原英史の発言 (法務委員会)
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○原参考人 原でございます。政策シンクタンクの代表を務めております。
本日は、貴重な機会を賜りまして、誠にありがとうございます。
大変済みませんが、けがをしてしまいまして、今日は座ったままでお話しすることを御容赦いただけましたらと思います。誠に申し訳ございません。
私は、外国人雇用協議会という一般社団法人の代表理事も務めております。この団体は、日本社会で存分に活躍できる質の高い外国人材を受け入れる、環境を整えるという理念の下運営している業界団体です。ただ、今日は、この団体の立場ではなく、個人として意見を申し上げたいと思います。
お話ししたいことが五点ございます。
まず、一点目でございます。外国人に選ばれる前に、外国人を選ぶことが重要だということです。
外国人に選ばれる国になるためにというフレーズが政府の説明でしばしば出てきます。マスコミの論調もそろって、このままでは日本は外国人に選ばれなくなってしまう、外国人に選ばれる国にならないといけないと唱えています。私はこれに若干違和感があります。
外国人の中には、日本文化を愛し、地域に溶け込み、経済社会に大いに貢献する、来てほしい外国人もいます。一方で、経済社会に貢献せず、犯罪を起こし、脱税や社会保障制度の悪用などを行う、来てほしくない外国人もいるわけです。後者の来てほしくない外国人に選んでもらっても、害悪でしかありません。
したがって、まず、日本国が外国人を選ぶということが決定的に重要だと思います。これが抜け落ちたままではいけないということだと思いますが、これが抜け落ちたまま選ばれる国を目指して頑張っても、来てほしくない外国人ばかりが日本を選び、来てほしい外国人は日本から逃げてしまうということにもなりかねません。
残念ながら、これまでの政府の外国人政策、また今後の見直し方針においても、外国人を選ぶという視点が欠落しがちであるように思います。ここがまず大きな問題ではないかと思います。
日本に限らず、諸外国においても、移民をめぐる議論、これは賛否が大きく分かれがちです。イデオロギー的な対立、感情的な対立にも陥りがちです。解決の道は、安易な受入れではなく、一方で、外国人を排斥するというようなことでもなく、日本にとって有用な外国人材を選び抜いて受け入れるということではないかと思います。詳しくは、資料でお配りいたしましたが、産経新聞の二〇二三年十二月十日付、私のコラム、「「選ばれる国」の前に」というのをお配りいたしました。御参照いただけましたら幸いでございます。
それから、二点目です。従来の外国人政策は、なし崩しの移民受入れだったと思います。
政府はこれまで、移民政策は取らないと言い続けてきました。実は、第二次安倍政権の初期に、一度、経済財政諮問会議の小委員会で毎年二十万人の移民を受け入れた場合にどうなるかという試算が示されたことがあります。これは、試算を示しただけで猛反発が起きました。それで、政府はそれ以降、移民政策は取りませんと言い続けることになりました。
しかし、その間に、実際に現実には何が起きたか。外国人労働者の数は、二〇一二年に六十八万人でしたが、二〇二三年には二百五万人です。十一年で三倍、百三十七万人増えました。実質的には毎年十二万人の移民受入れを行ってきたのに等しいということだと思います。
また、政府は、建前では、単純労働の外国人は受け入れないとも言っています。これも実態とは乖離しています。百三十七万人、十一年で増えたうちの相当部分は、技能実習と資格外活動です。
技能実習は、言うまでもなく、国際貢献のために技能水準の低い外国人を受け入れる仕組みです。これが二〇一二年の十三万人から二〇二三年に四十一万人に増えました。
それから、資格外活動は、主に留学生のアルバイトです。当たり前ですが、技能水準の低い外国人です。多くの国では、留学生は基本的にアルバイトは許されないというのが通常だと思いますが、日本では異例なことに、週二十八時間のアルバイトが認められているわけです。この資格外活動、二〇一二年に十一万人、二〇二三年には三十五万人に増えました。
要するに、過去十年ほどの間に起きたことは、実質的には、年間十二万人の移民を受け入れてきた、その相当部分は単純労働だったということです。しかも、建前上は移民政策は取らないと言いながら、なし崩しで移民受入れを行ってきたということです。
なぜ、こんなことになったかというと、安価な労働力を求める一部産業界の要望に政府が応えてきたからであります。
三点目です。技能実習制度の問題と解決策についてお話をします。
まず、技能実習制度の根本的な問題は、安価な労働力を求める一部産業界に悪用されてきたということだと思います。
もちろん、全てが悪用なわけではありません。制度が有効に活用されているよい事例もあります。例えば、私の存じ上げている群馬県の農業生産法人さん。ここは高い給料を出して、快適な寮を自前で建設して、経営者自らアジア各国に本人と家族のところに面談に赴いて、優秀な人材を受け入れ育て上げるということをやっています。ほかにも、技能実習生たちが地域社会に溶け込み、地域を活性化する、また、帰国後も日本との懸け橋になるといった事例もあります。
しかし一方で、悪用の事例も少なからずあります。生産性の低い業界や企業が高い賃金を払えないので人手不足に陥って、生産性を高めて賃金を上げる代わりに、安価な労働力としての外国人に頼るケースです。政府はこうした一部業界の要望に応えて対象業種を追加をして、悪用を黙認してきたということだと思います。
結果として、三つのことが起きました。一つ目は、安価な労働力を求める企業が利用するので、おのずと劣悪な労働環境、そういった人権問題が生じがちになりました。このため、失踪などの事案も生じました。二点目に、未熟練労働者を多く受け入れる中で、どうしても犯罪や社会的トラブルといったことが生じがちになるということも出てきます。三点目に、受け入れた企業にとっては、賃上げをせずに生き延びる道ができました。生産性を高めて賃金を上げる代わりに、外国人労働力を受け入れて、生き延びて、結果として賃金は低迷し、経済成長が阻害されました。
日本は残念ながら、今、ほかの国々と比べて、相対的に賃金の低い貧しい国へと転落しつつあります。要因の一つが技能実習制度の悪用だと思います。賃金水準が低迷するので、日本は選ばれない国になるということだと思います。
本来の解決策は、安価な労働力を求める企業には制度を利用させないということだと思います。そうすれば、この三つの問題はいずれも解決に向かうはずです。例えば、その地域、業界の賃金水準よりも一定比率以上高い賃金を払う企業にしか制度を利用させない、こういった要件を設ければ、悪用の可能性は相当程度なくせると思います。
今回の改正案は、残念ながら、根本的な解決にはなっていないと思います。技能実習制度の廃止ということですが、名称を育成就労とする、名目が余りに実態と乖離してしまったので、人材確保、人材育成に改める。いわば看板のかけ替えに近いと思います。
転職を一部認める、これは労働環境の改善、人権問題の解決のために一定の効果があると思います。しかし、安価な労働力として悪用される可能性が残されている以上、根本的な解決にはならないと思います。また、政府が繰り返し唱えている外国人に選ばれる国に、これも果たされないと思います。安価な労働力の受入れを続けて、更に拡大していくことになれば、日本は更に相対的に貧しい国になります。むしろ、ますます選ばれない国になっていくということではないかと思います。
四点目です。個別制度の見直しの前に外国人基本法を制定すべきと考えます。
これまでの対応を振り返ると、なし崩しで移民受入れを行ってきた。その中で、特に技能実習について劣悪な労働環境などの問題が生じた。それに対処して、技能実習という名称を変えて、少し手直しをするということだと思います。こうやって、戦略性を欠いたまま、なし崩しとパッチワーク対応を続けているので、根本問題が解決しません。
技能実習などの個別制度の見直しを行う前に、まず、外国人受入れについて、国としての基本戦略が必要ではないかと思います。そして、そのために外国人基本法という枠組みが必要だと思います。外国人受入れは、国民にとって、また国の将来のありようにとって、重大な影響のある事柄です。したがって、行政の担当部局で検討して戦略を策定するといったことではなく、国民的議論を経て、国会での審議を行って外国人基本法を制定するということであるべきだと思います。
その中で、まず、何のために外国人を受け入れるのか、この目的を明確にすることが重要です。
目的は人手不足の解消と考えられがちなのですが、この考え方は私は危ういと思います。もちろん、業種によって深刻な人手不足が生じているということは認識しています。しかし、人手不足は安易に解消してしまったら、賃金が上がらないんです。日本をより貧しい国にしていくことになりかねないと思います。
そうではなくて、日本を豊かにすることを目的にすべきだと思います。生産性を高めて経済社会を発展させる。日本を豊かにすることに貢献できる質の高い外国人材を選んで受け入れていく。そうした考え方を明確にすべきでないかと思います。
その上で、具体的にどのような外国人をどう受け入れるのか。どんな人材は短期で受け入れ、どんな人材は中長期なのか。どこの国からどの程度の規模で受け入れるのか。そういった具体的な戦略を定める必要があります。
もちろん、経済政策や労働政策との整合性が求められます。経済政策の観点では、生産性を高めて日本経済を強くするために、どんな分野でどんな外国人を受け入れるのか。労働政策の観点では、賃上げを十分達成するために、どの程度の規模までなら外国人を受け入れてもいいのか。また、さらに、外交、安保政策の観点で、人的交流を強化すべき国から重点的に受け入れていく。そういったことも含めた戦略が必要だと考えます。
別紙の二でお配りをしておりますが、制度・規制改革学会、これは私も所属する学会なんですが、その有志による「外国人政策に関する意見書 「経済成長に貢献する外国人受入れ」への見直しを」という二〇二四年一月付の文書をお配りしております。実は、岡部参考人も有志のお一人なんですが、詳しくはこちらも御参照いただけましたらと思います。
最後に、五点目ですが、外国人受入れについての行政の体制強化につきお話ししたいと思います。
近時、在留資格審査の遅延がとても目立ちます。別紙の三で、外国人雇用協議会の要望書、東京出入国在留管理局管轄における就労関係在留資格の審査遅延に対する要望という二〇二三年十一月十五日付の文書をお配りしています。
二〇二二年十月の水際措置緩和以降、就労関係の在留資格申請が急増しました。その後、特に東京入管局において、審査の大幅な遅延が生じるようになりました。それまでは一か月から三か月程度だったものが、四か月から八か月、場合によってはそれ以上かかるということが常態化しました。就労を希望する外国人が何で待たされるのか分からないという状態で、もう待ち切れずに断念をしてしまう、また、企業側で人員確保の計画変更を強いられるといった、現場では大混乱が生じました。
この要望を申し上げた後、十二月に入管庁で急遽応援体制が組まれて、一旦問題は解消したんですが、今年二月頃から再び遅延が生じつつあるような印象を現場では持っています。
言うまでもなく、これは申請件数の急増に審査体制が追いついていないためです。人員の増強、また、デジタル化の推進によって人を介さず効率化できることは極力効率化するというこの両面で体制強化を緊急に行う必要があります。こんな状態が続けば、それこそ、本当は日本に来てほしい外国人、これが日本を選ばなくなってしまうという重大な要因になりかねません。
さらに、体制強化が必要なのは審査部門だけではありません。戦略的な外国人政策を進める上で、省庁横断的に戦略を策定し、実施する体制の創設も必要です。労働行政との連携強化も課題です。例えば不法就労防止、今回の改正案でも関係の事項が盛り込まれていますが、これは、警察と入管当局だけで取締りをやっても限界があって、やはり、労基署の役割の強化を検討すべきでないかと思います。
こういった、外国人政策についての包括的な体制整備を早急に行う必要があると考えます。
以上です。御清聴、大変ありがとうございました。(拍手)