冨田珠代の発言 (経済産業委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○冨田参考人 皆様、おはようございます。
ただいま御紹介をいただきました連合総合政策推進局長の冨田でございます。
この度は、このような場で連合の意見陳述の機会をいただきましたこと、まずもって御礼を申し上げたいと存じます。
連合は、七百万人の働く者から成る労働組合の全国組織です。本日は、カーボンニュートラルの実現に向けて日々努力を続けている働く者、生活者の立場から意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
まず初めに、本案に対する基本的な態度を申し述べます。
今やカーボンニュートラルの実現は世界共通の重要課題でありますが、我が国におけるGXの推進は、産業、企業、地域経済、国民生活に大きな変化をもたらすものであり、特に二酸化炭素を多く排出する産業の仲間からは期待と不安の声が寄せられております。
諸外国と比してエネルギー資源に乏しい我が国において、カーボンニュートラルを達成するには、あらゆる手段を総動員する必要があり、CCS事業の環境整備や一括審議される低炭素水素等の活用推進は必然であると考えております。
また、CCSや水素を事業として展開する際は、労働者や地域住民の安全確保が不可欠ですが、今回のCCS事業法案には、審議会での連合の意見も踏まえ、充実した保安規制が盛り込まれたことなどから、連合は、法案の速やかな成立を求めたいと存じます。
次に、CCS事業の運用上の課題について、五点申し述べます。
一点目は、公正な移行の実現についてです。
先ほども申し上げましたが、CCSに限らず、GXの推進は、産業構造、地域経済、労働者への影響が大きいことから、分野横断的な課題を深掘りする省庁横断的な体制と、政労使の社会対話の場を設置をし、複数のシナリオの下、必要な対策を検討する必要があります。
今回のCCS事業でいえば、事業の安定と持続的成長を担保するには、中長期的に新たな技術を開発し、技術伝承のための人材を確保していくことが重要であり、新たな事業で生み出される雇用を、グリーンでディーセントな付加価値の高い雇用としていく必要があります。
同時に、CCS事業は、一定の貯留が終わると事業を廃止することがあらかじめ組み込まれておりますので、事業廃止による雇用や地域経済への影響を想定をし、対策を打っておく必要がございます。
特に、雇用については、失業なき労働移動が大前提ですが、労働者に対しては、企業内の異動で対応するのか、それとも、新たな技術の教育訓練を行って別の産業に移動するのか、その場合、訓練中の住居や生活保障をどうするかなど、重層的なセーフティーネットを構築をしていく必要があります。
公正な移行を実現するには、雇用と経済対策を同時に推進することが最も重要であり、労働組合を含む地域の関係当事者が参加する社会対話の場を設置をし、事業廃止による影響と対策について、複数のシナリオを検討し、ロードマップを作成するとともに、必要な予算措置を講じておくことが重要です。二十年後、三十年後のことだからと後回しにせず、事業計画にあらかじめ織り込んでおくことが肝要であると考えます。
二点目は、貯留施設の立地地域の関係者との丁寧なプロセスを踏むことについてです。
CCS事業の安定と成長は、事業所で働く者の労働安全や立地地域住民の安全確保を大前提に、地元関係者との利害調整や環境保全を万全に行い、地域社会に受け入れられてこそ可能となりますが、多くの国民は、CCSという言葉になじみがないですし、二酸化炭素が漏えいをすると、窒息や爆発といった事故リスクがあることも余り知られておりません。
そのため、貯留施設の候補地選定の段階から、地元住民や事業者などの関係者に情報を提供し、当事者の意見を聞く機会を設けるなど、丁寧なプロセスを踏んで進めることが重要です。
この点で申し上げますと、CCS事業法案では、経済産業大臣が事業者に貯留事業などを許可するときは、都道府県知事と協議しなければならないなどの規定が置かれています。しかし、地元関係者などの利害関係人が意見を述べることができるのは、貯留事業などの許可に関する公告に限られており、地元へのきめ細やかな情報提供や、公告以外に関して意見を聞く機会については何ら定めがありません。
苫小牧における実証試験では、地元への情報提供や意見集約がきめ細やかに行われたと承知をしており、こうした好事例を参考に、丁寧なプロセスの在り方についても議論を深めていただきたいと考えます。
三点目は、二酸化炭素を海外に輸出した際の現地の労働者の安全確保についてです。
政府は分離・回収した二酸化炭素を海外に輸出して貯留することも視野に入れていると承知をしてございます。国内外にかかわらず、労働安全は何よりも優先されるものですので、二酸化炭素の輸出は、現地の貯留技術と労働安全が万全に確保されている場合に限って認めるとしていただきたいと存じます。
この点について、審議会の取りまとめには、二酸化炭素の輸出に当たり、日本政府が事業者に対し、輸出先の貯留事業者に対する環境、労働安全などに関する法令遵守の状況を確認するよう指導する旨が盛り込まれました。
政府には事業者への指導を徹底していただきたいと存じますが、大事なのは、この点が十分に担保されることです。そのため、政府や事業者の間で協力覚書を締結する際には、現地の労働者の労働安全確保を項目に盛り込むなど、現地労働者の安全確保策についても審議を深めていただきたいと存じます。
四点目は、二酸化炭素の圧入時と事業終了後の長期貯留における管理業務などの確実な実施についてです。
貯留事業においては、二酸化炭素の貯蔵状況の監視などの管理業務が事業者に義務づけられます。また、それらの管理業務は、貯留事業が終了し、貯蔵の状況が安定するまでの一定期間が経過したら、JOGMECに移管することとされております。
管理業務やJOGMECへの移管の在り方は、事業を安定的かつ適正に運営する観点はもとより、安全確保の観点からも重要なポイントです。詳細は今後の検討に委ねられますが、在り方を具体的に詰めていく際は、安全確保を大前提に、科学的根拠に基づいて検討し、適切な規定を設けていただきたいと存じます。
五点目は、事業者の賠償責任についてです。
CCS事業によって事故などの損害が生じたときには、被害者への賠償責任が果たされなければなりません。
幸いなことに、これまでにCCS事業による国内の重大事故はありませんが、仮に重大事故が発生した場合、事業者に十分な賠償能力がないと、事業破綻に追い込まれ、被害者への十分な賠償や、当該企業で働く者の雇用が維持できなくなることが懸念をされます。
賠償責任については、鉱業法に倣って保険加入を操業許可の条件とするとのことですが、CCS事業での事故対応や損害賠償の知見、経験がない中で、保険による対応だけで十分であるか否かは更なる検討が必要です。被害者や労働者を守るためにも、国が事業者の賠償責任をサポートする仕組みなども整えていただきたいと考えてございます。
最後に、カーボンニュートラルの達成に向けては一刻の猶予もございません。今ほど申し上げた課題について審議を深めていただき、適切な事業展開と安全確保の道筋をつけていただいた上で、CCS事業法案と一括審議される水素社会推進法案の早期成立を図り、官民一丸となった取組を推進していただくことをお願いを申し上げ、連合からの意見陳述とさせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)