生水裕美の発言 (厚生労働委員会)

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○生水参考人 皆様、おはようございます。いのち支える自殺対策推進センターの生水裕美と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 私は、滋賀県野洲市の自治体職員として二十五年間勤務しておりましたので、生活困窮者支援、消費生活相談、こうした相談業務を担当した中から、その経験も踏まえて、改正について三点お伝えしたいと思います。
 まず一点目です。全国どこに住んでいても必要な支援を受けられるように、家計改善支援事業の国庫補助率、これを引き上げて、就労準備、家計改善支援事業の全国的な実施を推進していただきたく思います。
 家計相談の事例を紹介します。
 自立相談窓口から、家計管理が苦手なようだと家計相談につながった相談者さんは、幼い子供さん二人と暮らす母子家庭でした。離婚して間もなく、お金のやりくりが難しいと悩まれていました。家計改善支援は、丁寧にお話を聞きながら家計表を一緒に作成していく中で困窮の背景を見つけ出していく支援ですが、一か月の収支が見えないだけではなくて、何に使っているか分からないということでしたので、本人の御希望もあり、レシートを集めて一緒に確認することにしました。
 すると、レシートに二日ごとにマヨネーズを購入しておられて、マヨラーかなと思ったんですが、よく理由を聞きますと、料理が苦手で何でもマヨネーズをかけて食べている、子供の頃、親御さんが料理をしないで、菓子パンを買って食べていたので、味つけの仕方が分からないんですと言われました。さしすせそ、この料理が難しいんですね。
 そこで、市役所の子育て家庭支援課の養育支援員に訪問してもらいまして、料理の作り方を教えてもらいました。料理ができるようになって、子供たちもうれしいのか、食欲旺盛になったんです。
 あわせて、しんどさの理由を相談しましょうと健康推進課の保健師に相談して、精神科の診察を受けましたところ、知的障害が分かりました。それをもって、社会保険労務士の方につなぎまして、障害年金受給となりました。彼女は、苦手なことが多くてつらかったけれども、診断を受けて、できない理由が分かってほっとしたと言われました。本当にしんどかったんだと思います。
 この事例は、レシートのマヨネーズから障害年金受給につながったケースです。家計相談は、家計を見える化することによって、相談者御本人が気づいていない課題にも気づくことができるので、効果的な支援ができます。
 それと、家計相談は庁内連携の要でもあります。困窮されている方の多くは税金、使用料の重複滞納が多くて、これら全体を整理してまとめて分納計画を支援するのは、市役所にとってもメリットとなります。また、滞納をSOSのサインとして捉えて支援につなぐことができるのは、市役所だからこそできるアウトリーチです。
 だからこそ、就労準備と併せて、どの自治体においても支援が利用できるようにすることは極めて重要です。国庫補助率の引上げとともに、必須化に向けた検討も諦めることなく、見放すこともなく、是非ともお願いします。
 二点目は、生活困窮者に就労準備、家計改善、居住支援を行う事業についてです。現在、生活保護受給者向けの事業実施率は、就労が四〇%、家計が一一%と低い状況にあります。これらの事業を生活保護受給者も利用できる仕組みを新たに創設して、両制度の連携を強化することについて賛成です。
 理由は、保護担当がいきなりこれら事業の設計をするのは自治体にとってハードルが高いのと、多くの保護受給者が困窮者と同じく支援を受けられるようにすることは、就労準備、家計、居住支援の事業を全国で推進することにもつながるからです。また、切れ目のない支援も可能となります。
 事例を紹介します。
 家賃が払えず長らく滞納となっていた男性を、心配した大家さんが市役所の自立相談窓口に連れてきてくださいました。男性は、事業が倒産し、多重債務に陥っていて、生活費もままならない状況でした。生活保護申請を促しても、保護だけは絶対嫌やと申請を拒否されるんですが、借金だけは気にされていて、弁護士相談を了解され、家計相談員が一緒に同行して、弁護士が自己破産の方針で受任されました。その二週間後に、弁護士から、遺書と思われるファクスが届いたが電話がつながらないと連絡がありまして、職員が自宅に急行し、自殺未遂された状況から命を救うことができました。
 その後、生活保護申請を決心くださったんですが、決心された理由についてお尋ねすると、あのとき親身になって話を聞いてくれた、だから生きてみようと思えたとおっしゃってくださいました。保護が決定してからは、保護課では家計相談の事業を行っていないので支援ができず、債務整理が滞ってしまったこともありましたが、無事自己破産が決定しました。また、福祉事務所の就労支援員の寄り添いで就職もでき、生活再建ができました。保護廃止後は、再度、困窮の家計相談で見守りながら生活を応援しました。
 この事例は、困窮の家計相談が生活保護決定で切れ、保護廃止後に再度困窮の家計相談を利用と、支援が途切れてしまいましたが、一貫して家計相談ができれば、相談者にとっても安心だし、事業を通じた連携はケースワーカーの負担軽減につながると思います。ただ、こうした連携においては、目指すべき自立の方向性や支援に対する考え方の一貫性、連続性が重要なので、両制度合同の研修会や両制度共通の手引が必要だと思います。
 三点目は、生活困窮者向けの支援会議設置の努力義務化と保護受給者の支援に関する会議体の設置について賛成です。困窮の支援会議の設置率が全国約四割にとどまっているのは本当に残念で、努力義務化とともに設置強化を図っていただきたく思います。
 自治体が設置しない理由に、必要性を感じないという意見があります。
 二〇一四年、千葉県内で起こった、生活困窮の末、中学生の娘さんを殺害してしまったシングルマザーの事件では、公営住宅の家賃を二年以上にわたって滞納、国民保険料は未納で保険証がない、生活保護の窓口までつながったが申請に至らなかった、そうした結果、公営住宅の強制執行の日に事件を起こしてしまいました。もっと早くこの母子家庭の困窮の全体像が把握できていれば、どこかに支援がつながっていれば、事件は起こらなかったと思います。
 これは、ここまでいろいろな課題があって、しかもそれを各課で把握していただろうに、それらが情報共有されていないがゆえに生まれた悲劇です。たとえ本人が御相談されなくても、一人親家庭、家賃滞納、保険証がない、こうしたSOSの兆候を関係機関がキャッチして情報共有し、支援のアプローチをすることが必要です。そして、それをするために支援会議が必要なんです。
 この事件を過去の悲しい出来事として終わらせるのではなくて、自分事に引きつけて考えることが大切です。こうした市民の命を守るために自治体は存在することを忘れてはいけないと思います。このような悲劇、悲惨な事件が起こらないようにするために生活困窮者支援があるのだと思っています。
 また、自殺対策においても、自殺未遂者支援を始めとした様々な取組の現場で個人情報の取扱いが課題となっています。こうした支援会議を活用し、必要な人に必要な支援が届くような体制を構築するためにも、努力義務化と併せて、生活困窮者支援と命を守る自殺対策との連携強化を図っていただきたく思います。
 最後に、以上述べた内容をいかにして現場の取組に反映させていくかが重要です。特に、今回改正される生活保護制度と生活困窮者自立支援制度の連携策をしっかりと機能させることができるかどうかは基礎自治体の公務員にかかっていると思います。法律が改正されても、運用するのは人です。
 私は、公務員時代にすごく仕事で悩んでいたときに、当時の市長から、市役所にとって一番大切な役割は住民の命と暮らしを守ることであって、自治体職員はこれを絶対に忘れてはいけないと教えていただきました。公務員はバッシングを受けることが本当に多くて、やりがいを失ってしんどさを抱える職員も多くいます。公務員になろうとする応募も減っていると聞きます。けれども、損得なく市民を助けることができるのはやはり公務員の醍醐味であって、かけがえのない、誇りある仕事だと思っています。
 つけ加えるならば、この改正が、全国のこうしたしんどさを抱える職員、でも頑張ろうとしている自治体職員のやりがいを生み出す糧となって、特に、生活困窮者自立支援制度が、市民の命と暮らしを守るために思いっ切り働ける、そうした心強い味方として、頼れる存在に成長していってもらえることを心から願っています。
 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 生水裕美

speaker_id: 31473

日付: 2024-03-26

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会