杉尾秀哉の発言 (憲法審査会)

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○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉です。
 会派を代表して、緊急集会を中心に意見を述べます。
 そもそも緊急集会は、憲法制定時の立法事実として、災害などの際に緊急の立法等の機能を確保するために設けられたものです。また、金森大臣の答弁にあるように、どんなに精緻な憲法を定めても口実を付けて破壊されるおそれが絶無とは断言し難いという戦前の教訓を踏まえた国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である参議院に二院制国会の代行機能を託し、民主政治を徹底させるという根本趣旨に立脚する制度でもあります。
 この緊急集会が災対法などの緊急政令を可能とする憲法七十三条六号の罰則付委任立法とともに措置されたことに鑑みますと、日本国憲法には五十三条の臨時会を含めて体系的かつ十全な緊急事態法制が整備されていると言えます。
 さらに、緊急集会については、金森大臣が、国会議員の任期の延長は許されず、必ず選挙に訴えて国民と国家の表裏一体化を現実化すると答弁で示したように、国民の選挙権を保障するとともに、一刻も早い総選挙の実施を必然とすることで緊急事態から平時への復元力が担保されるなど、権力の簒奪と濫用を防ぐ仕組みとなっています。
 つまり、緊急集会は、国民主権、国会中心主義、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理に基づき、かつ、これらの諸原理を守り抜くためのもので、良識の府参議院が世界に誇るべき制度であります。
 したがって、我々の会派は、緊急集会を積極的に肯定、評価し、その機能をより一層十全に確保する観点から提言を行います。
 まず、任期満了に係る論点について、GHQとの協議において日本側が解散以外の場合も提案していたことや、憲法制定議会やその後の関係者の議論には任期満了時を積極的に排除する見解はなかったことに加え、むしろ金森大臣が説明するように、参議院ができたことによって、それと組み合わせて更に一つの利益を考えようという見地と、日本国憲法が緊急勅令、緊急処分などを認めておらず、どうしても国会というものがいつでも開き得る体制を何らかの国会制度の趣旨を徹底して実行するために、二院制の下で参議院が担う役割として、権力の濫用を排除しつつ、いついかなるときでも国会代替機能を確保するという緊急集会の根本趣旨があります。
 これらに照らせば、憲法五十四条二項の類推適用により任期満了の際にも緊急集会は開催可能と解すべきで、それは立憲主義とも整合すると考えています。
 次に、緊急集会で参議院議員が発議できる議案についてですが、緊急集会を両議院と内閣の三つの権力の抑制と均衡に立脚する制度と理解した上で、現行の国会法の総理大臣の示した案件に関連のあるものに限るとの制約は基本的に妥当なものと考えております。
 その一方で、緊急集会の機能確保を十全のものとする観点からは、内閣による新案件の追加や、参議院が内閣に新案件の追加を促し、必要に応じて内閣に代替措置の検討も含めた説明責任を果たさせる国会法の改正を行うべきです。
 また、緊急集会の権能については、国に緊急の必要があるときに国会の機能を一時的に代行するものとして、法律、予算など広く国会の権限に属するものに及ぶ一方、参議院の単独議決や緊急の必要性の観点から認められないものもあると考えます。
 具体的には、憲法改正の発議、内閣不信任決議はこの機能の外にあると解すべきであり、総理大臣の指名については憲法七十一条や内閣法九条の総理大臣臨時代理制度で対処すべきと考えますが、一方、土井参考人の学説のように、総理や多数の国務大臣を欠く深刻な国家緊急事態では、法理上は指名可能な場合もあり得ると考えます。
 このように、私たちの会派の見解は、長谷部、土井両参考人を始め、学界の通説や多数説とも整合するものです。
 他方、こうした緊急集会の立法事実や根本趣旨と完全に矛盾する議員任期延長のための改憲が主張されていることは誠に遺憾と言わざるを得ません。以下、理由を申し述べます。
 まず、任期延長改憲の論拠となっている緊急集会七十日間限定説は、参院憲法審で、衆院憲法審で改憲を主張する会派の説明によれば、五十四条一項の四十日プラス三十日という文理解釈によってのみ、緊急集会を次の新しい国会が七十日以内に召集されることを前提とした平時の制度と断定するものです。
 しかし、こうした憲法解釈は、五十四条二項の国に緊急の必要があるときという文理や、緊急集会がナショナルエマージェンシーという大震災等の深刻な国家緊急事態にも対処する有事の制度として制定された立法事実に明確に反する上、解散時の内閣の居座りを排除するためにという規定、五十四条一項の趣旨や、任期延長の間に太平洋戦争が開戦された戦前の反省から、権力の濫用を排除するために設けられた緊急集会の根本趣旨そのものにも全く反します。
 すなわち、緊急集会は、一日も早い総選挙の実施を必須としつつ、その間に緊急性を要する立法等を行う必要がある場合である限り、七十日を超えても開催できると当然に解すべきものです。にもかかわらず、こうした緊急集会の立法事実や根本趣旨に一言の言及もないまま憲法審の毎週開催で七十日間限定説を繰り返すのは、緊急集会を恣意的に曲解するもので、濫用排除の制度を破壊して濫用可能な憲法改正を行おうとするものと断ぜざるを得ません。かかる憲法尊重擁護義務と立憲主義に反する暴論は国民と参議院を愚弄するもので、我が会派は絶対に容認できず、任期延長改憲には明確に反対をするものです。
 また、改憲各派は緊急集会は二院制の例外という単純な見解を各論点で振りかざしておりますが、金森大臣が任期延長を明確に否定する一方、衆議院の不在のときの不便を補う合理的な方法と説明した緊急集会の根本趣旨は、権力の濫用を排除しつつ、二院制の枠内で国会制度の趣旨を徹底して実行しようとするものにほかなりません。つまり、こうした形式的な二院制の例外論で緊急集会の機能を矮小化することは、まさに本末転倒と言わざるを得ません。
 さらに、改憲会派の主張するいわゆる選挙困難事態についてですが、国民の選挙権の制限に極めて厳格な要件を付した最高裁の判例法理は普遍性を有するもので、日弁連の累次の提言にもありますように、避難先での投票の確保など選挙困難事態を防ぐための措置を早急に講じることが必須です。
 具体的には、戦前の任期延長の濫用や東日本大震災、それに戦後の第一回総選挙の実例などを教訓に、いかなる事態にあっても半年を超えない数か月のうちに総選挙を実施する方策や体制の整備をこの国会の責任において速やかに行わなければなりません。
 こうした事態では繰延べ投票や緊急集会で選挙期日延期の臨時特例法を議決する必要性も想定されますけれども、被災地を中心とした衆議院議員の選出が遅れるという主張については、被災地を含む選挙区や全国比例の参議院議員と被災地外の衆議院議員が多数存在することなどから、被災地の実情を適切に国政に反映させることは可能というふうに考えております。
 いずれにしても、被災地外の国民の選挙権を制限する正当性は憲法の国民主権や議会制民主主義の原理からは見出せず、また、被災地の概念が通用しない感染症などを含めて、政府の緊急事態対応への国民の判断の機会を奪うことは決して許されません。
 この点、改憲各派の主張や二党一会派の条文案の選挙困難事態の要件には何ら具体性がなく、改憲の趣旨が不明である一方、選挙を一日も早く実施するための具体策に欠けており、改憲の立法事実の立証は極めて不十分です。
 なお、議員任期の延長には、第二次安倍政権以降の言わば、例えば七条解散の濫用の極みとも言えます二〇一七年国難突破解散や二〇二一年秋の任期満了直前の菅内閣の退陣など、濫用の危険性を実証する例が枚挙にいとまがありませんし、もしその危険がないというのなら、我々の会派が四月十二日に幹事会協議事項としたコロナ禍において政府・与党が臨時国会を召集しなかった理由を示すとともに、改憲による緊急政令の対象分野や対象事項を具体的に明らかにしてください。
 最後に、本審査会での議論を踏まえて、参院改革協議会において緊急集会の機能強化に関する解釈の整理や国会法改正の議論を、また選挙制度専門委員会でそれに付随する国民の選挙権確保の方策等の議論を行い、それぞれ早急に結論を出すべきです。
 なお、もう一つのテーマであります合区制度については、我々の会派は、単純な各県最低一名を選出する改憲は平等権や全国民代表などの原則から深刻な憲法問題を有すると考えており、我々が提出する法律による合区廃止案の必須の条件として、本審査会の平成二十六年附帯決議が示すような法令解釈のルールに基づく緊急集会の正しい憲法解釈とその機能強化の実施があることを付言して、会派の代表意見といたします。

発言情報

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発言者: 杉尾秀哉

speaker_id: 27581

日付: 2023-06-07

院: 参議院

会議名: 憲法審査会