、いたずらに救済範囲を狭めるだけのものというふうに考えています。逆に、こうした、不安をあおったり不安に乗じて寄附を必要だとして困惑させて寄附をさせることを是とする団体が仮にあるとすれば、それはその団体が問題だということになると思います。
不可欠という文言、これは是非、被害救済のためにも削除していただきたいと思います。
ここで、ここまでの問題について、具体的な被害事例に即して少し解説をしたいと思います。
資料三と資料四の一、四の二、こちらはページ数でいいますと六ページ以下になるんですけれども、こちらを御参照ください。
まず、資料三、パワーポイントのスライドになっておりますが、こちらの方は、一ページ目、二ページ目、こちらが、東京高等裁判所、平成二十九年十二月二十六日付で出された裁判例の事案をポイントに絞ってまとめたものです。その後つけられている、ページ数でいいますと九ページ以降は、その東京高等裁判所の判決文。そして、ちょっと長いんですが、三十四ページに支払い一覧表というのがついていると思います。支払い一覧表の方は、その東京高裁の原審、東京地裁での判決に付されていた、被害者がどういうお金をどういう時系列で出させられたのかが明らかになっている資料となっております。
まず、先ほどのパワーポイントの方のスライドをちょっと見ていただきたいと思います。平成十三年九月に路上で正体隠しの勧誘をされて、平成十三年十一月二十七日に、統一教会と明かされる前に献金の勧誘をされているというものなんです。
判決で認められた事実経過は、一審原告が、家庭で情的に満たされていないということで、散財したり男性に情に流されたりする、先祖に色情因縁があるので絶家になっている、結婚運がない、母と娘との間の情関係に代々課題がある、こういうことを言われて、一審原告の先祖の罪は重くて、一審原告は子孫を代表して救わなければならない、一審原告は出家するか、出家したつもりで二百十万円浄財をしなければいけない、このように言って献金をさせているわけです。
これを、新法についてどうかというふうに考えてみますと、出家するか、あるいは出家したつもりで二百十万円浄財をしなければいけない、出家という選択肢が示されているわけです。これについて、先ほどの必要不可欠と言えるのかどうか。必要だということは言っていますけれども、不可欠というふうに評価できるのかどうか、これは非常に判断が分かれるところではないかと思います。こういった救済されない可能性を残すことはよくないんじゃないかというふうに考えております。
また、この時点では、統一教会と明かされる前、寄附をする相手方が明かされていないわけなので、今の配慮義務で言うところの三号の前段、こちらにひっかかってくるわけですけれども、先ほど申し上げたとおり、配慮義務にとどまっているものですから、そのことが直ちに不法行為とは言えない。したがって、救済されない可能性があるということになってしまいます。
一枚、次のページに行っていただきまして、同じ事案で、次に、この事案では、平成十六年四月に主証、統一教会であることを明かされて、その後、平成十七年三月に百五十万円の献金をさせられているわけですけれども、どういうことでお金を出させられたのかといいますと、一審原告は、平成十七年三月に、世田谷区内にある世田谷教会において行われた礼拝に参加して、教会長が涙を流して説教をする姿を見て、自分の上位の信者に対して、自分に何かできないかと尋ねて、百五十万円の祝福献金をしている、こういう認定になっているんです。
見ていただければ分かるとおり、これは、正体を隠して抱かれた教義に基づいて自ら進んで献金をしているような形になっていますから、例えば、不安を抱いていることに乗じた、あるいは困惑した結果献金したとは言えないと思われます。したがって、この点が救済されない。しかも、この点、家庭連合という団体名を明らかにした後の寄附ですから、これは配慮義務違反とも言えない、したがって救済されない、こういうことになってくるわけです。
ちなみに、先ほどお伝えした三十四ページの支払い一覧表、こちらをちょっと見ていただきたいんですけれども、ちょっと印刷の程度が悪くて申し訳ないんですが、損害項目としては、三ページの最後にありますが、百四十三項目、損害項目がございます。最初にお伝えした、正体を明かされる前の献金、これは損害項目六番のところを抜き出したものですけれども、その次、正体を明かされた後で払わされた祝福献金、これは三十三項目めなんです。
何が言いたいかというと、統一教会であることを明かされて、信仰を持たされた後、出させられる献金というのが非常に多いということなんです。もちろん、信仰を持った後でも、その信仰を維持するために不安をあおられたり、その不安に乗じた話をされることもありますが、先ほど言ったとおり、全くそうした事象がない、持たされた教義によって払わされる献金というのがあるということを御理解いただければなというふうに思っております。
レジュメの方に少し戻ります。
次に、新法の第五条、借入れ等による資金調達の要求の禁止の点です。
居住用不動産や事業用不動産などを処分して寄附の原資を調達することを要求してはならない、こういう規定ですけれども、この趣旨は、配慮義務の二号、本人あるいは親族の生活に支障を生じさせてはいけないということですが、これと趣旨としては基本的に同じ、生活基盤となる重要財産を奪ってはいけないというものだと思われます。
そうだとすると、居住用不動産や事業用不動産、これそのものを寄附してしまう、こういう要求行為も併せて禁止しなければ、容易にこの規定の潜脱ができてしまいます。統一教会では、実際に不動産そのものを寄附させるという被害事例がございますので、少なくともこの点は追加して禁止すべきと思います。
次に、債権者代位権についてです。
我々全国弁連、あるいは事件後に設置された各種窓口への統一教会に関する相談のうち半分近くは、実は信者本人ではなく、信者の家族からの相談なんです。その中で一番多いのは脱会相談ですが、脱会相談の端緒というのは、多くは、家族が自分の知らない間に財産の多くを統一教会に献金してしまった、どうやら信者らしいということで発覚して、何とか脱会させたい、こういう御相談が多いのです。
また、二世問題のうち、貧困に関する問題は、親である一世が財産のほとんどを献金してしまう結果、生じるものと言えます。
ところが、その家族からの被害回復の手段が債権者代位という構成になってしまいますと、二世が未成年の場合、親権者である親が信者であることからしてその同意が得られない、したがって債権者代位の申立て自体がそもそもできないということになります。また、その結果取り戻せる範囲も、この点は明らかに新法の救済から外れていると思われますが、この点、どう考えるのか。
結局、二世問題は非常に重要なポイントだと思いますが、その二世問題が解決されないということだと、これは救済としてはやはり足りないのではないか。この点を議員の皆さんに是非お聞きしたいというふうに考えております。
以上が、新法の抱える問題のうち、特に指摘させていただきたい点となります。
最後になりますが、今回の新法、本当に時間が極めて限られている中で作成されたものである以上は、不足する部分があること自体、やむを得ないというふうに考えております。その不足する点、特に、正体を隠して教義を植え付けて献金させるという被害、それから、二世を始めとする家族被害の救済については、協議会あるいは検討会を立ち上げるなどして、本当に一刻も早く検討を開始していただきたいと思います。
これとの関係で、現状、附則の見直し期間が三年から二年ということになっておるようですけれども、これを是非一年に短縮していただきたいと思います。
私からの御説明は以上になります。
ありがとうございました。(拍手)