山口彰の発言 (経済産業委員会)

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○山口参考人 皆様、おはようございます。ただいま御紹介いただきました原子力安全研究協会の山口でございます。
 本法案につきまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、お手元の資料で、意見のポイントにつきまして、資料冒頭の囲みボックスで整理いたしました。四点ございまして、第一に、本法案は、何よりも安全を優先した原子力利用を求めるものである、安全最優先を明記したもの。それから二点目、脱炭素社会の実現に貢献するべく基本的な施策を述べたものである。そして三点目、持続的なエネルギー確立が実現できること。そして最後に、電気事業の安定性と予見性、これを確保するものであり、これは、ひいてはエネルギー、電力の安定供給につながるものであると考えてございます。
 これから陳述します意見は、資料に示します次の項目、現状認識に基づくものでございます。まず、エネルギー政策とは、安価なエネルギー、電力を、全ての国民、全ての産業界、ここに安定に供給する、これが目標でありまして、また原点でございます。脱炭素社会の実現は、化石燃料中心の産業、社会構造を大転換することであり、それは極めてハードルが高いと言わざるを得ません。また、エネルギー政策喫緊の重要課題、これは、足下のエネルギー危機の克服、それからエネルギー政策の遅滞、こういったものの解消、これが最優先課題である。
 以上の三点の現状認識に基づき、以下、意見を述べさせていただきます。
 まず、お手元の資料の三ページの図を御覧ください。
 こちらに世界の一次エネルギーのシェアを、一八五〇年から二一〇〇年、そこまで二百五十年間の時間軸で描いてございます。出典は、マルケッティという方の一九七七年の有名な論文でございます。彼は、生き物が生存競争で争っていく、生存競争を行う、それと同じ考え方を用いてエネルギーのシェアを考察しました。この図の中で、黒い実線が、木材、石炭、石油、ガス、原子力といったエネルギー源のシェアを示しております。その黒い実線の周辺に細い線が描いてあるのが御覧になれると思います。これは一九七〇年までの実データでありまして、彼のモデルがこの実データをきちんとフォローできている、予測できているということを指摘しているところでございます。
 この図を見ますと、石炭がまきを超えたのは一八八〇年、そして一九三〇年代に最大のシェア七〇%を占めてございます。石油が石炭を超えたのは一九六〇年、そして一九七〇年代に最大四九%のシェアを占めてございます。このように、一九七〇年までは、潤沢で低廉で安定なエネルギー、これを求めて新しいエネルギーが開発されますと、それが主役を取って代わる、そういう構図でございました。
 この図に一九六五年から現在までのデータを私の方で追記してございまして、それが色のついた太い線で描いてあるものでございます。この図を見ますと、一九七〇年代以降、データはモデルの線から乖離してございます。ほとんどのエネルギーが横ばいの傾向になっている。その中で、原子力と再生可能エネルギーがそれぞれ、一九七〇年代、それから二〇〇〇年代から伸びている、活用され始めたということが分かります。こうして、その時代で最も潤沢、低廉、安定なエネルギーを選択するという時代、七〇年以前でございますが、それから、エネルギー源を多様化する、あらゆるエネルギーをうまく組み合わせて使っていく、そういう時代へと転換したのだということでございます。
 もう一点、この図中の右の方に、現在のエネルギーミックスの数字が書いてございます。化石エネルギーが上から石油、石炭、天然ガス、これを合計すると八四%、そして脱炭素エネルギー、水力、再エネ、原子力、これが一六%です。なお、日本もこの世界の合計と同じ八四%、一六%という数字になってございます。
 今般、GX実現に向けて基本方針が決定されたわけですが、この化石エネルギー八四%、脱炭素エネルギー一六%、これは日本も世界も共通なわけですが、それを逆転させるということを目標としてしっかり掲げないといけません。
 では、そのために何が必要でしょうか。GX実現のポイントは、省エネ、再エネ、原子力、この三つです。また、GX実現に取り得る電源のオプション、これは三種類と考えます。まず、再エネと長時間の蓄エネルギー技術の組合せ、そして二番目に火力と炭素回収、貯留技術の組合せ、三番目に原子力、そういうことになります。エネルギー危機の克服とエネルギー政策の遅滞解消のため、あらゆるエネルギーの選択肢を追求するという基本方針、これはぶれてはならないと考えます。
 さて、一ページに戻っていただきまして、次に、原子力基本法についてでございます。
 原子力基本法の公布は一九五五年。その目的は、将来のエネルギー資源の確保であるとされました。基本方針としては、平和利用、自主、民主、公開の原則、安全確保、それが述べてあります。
 今回、原子力基本法の改正で最も重要な点の一つは、基本方針に、原子力の事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力を求めたということ、また、国の責務として、平和利用は安全性の確保を前提とするとしたことであると考えます。
 福島第一原子力発電所の事故を防げなかったことの反省と事故から学んだ教訓を生かして、そして、安全最優先を基本方針に明記し、それを前提として基本的施策を遂行される、そういう内容でございまして、私としては評価してございます。これが、資料冒頭の囲みボックスの一点目、安全最優先というのがポイントであると申し上げた点でございます。
 さて、エネルギー基本政策は、エネルギー政策基本法に基づき、エネルギー需給に関する施策を求めてございます。これが施行されたのは二〇〇二年六月。その目的は、地域及び地球の環境の保全、それから経済社会の持続的発展としてございます。
 この度の原子力基本法改正では、その目的として、エネルギー資源の確保と並び、地球温暖化の防止ということが加えられたわけでございます。また、第二条として、国の責務は、非化石エネルギーの利用促進、エネルギー供給に係る自律性の向上に資するといたしました。
 エネルギー政策基本法と平仄を合わせ、エネルギー資源の確保と脱炭素を原子力基本法の骨格としたわけで、GXの実現、これを牽引する役割を担うというものと期待してございます。資料冒頭のボックスの二点目、これがカーボンニュートラルという点です。
 さて、資料の二ページ目、原子力の持続的活用というところを御覧ください。
 ここ数年、日本の電力需給体制、これが脆弱化してございます。二〇二二年三月には電力需給逼迫警報が出され、この先は計画停電に行かざるを得ない、そういう状況にあるわけでございます。こうした毎年のように経験する電力不足、これは日本が、既に述べましたように、化石エネルギーと脱炭素エネルギーの比率、これは世界平均と同じ八四%が化石エネルギーに依存しているわけでございまして、脱炭素のベースロード電源、二〇二二年のエネルギー白書によりますと、原子力が世界全体では四・三%なわけですが、日本は一・八%という数字でございます。すなわち、この脱炭素電源一六%の中でも原子力の占める割合がこのように低いこと、これが、非化石エネルギー利用促進と自律的なエネルギー需給構造の構築が喫緊の課題であると申し上げる理由でございます。原子力は、他のエネルギー源や技術と相まって、エネルギー政策の自己決定力を高める持続的なエネルギー源と位置づける必要があると考えてございます。
 GXの基本方針では、原子力は、安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、脱炭素のベースロード電源として重要な役割を担うと位置づけられました。GX脱炭素電源法では、原子力発電に係る高度の技術維持確保、人材育成確保、産業基盤の維持強化、研究開発成果の円滑な実用化、安定な事業環境の整備、そしてバックエンド事業の着実な実施、こういった点が記されてございます。
 エネルギー政策は国家百年の計だと考えてございます。新しいエネルギーが登場して普及するには、五十年、百年という期間がかかります。十年程度以内で結果を出すべき比較的短期的な政策だけでなく、中長期的な展望を見据えなければなりません。単一エネルギーに過度に依存することのリスクを認識して、長期的な視点を忘れないようにしなければなりません。原子力の基本的施策は、発電からバックエンドに至る、いわゆる核燃料サイクルに取り組む重要性、それによって持続的なエネルギーシステムの実現に貢献することを述べてございます。これが、冒頭ボックスの三点目、持続性ある社会ということでございます。
 さて、足下のエネルギー危機、需給逼迫に対処するため、既設の原子力発電所を安全に活用することが不可欠です。既存の軽水炉を六十年間運転するとしても、二〇四〇年からは毎年一ギガワット程度、百万キロワットの発電所一基ずつの割合で設備容量は低減していきます。
 資料四ページ、こちらを御覧ください。
 世界では四百四十基、この資料とちょっと違ってございますが、IAEAのデータベースが一昨日改定されまして、これが現在の数字でございます。そのうち運転中は四百二十三基ということになってございます。それで、営業運転中の四百二十三基と四百四十基の差は、実はサスペンデッドという新しいカテゴリーがつくられてございまして、日本の安全審査中あるいは未申請の原子力発電所がここに分類されました。
 原子力発電所の年齢構成を見ますと、四百四十基のうち五十歳以上は二十七基、四十歳以上は百十四基という実績でございます。下の図は設備容量を合計したものを年齢ごとに整理したものであり、上の図は年齢ごとに設備利用率を描いたものでございます。上の図から、四十年を超えたプラントで、いろいろトラブルが生じて設備利用率が低下するというような傾向は見られません。特定の運転期間を定める合理的な根拠はないというのは、世界的にも共通の技術的な認識でございます。この図はそのことを端的に示していると考えてございます。
 また、この図から、米国の原子力発電所の平均年齢は四十三歳、それに対して日本は三十一歳です。今後、各国で運転経験が蓄積されています、そういうものをしっかり共有して、エビデンスを踏まえて、利用の在り方を今後とも見詰めていくということが大切であると考えます。
 原子炉等規制法では、長期施設管理計画を定め、劣化評価を行うということで、三十年時点から十年以内で厳格に審査を行うということがうたわれてございます。安全確保を前提とするという、これを満足する制度であるというふうに評価してございます。
 先ほど、IAEAデータベースにサスペンデッドというカテゴリーが新設されたということを申し上げました。それほどに、原子力発電所がこれだけ長期間停止しているということは、国際的に見ても例外的な状況にあるわけでございます。電気事業法において、延長する運転期間が二十年を超える場合、条件付で停止期間を考慮する、それを認めるという方針は、規制委員会による劣化の管理がしっかり行われること、事業者の安全確保への取組がちゃんとできること、そして海外の運転実績、こういう点から見ても適切であり、合理的であると考えてございます。
 原子力基本法が定める事業者の責務、安全を不断に見直し、安全向上の体制を強化し、防災の体制を充実強化する、そのためには適切なリソース配分をすることも可能となってくると考えます。したがって、事業予見性を高めるものにつながるわけですし、それがひいては安全の向上にもつながるものだと考えてございます。これが、ボックスにある四点目でございますエネルギー安定供給です。
 以上の意見を述べさせていただきましたが、最後に、脱炭素社会の実現と経済安全保障の両立という大目標を私たちは掲げているわけでございます。エビデンスベースで、今後とも、得られる知見を反映しつつ、原子力の価値を実現することを期待して、意見陳述、終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 山口彰

speaker_id: 19802

日付: 2023-04-14

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会