佐藤博樹の発言 (厚生労働委員会)
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○佐藤参考人 おはようございます。東京大学名誉教授の佐藤です。
本日は、人事管理が専門です、その中で、今回の法改正の中で、仕事と介護の両立に絞って私の意見を説明させていただければというふうに思います。
お手元に資料があると思いますので、飛ばしながら、ところどころ説明させていただければというふうに思います。
今日お話ししたいのは、一枚目ですけれども、企業にとって、これから社員の高齢化はますます進んでいきますので、後でお話ししますように、仕事と介護の両立というのはすごく重要になってきます。ただし、企業も社員も、仕事と介護の両立の仕方について誤解が結構あります。仕事と子育ての両立と同じようにすれば仕事と介護の両立ができるというふうな誤解があるということですね。今回の法改正は、その点を解く上で非常に重要だなというふうに思っています。そういう意味で、法改正の評価については、仕事と介護の両立の仕方について、企業や社員に適切に、事前に情報提供するという点で貢献できるかというふうに思います。
三ページですけれども、社員が四十五歳を過ぎると、親御さんは七十五を過ぎてきますので、大体七十代後半から高齢者、要介護、要支援の人がだんだん増えてきますので、そういう意味では、企業からすると、四十五歳、後半以降、つまり四十代後半から定年までの社員というのは、仕事と介護の課題に直面する層だということであります。
それともう一つ大事なのは、本人もですけれども、企業も、誰が定年までに介護の課題に直面するか、これは事前に分からないんですよね。一定の確率で発生する。確かに、今、四十代前半で介護の課題がある社員は、四ページにあるように、このパーセントですけれども、じゃ、この人以外の人たちが来年、再来年、介護の課題に直面しないのかというと、そうは言えないんですよね。
それともう一つは、これはある一定時点で介護している人の割合なわけでありますけれども、結婚している社員でいうと、親御さんは四人いる可能性があるんですよね。一人の親御さんの介護の課題が過ぎると、また別の、別の、場合によっては四人の親の介護の課題に直面する可能性がある。それが介護の課題であります。
五ページですけれども、そういう状況がある中で、企業にとって、社員が仕事と介護の両立ができないと、先ほど、介護離職ということが起きたり、あるいは、離職しないまでも、今日親はちゃんと家で過ごせているかな、そういう心配を持ちながら仕事に集中することはなかなか難しいですよね。やはりモチベーションが下がってしまう。つまり、生産性が下がるということが起きてしまう。企業にとっても、やはり、社員が仕事と介護の両立をうまくマネジメントできないと、離職や生産性の低下という大きな課題を受ける可能性があります。
社員にとっても、確かに仕事と介護の両立は結構大変です。ただ、辞めるともっと大変なんですよね。介護離職した人に調査をすると、六ページにありますけれども、やはり辞めなければよかったという人がほとんどであります。もちろん、ですから仕事と介護の両立が易しいという意味ではありません。ただ、辞めるともっと大変なんですね。そういう意味では、どういうふうに仕事と介護を両立しながら、できるだけそれを円滑にやれるような支援というのがすごく大事な状況にあるというふうに考えています。
八ページですけれども、先ほどお話ししましたように、仕事と子育ての両立と仕事と介護の両立は違うんですよね。
一番大きいのは、事前に、企業であれば、四十五歳以上の社員の誰が介護の課題に直面するか、いつか、いつ誰が、これは分からないです。本人もなんですね。親がいても、七十五だけれども今元気だなと、でも、翌年、庭で転んで腰の骨を折って要介護状態になる、こういうことが起きるわけですね。つまり、事前に予測できない。これがすごく大事であります。そういう意味では、そういう問題が起きる前から、親がいる限り、もし自分の親が要介護の状態になったらどういうふうに両立していいのかということを事前に知っておく、これがすごく大事なんですね。親が要介護になってから、どうしよう、これじゃ遅いんですよね。事前の知識を得ておくというのがすごく大事であります。
それともう一つは、いつまで続くか分からない。これなんですよね。これが子育てとの違いであります。お子さんが生まれた、育児休業を取り、保育園に預けて短時間勤務を取り、すると、お子さんの成長に応じてどういうふうに仕事と子育ての両立をしていいか、ある程度見通しが立つわけであります。企業も、それに応じた支援もできるわけでありますけれども、介護の場合は、いつまで続くか分からないんです。
九ページにありますけれども、平均五十か月ぐらいなんですよね。十年以上かかる人もいるんです。一か月の人もいる。これは分からないんですよ、事前に。
ですので、例えば、自分で介護をしようとすると、介護休業期間が足りなくなるんです。しばしば、だから介護休業を延ばせという議論はあるんですけれども、じゃ、十年以上に延ばせるかという話なんですね。つまり、いつまで続くか分からないというのが介護の課題であります。
そういう意味では、社員が自分で介護しちゃいけないんですよね。介護は、両立をマネジメントする、介護自体は専門家に任せるということがすごく大事になってきます。この点でも子育てと違うんですね。ですから、育児休業というのは、社員が子育てするような仕組みですよね、男性も含めて。介護休業は違うんですね。もちろん介護しなきゃいけないときもあるんですけれども、介護休業を使って介護を続けると、いつまで続くか分かりませんから、仕事を辞めるということが起きるんですよね。
ですので、同じ休業といっても、中身が違う、目的が違うということがすごく大事であります。しかしながら、そのことを知らない社員がたくさんいるんです。
十一ページにありますように、介護休業の制度や介護保険制度、両方についてきちっと説明している企業は半分を下回っていますし、社員も、介護休業や介護保険制度の仕組みについて知らないという人が多いわけであります。十三ページ、十四ページに、介護休業の利用の目的について社員や企業に聞いているんですけれども、社員だけじゃなく企業もまだまだ、介護休業は介護するための制度だと思っている人は結構いるんですよね。この辺を変えていくということがすごく大事だろうというふうに思います。
そういう意味では、十六ページにありますように、社員が、親がいる限りいつかは介護の課題に直面する可能性があるという心構えを持ち、もし親が要介護になったら、自分が介護するのではなくマネジメントする、仕事と介護を両立することを優先するんだということをする。そのためには、介護保険制度の利用の仕方、例えば、地域包括支援センターを知らないという人がいるんですね。介護保険制度は認定の手続を経ないと使えないんですけれども、こういうことを知らないんですよね。
一つは、四十歳のときに介護保険制度の被保険者になりますが、保険証は来ないんですよね。保険証が届くのは六十五歳です。つまり、四十歳になると介護保険料は取られるわけでありますけれども、自分自身が介護保険制度の被保険者というふうに知らない人は結構います。それはそうですよね、保険証がないわけでありますから。
でも、自分は六十五歳の誕生月になると保険証は届くわけですけれども、実は、その前に、親がいる限り、親の介護の課題に直面したときに、子供が、親が要支援、要介護認定を受けたりとか、介護サービスの、在宅であればケアマネジャーを探したり、これは多分子供がやるわけですよね。そうすると、介護保険制度のサービスをどうすれば利用できるかということを知らなきゃいけないわけでありますけれども、そういう知識を欠いている人が多いということであります。
そういう意味で、十九ページのように、社員が介護の課題に直面したときに、自分で介護するわけではなく、もちろん緊急対応はしなきゃいけないんですよ、その後、自分はマネジメントに徹して、仕事に戻れるようにしていく、このことを知っておくということであります。
そういう意味では、介護保険制度の利用の仕方あるいは介護休業の利用目的、こういうものを事前に知っている、そして、自分に親がいる限りいつか親が要介護になるかもしれないという事前の心構えを持っておく、これがすごく大事だというふうに思います。
そういう意味で、今回の法改正の評価でありますけれども、二十三ページに書いてありますように、今回は、社員が親等の介護の課題に直面したら、個別周知します。これはすごく大事だと思います、それまで知らないですし。
あるいは、事前に、四十歳になったとき、これが一つのポイントだと思います、介護保険制度の被保険者になりますから。四十代後半ぐらいから親の介護の課題に直面する社員は増えてきますから。一つは、四十歳になったときに、介護保険制度の仕組みなり、親御さんはまだ元気かもしれないけれども要介護状態になったらこういうふうに両立するんですよというような研修をする、こういうことがすごく大事であります。
そして、介護休業の目的ですよね。もちろん、緊急対応で介護しなきゃいけないこともあるわけでありますけれども、介護はいつまで続くか分からないので、介護休業というのは、両立体制を準備する、そういう体制をつくるための準備のために使う、これをきちっと社員に周知するということが大事であります。そういう意味で、法律上は介護休業という名称ですけれども、企業によっては、介護休業・両立準備休業。これだけでも違うんですね。
今回も、多分、厚労省は、法律が通った後、そういうような情報提供を始めるかと思いますけれども、やはり育児休業にやや引っ張られ過ぎちゃっているということはあると思いますので、介護休業の違いということもきちっと分かるような情報提供も大事だと思います。
最後に、これからますます社員自身が両立をマネジメントしていくときに誰と相談するか。もちろん、企業も大事ですけれども、介護の場合は個別性が高いです。まず在宅から始まるわけですから、そうするとケアマネジャーさんと相談する、これは結構多いんです。ただし、ケアマネジャーさんの仕事は、要介護者の状態をきちっと把握して、要介護者が質の高い生活を送るためどういう支援をすればいいかと考える、これが役割ですよね。でも、要介護者の家族はケアマネジャーに相談するわけですよね、仕事と介護の両立をどうしたらいいか。そういう意味では、ケアマネジャーさんがそういうことのアドバイスもできるようなこともこれからは必要になるのではないかというふうに思います。
実際、ケアマネジャーの団体、ちょっと誤植もありますけれども、二十四ページ、日本介護支援専門員協会が、ワークサポートケアマネジャーという上乗せ資格、ケアマネジャーさんが要介護者家族の両立についても相談できるような仕組みをつくるというようになっていますので、こういうこともこれから必要になるのかなというふうに思います。
あと、最後、家族の役割は何かということはこれから大事だと思います。是非その点も御検討いただければというふうに思います。
どうもありがとうございます。(拍手)