馬渡雅敏の発言 (国土交通委員会)
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○馬渡参考人 公益社団法人全日本トラック協会の副会長を務めております馬渡雅敏でございます。本日は、トラック業界を代表して意見を述べさせていただきます。
皆さんのお手元に、物流の二〇二四年問題という冊子がありますけれども、大体これに沿って発言をさせていただきます。
一ページから五ページに書いておりますけれども、トラック運送業は暮らしと経済を支えるライフラインですが、全国約六万三千社の約六割が、保有車両台数十両以下の小規模トラック事業者であります。保有車両台数の少ない事業者ほど、経営状況が悪いという傾向にあります。
また、エッセンシャルワーカーたるトラックドライバーの長時間労働が課題となる中、平成三十年六月に働き方改革関連法が成立し、五年間の猶予期間をいただき、いよいよ今月から、トラックドライバーにも罰則つきの時間外労働の上限規制、年九百六十時間というものが適用されました。
あわせて、ドライバーの拘束時間、休息期間、運転時間等の基準である自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる改善基準告示が見直され、ドライバーの拘束時間は、一年当たり原則三千三百時間に制限されます。今まで三千五百十六時間ございましたけれども、三千三百時間に制限をされる。
現状、トラック事業者の約三割、長距離事業者の約四割が、年間九百六十時間の上限を超過するドライバーを抱えている状況に鑑みれば、規制の適用により、ドライバーの労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、物が運べなくなる可能性が懸念をされております。いわゆる、物流の二〇二四年問題と言われております。三ページに、大体、全体の構図を描いております。
一方、トラックドライバーの労働時間は、全産業と比較して約二割長く、年間所得では中小型ドライバーで約一割低い、トラックドライバーの有効求人倍率は全職業と比べて約二倍高いなど、若者を中心に担い手不足が続いている状況でございます。ドライバーの待遇と労働環境が改善され、今よりも短い労働時間で、今よりも稼げる魅力的な産業とならなければ、担い手確保は困難であることから、ドライバーの労働時間の短縮と、適正運賃収受による賃上げが喫緊の課題となっております。
こうした状況を踏まえ、平成三十年に、議員立法により貨物自動車運送事業法が改正され、令和五年度末までの時限措置として、荷主対策の深度化と標準的な運賃制度が創設されました。
まず、荷主対策の深度化は、長時間の荷待ちや運賃・料金の不当な据置きといった、トラック事業者の法令違反の原因になる行為を荷主や元請事業者が行っている疑いがある場合に、国土交通大臣が荷主に対し、是正を要請することができる制度であり、ドライバーの労働条件の改善や取引環境の適正化に資するものであります。
標準的な運賃については、ドライバーの労働条件の改善等を図るため、法令を遵守して持続的に事業を運営するための参考となる運賃を示すことが効果的という趣旨から、ドライバーの賃金を全産業の標準的な水準に是正することなどを前提として、業界の実勢運賃の水準と比較すると、一定程度高い水準に設定されておりますけれども、業界としては、この高みを目指して果敢に運賃交渉に臨むべきと考えております。
改正法の成立以降、国土交通省が中心となって様々な取組が進められており、年間労働時間や年間賃金について、全産業平均との差は縮まりつつあります。一方、新型コロナウイルスの蔓延や原油価格の高騰により、赤字企業の割合は増加傾向にあるなど、取組は道半ばとなっております。
こうした状況を踏まえ、昨年六月には、再び議員立法により貨物自動車運送事業法が改正され、これらの制度が当分の間の措置として延長されました。
こうした中、議員立法による制度を幹として、二〇二四年を目前に、政府全体としても二〇二四年問題への対応を抜本強化していただいております。昨年六月の関係閣僚会議で取りまとめられた、物流革新に向けた政策パッケージ等に基づき、政府を挙げて、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主、消費者の行動変容といった、物流革新に向けた政策パッケージに基づいて、政府を挙げて様々な施策を講じていただいております。
特に、荷主対策の深度化については、昨年七月に国土交通省において全国百六十二名規模のトラックGメンを創設し、悪質な荷主等への是正指導を大幅強化しているほか、標準的な運賃については、先月、運賃水準の平均八%の引上げや、荷役料金や下請手数料等の新たな運賃項目の設定等、見直しを行っていただき、着実に取組を進めていただき、大いに期待しております。
六ページになりますけれども、トラックドライバーの長時間労働の要因は、発荷主、着荷主の、積込み、積卸し場所における長時間の荷待ちや荷役作業であります。国交省さんの調査によりますと、一運行当たりの平均荷待ち、荷役時間は約三時間程度であります。ドライバーの労働時間の短縮を図るためには、この荷待ち、荷役に係る時間を削減していくことが不可欠であります。
一方、これはトラック事業者の努力だけでは到底実現が困難でありますので、発着荷主の御理解と御協力が極めて重要であります。例えば、荷物の受取、引渡日時やパレットの利用など、荷待ち、荷役作業時間の削減に大きく貢献する事項については、荷主が決定権をお持ちであることから、荷主側が主体的に改善に向けて取り組んでいただくことが必要であります。
本法案では、荷主等に対し、荷待ち、荷役時間の削減、納品までのリードタイムの延長等の努力義務を課した上で、一定規模以上の荷主さんには、具体的な取組に関する計画の作成等を義務づけることとされております。これにより、ドライバーの労働時間削減のための取組が大きく前進するのではないでしょうか。
我々トラック事業者がドライバーの賃金を上げるためには、その原資となる運賃を十分にいただく必要があります。しかし、トラック運送業は中小企業が多く、荷主や元請事業者に対する交渉力が弱いということがありまして、適正な運賃を収受できていないのが現状です。また、トラック業界における多重下請構造も、実運送事業者の適正運賃収受が進まない要因の一つと考えられることから、多重下請構造の是正に向けて取り組む必要がございます。
トラック運送は輸送需要の繁閑の差が激しく、需要の変動に柔軟に対応するために、自社のドライバー不足の補填や、荷主からの突発的な運送依頼への対応のため、一定の下請構造が生じることはやむを得ないというふうに考えておりますけれども、一方、過度な下請構造により、実運送事業者の適正運賃収受が妨げられている実態にあるほか、荷主や元請事業者においても、数次の下請の事業者が実運送を行っているということを把握をしていないなど、前提となる環境がまだ整っておりません。
業界としても、下請次数を二次までに制限すること、また、下請手数料を運賃に上乗せして収受できるよう荷主と交渉を進めること、契約の書面化を推進することなどを掲げておりまして、多重下請構造の是正に向けた取組を進めているところ、本法案により措置されている実運送体制管理簿や、新たに下請手数料の項目が設定された標準的な運賃を活用しながら、業界一丸となって多重下請構造の是正に取り組む所存であります。
トラックドライバーの労働環境の改善は、トラック事業者のみでは実現が難しいです。荷主さんの理解と協力が必要不可欠であります。前述のトラックGメンは、荷主に対して交渉力の弱い立場にあるトラック業界にとっては、この取組は大変心強いところであります。百六十名程度のトラックGメンに対して、トラック事業者は六万三千社存在しております。
今般の法案によって、悪質な荷主の情報について、地方実施機関から国土交通大臣へ通知する規定が設けられておりますが、業界としてもトラックGメンの活動に協力、後押しをしていきたいと考えております。そのためには、更なる連携強化のために、地方実施機関の機能強化などが必要であるというふうに考えております。
結びになりますけれども、今般の法案は、トラック業界を含む物流産業全体の持続的な成長のために必要不可欠であるというふうに思います。二〇二四年問題をスタートとして、トラック業界の構造的な課題を解決するためにも、是非、本法案を可決、成立していただきたいというふうに思っております。業界としても、ドライバーの長時間労働是正と賃上げによる処遇改善に向けて、全力で取り組んでいく所存でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)