小田原潔の発言 (財務金融委員会)
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○小田原委員 五十五兆円増えたのと、四十九兆円増えた。
我々は、コロナになって商売ができなくなって大ごとだと思ってお金を出したわけですが、出したお金よりも貯金が積み上がったお金の方が多いという、何とも皮肉な結果のようにも見えます。困っている人と預金を積んだ人はもしかしたら違うかもしれませんけれども、ただ、全体的に見て、真水を出したものがほとんど貯金になっているというのはどういうことかということを考えなければいけないというふうに思います。
私たちは、この三十年間の間、三百円の牛丼が大好きになりました。よくあんな安いお金であんなおいしいものが食べられると思います。サッカーの本田選手が、先月ですかね、日本のラーメンは余りにおいしくて、こんなに安いんじゃかわいそうだから二千円払うと言ったら、炎上していました。だけれども、外国人からすると、それが自然な感覚だと思います。
ちょっとオタッキーな話になりますが、恐らく一九八〇年代の前半からラーメン道みたいなものができて、それまでは、引揚者が中華そばを出す、料理人がラーと言ったからラーメンということだったと思いますが、環七、環八、仕事を終えたタクシーの運ちゃんがおいしいラーメンにたかるようになって、外苑前のHケンとか、世田谷の代田のNデンKデンとかというラーメン道ができた。そうすると、どんなにおいしくても千円を超えたものはラーメンじゃないという制約の中で、あれだけおいしいラーメンを作っても千円以上のものが出せなかったというようなことではないかと思います。
さて、牛丼の話に戻りますが、一時アベノミクスがうまくいって、二年間ぐらいはプレミアムブームみたいなものができましたが、少し正気に戻ると、私たちは、千二百円のスープとサラダつきのランチを一回食べるよりも、同じ千二百円ならあのおいしい牛丼を四回食べられることの方がうれしいという人の方が多いと思います。それはなぜかというと、四回、一度おいしい牛丼を食べても、あと三回、未来にあの牛丼が食べられるということに満足感を感じるからでしょう。
老若男女、お金を使わない理由はみんな同じでありましょう。それは自分が何年生きるか分からないから。今、女性が八十七歳まで生きて、男性が八十一歳まで生きる。百歳になるのも時間の問題ではないかとみんな思っていると思います。そうすると、二十年親の負担で教育を受け、四十年現役で働いたとしても、それから無収入の時間が四十年ある。だから、今のうちに将来いろいろなことに使える安心感が欲しいということでお金をためちゃったということではないかと思います。
別に個人預金が増えても、それはよかったですねという気持ちはあるんですけれども、私が訴えたいのは、政府支出を増やしても個人消費は反応しないという三十年間だったのではないかということであります。
三年前、コロナの自粛期間があってとても時間ができたので、私は、その頃ぶいぶい言わせていたMMTの、五年前に出た一番初めのランダル・レイさんが書いた入門書と、同じくランダル・レイさんとビル・ミッチェルが書いた英語の原書を、それぞれ三回、部分によっては四回、一時は両方とも丸暗記するぐらい読みました。何でそんなことをしたかというと、本当に原書に書いてあることが正しく日本語に訳されているのか、本当に原書にはお金は刷り放題だからじゃんじゃん公共投資をしろと書いているのかというのを突き止めたくて読みました。
結論から言うと、主に先進国の自国通貨、主権通貨は破綻しないとは確かに書いてあります。かといって、じゃんじゃん刷って公共事業をしろとは書いてありません。どちらかというと、MMTというのは左派の理論で、国内で最もいけない政策というのは失業者をつくること、なぜなら、国民生産を落とし、社会不安をつくり、元に戻すのにこれまた社会的なコストがかかるからだ、したがって、失業者が出たら、国はお金を刷ってでも失業者を雇い、仕事のトレーニングをして、いつか景気が上向いたときに政府が払う賃金よりも高い世界に送り出してあげる人材のプールをつくりなさいというのが、MMTの訴えの本質でありました。
ただ、日本だとどうしても、政府の負債は民間の資産だからいいことなんだということを言う人が割と多くて、だから、じゃんじゃん道路を造って、じゃんじゃん橋を造って、新幹線を通して。それも大事ですよ、大事だけれども、そうしたら経済がうまく回るのかというと、そうじゃないんじゃないかということです。
実は、MMTの本にはそう書いてありますが、それと同時に、GDP、これはMMTに限らず、消費と投資と政府支出の合計です。それから三部門収支、海外部門と民間部門と政府部門の収支というのは、一年のフローを足してもゼロになるし、その蓄積のストックを足してもゼロになる。この二つが頭から離れると政策を間違えると、結構初めの方に書いてあります。
政府支出を増やすというのは、確かにその分だけGDPをちょっと上げるかもしれないけれども、消費とは関係ありません。また、国の負債は民間の資産だというのは、ストックの話をしているわけであって、今年一年間のフローの話ではありません。だから、じゃんじゃんお金を使うと個人消費が伸びるはずだというのは、現実的にはうまくいっていなかったんじゃないかと思います。
さて、今じゃんじゃんお金を使えと言う人たちの間で、需給ギャップを公的支出で埋めろという議論がよくありました。大体二十兆円ぐらいの話をする人が多いと思いますが、先ほど教えていただいた期間で需給ギャップはそれぞれ幾らだったか、教えてください。