小野寺真也の発言 (法務委員会)

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○小野寺最高裁判所長官代理者 裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査検討の結果につきまして、御報告を申し上げます。
 最高裁判所は、神戸連続児童殺傷事件等、社会の耳目を集めた少年事件の記録を二項特別保存に付さずに廃棄していたことなど、記録の保存、廃棄をめぐる一連の問題を重く受け止め、有識者委員会を立ち上げて調査、検討を行ってまいりました。昨年十一月二十五日に第一回の会合を開催し、以降、去る五月二十三日まで合計十五回の会合を重ね、同月二十五日、有識者委員会において了承いただきました調査報告書を、最高裁判所事務総局として公表した次第でございます。
 最高裁判所は、これまでの記録の保存、廃棄の実情や、特別保存に付さずに廃棄した原因等を明らかにするため、報道機関から問合せのあった少年事件や憲法判例百選に掲載された民事事件など、合計百四件の個別事案について、当時の関係職員に対するヒアリングを行いました。また、全ての高地家裁を対象としたアンケート、神戸連続児童殺傷事件の被害者御遺族である土師守さんを始めとした関係者、専門家の方からの御意見の聴取なども行いました。
 これら調査の結果からは、令和二年の運用要領策定前の問題として、裁判所組織の中で、歴史的、社会的意義を有する記録の国民の財産としての価値に目が向けられることなく、保存期間が経過した記録は原則として廃棄するとの考え方、特別保存に付するのは極めて例外的な場面であるという消極的な姿勢が醸成、定着していたことが明らかとなりました。また、二項特別保存について、安定的、確実な判断を行っていくための認定プロセスや、具体的かつ客観性を持った認定基準がなかったことなど、認定プロセスや基準の在り方に問題があったことも影響しておりました。
 これらの問題は、平成四年の運用通達発出の頃からの最高裁判所の不適切な対応に起因しております。当時、最高裁判所は、特別保存の記録の膨大化の防止に取り組むべきとの強いメッセージを各庁に発するなどしており、これにより、裁判所内にあった原則廃棄の考え方や特別保存への消極的な姿勢を強めることとなりました。その後も、最高裁判所は、認定プロセスや基準の整備など、運用の適正化を図るための指導等も行っておりませんでした。下級裁判所を指導監督する立場として、最高裁判所の対応は誠に不適切であったと考えております。
 令和二年に、各庁で認定プロセスや基準を定めた運用要領が整備され、二項特別保存の件数が大幅に増加するなど、運用は相当程度改善されたことがうかがえます。
 他方で、運用要領の策定後においては、本来、既に終局している事件の記録について遡って運用要領の基準を当てはめること、これを私どもは遡及適用と呼んでおりますけれども、そのために必要となる過去の日刊紙への掲載状況を確認する作業等が積極的に講じられておりませんでした。
 このような遡及適用の問題について、最高裁判所は、問題意識は持っていたものの、各庁に対して明確に方針を示すなどの対応をせず、その結果、多くの庁において、既に終局している事件の記録について、運用要領の日刊紙二紙掲載基準に該当するか検討することなく漫然と廃棄されてしまいました。このように、遡及適用の問題についても、最高裁判所の不適切な対応に起因したものであります。
 ただいま申し上げた問題点や原因を踏まえまして、今後の記録の保存、廃棄の在り方について御説明をいたします。
 裁判所は、歴史的、社会的意義を有する記録を二項特別保存により適切に拾い上げる枠組みを改めて構築し、裁判所自らによる安定的、確実な判断に加え、常設の第三者委員会を通じて国民の意見や専門家の知見を取り入れて、適切な運用を確保していくことを目指してまいります。
 そのための取組ですが、組織に定着した考え方、姿勢を改善すべく、第一に、記録を保存する意義を組織的に共有してまいります。記録の中には、歴史的、社会的意義を有し、国民共有の財産として後世に引き継ぐべきものが含まれております。このことを組織的に共有するための方策として、規程に、記録を保存する意義を明記した理念規定を追加したいと考えております。
 第二に、常設の第三者委員会を設置するということであります。歴史的、社会的意義を有する記録を適切に二項特別保存に付し、後世に引き継いでいくためには、裁判所の判断を国民の意見や公文書管理等の専門家の知見等も取り込んだものとしていく必要がございます。そこで、法曹関係者や法学者、報道関係者等の有識者のほか、アーカイブズ学の専門家などにより構成される常設の第三者委員会を立ち上げ、国民目線での意見を反映していくことを想定しております。
 第三に、国立公文書館への移管の拡大です。現在は民事訴訟事件の記録など一定の範囲で移管しておりますが、民事、家事、少年という事件種別を問わず、歴史的公文書として速やかな移管が可能となるよう、移管対象の拡大等を検討することとし、内閣府や公文書館との協議を進めてまいります。
 また、認定プロセスや基準につきましては、可能な限り全国一律のものとなるよう見直していくことを予定しております。その際には、認定プロセスについては、二項特別保存に付すべきものは保存期間の満了を待たずに直ちに認定を行う形に改め、基準については、日刊紙の地域面を含めた掲載状況を確認することや、事件担当部申出の範囲を拡大することを検討してまいります。
 以上申し上げた取組のほか、特別保存の適切な運用の確保に向けて、体制の整備や支援等に取り組んでまいります。
 まず、令和二年の運用要領策定時には、遡及適用の問題に対する対応が不十分でありましたことから、最高裁判所においてしっかりと指針を示していくことを予定しております。
 また、外部からの特別保存の要望を促進するための取組として、裁判所のホームページからの容易な申出を可能とすることや、特別保存の判断結果について要望申出を行った方に通知をすること、広く国民の皆様に継続的な広報活動を行っていくことなどを検討してまいります。
 さらに、職員に対する職責に応じた研修等を継続的に行い、理解を深めていくことも行ってまいります。
 今回の一連の問題は最高裁判所による不適切な対応に起因しており、後世に引き継ぐべき記録を多数失わせてしまったことについて、深く反省をし、事件に関係する方々を含め、国民の皆様におわびを申し上げます。
 有識者委員会からは、補足的な意見として、今回の問題は、裁判所の記録管理に対する国民の信頼を大きく揺るがせたものであること、過去を検証し、そこから得られた教訓を生かし、特に組織に存する構造的な問題を改善していくことが信頼回復のために不可欠であること、今後は、新たに設置される第三者委員会の意見を参考にしつつ、最高裁が先頭に立って、関係職員においても現場の視点から改善に努め、これらの取組が実を結び、同様の問題が再発しないことを心から望むものであるなどと指摘を受けているところであります。
 最高裁判所としましては、このような有識者委員会からの意見を重く受け止め、現在保存に付しているものを含め、歴史的、社会的な意義を有する記録を後世に確実に引き継いでいくために、将来にわたって記録の保存、廃棄の適切な運用が確保されるよう、関係諸規定について速やかに改正作業を進めていくとともに、裁判所における体制の整備等を行ってまいります。
 また、今後の運用状況を踏まえ、更なる改善点がないか等、不断の見直しをしてまいりたいと考えております。
 報告は以上でございます。

発言情報

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発言者: 小野寺真也

speaker_id: 2153

日付: 2023-05-31

院: 衆議院

会議名: 法務委員会