田中雄二郎の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(田中雄二郎君) 田中でございます。
 おはようございます。東京医科歯科大学学長の田中雄二郎でございます。
 まず、私たちの大学等が含まれている法案を御審議いただいておられる当事者の一人として、心から感謝申し上げます。
 また、今日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございます。せっかくの機会ですので、当事者として、本学と東京工業大学の法人統合に絞って私見を申し述べたいと思います。
 資料を御覧ください。資料の二ページを御覧ください。こちらが資料になります。
 これまでの経緯を御説明申し上げます。
 令和三年の秋に、今から二年少し前になりますが、本学から東京工業大学に統合を打診し、令和四年春に統合形態について東工大、東京工業大学から具体的な提案があって、ここに記されているとおりの経緯で今に至っております。
 次のページ、三ページを御覧ください。
 一法人複数大学の先行事例もありましたけれども、私たちは一法人一大学を選択することといたしました。つまり、両大学は一つの新しい大学になるということです。一法人一大学を選択した理由は、両大学に重なる学部がないこと、メインキャンパスが電車で三十分程度と比較的近接していることから、統合した方がより多くのシナジー効果が得られると考えました。
 次のページ、四ページを御覧ください。
 統合に至った背景について御説明いたします。
 これまで両大学は、指定国立大学法人として広く理工学及び医歯学に関する知見を創出して、自在に応用できる人材の育成を通じて、産業の発展と医療の進歩を牽引してきたと自負しております。
 しかし、人類は、これまで想像し得なかった地球環境の悪化や新興・再興感染症の世界的流行、少子高齢化の急速な進行など様々な課題に直面しています。これらの地球規模の課題や今後起こり得るであろう未知の問題の解決に向けて、両大学はその知を結集して、より大きな役割を果たすことが社会から期待されていると認識しております。
 資料五ページを御覧ください。
 これは経済産業省の大学発ベンチャー実態調査の資料です。少し字が小さいですが、縦軸は会社の数であり、横軸は過去五年間順番にどうなっていったかということを示しています。バイオヘルスケア分野は、その赤枠で囲ったところですけれども、IT分野とともに過去五年間でベンチャー数は急速な伸びを示しています。
 下段に示す横長の棒グラフですけれども、これはその割合を示していますけれども、バイオヘルスケアだけでもその数は三割近くに及び、医療機器や素材、IoTなどを含めると、二つの大学で統合する、カバーする領域は八〇%を超えるというもので、極めて大きいことが分かっています。このように、カバーする大学発のベンチャーが多いということは、単に外部資金の獲得が増えるということにとどまらず、社会貢献の度合いが大きくなると考えました。
 次のページ、資料六ページを御覧ください。
 このような背景から、両大学のこれまでの実績、伝統と先進性を生かしながら、統合によってかつてどの大学もなし得なかった新しい大学の在り方を創出することを目指すこととしました。このために、両法人の統合と新しい大学の設立を実現し、国際的に卓越した教育研究拠点として、社会とともに活力ある未来を切り開く決意を固めました。これが統合の目的になります。
 次のページ、七ページを御覧ください。
 新大学の目指す姿については、大きくは四点について合意しております。
 まず、一点目としては、両大学のとがった研究を更に推進することです。研究者にそれぞれの興味に根差した研究を行える環境を提供します。
 二点目としては、医師、理工学、さらにはリベラルアーツ、人文社会科学を含む様々な学問領域が自由な発想で融合するコンバージェンス・サイエンスを展開することです。
 三点目としては、高度専門人材、特に博士人材の輩出です。教養教育と専門教育を有機的に関連させた総合知の教育を充実させます。これにより、真に解決すべき課題を設定でき、その解決を導く人材を育成します。
 四点目としては、構成員に高度なダイバーシティーを実現することです。この下で、世界に開かれた知の創造と人材育成の場を構築したいと考えています。
 次のページ、資料八ページで、新大学のキーワードであるコンバージェンス・サイエンスについて御説明いたします。
 下段のように、現時点で私たちはグリーンテクノロジーから再生医療に至るまで幅広い分野で先端的な研究を展開していますが、統合によって、中段にあるように、地球環境、ウエルビーイング、トータルヘルスケアという社会課題に直結する新しい研究領域をつくることができると考えています。上段のように、さらに未来は、社会課題を率先して発見し、柔軟に新しい学術領域を創成して、社会とともに解決する大学であり続けたいと考えています。
 次のページ、資料九を御覧ください。
 コンバージェンス・サイエンスを実現するために知の循環を重視します。
 スライドの下に、総合研究院と書かれた枠がありますけれども、この研究院をつくり、異分野融合の研究が研究者同士の交流から自然発生的に生まれるように大学で支援します。研究者同士が交流する場を創設することによって自然発生的に生まれるということを期待するわけです。
 それに対して、スライド上にある未来社会創成研究院、これも新しくつくるものですけれども、大学が重点領域と考えた分野にインセンティブを用意して、医工連携を始めとする異分野融合の研究を促進する予定です。要は、言わばミッションで動いていくという、そういう研究院です。
 さらに、社会実装が近づいた段階では、これも新設ですが、新産業創成研究院というものをつくり、そこで企業とともに実用化を図っていきたいと考えています。特に、医工連携については、医療工学研究所の設立を考えています。
 次のページ、十ページを御覧ください。
 大学病院は診療報酬に依存する今日の医療だけで財政的にも精いっぱいな現状があります。本学附属病院は、コロナ重症患者を当初から多く受け入れた病院で、社会からも大きな評価をいただきました。それは私たちの励みとなっています。しかし、ワクチンを含め、新たなコロナの治療薬の開発ができたわけでは残念ながらありません。明日の医療にまでは十分手が回らなかったということです。
 この反省を踏まえ、新大学では、明日の医療を支える研究と人材開発を積極的に行うため、財政的にもこの部分を別会計にする予定です。別会計の財源は産学連携等の外部資金に求める構想となっています。
 資料十一ページを御覧ください。
 さて、新大学において、従来の日本の大学が陥りがちであった閉鎖的な組織文化を完全に払拭したいと考えています。本来アカデミアが持つべき自由でフラットな人間関係を構築することが極めて重要であると考えています。その下で、精神の余裕を取り戻した構成員による広く社会に開かれた創造空間を構築したいと考えています。
 その実現に向けて、一点目は、全ての構成員の専門性と役割の尊重です。教員、職員、学生の別にかかわらず、一人一人が自らに誇りを持ち、お互いをリスペクトし協調できる組織文化を目指します。二点目は、試行錯誤を恐れず、イノベーションに挑戦する文化の醸成です。三点目は、大学の構成員自身のウエルビーイングの実現です。大学の構成員自身が余裕を取り戻すこと、それが自発性を生むことになり、大学の知の創出の源となるために必要不可欠であると考えています。
 資料十二ページを御覧ください。
 先ほど、構成員にチャレンジすることを、そういう文化をつくりたいとお話ししましたけれども、大学自身も常に変わり続ける組織でありたいと考えています。時代に先駆けた研究、教育、経営ポートフォリオの不断の見直しと、ポートフォリオに基づいた研究教育組織の改革、財務戦略の策定、病院事業の改革が重要で、それらを実現するために、学内の教育、研究、診療現場からのフィードバック、社会情勢を踏まえた運営の観点からのフィードバックが重要だと考えています。
 次、十三ページです。
 細かい数字が並んでいますが、要は、両大学が統合することで、職員数、経常収益が二倍の規模となり、研究実績なども国立大学の上位五位に入ることになります。しかし、我々は、一プラス一が二ではなくて三にも四にもなるような統合を目指したいと思っています。
 次のページ、十四ページを御覧ください。私たちがそれが可能だと思う理由をお話しさせていただきます。
 東工大に行きますと、東工大のキャンパスの一番手前の建物に二二〇〇年までの未来年表が掲げられています。未来から今を考えて研究するという姿勢がよく分かります。他方、医科歯科大学では、病院における目の前の患者さんから研究が始まります。言わば、今から未来を考える視点です。このように、バックキャストとフォーキャストの視点が融合することで、単に理工学と医歯学が交わる以上の効果が期待できると考えています。そして、その視点で社会とともに課題を解決していきたいと考えています。
 最後ですけれども、大学統合に当たっての要望を申し上げたいと思います。
 これからも社会の変化に伴い様々な理由で統合を目指す大学が出てくるのではないかと思います。そのような大学のためにも、大学統合が行いやすいように、このページにある二つの点について御配慮をお願いしたいと思っております。もちろん医学科のように国レベルで定員管理している学科は別ですけれども、現在の分野別の大学ごとの厳格な定員管理は、例えば入学後の進路変更の妨げにもなり得ます。学生の定員管理の柔軟化を今後御検討いただきたいと思います。
 また、世の中の変化に迅速に対応できるように、これまでの学生総定員の中であれば、その大学に許されている学生総定員の中であれば、新たな学部の創設や再編等の取組を行うことが必要になると思います。その際には設置審での様々な手続がありますけれども、できる限り軽減していただければ有り難いと思っています。
 また、統合前後は教学管理システムや労務管理システムなどの統一が必要になります。これには非常に経費が掛かることが予想されています。科学大学でも、様々な統一作業は統合後も数年は掛かると見込んでいます。統合に関する一定期間の予算支援をお願いしたいのです。これによって、ほかの大学も統合を考えたときに、それに対してちゅうちょすることがなくなるのではないかというふうに思っております。
 以上で私の陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 田中雄二郎

speaker_id: 11627

日付: 2023-12-05

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会