宇都宮浄人の発言 (国土交通委員会)
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○宇都宮参考人 関西大学の宇都宮でございます。
このような場をいただきまして、ありがとうございます。早速ですが、資料に沿って説明したいと思います。
本日は、私は、地域づくり、まちづくり、あるいは統合的政策という観点から課題を申し上げたい。
今までお話がありましたとおり、資料の二、三ですけれども、地域交通の衰退、これが、地域の衰退、そして自家用車の過度な依存、こういう悪循環の中で、非常に厳しい。そういう中で、公共交通は公共財であり、かつ外部不経済を削減する、そういう意味がある。だから、国交省の資料でも、公的支援が必要なんだよとこれまで言われてきた。そういう意味で、今回の法改正というのは一つの大きな方向性だと思うのです。
少し課題を申し上げますと、めくっていただきまして四ページ、五ページですけれども、現在の地域公共交通計画等の手引を見ますと、結局、じゃ、どうしろというかというと、公共交通をいかに効率よくといいますか、とにかく事業の収支率を上げて公的資金を使わないようにやってくれ、これが手引の最重要三ポイントであって、例えば、外部不経済を削減するという、右の五ページの自家用車分担率の縮小というところは、交通施策との関連性の高さすらマークが入ってなく、推奨にもなっていない、こういう形の手引になっている。やはり、これではなかなか地方が動けないんだろうな、この辺の改善は今後も求められる話だろうなと思います。
次に、めくっていただきましたら、小山市のように、生活支援だけではなくて都市経営のツールだよということで、領域区分をして、しっかり支援をして、その結果、何と、コロナ禍にもかかわらず、四・九倍に定期券保有者が増える。これはやはり、年間定期券を七割引きにしたということですけれども、小山市の考え方は、もう都市経営のツールで公共サービスなんだ、だから、収支率ではなくて、効率性というのは、いかに政策目的を効率的に実現できるか、こういう姿勢を取っている、こういうのが重要なんだと思うんですね。
もちろん、これはバスですけれども、鉄道になると、そうはいってももう少しお金がかかるとか、議論があると思う。そのときに費用と便益ということを考えることになるわけですが、この右のページを見ていただくと、交通投資の効果のうちの費用便益の範囲というのは非常に狭いわけです。それがまず一つ。
それで、経済学者なんかは最近、幅広い経済効果、ワイダーベネフィッツというところを注目しているんですが、今日は、オプション価値アンド非利用価値、赤枠をつけたところを御説明します。
めくっていただきますと、これも国土交通省のマニュアルにしっかり書いてあるわけですね、オプション効果というものがあるんだと。これは何か。いつでも利用できる安心感。つまり、運賃収入だけで賄うというのは、今、利用しているかどうかで決まる。けれども、そうではないと。交通というのは、ひょっとすると将来自分が使うかもしれない、あるいは自分の子供が使うかもしれない、そうやって家を買ったりする。つまり、そこにオプション価値というのがあるんだということですね。
こういったものが本来あるんだけれども、残念ながら、費用便益分析上の便益では出てこない。したがって、費用の安い何とかになってしまうんですが、便益マニュアルに、国交省のマニュアルに書いてあるんですね。BバイCが一以下とかいう誤った評価をしちゃいけないよ、ちゃんとこれは限定されているんだから総合的に判断しなさいよということが書いてあるんだ、こういうことがまずあるんだということを申し上げておこうと思います。
次に、政策の統合性ということで、海外の事例を少しお示ししたいと思いますが、これは、見てのとおりですけれども、日本はあしたから値上げとかありますが、オーストリア、ドイツ、こういったところは、燃料費は上がっているんですけれども、一年間住んでいる人には非常に安いチケットを出す。一日三ユーロ。年間十五万円最初に払っちゃうと、北海道の広さのオーストリア全土、新幹線も含んで乗れちゃう、こんな切符を出して、今こそ公共交通にシフトしてグリーン化するんだと。イギリスはグリーン産業革命ということで、鉄道路線の拡大、復活ということも言っているわけですね。
なぜ、じゃ、ヨーロッパがそういうことができるかというと、これは、先ほどあったように、公共サービスなども、地域公共交通は独立採算のビジネスじゃない、地域公共サービスなんだということで、事業者はパブリック・サービス・オブリゲーションというPSOは課されるわけですが、しっかりそこに資金提供する、こういう仕組みができ上がっています。
今回のは、法改正のエリア一括というのは、その第一歩だとは思うんですけれども、そこにちゃんと資金をあてがう、あるいは、鉄道については、欧州の場合、上下分離が原則ですから、インフラを支えた上で、サービス部門について、契約をベースにしてしっかり公的資金で支えながら、その上で民間が実力を発揮できるような仕組みになっている、こういうことですね。
そういうことをやるために、次のページですけれども、モビリティー計画というのを各都市が作っているわけです。グラーツ、小さな地方都市です、オーストリア、二十九万人。交通手段分担率、今でも公共交通がそれでも二割ある。日本の地方都市の公共交通分担率五%と比べると四倍乗っているわけで、非常ににぎわっているんですが、それでもまだこれからもっと自動車の分担率を低くしていくんだよというこの目標が一丁目一番地なんです、世界の交通計画における一丁目一番地。日本と大分違う。
例えば、ここの州なんかは、そもそも、商業開発、郊外にショッピングセンターはあるんです、開発のためには、三百メーター以内に三十分に一本以上の公共交通がなければ開発許可は下りない、そういう土地利用政策ともリンクしている。もちろん、サブスクのチケットは、市民であれば安く乗れる、こんな仕組みですね。
この計画というのは、SUMPと呼ばれる、今日のタイトルに、サステーナブル・アーバン・モビリティー・プラン、十二ページですけれども、こういうEUが出した計画にのっとっていますが、実はもうこれ、EUだけではなくて全世界千都市が、今SUMPに基づいて地域公共交通計画を立てています。
これは何がいいかというと、人に焦点というのはもちろんなんですが、やはりバックキャスティング、要するに、制約条件というのは、予算制約の前に環境や社会制約条件があるカーボンニュートラルだと。そこからバックキャストしていく、SDGsと同じですけれども。何が必要なんですかということになると、今こそ、公共交通、グリーンイノベーションが必要ですよということになってくるから、先ほどのオーストリアやドイツの政策、あるいはグラーツのような政策が取れるんだということです。
次をめくっていただきますと十三ページ、ちょっとややこしい図ですけれども、これを、何も整合性を取らないと何が起こるか。これは、理論的に、二地点間の移動を道路と公共交通があるということで仮定して、道路は左側の原点から量を、公共交通は右側の原点で、この一定の量をシェアするんですけれども、実を言うと、ここで公共交通を改善せずに道路投資だけ起こって渋滞を解消させようとすると、一見、道路の費用曲線、費用というのは、これは時間コストも含めるんですけれども、下がって、みんな、ああ、道路が便利になったねと乗るんだけれども、その結果、公共交通側の時間コスト、費用、公共交通は平均費用が上がってしまう、人が減ると。
結果的に、最終的に何が起こるかというと、道路投資をして公共交通は改善しない。むしろ最終的に渋滞が増えて悪化する、社会全体が損する仕組みなんだというのが、これは理論的には分かっているわけです。日本では、こういうことが実際に起きているのではないか。その意味でも、道路政策と公共交通の整合性も必要だろうということです。
その際のお金ですけれども、公共交通を支える公的支援、次のページ、十四ページを見ていただくと、ヨーロッパはそもそも、インフラのみならず運営費でも、運賃カバー率というのは五割くらいです。とんでもないねと思うかもしれませんけれども、例えば、日本の地方自治体でも、市民プール、市民会館、どうですか。大体、行政、書いていますよね、運営費の五割は料金負担していただきますよ、そういう仕組みなんですね。それと同じだと考えれば、公共サービスだと考えれば、別にとてつもないことをやっているわけではない。
その財源は何ですか。これは、確かにいろいろなケースがありますが、オーストリアですと、一般会計の再配分とか、あるいは日本と同じ地方交付税措置ですね。やはり地方というのは税収に偏りがありますので、そこを配分していく。そういう形でしっかり公共交通、公共サービスは支えるんだということです。ドイツなんかは、鉄道を五五%増やしましたよというのが、連邦交通省のホームページにばあんと出るわけですね。
あと、教育との整合性というのも問われる。現在、例えば、事業者は、通学定期割引とか障害者割引とかやっています。この価格政策を事業者負担でやっているということはどういうことかというと、間接的には、それは利用者負担ですから、実を言うと、地方でいえば八割の車を運転している人、俺は関係ねえよ。要するに、地方で通学定期割引を支えている人は誰かというと、公共交通に乗っている老人と高校生が、そのお金で高校生の通学割引を支えている、障害者の割引を支えている。こういう受益と負担が全く一致しない制度が、たまたま明治時代の国鉄の社会政策に基づいた仕組みから残っている。こういうことは、本当にはっきり変えていかなければいけない。バリアフリーも同じです。みんなが社会参加するためにバリアフリー化しているのに、費用負担しているのは公共交通を利用する人だけ、これはおかしい、広く社会負担の仕組みが必要だろう、こういうことです。
最後、まとめてありますけれども、本当に外部不経済が生じる市場メカニズムではいけないわけですから、しっかり公が関与するんだけれども、その際には、しっかりお金の部分も含めて関与していく、そして、しっかりとしたバックキャスティングのSUMPによる計画を立てて、整合的な政策を取る教育も含めて、本当に教育助成等の社会政策を民間事業がやっているという仕組みは、これは日本だけですから、こういうことは改善が必要であろう。
あとは、長い目で見る、あるいは、支出という社会的便益の幅広い考え方、分野横断的なクロスセクターの考え方、こういったものに基づいて、今回の法改正に基づいた新しい交通政策というのは課題があるのではないかなというふうに思う次第で、地方交付税の活用とか、あるいは、今後、事業法が、今、独立採算をベースとした事業というのが前提になっていますけれども、その辺りも含めて、公共交通というのは公共サービスなんだという在り方をもう少し検討していく必要があるんじゃないかなということを課題として考えております。
ということで、私からの陳述は以上にさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)