目加田説子の発言 (外交・安全保障に関する調査会)
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○参考人(目加田説子君) ありがとうございます。
本日は、本当に貴重な場にお招きいただきまして、特に地雷とクラスターの問題について説明をせよということでお声掛けいただきましたので、できる限り時間内に具体的なポイントも含めまして御説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
お手元に「人道的軍縮について」というタイトルの資料が届いているかと存じます。今の土井参考人とかなり重複する部分もございますので、その辺ははしょりながら進めてまいりたいと思います。
まず一番最初に、トランスナショナル・シビルソサエティーの顕在化というところから話を進めてまいりたいと思います。
これはどういうことかと申しますと、従来の軍縮のアクターがかなり多様化してきていると。つまり、従来は、政府対政府による外交というものを通じた軍縮ということが主流だったわけでございますけれども、昨今においては、それ以外のアクターというものがそれぞれの役割を果たすことによって、多様なアプローチ、多様な考え方というものが主流になってきているということでございます。
そのトランスナショナル・シビルソサエティーの顕在化というページの一番最後を御覧いただきますと、軍縮の定義の拡大というふうに記しておりますけれども、これは軍縮の守備範囲の拡大というふうにも言えるかと存じます。すなわち、軍縮というものは、ある特定の兵器を規制するということにとどまらず、もちろんそれは極めて大事ですけれども、同時に、その軍縮、その特定の兵器がもたらす被害ですね、そこに着目をし、人道的側面から、例えば被害者であったり、それから、昨今では被害者の家族であったり、あるいは被害を被るコミュニティーであったりというもの全員、全体が被害者だというふうに、ビクティムというふうに捉えておりますので、その全体を支援するというふうになってきております。
更に申し上げると、軍縮というのは単にその二点にとどまらず、環境問題、例えば軍縮、具体的に兵器が環境に及ぼす影響であったりとか、それから、あるいは動物などにもたらす影響、例えば家畜の被害と、今ウクライナでも報告されているところですけれども、そういったことも含めて軍縮ということの概念が膨らんできているということでございます。
この背景には、先ほど申し上げたような市民社会ネットワークであったり、それから、もちろん企業であったり、自治体だったり、被害者であったり、国連であったりという様々なアクターが関わるようになってきたということは非常に大きいかと思います。
次のページに対人地雷禁止条約及びクラスター爆弾禁止条約成立の歩みと国際情勢というチャートを二枚、二ページにわたって掲載しております。これは、どういった時代背景の中で今このような人道的軍縮というふうに特徴付けられるような流れができてきたのかということを御理解いただくために、この斜めの線の右上の方が国際的ないろいろな出来事、そして、その線の下側ですけれども、が対人地雷を中心とした人道的軍縮の流れを簡単にまとめたものであります。また後ほどお時間がある際に御覧いただければと思います。
早速ですけれども、対人地雷について、個別にどのようなことがこれまで過去三十年にわたって進められてきたのかということに話を進めてまいりたいと思います。
対人地雷をめぐる現状一というページを御覧いただければと思います。
まず、規制や禁止条約について、対人地雷は二つございます。一つは、特定通常兵器使用禁止制限条約という、CCWというふうに一般的には呼んでいるものの第二議定書。これについては、もう一九八〇年に既に成立をしておりました。ただし、対人地雷についての規制が非常に緩いということで、実質的に多用されていたようなプラスチック製の地雷等は禁止対象になってこなかったということがありましたので、何とか改正しようという声が盛り上がって、九六年に改正し、九八年に発効したということがあります。
ただし、このCCWの第二議定書も改正が十分ではないということで、より全面的に禁止する必要があるという声が世界的に高まって成立したのが、対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約、通称オタワ条約、あるいはMBTというふうに呼んでおりますけれども、これが九七年に成立し、九九年に発効しております。
こちらは、現在加入しているのが百六十四か国ということで、未加盟国が三十三か国ほどあるわけですけれども、またそちらについては巻末資料の方にもまとめておりますので、またお時間がある際に御覧いただければと思いますが、入っていない主要国としては、まあ大国、アメリカ、中国、ロシア、それから南北朝鮮半島ですね、北朝鮮、韓国、インド、パキスタン、イスラエル等々、あと中東諸国は入っていない国が多いんですけれども、逆に言いますと、これらの国々以外は既にこちらの全面的に対人地雷を禁止しようという条約に加盟しております。
それでは、その実態についてちょっと見てまいりますと、まず使用なんですけれども、これは、そこにウクライナ、ロシアとミャンマーというふうに書いたんですけれども、実は締約国で対人地雷を使用したという疑いが生じたのは今回ウクライナが初めてです。九九年にMBTが発効されて以降、この百六十四か国については対人地雷を使用したという記録は原則ございません。ただ、使用し続けていたのは、ここ数年はずっとロシアとミャンマー、この二か国、世界でも二か国のみです。先ほど、三十三か国が条約に加盟していないというふうに申し上げましたけれども、その中でも大半の国は実質的に使用しておりませんが、ロシアとミャンマーが継続して使用してきた。そして、今回、昨年の二月二十四日以降ですね、初めてウクライナが使用したのではないかということで非常に深刻な疑義が生じているということでございます。この点については後ほど、別途資料を準備してございますので、そちらで説明をしてまいりたいと思います。
それからもう一つ、対人地雷については今非常に深刻な状況にありますのが、むしろ対人地雷そのものを政府が使用するというよりは、ここに書いておりますNSAGsという、いわゆる国内の反政府であったりとか、まあ武装集団ですね、といったような主体が多様に使うようになってきております。これは被害の拡大にも直結した問題で、なかなか深刻な状況にあります。特にミャンマーの場合は、政府ももとよりですけれども、この非国家武装集団が大量に使用しているという現実がございます。
現在生産している国は十一か国というふうに言われておりますけれども、この実態については十分に掌握できていないということが指摘できると思います。御案内のとおり、対人地雷って大変小さいものですし、どこで生産しているのかということを、締約国に関しては、七条報告といって毎年国連事務総長宛てに報告する義務が生じますけれども、締約国になっていない国々、ここに書いてあります中国、キューバ、インド等々については実態が十分に把握されていないところですが、まあ十一か国ぐらいだろうというふうに言われております。
それから、備蓄地雷ですけれども、その太文字のところでウクライナとギリシャが三百六十万個ぐらい廃棄の義務を負っているというふうに書いてございますけれども、これはウクライナが昨年使用したのではないかという疑義が生じているということに直結するんですが、ウクライナは元々、もう、とうの昔にですね、全て保有している地雷については廃棄する義務を条約上負っていたんですけれども、それを果たしていなかったということで、約半分の、元々六百六十万個ぐらい保有していたと言われていたもののまだ半分が残っていたということになります。
それから、汚染ですけれども、少なくとも六十八ぐらいの国や地域で現在も地雷が残されているのではないかというふうに言われております。
除去につきましては、これまで三十か国が完了しておりますけれども、まだまだ、その三十か国を引くと三十八か国と地域ですか、につきましては除去の課題が残っているということになります。
次のページに参ります。
被害ですけれども、少なくとも五十か国で、これは二〇二一年現在ですけれども、五千五百四十四人が地雷あるいは爆発性戦争残存物、ERWの犠牲になっているのではないかということで、この点も、先ほど、政府だけではなくて反政府軍が地雷を使用することによって被害が拡大しているというふうに申し上げたんですけれども、地雷についても、厳密な地雷というだけではなくて、身近で手に入るようないろいろな素材を、造った簡易爆弾であったりとか、それから、その地雷と同じような効力を有してしまうような爆発物などが戦争終結後も残される結果によって被害が生じているということであります。
年齢は民間人、あっ、ごめんなさい、年齢が判明している民間人は、死傷者でいうと約半数ということになりますし、それから、その半数が子供であるということになります。すなわち、これも戦争犯罪あるいは戦争法の違反ということになってくるかと思います。
犠牲者の支援ですけれども、こちらについては、もう本当に地道な活動が多くの人道団体でしたり国際機関などによって進められているところですけれども、慢性的な資金不足ということで思うように進んでいないということと、それから、ここ三年はやはりCOVID―19の影響が非常に大きくて、例えば、従来であればリハビリであったり病院にかかることができたような被害者の方々が、どうしてもCOVID―19の患者さんなど、あるいは治療を優先させてしまう結果、そのしわ寄せで十分な手当てを受けられていないということがございます。
それから、その下に新たな課題というふうに書きましたけれども、先ほど冒頭で申し上げましたとおり、軍縮の定義というものが昨今拡大してきているという流れの中で、例えば、環境へのリスク、兵器の爆発で引き起こされる森林火災であったりとか、二酸化炭素や汚染ガスが放出されるということで温暖化が促進されてしまうのではないかというような懸念、あるいはごみ問題であったり、それから今現在は、地雷原に地雷が見付かった際は、オンサイトエクスプローションといって、その場を動かさずに、その場で爆発させるという処理を行っているわけですけれども、そうしますと、どうしても環境には負荷が掛かるということで、異なる方法が導入できるのではないかというような意見も出ておりますし、申し上げました動物への被害とあるいは家畜への被害ということも、アニマルライツなどの考え方が広まってくる中で新しい視点として浮上しているところでございます。
続きまして、クラスター爆弾をめぐる現状に移りたいと思います。
クラスター爆弾につきましては、対人地雷と異なりまして、兵器が拡散する前に、対人地雷と実質的に同じような被害をもたらしてしまうクラスター爆弾を規制しようということで、ですので、拡散する以前に禁止法ができたということがございます。
そこに書いてありますとおり、クラスター弾に関する条約が二〇〇八年に採択されて二〇一〇年に発効しているわけですけれども、加入が百十か国ということで一見非常に少ないんじゃないかと、対人地雷、百六十四か国ですので、少ないというふうに思われがちですが、そもそもクラスター爆弾については保有している国あるいは生産している国等々が世界に圧倒的に少ないという状況がございます。
使用については、ロシアそしてウクライナが指摘されているところで、ちなみに、ウクライナはこの条約には、クラスター爆弾禁止条約には入っておりません。加盟しておりません。もちろんロシアも入っておりません。
それから、生産は十六か国、今、ブラジル、中国等々で進められているのではないかというふうに見られているのですけれど、その後段に書いてあります、ダイベストメントといいまして、こういった無差別兵器、非人道的な兵器を製造する企業に対しては融資をしないというような流れが昨今、ESGという言葉もSDGsとともに日本の社会でも一般的になってきていますけれども、そういった金融機関など、あるいは機関投資家などの動きによって規制されてきた結果、クラスター爆弾というのはある意味で投資対象としては最大のタブーというふうに言われておりますので、実質的には、新たに生産しているというのは本当にごく限られた国になってきているという状況があります。
なお、移譲については締約国では確認されておりません。
次のページに備蓄弾等々について書いてございますけれども、時間の関係もございますので、ちょっとそこはまた御覧いただいて、先に進めたいと思います。
四、人道的軍縮の特徴というところを御覧いただければというふうに思います。
先ほど土井委員からも御説明があったとおりですけれども、人道的軍縮というのは、個人の生命や生活あるいは人権を重視するという点に非常に注目が、そのポイントがございます。
人間を中心としたアプローチということで、武器が人間や環境に与える影響をできるだけ軽減しましょうということを目指しております。何よりも、被害者への支援、それから汚染地の除去ということが非常に大事なポイントになります。つまり、従来保有している兵器を削減する、あるいは全て廃棄するということでは十分ではなくて、さらに、既に被害を被っているような人々の支援であったり、それから、被害地を元の人間が生活できるような場にしていくということが何よりも優先されるということがポイントです。
それから、その下の国家、国際機関、市民社会、サバイバー間の密接な協力、パートナーシップが不可欠であるということでございます。
そこに関わってくる主体についてまとめたのが次のページでございます。
成功の鍵、人道的軍縮などが成功する鍵というのは多様なアクター間のパートナーシップにありまして、緊密な協力、オープンなコミュニケーションというものが重要になってきます。
政府、市民社会、赤十字国際委員会、国連、サバイバー、世論等々、それぞれに重要な役割を担っているわけですが、特に政府については、志を一にするような国々と外交プロセスを始動し、それから、条約交渉を通じて条約を締結、規範形成、対策実践にコミットしていくということが重要になってまいります。
また、市民社会ですけれども、被害の実態を記録すること、データベースを構築し、障害者やコミュニティーを支援していくこと、そしてもう一つ、これからウクライナでも大変重要になってくるかと思いますけれども、リスクを回避するための教育というものを実践、それから、被害に遭った方の職業訓練、社会復帰を支援するような支援というものも大事になってきますし、その中核を担うのは間違いなく市民社会、そして一部の国際機関であろうかというふうに申し上げられると思います。
ちょっと時間の関係で、次のページはスキップさせていただいて、五、日本における課題と対策というところを御覧いただければと思います。
これは、私が、対人地雷禁止条約が成立される頃からですから、二十六、七年、ずっとこの問題に関わってきた中で実感してきた点をまとめたものなんでございますが、日本政府の対応には条約、分野によってかなりの温度差があるのではないかというふうに感じております。
対人地雷やクラスター爆弾については積極的に関与している一方、その延長線上にあって採択されたと言われる核兵器禁止条約、TPNWについては消極的であると。それから、分野で申し上げると、除去については非常に政府は熱心で、ODAなどを通じて積極的に支援をしていただいているんですけれども、例えば被害者支援、あるいは職業、先ほども申し上げましたけれども、訓練等を通じた社会復帰ということについては消極的であるということ。
しかし、人間の安全保障というのが日本の外交の一つの柱というふうになっている中で申し上げると、その人間の安全保障と親和性の高い人道的軍縮というのは、日本の政府としては積極的に関与が可能な分野なのではないかなというふうに考えております。
それから、その下に、具体的に申し上げると、ルールメーカーなのかルールテーカーなのかということで、これは必ずしも軍縮の分野に限らないかと思いますけれども、国際社会で法の支配あるいは人道主義というものを日本政府が重んじるのであれば、やはりルールテーカーになるのではなくて、ルールメーキングを積極的に行っていくということが極めて重要になってくると思いますし、日本のプレゼンスを高めるという意味においても有効な方法になるかと思います。
それから、他の政策との整合性ということでございますけれども、例えば日本が早々に、政府はウクライナに地雷除去機を提供するということが決定し、ニュースになっておりました。それは極めて重要な支援だと思いますが、冒頭申し上げましたとおり、ウクライナは締約国でありながら、条約を遵守せず、廃棄すべき地雷を大量に保有したままであったということ、さらに、その地雷を今般使用したという疑義が生じているということですので、これは明確に条約に違反しているということを厳しくウクライナ政府に伝えた上で、その上での支援でなければMBT違反になるということを是非お考えいただきたいということがありますし、それから、ミャンマー軍の関係者を受け入れて日本で訓練をしているということが伝えられておりますけれども、これ後ほど、もう時間が過ぎておりますけど、一分だけちょっと頂戴をしてミャンマーについて触れたいと思うんですけれども、ミャンマー軍は大量に地雷を使用し、民間人に多大なる被害が生じております。この辺の整合性をどう取っていくのかという一方で、軍に対する支援というようなことを行いながら地雷を例えば除去するというようなことはどういうふうに両立させていけるのかという、そのコンパティビリティーについて是非、より、何というんでしょうね、高い精度で御検討いただきたいということがございます。
それから、その一番下に政治的リーダーシップということを書きましたけれども、御存じの方も多いかと思いますが、対人地雷禁止条約につきましては、小渕恵三当時の外務大臣ですね、が多大なるリーダーシップを発揮してくださり、当時、日本政府は条約に加盟するということに消極的だったんですけれども、最後に政治的なリーダーシップによって加盟したということがございますし、それから、クラスター爆弾禁止条約についても全く同じパターンだったんですけれども、当時の福田首相が政治的なリーダーシップを取ってくださって条約に加盟するということが実現したということがございます。
ですので、今日の人道的な軍縮を含めた幅広い軍縮等々につきましても、是非政治的なリーダーシップ、それから今日、猪口委員に久しぶりにお目にかかっておりますけれども、当時、クラスター爆弾につきましても多大な御協力をいただき、日本政府が遅れることなく参加することができたということがございますので、是非同じように他の分野につきましても積極的に関与していただきたいということがございます。
時間が超過しておりまして誠に申し訳ありませんが、A4の資料でウクライナとそれからミャンマーというものもちょっと御準備させていただいておりますので、ごくごく簡単ですけれども触れさせていただきたいと思います。
まずウクライナですけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、ウクライナはCCW、それからMBT、対人地雷禁止条約には加盟しております。一方、クラスター爆弾を禁止する条約には入っておりません。
そして、生産ですけれども、二〇〇九年の時点では、対人地雷を過去、現在も製造していないということで、実態としては旧ソ連から大量に引き継いだ旧式のものが大半であるということのようでございます。
それから、使用については先ほど申し上げたとおりです。一方で、ウクライナの今紛争ではロシア軍が最小でも八種類の対人地雷を使用しているということで、これはもう様々なエビデンスが集められておりますので、ほぼ間違いないのかなというふうに言えるかと思います。
これまでもロシア、チェチェンですとかジョージアなどで使用しているということがございますし、二〇一四年のクリミアでも、ドネツク州ですとかルハンスクなどで使用してきております。
また、ロシア製で発見されている地雷については、かなり最近製造されたものというものも発見されておりますので、コンスタントに、そして最新鋭のものも製造を継続しているのではないかなということが言えるかと思います。
一番下のところで、備蓄地雷……