片岡剛士の発言 (予算委員会公聴会)
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○公述人(片岡剛士君) 皆さん、おはようございます。PwCコンサルティングの片岡と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、主に四点、経済・雇用・財政に関連する話題についてお話をさせていただければと思います。お手元の方に資料がございますので、そちらに沿って順次お話をしたいと思います。
まず、一枚おめくりをいただきまして二ページ目のところを御覧いただければと思いますけれども、最初に物価の動向についてであります。
図表の一のとおり、日米ユーロ圏の消費者物価上昇率の推移を見ますと、二〇二一年に入った辺りからじわじわと物価が上昇しております。その中で、日本も二〇二三年の一月になりますと、全ての財を含むベースで四・三%、それから、食料、エネルギーを除いたいわゆる欧米型コアと呼ばれている物価上昇率でも一・九%と、こういう形で、欧米の物価上昇に引きずられるような形で上昇していると、こういう形になっております。
図表の二の方を御覧いただければと思うんですけれども、この物価上昇というのがどういう形で起こっているのかというものを消費者物価を構成している財別に見たものであります。日本のケースは一番下の方に書いてございますけれども、四・三%の物価上昇率のうち、日本が輸入品等から影響を受けています食料、エネルギーといったものが二・四%分ございまして、ある意味半分ちょっとぐらいでしょうか、いわゆる国内の需給関係というよりかは輸入品価格の上昇によってインフレが起こっていると、こういうことでございます。ただ、一・九%、食料、エネルギー除く物価上昇率というのは、これは一九九三年以来でございまして、いわゆる需要要因で物価が高まっているといった話もかなり強くなってきているということが言えるかと思います。
先ほど申し上げましたように、物価上昇につきましては全ての品目で四%を超えるという状況でございますので、日本銀行として、例えば二%の物価安定目標、これで達成できるのかどうかというところが焦点になってくるわけでございますけれども、図表の三のように、消費者物価の基調的な変動というものをいろんな指標で見ていきますと、こちらは、刈り込み平均値というものにつきましては既に三・一%という状況でして、二%を上回っている。それから、加重中央値、最頻値といったところも一%台というところで、かなり二%に近接しているという状況であります。
私自身は、この三つの指標が二%に近づく、ないしは二%を超えるというような状況になりますと二%の物価安定目標というのが達成されると、こういうふうに判断してもいいんじゃないかなというふうに考えている次第であります。
図表の四の方を御覧いただければと思うんですが、これは、消費者物価を構成しております五百品目以上の品目を取り上げまして、それぞれの価格上昇率というものを横軸に取り、その価格上昇率というのが全体の中で何%ぐらいの割合を占めているかというものを見たものであります。
一九九二年十二月といいますのは、これは、食料、エネルギーを除く総合ベースの指数で二%超の物価上昇率を記録したときの品目別の価格変動分布であると。で、これに近いような状況であれば、まあ二%、食料やエネルギー除いても物価上昇しているということなので大丈夫だという話になるわけですね。オレンジの棒グラフといいますのが二〇二三年の一月というところでありますけれども、七%以上の価格上昇率を示している品目の割合というのは、実は一九九二年十二月と比較しても割合としては大きくなっているわけですね。ですから、こういった高くなっている品目が三%以上の物価上昇まで落ち着くと、価格上昇まで落ち着くということになれば、おおむね二%の安定目標が達成できるということになります。ですので、今後は持続性が焦点ということになろうかと思います。
次のページを御覧いただければと思いますけれども、では、こうした物価上昇を支える経済動向はどうであったのかというところであります。
図表五、図表六、図表七といいますのは、物価、マネー、それから企業利益、賃金、そして図表七が価格判断、需給判断と、こういったようなものを見ておりますけれども、コロナ禍以降、日銀は政府と協力しつつコロナ対策という形でマネーを供給しました。このマネーの供給というのが、一つは物価上昇の力になっているということであります。それから、企業利益もコロナ禍以降落ち込んだところから改善をしておりまして、足下でも前年比で経常利益というのは高まっていると、こういう状況であります。
それから、価格判断なんですけれども、図表の七の方を御覧いただければと思いますが、販売価格判断、それから仕入価格判断といいますのは、これは価格上昇しているというふうに見ている企業さんというのが非常に増えている状況です。
従来であれば、こういった中で人々の所得が価格上昇に追い付かないという状況になりますと、そうしますと早晩需要がもたなくなりますので価格が下がっていくと、こういうふうになるわけですけれども、今回がこれまでとはちょっと違うのが、この国内需給判断の小売というものが、これが需要超という格好になっている部分というのが違いであります。もちろん全品目では需要超過という形にはなっておりませんけれども、小売に限っていいますと需要超過の状況になってきていると、こういうことになります。ただ、こちらの指標をそれぞれ御覧いただいてもお分かりのとおり、足下でちょっと上昇度合いが緩やかに垂れてきていると、こういう形になります。
図表の八の方を御覧いただければと思いますが、これは先行きの景気を示したCI先行指数というものを見ておりますけれども、二〇一八年の十月といいますのが直近の景気後退期の始まりの時期でありました。この指標の数字と比べますと、足下二〇二二年の十二月の数字というのは、いずれも景気後退が始まりました二〇一八年の十月の水準を下回っております。そして、トレンドとして見ますとやや下がっていくような、そういった動きになっております。
こうしたような動きというのが広がっていくということになりますと、景気後退というのが現実的に起こるかもしれないと、そういう情勢であるということで、先行きの景気には不安材料もあるということであります。
続きまして、雇用状況についてお話をしたいと思います。
四つ図表を挙げさせていただいておりますけれども、アベノミクス前後の経済動向ということで図表の九に掲げさせていただいておりますが、名目GDP、企業収益、就業者数、完全失業者数、倒産件数、国、地方の税収、いずれも改善したということが言えると思います。
特に大きく改善したのが雇用であります。図表の十の方を御覧いただければと思いますが、こちらは十五歳以上人口に占める就業者の割合、つまり働ける可能性のある方の中で実際職に就いた方の割合、それから実際の就業者数というものをグラフにしたものであります。
一九九八年以降のデフレ期、二〇一二年辺りまで続きましたが、こちらの時期といいますのは、就業率でいいますと六〇・七%当時あったものが二〇一二年には五六・五%まで低下し、就業者数は六千五百十四万人であったものが六千二百八十万人まで減少すると、こういうことになりました。二〇一三年以降のアベノミクスを通じて雇用は大きく改善し、就業率は六〇・九%、それから就業者数は六千七百二十三万人という形で、ようやくデフレ期前の状態に戻ったということがこの数字から言えるのかと思います。
そして、図表の十一の方ですけれども、正規雇用、非正規雇用の動きということで、ちょうど今年、アベノミクス十年みたいな話が言われるわけですが、二〇〇二年から二〇一二年の十年間、それから二〇一二年から二〇二二年の十年間で正規雇用、非正規雇用の方たちというのがどれぐらい増減したのかというのを、まず図表の十一の左では見ております。
正規雇用を見ていきますと、二〇〇二年から二〇一二年の十年間で正規雇用は百四十四万人減りました。そして非正規雇用は三百六十五万人増えたと、こういう状況になっております。一方で、二〇一二年から二〇二二年の間を見ますと、正規雇用は二百四十三万人、そして非正規雇用は二百八十五万人という格好になっていまして、共に増えると、こういう格好になっています。
それから、非正規雇用についてなんですけれども、理由別の非正規雇用者数というものを見ますと、自分の都合の良い時間に働きたいと答える方の割合というのが二〇一三年以降ずっと高まっているということが分かります。他方で、正規の職業がないからと、こういう理由で非正規職業を選んでいる方の度合いというのは逆に少なくなっていると、こういう形になっています。ですので、理由が変わってきていると、こういうことになります。
そして、昨今、名目賃金どれぐらい上がれば二%の物価安定目標の達成できるんだろうかと、そういう議論がございますけれども、図表の十二はその参考ということで、横軸に所定内給与の前年比を取りまして、縦軸に物価上昇率を見たというものであります。過去のデータを通じて見ますと、所定内給与の伸びが前年比で三%以上になりますと大体物価上昇率が二%ぐらいになると、こういうことになっております。
今、足下で二〇二二年の十二月時点の所定内給与の伸びは二・三%ということでありますから、まあもう少し伸びれば二%に近づいてくると、こういうことが言えると思います。ですので、そうした意味では、強固かつ持続的な名目賃金の上昇を通じた所得拡大というものをやっていくというのが必要になると、こういうことになるわけです。
次のページ御覧いただければと思いますけれども、財政の話なんですが、図表の十三、こちらは、二〇一二年の第四・四半期、つまりアベノミクス始まる直前の消費、それから設備投資、輸出といったものにつきまして、そこを一〇〇として足下までずっと推移を見たものであります。
輸出とそれから設備投資、もちろん上下はありますけれども、輸出の場合は二〇一二年の第四・四半期と比べますと四割超増加したと。それから、設備投資は一五・六%伸びたということでございますけれども、民間最終消費を見ますと、これは九九・八というふうになっていまして、二〇一二年の第四・四半期の水準よりもやや低いと、こういう状況になっております。
やや細かくこの指標を見ていただきますと、二〇一四年の第一・四半期辺りまでは緩やかに拡大していることが分かります。二〇一四年の第二・四半期に落ち込んで、そこからずっと横ばいになり、さらに、二〇一九年の第四・四半期に落ちて、二〇二〇年、コロナ禍の下で更に落ち、今、回復過程にあると、こういう流れになりますけれども、落ち込んでいる二つの時期といいますのは、これはまさに消費税を増税した時期なんですよね。ですから、ある意味、これは何を示しているかといいますと、消費税を増税したということが民間消費の落ち込みの背景にあるということであります。こういう状況になりますと、経済成長なかなか進められないということになるわけですね。
昨今話題になっております防衛費なんですが、図表の十四といいますのは、赤い線で当初予算ベースの防衛関係費、これは実績の値を挙げておりますけれども、黄色い線、こちらは名目GDPの成長率で毎年三%成長したら足下の防衛関係費、実はどれぐらいになっているのかというものを示したものであります。
現状、五・四兆円の防衛費なんですけれども、一九九七年、デフレに日本が陥った以降、仮に名目GDPが三%成長をずっと続けていたら、GDP比一%ぐらいの防衛費でも実は十一・〇兆円になると、こういうことになります。つまり、経済成長をしていれば、GDP比二%という形で防衛費を積まなくても、実は防衛費は増えているんだということです。
これは何を意味しているかといいますと、我々の暮らしを支えるためには経済成長が必要であるということです。経済成長と両立する形での財政を考えていく必要があるという話になります。
図表の十五、十六は、そうした意味で財政政策の在り方という話について書いております。デフレ期、なかなか長期金利が上がらないと、こういう時期においては、経済学の世界では積極的な財政支出を行っても問題ないということが言われます。
それから、図表の十六にこれからの財政の在り方ということで少し書かせていただいておりますけれども、私は三点必要なことがあるんじゃないかというふうに見ています。
一つは、正しい情報ということであります。例えば、六十年償還ルール、債務償還費の扱いと、こういったものは日本としては正しいというふうに使っておられるのかもしれませんけれども、グローバルスタンダードの視点で見ますと、こうしたものを使っている国というのはほとんどない。それから、グロスとネットの違いというものを財政においては押さえる必要がありますし、予算と決算額というものの違いというのもしっかり押さえていく必要があるというふうに思います。
それから、正しい認識と書きましたけれども、デフレ下とインフレ下で財政政策の在り方は異なります。デフレ下の中では長期金利なかなか上がりませんので、むしろデフレから早期に脱却するために積極的な財政が必要になります。他方で、インフレ率が高まってきて、日本銀行が、仮にですけれども、二%の物価安定目標を達成したと、こういう話になりますと、長期金利は緩やかに上がってきますので、こうなったときに初めて財政健全化と、こういう議論を開始していけばいいんじゃないかと、こういう話になります。
それから、正しい戦略ということで書かせていただいておりますけれども、本予算と補正予算の位置付けを明確にすべきだというふうに思います。補正予算は例えば景気の下押しを回避するための使途に限定するとか、そういうような話が必要で、本予算は中長期的な観点に立ってしっかりお金を支出していくと、こういうことが求められるのかなというふうに思います。
済みません、私からは以上です。