久我尚子の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
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○参考人(久我尚子君) ニッセイ基礎研究所の久我と申します。
本日は、大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。(資料映写)
それでは、現下の個人消費、コロナ禍の個人消費と物価高に対する意識ということでお話をさせていただきます。
本日、二十分ほどお時間いただいていますけれども、このようなお話させていただきます。
まず、三年間、約三年間のコロナ禍の個人消費を少し振り返ってみるということと足下の物価高の状況、そして物価高に対する今の消費者の意識と、そして、消費行動にはやはり需要喚起策が大きな影響を及ぼしますので、その利用状況などについてお話をさせていただきます。
まず、個人消費全体の動きを示した二つのグラフなんですけれども、こちらはどちらも個人消費の水準で、左側が長期時系列、そして右側が、左側のコロナ禍の楕円の部分を拡大して、新規感染者数、月々のものと合わせて見たものです。
右側御覧いただきますと、やはりコロナ禍では、感染状況が悪化して緊急事態宣言などが発出されると消費が落ち込んで、改善すると上向いてということをずっと繰り返しています。
二〇二二年の三月下旬から特段の行動制限が出ておりませんので、へこみが大分浅くなっています。ただ、統計の最新値が二〇二二年の十二月なんですけれども、この時点ではコロナ禍の影響がまだ見られなかった二〇二〇年の二月の値を下回っているというところです。
ただ、昨年の一年間は、やはりオミクロン株の重篤化しにくいという特徴もあって、社会経済活動との両立をする方向に大きくかじが切られた一年間で、消費行動としては外に出る消費というのが非常に活発した影響で、グラフを見ていただきますと、まあ余りちょっとまだ元気がないなという感じではあるんですが、じわじわと上向いてきているという一年間でありました。
コロナ禍の消費としては、やはりプラス要因、文字の方に書いてありますとおり、何よりも感染状況というのがすごく影響します。そして、二年目以降のワクチンの状況ですとか、そして先ほど申し上げた社会経済活動といかに両立を図っていくか。一方で、マイナス要因としては、やはり感染の不安ですとか不透明感、そして足下で物価高が進行している、ここが少し足を今後引っ張っていくのかなというところです。
この物価高の状況について、改めて少し数字的なところを押さえていきたいと思います。
御承知のことと思いますけれども、左側のグラフです。消費者物価について見たものですけれども、この輸入物価、企業物価、まあ川上段階と言われる物価の方はスケールが大分違いますので、グラフでは右軸の方を見ていただいて、消費者物価だけ左軸という見方になります。
輸入物価、企業物価が上がることでコスト増などが転嫁されて、消費者物価が二〇二一年の下期からじわじわと上がって、昨年一年間は少し大きめに上がっているということをお示ししているんですけれども、当初の上昇の主要因というのは原油高によるエネルギー価格の上昇でしたけれども、足下で食料品や日用品などに変わってきているというところです。
消費者の体感としては、消費者物価は毎月公表されると何%でしたという報道ありますけれども、その数値以上に早くから感じていると思われます。どうしてかというと、右側のグラフです。消費者物価の購入頻度別に見てみますと、特に物価が上がり始めた二〇二一年の下期、そして二〇二二年の上期辺りを御覧いただくと、購入が頻繁なもの、食パンとか牛乳とかガソリン代とかですね、こちらの品目ほど消費者物価が上がっているので、消費者の意識としては数値以上のものがあるというふうに推察されます。
そして、実際にそのコロナ禍ということと物価高というのが今消費行動で二つの大きなキーワードなんですけれども、この三年余りの間、実際の消費支出はどういうふうに動いているのかと見たものが四ページ目になります。
まず、左側なんですけれども、こちらは二人以上世帯の消費支出、赤の実線が基礎的支出、つまり食料とか家賃とか生活必需性の高い支出ですね、こちらを見ると、横ばいでおおむね推移している、つまり余りこの三年間で変わっていないということです。一方で、青の点線、選択的支出、まあ娯楽用品ですとか旅行とかレジャーとかですね、こういったものは感染状況に大きく連動して動いているという違いがあります。
ただ、その物価高が二〇二一年下期から進行していますので、基礎的支出が横ばいであるというところにもしかしたら違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、この基礎的支出の中では家賃が少し大きな影響を与えますので、その影響があるということと、やっぱりコロナ禍で、例えば食料ですとか巣ごもり消費で支出が増えたものに関しては、消費者が外へ向かい出すとそれによって買う支出額が減っていく、一方で物価高なので買い控えているという両面がありまして、そこをなかなかデータから分解することは難しいんですけれども、私の印象としては、今のところ外へ行く消費の影響の方が大きく出ているんじゃないかと見ています。
その買い控えの影響というのがやっぱり出やすいのが食料品ですので、念のためにデータで押さえたものが右側になります。食料品の主な品目について、同じように前年同月と物価の影響を差し引いた実質増減率で見たものが右側になるんですけれども、やっぱり巣ごもり消費が活発化した二〇二〇年、ぐっと盛り上がっていって、だんだん落ち着いていって、今、二〇二二年、物価高の影響もなってどうなるのかというところなんですが、実際には二〇二一年よりも二〇二二年の方が食料の支出は減っています。
ただ、コロナ禍前の二〇一九年と比べると、これは図ではお示ししていないんですけれども、食料の品目によってコロナ禍前よりも支出が減っているものもあればそうでもないものもあって、ちょっと今のところまだら模様で、節約志向によって優先度の低いものは買い控えているけれども、全体としては外出型消費によって食料の支出も減っている。個人消費全体では、やはり支出額の大きな旅行とかレジャーの支出が押し上げていますので、冒頭のグラフのように、まあじわじわと個人消費全体としては改善しているというところです。
そして、今、支出額のお話をしたんですけれども、家計収支、可処分所得と消費全体では世帯当たりどうなっているのかと見たものがこちらになります。支出額から、やっぱり消費者の今の意識ですとか、どこの世帯が苦しいとか、具体的な様子というのはなかなかつかみ取りにくいので、ちょっとこちらのデータを御紹介した後、弊社で実施しております消費者の意識調査の話で補填していきたいと思います。
まず、ちょっとこの五ページ、分かりづらいんですけれども、お付き合いいただきたいんですけれども、こちらのグラフ、何をお示ししているかといいますと、まず右上を御注目ください。
二〇一九年、コロナ禍前と比較した二人以上勤労者世帯の家計収支、可処分所得、消費支出、黒字の額の月平均当たりの金額を差を見たものです。ですので、グラフが上向いていますとコロナ禍前よりも増えているもの、下に向いているとコロナ禍前より減っているということです。グラフの固まりが六つありまして、この紙の右下見ていただくと、平均からⅠからⅤという数字があるんですけれども、平均というのは二人以上勤労者世帯の平均で、ⅠからⅤは収入階級を五分類したもので、一番低いのがⅠで一番高収入がⅤグループということになります。このⅠグループに関しては、再雇用などで働いている方の多い比較的年齢が高い世帯、ⅡグループとⅢグループについては世帯主の年齢が比較的若いので子育て世帯が多いというふうに御理解ください。
この前提に立ちますと、この三つのグラフで共通しているのは、全体的に赤の消費支出が下向いている、コロナ禍で消費支出が減っているということです。一方で、少し意外に思われるかもしれないんですけれども、青の可処分所得が上向いているんですね。コロナ禍前よりも増えているということです。
どうしてかというと、右上の二〇二〇年、コロナ禍一年目に関しては、やはり給付金の影響、そして、男性の世帯主の収入というのは、グループⅡからⅤまで、子育て世帯などを含むいわゆる現役世代の方では、男性の収入は減っているんですけれども、中長期的に働く女性が増えているという影響がプラスになって全体的に押し上げられているという結果になっています。
コロナ禍で、確かに非正規雇用の女性の雇用が減っていって、足下でもまだ減ったままではあるんですけれども、正規雇用者の女性の数は実際は増えていたり、医療とか福祉とか、需要が増している領域では正社員が増えているという状況があるので、恐らくこのようなデータになっているんだと思います。
ここで御注目いただきたいのが、左下の丸印のところです。Ⅱ階級ですので、子育て世帯が比較的多いというグループなんですけれども、ほかのグループでは可処分所得が増えているのに、〇・〇で増えていない。そして、二〇二二年は物価がより上がりましたので、物価を考慮した実質増減率で見ると、むしろ減ってしまっている。少し厳しいというところです。
もう一点御注目いただきたいのが、二〇二一年の左下のグラフに目を戻していただいて、Ⅲグループのところです。Ⅲグループの消費支出額、コロナ禍前よりもマイナス一・九万円なんですけれども、右上のコロナ禍一年目ではマイナス一・二なんですね。ですので、行動制限がどんどん緩和されてきているのに、消費に必ずしも積極的になっていない。子育て世帯が多いグループで所得がほかの世帯、グループと比べて増えていない、消費にも余り積極的になれていないという様子が少しうかがえると思います。
支出額から分析するとちょっとこの辺りまでが限界で、弊社ではこのような枠組みで調査を実施して、意識調査と併せていつも見ることにしています。
二〇二〇年六月からおよそ三か月ごとに行動変容の定点観測ですとか、あるいは各調査時点で注目される事象として、本日は九月下旬から十月頭に実施した物価高関連の調査結果について御紹介させていただきたいと思います。
この辺りは御印象のとおりだと思うんですけれども、まず左側のグラフで、一年前と比べて日本国内の物価、どのセグメントも上がったと答える割合が高いです。そして、右側が少し特徴的なんですけれども、物価上昇を実感し始めた時期、実際には二〇二一年の九月からじわじわ上がっていたという消費者物価のグラフを先ほどお示ししましたけれども、消費者の体感としては、九月下旬の調査時点で、このグラフ中ほどの三か月ほど前、つまり六月ぐらいから、そして半年ほど前、三月ぐらいからという回答が比較的多いです。一方で、この丸印の四十代ですね、こちらは一年ほど前、まさに物価上昇が始まった頃から、その辺りからもう既に感じているという方の割合がほかのセグメントと比べて多いというところです。
そして、その物価上昇を実感した理由というのが、こちらも御印象のとおりと思います、食料品の値上がりなどがこのように挙がっています。右側の表なんですけれども、左側のグラフの選択割合と比べて多いところにピンクの色、少ないところが水色で網掛けしてあります。
こちらで見ていただきたいのが次のページです。ライフステージ別に物価上昇を実感した理由というのの違いを見たものなんですけれども、御注目いただきたいのは、表の中ほどの第一子中学校入学、まあ中学生のお子さんのいるような子育て世帯でピンクの網掛けが多い、つまり多方面で物価上昇を実感しているということです。先ほど四十代で比較的早めから物価上昇を実感していたことなどとも通じているかと思います。
そして、十ページ目は御参考までにという感じなんですけれども、世帯年収別に見たものがこちらですということで、やはり高収入世帯では物価上昇といっても例えば海外ブランド品であったりとか外食代とか、少しぜいたくな消費で感じているという特徴があります。
そして、物価上昇を実感して取った行動というのが私は少し面白いデータだなと思って見ているんですけれども、圧倒的に多いのが、できるだけ不要なものは買わないというものなんです。
よく物価高の報道の中で価格転嫁の話題があると思います。そのときに、A企業では価格転嫁して価格を上げました、値上げしました、それに対してライバルのB企業は価格転嫁せずにお値段据置きで頑張りますというような、消費者はまあ安い方に行くんじゃないかというような報道の作りが割と目にするのかなと思っているんですけれども、実際に調査をすると、消費者の行動というのはもっと冷静であると思います。
こちらのグラフのように、家計の負担感が増すと、やみくもにその低価格製品へ行くというんではなくて、まずはできるだけ不要なものは買わない、その上でポイントとかセールを利用してできるだけ支出抑制に励む、その上で生活必需品を安い製品へスイッチするということで、やっぱり日頃使っている製品ほど価格を理由にスイッチはしたくない、なので、ほかをできるだけ我慢するという行動になっているかと思います。
ここでもやっぱり子育て世帯がちょっと厳しそうだなというグラフが十二ページです。第一子中学校入学のところでピンクの網掛けがずらっと並んでいます。つまり、あらゆる面で支出抑制の工夫をしているということです。そして、選択割合としては低いんですが、ピンクの網掛けの一番下ですね、有価証券とか保険を売却、解約すると。本来はしたくなかったというところまで工夫をしているという様子も見えます。
こちらも御参考までなんですが、収入階級別で特徴的なのが、やはり高収入世帯では、右下ですね、一番下の特に何もしていない、物価高を感じても特に何もしていないというのが世帯年収一千二百万円以上で三割ぐらいを占めるんですけれども、これは、特にしていない割合が高いという傾向もあるんですが、裏を返すと、高収入世帯でも物価高進行下で七割の世帯では何らかの対策をしているとも読み取れます。ですので、今、消費が昨年から動き出して、例えばリベンジ消費ですとか需要喚起策で外へ向かう消費が盛り上がってきていますが、その後、気が済んだ後、春闘で賃金の話題になっていますけれども、ここがどうなるかによって節約志向が色濃く出てしまうという懸念があります。
その需要喚起策について簡単に御紹介して最後の話にさせていただきたいんですけれども、需要喚起策については、かなり利用者に偏りがあります。年末の調査時点では、全国旅行支援、GoToも六割は利用していなくて、約四分の一が利用していて、そのうち半分が積極層であると。複数回利用しています。
そして、十五ページはセグメント別に利用率の違いを見たんですけれども、要するに、時間的にも経済的にも余裕のある層で使っているというところです。利用した理由なども、割引額が魅力的であるとか、御想像のとおりだと思います。
こちらは少し調査の御紹介ということで、お時間あるときに数値を見ていただければと思うんですけれども、十九ページ目の利用していない理由というところを御覧ください。やはり利用している方は時間とか経済的な余裕がある方ですので、やはり利用していない方というのは経済的な余裕がないという割合が高かったり、あるいは六十代以上でピンクの網掛けの部分を御覧いただくと、やはり感染不安というのがまだありますので、シニア層の方では、利用したいけれども感染の不安があるということも足かせになっているようです。
こちらはライフステージというところなんですけれども、このような需要喚起策の利用状況ということと、二十二ページの方に参ります。
そのような中で、政府の物価高対策として、やはりエネルギーですとか食料価格ですとか、家計にとってすごく有り難い対策も進んでいます。そして、やはり賃上げ支援、低所得世帯への給付というところで、特に賃上げ支援のところに私は注目をしているんですけれども。
二十三ページ目の方で、その賃上げ支援に絡めて、将来世代の経済基盤の安定化がやはり急務だというお話をして終わりにさせていただきたいと思います。
やはり物価高対策として目の前のその生活困窮世帯の支援は必須ですし、需要喚起策で、利用者が偏っているからといって、やはり動かせる消費を動かしていく、そこで雇用も生みますし、日本経済を回していくという必要性はすごくあると思います。一方で、やはり物価高対策、家計支援、究極のものというのは特に将来世代の経済基盤の安定化だと思います。
左下のグラフを御覧ください。今、人手不足で特に新卒採用などは売手市場という話もありますけれども、実際に非正規雇用者の割合を見ると、女性に関しては近年の女性の活躍で若い女性の非正規雇用率が低下してはいるんですけれども、男性は余り変わらない。で、この家族形成を考える時期の男性の六、七人に一人は非正規雇用で働いている。そして、今の五十代ぐらいの方が新卒採用であった一九九〇年代初頭ですね、この頃と比べて五倍ぐらいの非正規雇用率であるという現状です。
一方で、正規雇用であれば安泰なのかというとそうではないというのが右側のグラフです。青の実線、二〇一八年の男性の大学卒以上の賃金カーブなんですけれども、十年前と比べて、三十代、四十代、子育てなどで出費のかさむ年代でフラット化してしまっている。このマイナスの部分を推計すると大体七百数十万円、夫婦で計算すると千五百万円ぐらいになる。そうなるとやはり、家を買うのか、車を買うのか、子供の教育はどうするのか、そもそも子供を一人にするのか二人にするのかというところに大きな影響を与えてしまいます。
先ほども少子化のお話が少しありましたけれども、やはり特に男性の経済面というのは家族形成にすごく大きな影響を与えますというのが左側のグラフです。
そして、右側です。独身者の方の積極的には結婚したくない理由、こちらを見ると、経済面だけが問題ではなくていろいろあるんですけれども、やはり経済的な面を理由に家族形成などを諦めるというところは救済されるべきだと思います。
そして、やはり安心して働き続けられる環境の整備をと言いたいんですけれども、私は消費行動としていろんな数値のデータを分析しますので、数字的に見るとこういうデータになりますということを御紹介して終わりにしたいと思います。
大卒女性の生涯収入を推計しますと、この棒グラフの上から三番目と四番目を御注目ください、このAのT1とT2というのは、二人子供を産んで産休、育休を合わせて一年間、合計二年間休んで時間短縮勤務を利用して復帰した場合、生涯所得二億円を超えるんですけれども、昔から日本で多くM字カーブの問題となっている、一回退職してパートで再雇用、働き出すと六千万円。大分差がある。
この金額の多寡というのが、多ければいいということではもちろんありません。女性の活躍というのは、やはり本人の希望の働き方をしていくべきだと思います。ただ一方で、やっぱり働きたい希望があるのに働けていない女性がいる、そこの機会損失を計算するとこれくらいになってしまうということです。
ですので、その就労環境の整備というのは回り道のように見えるかもしれないんですけれども、確実に日本経済の底上げになりますし消費喚起策になっていくと、そういうお話をさせていただいて、終わりにさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。