上林千恵子の発言 (法務委員会)
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○上林参考人 上林でございます。今は大学を定年退職して何もしておりませんで、肩書は名誉教授になっております。
二〇一六年、平成二十八年に現在の改正の基になる技能実習法がこの委員会で討議されましたとき、やはり参考人として意見を述べる機会がありました。また八年後の今日、ここで、同じ技能実習法の改正について意見を述べることができて、大変幸運に、しかし緊張してここに立っております。どうかよろしくお願いいたします。
二十八年、二〇一六年に技能実習法ができまして、約八年たっております。法ができてから五年後に見直しをするということが法成立時の要件でございましたから、本来ならばもう少し早く改正されるべきでしたが、コロナで事情が変わりましたので、現在この時点での改正になったものと思われます。
前回の法律について、以下の丸ポチをつけた部分が私の感想でございます。
元々、この制度は、平成三十年にできましたが、その根拠は法務大臣の告示でありまして、関係者はこの制度に関して意見とか査察する権限を持っておりませんでした。例えば、この当時は殺人事件などがあって大ごとだったんですが、じゃ、それを、技能実習制度を扱っているJITCOさんは何かできますかというと、私たちは何も権限がないので警察と入管が入るまで何もできませんということがあって、実際に行われている技能実習制度とそれを監督する機関の権限というのが乖離されていました。
それが初めて二〇一六年の技能実習法で法制化されましたので、制度としては非常に整ったものになったと思っています。
内容のポイントは、監理団体が許可制になり、技能実習計画が認可制になったということです。その結果、いろいろな受入れ基準、手続が明確化されまして、透明化されましたから、技能実習制度について知らない企業さんも、じゃ、そういう政府のバックアップがある制度なら使えるんじゃないかということで、利用が広まったと思います。
一方、手続が非常に煩雑になりまして、技能実習生を受け入れる企業から見ますと、申し込んだ後いつ認可が下りるか分からないというような事態が出ております。
今、受入れ技能実習生をここに書き抜きましたが、平成二十八年の法律ができた当時は二十二・九万人でした。現在、六月の時点では三十五・八万人と、非常に受入れ人数の伸びが顕著でございます。この伸びに応じていろいろなまた問題も起きているということを後で申し上げます。
今回の法改正について、一番問題になったことが転籍の要件です。
私は、基本的には、技能実習制度で三年間同一企業に勤めることを強制することは人権侵害になるという意見に賛成しております。じゃ、それを一年にするのか二年にするのか、どういう条件ならばというところがなかなか業界や企業によって違っていることなので、それは今後に委ねられているということですから、これからが大変だろうなというのが私の実感でございます。
その中の、今回の法律で、本人意向による転籍の要件となる同一の受入れ機関での就労期間を当分の間、一から二年の範囲とする、これは一年じゃなければいけないということはありませんので、緩めでもいいと思います。
そのときに、特にメディアの方などは御存じない方が多いんですけれども、受け入れる雇用主の方で、本人及び面接のために渡航する費用負担をしている、それから、職場に慣れるまで、送り出し機関に毎月安くて八千円、高くて二万、昔は三万円でしたが、送り出し管理費を一人につき一か月払っているわけですね。そういう費用があるときに、途中で転籍したら、じゃ、その費用分担は受け入れる先と最初に受け入れた先ではどういうふうになるのかという最もお金に関わる問題については、どうしても法律で決めることができないし、決める必要もないと思います。
そこで、理想的には、本人が三年間自分の意思で同じ場所で働けるというのが理想でございますが、転籍をしたいと言ったときに、それを阻むことはしない方がいいし、してはいけないというのは、今回の法律のとおりだと思います。
じゃ、これが現実に転籍可能な制度になっているかというとなかなか難しいだろう、予想以上に転籍をする人が少ないのではないかというのがその次のところです。
その理由は、二つ挙げました。
一つは、日本人を雇用する場合でも、新たに人を採用するときには、どういう理由で前の職を辞めたのかということを問題にします。これは外国人、日本人関係なく、トラブルがあったのか、いやいや雇主が悪かったのか、家庭の事情かとかいろいろありますが、今まで、技能実習生の転籍は、リーマン・ショック、東日本大震災、コロナといった、特例措置を適用した場合が多いのですが、ここの部分について、自分の意思で、嫌だからというので転籍するのはなかなか難しいだろうということです。
事例は、シンガポールの移民の支援団体のNPOにヒアリングに行ったことがあります。これは、やはり人権侵害があったときに、シェルターの役割で受け入れていたんですが、じゃ、受け入れた後どうしますかと聞くと、失踪したという方に次の雇主が見つからないとおっしゃるんですね。じゃ、どうしているんですかと聞いたら、自前で職業訓練校をつくって、自前で雇用機会をつくっていますと。そこまでしないとなかなか、現実に、人権のアビューズがあった場合、次の雇用機会を保障するのは難しいなというのが感じたことです。
それから、法律では、転籍する場合、新たに育成就労計画の認定を受けなければいけないというふうに法律に書いてありましたが、受け入れる側としては、その認定がいつか分からないというのは、実際には、新しく人を雇ったとしても生産計画が立てられないということになってしまって、雇う方の側にとっても、転籍を希望する技能実習生を新しく雇うのは、一から始めなきゃいけないし、今までの雇用期間の間の残りの期間しか雇えないとなると、少し受入れが滞るのではないかと思います。
二ページに参りますが、元々、技能実習生のような海外から来た労働者に対して、アメリカの事例を見ますと、雇用先を特定しない就労ビザを持った人は、フリーライダーによる雇用主が、自分のところの方がいい条件だから来ないかということを誘っていて、非常にここの部分が厄介になるということです。
それから、一方、アメリカのH―1Bのビザの、技術ビザの場合には、これははっきり就労目的で来ましたから、解雇されたら、二か月間の求職期間は猶予するけれども、見つからない限り、もう帰ってくださいというふうになっていて、非常に就労に関しての基準が明確に適用されている。
技能実習生の場合には、そもそもが国際貢献というふうに始まりましたから、労働力か否かというところの基準が非常に曖昧であるために、もう無職になったら帰れということも言えない。じゃ、訓練をしましょうというときに、訓練の内容はどうなのかということも余り詳しく見ることがなかなか難しくなっています。これが一点です。
それからもう一つ、技能実習生の地方圏での役割を申し上げます。
これは都会にいるとなかなか感じられないかもしれませんが、今、地方で若年人口が不足しているところでは、非常に労働力不足で、製造業、農業、建設業、介護などに技能実習生が来ていて、労働移動が事実上三年間禁止されていたので、そこに技能実習生がいてありがたい労働力になっていた。じゃ、これが、三年間が一年になったら困るかというと、これはまたちょっと別の問題、枠組みで考えなきゃいけないんですが、ここでのポイントで私が申し上げたいことは、技能実習生の地方圏での役割が非常に大きいということで、表一を掲げましたのは、特定技能に比べて、技能実習生の地方圏での割合が高いということです。
それから、実際に、岡山県美作市あるいは岐阜県飛騨市のように、若年人口が顕著に減っているところでは、市が自らの施策として技能実習生を雇用することを支援しているということで、例えば、最近の研究では、カナダのように大きな国でも、移民の方はモントリオール、トロント、バンクーバーといった三大都市圏に集中するので、何とか地方圏に移民を分散させたいという政策を取っております。
以上ですので、私は、短期的に、技能実習生の人権を守るという意味では、労働移動を禁止するというか、定着を促す期間、強制する期間を一年あるいは二年に短くすることは非常に重要だと思っております。
その上で、技能実習生というのが地方圏においては非常に重要な役割を担っているので、技能実習生を含む外国人労働者受入れの地方配分に対して、別の枠組みで考えていかなければいけない。
それから、もう一つは、技能実習生と近い技能レベルにまで就労許可が下りるようになった技人国、技術・人文知識・国際業務の内容です。ここは、この資格を得れば、基本的には雇用先がある限り更新可能なビザです。そこと技能実習生と、そしてその中間に位置づけられる特定技能者、これがはっきりと技能レベルで三層に分かれているならば、非常に移民政策としてはやりやすいと思いますが、実際には、職場も、技能レベルも、働き方も少しずつ混じり合っていて、同じ仕事をしながら違う在留資格があったり条件が適用されている。雇用主もまたそれを自覚して、混合状態を利用するというようなことがありまして、いずれこの三つをもう一度考え直す施策を長期的にはお考えいただきたいということです。
ですから、在留資格間の技能レベル、条件の比較、それから地方に外国人労働者を定住化するための施策というのを、今回の法律ができました後にもう一度、先生方にお考えいただきたいと思います。
以上です。(拍手)