金尚均の発言 (総務委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○金参考人 おはようございます。金尚均と申します。
 それでは、私の意見を述べさせていただきます。
 資料にございます一ページ目の一から五、これが概要ですが私の意見でございます。では、それに基づきまして以下説明させていただきます。
 現状のプロバイダー責任法では、いわゆる権利侵害の被害者が、いわゆる発信者、違法情報を投稿した者が誰であるのかということを特定し、それに基づいて損害賠償について定める、そういったようなことを主に規定してきました。他方で、プロバイダーの責任を制限するというふうなたてつけになっております。そこでは、いわゆるデジタルプラットフォーム、SNS事業者に対して、内部苦情処理の制度並びにその透明性については何ら法的には定められてこなかったというふうなことでございます。
 しかし、この間、ヘイトスピーチを始めとして様々な違法情報が社会の中で問題になる中、二〇二〇年九月、総務省はインターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージを策定し、プラットフォーム事業者の取組支援と透明性、アカウンタビリティー向上を促進してまいりました。ここではいわゆるソフトロー、非規制的な方式でSNS事業者に事業内容開示を求めるというふうなやり方を取ってきたわけでございます。
 しかし、二〇二二年三月七日、ツイッターの清水氏の発言がございました。そこでは、開示する理由を議論されていないまま開示することを求められているような気がしますとの、いわゆる法的根拠ないしは規制のないまま自らの事業の内容を開示しなければいけないことの理由、これについて反論があったわけです。これは、総務省等々に非常にショックを与えたというふうなことでございます。
 そこで、二〇二二年八月、総務省の研究会が公表した第二次取りまとめでは、プラットフォーム事業者による運用の透明性やアカウンタビリティーの確保が不十分であるというふうなことから、行政からの一定の関与というものが必要であるということが具体化されたわけでございます。そういった中、今回の法案につきましては、いわゆるSNS上の違法情報による被害の深刻化を前にして、情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律として、事態の改善のために大きな一歩を踏んだというふうに評価できるかと思います。
 その上で、本案に言及したいと思います。
 まず、定義についてでございます。二ページ目、第二条の六号、侵害情報につきまして、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利を侵害したとする情報をいうというふうに定義されております。しかし、この日本におきまして、インターネット上の問題が起きた大きな一つの理由というものは、明らかに二〇一〇年以降巻き起こったヘイトスピーチなど差別的言動にあったのではないでしょうか。
 その証拠として、二〇一六年以降に施行された反差別法を御覧ください。いわゆるヘイトスピーチ解消法ですね。二〇一六年六月に施行されました。これを皮切りに様々な法律ができたわけです。
 例えば、部落差別解消法の一条によりますと、この法律は、現在もなお部落差別が存在するとともに、ここです、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じているというふうに、明らかにインターネットの問題を指し示しているわけでございます。
 米印に行きまして、ヘイトスピーチ解消法の、こちら衆議院の附帯決議などを見てみますと、一号で、ヘイトスピーチというのは何も外国人だけに向けられるものではないというふうな注意書きが示され、かつ、三号で、ここです、インターネットを通じて行われる本邦外出身者に対する不当な差別的言動を助長し、又は誘発する行為の解消に向けた取組に関する施策を実施することというふうな附帯決議が示されるに至っております。
 これを受けて、二〇一九年三月八日、法務省人権擁護局調査救済課長の依命通知によりますと、集団等が差別的言動の対象とされている場合であっても、1その集団等を構成する自然人の存在が認められ、かつ、2その集団等に属する者が精神的苦痛を受けるなどの具体的被害が生じている又はそのおそれがあると認められるのであれば特定の者に対し差別的言動があったというふうに評価すべきというふうな依命通知が出されるに至っております。
 そういったようなことも踏まえまして、三ページ目の真ん中、(二)ですね、提案をさせていただきたいと思います。
 二条の定義に、不当な差別的言動という規定を入れるべきだろうというふうなことでございます。それは、不当な差別的言動、総務省令で定める要件に該当する言動のことをいうという一文を加えるべきではないかというふうな提案でございます。この総務省令で定める要件に該当する言動とは、先ほど示しました二〇一六年以降に施行された反差別法のことを指します。又は以下にあります不当な差別的言動、公然と以下の要件を示すべきではないか。この要件は、昨年出版されました国連高等弁務官事務所の包括的反差別法制定のための実践ガイド、これに基づいて作成させていただきました。
 これにより、第二条、侵害情報というものは、特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者が当該権利を侵害したとする情報又は総務省令で定める要件に該当する不当な差別的言動をいうというふうに規定すべきではないかというのが私の提案でございます。
 三ページから四ページに行きます。三番目、侮辱罪の重罰化でございます。この間、刑法二百三十一条の侮辱罪が改正され、重罰化されました。これは、いわゆる被害者の保護というふうな観点で大きな変化があったというふうに言えます。それによって刑事訴追時効が一年から三年に延びるというふうな変化もございます。
 しかし、刑法二百三十条の名誉毀損並びに二百三十一条の侮辱罪を含めても、日本では年間の有罪件数が二百件足らずなんです。それに対してドイツでは三万件ある。これをどのように見るかというふうなことです。同じ法文化を持つドイツと日本において、なぜこれだけ違うのか。いわゆる精神的な法益、精神的な名誉というふうなものについて、日本とドイツでは価値が違うのかというふうな問題を私たちは直視すべきではないかというふうに思います。そういったようなことから、捜査機関における精神的法益の被害に対する認識の改善の必要性がまず何においてもなければいけない、被害者に寄り添った警察による聴取というふうな手続がなければいけないというふうに考えます。
 二番目、侵害情報送信防止措置、いわゆる削除の問題であります。なぜ削除が必要なのかというふうなことでございます。
 これは、削除の目的で、情報の拡散を防ぎ、被害を最小限にとどめるというものです。先生方御存じのように、インターネットの情報はコピペされ、そしてシェアされるわけです。そうすることによって、発信者でも手がつけられない状況になる。そして、それによってどういうふうになるか。例えば、今の私の話を先生方はお弁当を食べたら忘れてしまうわけです。何を話していたか忘れるわけです。しかし、インターネットの情報は忘れられないんです。ここが問題です。
 こういったような点に鑑みまして、インターネット上に掲載された情報は、速報性、広域性、拡散性に特徴があり、その情報がコピーされシェアされインターネット上に残る限り被害者の侵害は継続されるわけです。終わらないんです。ここがオフラインの名誉毀損とは違うところでございます。また、脅迫とは違うところでございます。その意味で、二十六条の申出期間、申出から十四日という期間が果たして妥当かというふうなことに着目すべきだろうというふうに思います。
 そこで、四ページ目の下から、ヨーロッパの動向ということで、二〇一五年から一連の動きがございます。
 例えば、二〇一六年には欧州議会で、オンライン上の違法なヘイトスピーチとの戦いに対してプラットフォーム行動規範というものが立てられて、そこでは二十四時間以内に迅速に削除しなさいと。なぜ二十四時間かというと、インターネット上の違法情報が拡散し、そして差別が助長されること、ないしは扇動されることを最小限にするというふうな目的がございます。
 そういったことで、それを具体化したのがドイツのネットワーク執行法三条二項でございます。ここでは、二十四時間の削除審査をしなさいというようなことが明文化されるに至りました。そうでなくても、二十四時間で分からなければ七日以内、そして、それでも分からなければ独立した規制機関に、判断機関に委ねなさいという三本柱で判断枠組みができております。
 そういったことを受けて、ヨーロッパでは、デジタルサービス法というものが規則としてEU圏内に施行されるに至りました。そこでも意識されているものは、まさにヘイトスピーチの問題であったわけでございます。それが五ページから六ページにあります。
 とりわけ、前文パラの八十を見てください、システミックリスクに対する言及がございます。ヘイトスピーチや児童の性的虐待の描写というものがインターネット上に掲載される、それによって、社会からの排除、そして民主主義の瓦解という二次被害、三次被害が起きる、これがまさにシステミックリスクなわけです。そういったようなものについて慎重に検討しなさい、また、プラットフォームに対し対応しなさいというふうなことを迫っているわけです。
 そういったようなことから、ここでも、最後にありますように、二十四時間以内の削除の手続を事業者に求めなさいというふうなことが示されています。現在、ドイツでもデジタルサービス法が施行されていますけれども、同じくヘイトスピーチ等々に対しては二十四時間以内の削除の実務が行われているわけでございます。
 最後に、本立法は、民事法そして行政法から刑事法に移行したわけでございます。なぜなら、本法の罰則として拘禁刑そして罰金刑が示されております。そういったような見地からして、三十五条、三十七条、三十八条に罰則があるわけですけれども、本法には至る所に総務省令で定めるというふうな文言があります。これは、市民に事前予測可能性を失わせるというふうな観点で大きな問題をはらんでいます。すなわち、いわゆる白地立法の問題でございます。これはまさに罪刑法定主義から非常に懸念すべき問題であるというふうに考えておりますので、その是正が求められると思います。
 私の意見は以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 121304601X01420240416_004

発言者: 金尚均

speaker_id: 28435

日付: 2024-04-16

院: 衆議院

会議名: 総務委員会