川崎真規の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○川崎参考人 日本総合研究所の川崎です。
 本日は、意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。
 お手元の資料の概要のスライドを基に御説明させていただきます。
 私からは、かかりつけ医、医療提供体制、医療DXをテーマに、今後取り組むべき課題について三点、お話し申し上げます。
 まず一点目ですが、患者の方々に加えまして、子育てや家族の介護を行っている方、健康で現時点では医療機関にかかっていない方の視点も踏まえた、早期診断や治療にとどまらないプライマリーケアチームを核とした地域医療の普及について申し上げます。
 プライマリーケアチーム、ここでは略してPCTと申し上げます。これは、自身の一生涯を診る医療従事者等多職種から成るチームとします。PCTが普及した社会におきましては、私たちは、健康管理の悩みや心身の不調などを自身のかかりつけ医がいる総合診療科やかかりつけ医科、若しくは家庭医療科など、これまでにない科室に相談しているものと考えます。これまでどおり臓器別等の専門治療をこのPCTと情報連携しながら受けるだけでなく、どの臓器なのか自身で特定せずに相談もできる、このような社会になります。
 この社会では、我々が医療機関を受診いたした際に、例えば、内科の観点では問題ありませんと言われたり、それは病気ではありませんと言われることを心配しなくてもよくなります。
 例えばですが、ある日、高齢の方が腰が痛いとして診療所に来られます。レントゲンを撮ると圧迫骨折があり、骨粗鬆症もございました。この場合、総合診療や家庭医療学の観点では、生物・心理・社会モデルという考え方から、原因を医学的に追求するだけではなくて、受診者の家族や職場、社会環境等も踏まえて、受診者の抱える悩みや不調、それを取り巻く環境を含めて寄り添い、対応いたします。これにより、受診されている方が、実は、自宅に寝たきりの配偶者がおりまして、その方をお一人で介護しており、腰が痛かったという生活環境が見えてきます。その際には、ヘルパーの方をお呼びするといったような対応がなされるわけです。
 次に、自身が診療科をまたがる複数の疾患を持っていらっしゃる方で、その方が子供の看病や親の介護も行っている場合を想像していきます。この方は、自身の複数の疾患について様々受診をしながら、子育てや介護の悩みを抱えています。この際に、PCTが集まりますと、この悩みを我々は同時に一度で相談することができるようになります。
 さらに、自身の親が遠く離れて、共働きをしているような現役世代の方も想像していきたいと思います。この場合、互いの親について、それぞれの地域にいるPCTが責任を持って対応していると、現役世代にとっても安心できる制度になってくるものと考えます。
 もちろん、このような対応をしてくださる医療従事者の方々は現状もいらっしゃると考えます。しかしながら、問題は、このように臓器などを特定せず相談でき、私たちが伝えたいストーリーを聞いていただける心理的安全性が確保された患者中心の医療を実施している医療従事者を見つけることは簡単ではないということです。
 その理由は三つあります。
 一つは、医療法施行令第三条の二において、総合診療科、家庭医療科、かかりつけ医科という標榜が認められていないためです。このため、私たちは町中でこれらの看板を目にすることはありません。
 二つ目の理由は、院内表記やウェブサイト上では総合診療科の表記自体はできる場合がありますが、総合的な内科として説明されているなど、その言葉の使われ方は様々な状況になっております。
 そして三つ目は、総合診療や家庭医療学などを専門的に学んだ医療従事者の数が少ない点が挙げられます。これらを専門的に学んだ医療従事者は二千名ほどと考えられ、診療所の医師数約十万人に対して二%と考えられます。
 また、これにより、地域によってPCTの姿は様々あると考えます。このため、今後の第八次医療計画等に基づき、各都道府県で医療提供体制に関する検討がなされますが、これらの検討が進むために指針を一つ示すべきと考えます。
 具体的には、患者及び健康な方が、自身の健康の悩みや不調、生活などの問題をより相談できるために、その方の生涯を診る責任を持つ医療機関、そこの医師がかかりつけ医となり、患者中心の医療を提供する生物・心理・社会モデルを踏まえた標準的なプライマリーケアを核とした地域医療の実現に向けてロードマップを二〇二四年度に向けて作成するなど、具体的な指針が必要と考えます。この場合、医師が近くにいない地域も考えられますので、看護師、薬剤師、介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士、歯科医なども含めた地域の方々の活躍も踏まえた検討が必要です。
 次に、二つ目としまして、価値に基づく医療の実装及び給付と財源の均衡性確保の仕組みづくりについて意見いたします。
 まず、現状ですが、医薬、医療機器にかかわらず、医療全体を対象にデータに基づき継続的にその価値を評価する公的な役割や制度は実質的に見当たりません。我々が目指すべき社会は、学会などのガイドラインや指標に基づき、提供されている医療全体についてその価値の分析がなされている姿と考えます。ここでいう価値は、治療結果だけでなく、社会的な価値も含めた包括的な価値と考えております。これにより、医療の価値が低ければ価値を見直し、場合によっては、保険給付対象からの退出が自然と促されて、新たな価値のある医療が利用できるという環境になるべきと考えます。そして、そのためには、価値に基づいて医療を継続的に評価する役割、制度を実装すべきであると考えます。これは、データに基づいた政策検討を進める上でも重要であり、医療分野のデータ分析に関する国内での新たな雇用創出にもつながると考えます。そして、医療データやリアルワールドデータ解析に関する研究、また、これらの研究に従事する人材の育成にもつながります。
 そして、価値の低い医療を特定し、給付すべき対象を議論し、その上でも足りない財源については、租税、社会保険料、窓口負担の議論を行い、対応すべきか検討し、社会保障制度の持続可能性確保に向けた政策的議論を進めるべきものと考えます。
 三つ目は、多様な医療等の関係者のニーズを実現するために必要な医療DXの推進についてです。
 現在、医療DXの工程表が議論されており、電子カルテ情報の一部である三文書若しくは二文書六情報などについてデータ連携の検討も行われております。しかしながら、医療DXに限らず、デジタル化は、それ自体が目的ではなく、達成すべき目的を実現するための手段と考えます。つまり、医療DXにつきましても、達成すべき目的を具体化したグランドデザインを明確にした上で、その実現のために必要なことを議論すべきと考えます。これにより、既存の仕組みを前提とした上での改良、単年度でできることに収れんせずに議論を進めるべきと考えます。
 そこで、我々は、様々な有識者の方々とともにヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブルを組織し、これらの提言を行いました。そこでは、医療DXの意義として、人々の健康増進につながる医療の質の向上、新薬の創出や医療開発といった医療の技術革新、医師の働き方改革支援など医療資源の最適化、社会保障制度の持続可能性確保という四つを示しています。そして、これらの意義を踏まえて、医療データの有効かつ適切な利活用を促進するために、医療データ利活用のあるべき全体像を示すグランドデザインの構築、臨床、一次利用と研究開発などでの二次利用のためのあらゆる医療データの適切な連携、共有を可能にするデータ基盤の構築、医療データの利活用が進む適切なデータガバナンスの実装が必要と考えます。
 政府及び関係者の皆様におかれましては、医療DXの意義を踏まえ、あるべき全体像についてのグランドデザインを示し、徹底的な改革を進めていただきたいと考えています。既存業務を効率化することはデジタライゼーションとなります。目指したい社会像を実現するのがデジタルトランスフォーメーションであり、それが医療DXになるべきと考えます。
 では、まとめでございます。
 一つ目の意見では、総合診療や家庭医療学に精通するPCTを核とした地域医療の普及を進めるべきとし、総合診療や家庭医療を患者が選択できる環境を整備すべく、標榜科や地域での検討に資する指針を提示すべきとの意見をいたしました。
 二つ目の意見では、市民、患者から信頼される持続可能な制度とするべく、医療全体を対象とした価値に基づく医療の実装に挑戦するとともに、社会保障制度の持続可能性に向けて、安全にデータを利活用できる役割と仕組みを設けるべきと意見しました。
 三つ目では、医療DXについて、あるべき全体像を示すグランドデザインの構築と、それに基づく徹底的な改革の必要性について意見をいたしました。
 最後に、日本の強みは、国民が長寿である点、国民皆保険制度により、ばらばらではあるものの、医療データ自体がどこかには存在している点と考えます。この強みを生かすためにも、骨太の方針などの国家戦略の一丁目一番地に健康医療戦略を置き、日本及び世界の人々の健康寿命延伸に貢献する世界的な位置づけを目指すとともに、健康医療産業は日本経済を支える強化、投資すべき成長産業と捉え、政策検討が進むべきと考えます。
 以上、私からの意見とさせていただきます。
 御清聴、大変ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121104260X00620230404_006

発言者: 川崎真規

speaker_id: 8555

日付: 2023-04-04

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会