光本滋の発言 (文教科学委員会)

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○参考人(光本滋君) おはようございます。光本滋と申します。
 私は、北海道大学大学院教育学研究院の教員です。専門は教育学です。特に関心を持っておりますのは、青年期以降の教育です。教育は人格の完成を目指しという言葉が教育基本法にありますけれども、このような教育を高等教育にも実現していきたい、高等教育において人格の完成を目指せるような教育を実現していけるような大学法制の在り方について探求しております。
 さて、本日は、参議院文部科学、失礼しました、文教科学委員会におきまして、参考人として意見を陳述し、また委員の皆様の質問に答える機会を賜りましたこと、お礼申し上げます。
 と同時に、参議院だけでなく衆議院を含めた本国会の審議の状況に関しても一言申し上げたいことがございます。
 国立大学法人法の一部を改正する法律案は、十月三十一日に閣議決定され、国会に提出されました。法案は既に衆議院本会議で可決されておりますが、昨日確認しましたところ、衆議院のホームページに掲載されている本会議の議事録は十月二十三日までのものでした。文部科学委員会の議事録は十一月一日までのものでした。本法案の審議に関する議事録は、いまだ一切公表されていないわけです。しかし、参議院の法案審議も始まってしまいました。なぜこんなに急ぐ必要があるのか。参議院の審議は、参考人だけでなく、多くの大学関係者、国民が衆議院の審議の状況を知り、更に検討すべき点などについて意見を持つようになってから始めるべきなのではないでしょうか。おまけに会期末は十二月十三日です。残り期間に十分な審議を行うことは非常に難しいのではないでしょうか。
 また、法案自体にも問題があります。詳細は省きますが、本法案、大変複雑な構造になっておりまして、全体が大きく二つの部分に分かれているんですね。この二つをつなげないと法案が理解できないんですが、そういった資料が実はないのです。仕方がありませんので、私は二つの部分を一本にまとめて、条項の番号も整理して、自分で整理したんです。果たして委員の皆様はどのようにして法案の全体像を理解されていますでしょうか。
 昨日の午後、昨日です、参議院の事務局から国立大学法人法の一部を改正する法律案、閣法第一〇号参考資料、ここに、机上にあるものと同じですね、というのが送られてきました。ありがとうございます。
 その中には、本法律案の概要というのがあって、条文の解説や関連資料も載っているので理解の助けになりました。しかしながら、ここにも改正後の法律を一本にまとめたものはありませんでした。
 このような状況で、果たして法案を理解し、きちんと審議することができるのでしょうか。会期末までに法案審議を終結させてしまってよいのか、良識の府と呼ばれる参議院の文教科学委員の皆様には是非考えていただきたいと思っております。
 さて、法案、本題に入ります。
 私、本日ここに参りますまで、本法案の内容、どのような方が作ったのか分かりませんので、ひょっとしたら内閣府の意向もあるのかなとかいろいろ考えていたのですが、今の上山参考人のお話を聞いて、伺いまして、それもちょっと違うのかなと少し混乱しております。
 法案の問題点につきましては、衆議院でも既に指摘されている点も多々ございます。本日は時間限られておりますので、ここでは三点に絞って指摘したいと思います。
 率直に申し上げて、本法案を作った方は国立大学法人法制というものを理解していない、ないしは関心がないのではないかというふうに思っております。そういったことが浮き上がるのではないかというふうに思っております。
 さて、第一の問題です。運営方針会議を置く国立大学法人を政府が指定するということです。
 先ほど、上山参考人は、国際卓越の制度が広がっていくことがあるかもしれない、しかし、それはそれぞれの大学の御判断に委ねるべきとおっしゃいました。私も全くそのとおりだと思います。
 ところが、この法案はそれと異なっております。国際卓越研究大学ですとかあるいは指定国立大学法人というものがございますけれども、いずれも、大学設置者、国立大学の場合は国立大学法人が応募し、文部科学大臣が認定や指定をすることになっております。つまり、大学側に選択の余地があるわけです。ところが、本法案では、運営方針会議の設置という国立大学法人のガバナンス体制の大きな変更を、当該の大学の意見を聞くこともなく、言わば上から決めているわけです。特定の国立大学法人の指定は政令によって行うわけですから、これを増やしたり認定を取り消すことも政府のさじ加減次第ということになります。
 このような制度は、従来の国立大学法人制度との関係においても異常なものです。国立大学法人とは、中期目標期間の業務実績に対して評価を行い、評価結果を参考に組織、制度を見直したり、次期の中期目標、中期計画を策定していくことを根幹とする制度です。このこと自体にも批判はありますが、言わば政治主導により始められた国立大学法人化の議論が独立行政法人通則法をベースにした法人化の道を選んでしまったことから、現在の形に落ち着いたのです。そして、そのような中にあって、憲法上の要請である大学の自治を侵害しないようにするために、中期目標の策定や評価の方法に工夫を凝らしてきたのです。
 ところが、今回の法案は、こうした国立大学法人の評価制度と関わりなく、国立大学法人の組織、この文言は改正後の目次にあります、の中に特定国立大学法人等の特例等を創設しようとしています。つまり、特定国立大学法人とは、従来の評価制度、国立大学法人法制を無視した、あるいはこれとは異質な制度なのです。
 続いて、第二の問題です。
 運営方針会議は、国立大学法人が自発的につくった場合でも重大な事態を生じます。法案では、運営方針会議は、運営方針事項、すなわち中期目標についての意見に関する事項、中期目標の作成又は変更に関する事項、予算作成に関する事項等を決議することにより決定するとされています。当然、現在の国立大学法人の諸機関が持つ権限を制約します。なぜこのようなことが可能になるのか。
 盛山正仁文部科学大臣は、衆議院の審議において、今回の改正法案により学長の決定権限の一部を移譲する、つまり譲り渡すものだと説明なさっています。これは奇妙な論理です。国立大学法人の学長は、大学の長と法人の長という言わば二つの顔を持つ存在です。国立大学法人法を改正することにより学長の権限を移譲することができるとしても、譲り渡すことができるのは法人の長としての権限にとどまるはずです。
 国立大学法人以外の独立行政法人、中期目標管理法人というのがありますが、ここでは法人の長が中期目標について意見を述べるということを規定していません。一方、国立大学法人法は、文部科学大臣が中期目標を策定する際に国立大学法人の意見を聞くことを義務付け、学長が中期目標に関する意見を述べる権限、すなわち中期目標の原案策定権を持つと定めています。これは、国立大学法人が他の独立行政法人と異なり、大学の教育研究の特性に配慮した仕組みとなっているためです。つまり、学長が中期目標の原案策定権を持つというのは、学長が法人の長だからではなく、そうすることが大学という組織にとって必要だからなのです。
 このことについて、国立大学法人法が国会審議された当時の遠山敦子文部科学大臣は、委員会質疑の中で、中期目標に関する国立大学法人の原案への配慮義務を規定いたしました国立大学法人法案第三十条第三項は、教育研究の特性への配慮を定めた第三条と相まって、国立大学法人が作成する原案を最大限尊重するという趣旨であるというふうに考えておりますと答弁しています。
 ところが、本法案では、第十一条第三項が定める学長が決定権限を持つ事項の第一号、中期目標についての意見の括弧書きというのがその中にあるんですが、この説明をこっそり書き換えています。これにより、学長が決定権限を持つのは、大臣に対して述べる意見、中期目標原案の内容ではなくなり、大臣に対して意見を述べること、つまり中期目標原案を提出する行為だけとなりました。そして、新設の条文、第二十一条の五第一号の方で、中期目標についての意見に関する事項の議決権を運営方針会議に与えています。
 一方、運営方針会議の権限や組織に関しては、教育研究の特性へ配慮する規定は何もありません。衆議院の議論で明らかにされたように、民間企業の経営の実務経験がある人を委員として想定しているなどと言われています。
 国立大学法人法では、教育研究評議会は、中期目標についての意見に関する事項、中期計画に関する事項に関する審議権を持っています。このことに関して、盛山文部科学大臣は、衆議院の委員会において、改正案が成立した場合には、中期目標に関する意見や中期計画の作成等については、経営協議会や教育研究評議会の審議などを経て学長が原案を作成し、その原案について運営方針会議が議論して決定することになりますと述べています。運営方針会議が原案について議論する。遠山文部科学大臣のように、原案を最大限尊重するとは言わないんですね。
 このように、本法案が成立することは、国立大学法人法が制定以来保ってきた大学が持つ中期目標の原案策定権の意義を喪失させかねない、国立大学法制史上の重大事件だと言わなければなりません。
 第三の問題。法案策定の経緯が不明であり、改正の必要が分からないことです。
 既に述べたように、本改正法案は、国立大学法人のうち、規模が特に大きなもののうち政令で定める法人に対して運営方針会議の設置を義務付けるとしています。国際卓越研究大学制度と関わりなく、大学の自発性に基づくこともなく、特定の大学に合議体を設置させるという重大な方針変更は、いつ、誰によって行われたのでしょうか。
 運営方針会議、最高意思決定機関としての合議体というアイデアは、先ほど上山参考人が申されました十兆円の大学ファンドを原資として助成を行う国際卓越研究大学に関する議論の中で生まれました。というよりも、国際卓越研究大学に限定した話でした。
 二〇二二年二月にCSTIの最終まとめが公表されまして、ここでは、国際卓越研究大学に対して独自のミッションを与え、認定条件として最高意思決定機関としての合議体を置くということを提言しています。その後、この最終まとめを基に作られました国際卓越研究大学法が昨年の通常国会で成立しました。国際卓越研究大学法は、国際卓越研究大学の認定を受けようとする大学に対して、文部科学省令で定める基準に適合していることを求めています。そして、この法律の規定を受けて、省令により合議体の設置が必要とされているのです。
 国際卓越研究大学法の法案審議、参議院の委員会において、当時の増子宏高等教育局長は、国際卓越研究大学は、多額の運用益が回ってくるということで、一人の学長だけではなかなかその辺の責任が果たせないだろうということで合議体を設けておりますので、その辺の、その他の国立大学法人につきましては通常どおり学長のリーダーシップで大学運営を図っていただくと述べています。
 方針変更の経緯を示す文書は、一般の国民はもとよりですが、私ども大学教職員にも一切示されておりません。衆議院の参考人質疑で明らかにされたように、国立大学の学長、元学長の方々、本日見えられています田中参考人も衆議院の参考人質疑で申されておりましたが、ですら、法案の内容を知ったのはごくごく最近だというお話です。
 したがって、国立大学法人法をなぜ改正しなければならないのか、私には分かりません。本日、私から質問することはできないと思いますが、もし御存じなら上山参考人に教えてもらいたいです。政府内できちんと審議、検討したのであれば、その過程を公表すべきです。それが行われない限り、本法案の立法事実は不明です。立法事実不明の法案を成立させることがあってはなりません。
 最後に、法案が成立した場合に予想されることを述べます。
 今から約二十年前、国立大学の法人化が行われました。当時、積極的賛成派と言えばよいか、法人化すれば国立大学は自由度が高まる、経営上のメリットがある、社会との積極的な交流が生まれると言っていた方々もいました。一方で、消極的賛成派あるいは容認派は、法人化によっても大学は変わらない、変えてはならないと言っていた。もちろん、当時反対していた方々もいました。
 二十年たった現在、どうか。未来を予想することは困難であるとしても、国立大学法人の、国立大学法人化の結果の予測はそれほど難しいことではなかったはずです。当時から、国の統制が強まり大学は自由を失っていく、大学は独立採算を求められるようになり、授業料が引き上げられたり、経済的な観点から教育研究組織や大学が再編されていくことになると予想し、法人化を批判してきた方は少なくありませんでした。
 大切なことは、予想どおりになったかではなく、予想が違ったなら違ったで結構ですから、それを認め、なぜそうなってしまったのか反省し、同じ見当違いを繰り返さないようにすることだと思うのです。当時法人化の旗を振ってきた人々の中で、現在そうしている人がどれだけいるのか。現在、運営方針会議をつくろうとしている人たちの中に、二十年後、十年後でもいいですけれども、この改革のてん末が誰の目にもはっきりしたときに責任ある行動を取る人が果たしているのかと考えると、この改革を支持することは私はできないなという気持ちになるのです。
 大学に数々の被害をもたらす重大な問題を持つものであり、立法事実も分からない、こんな法案は当然廃案にすべきことを述べて、私の意見陳述を終わります。

発言情報

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発言者: 光本滋

speaker_id: 22864

日付: 2023-12-05

院: 参議院

会議名: 文教科学委員会