西岡力の発言 (北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会)

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○西岡参考人 今日このような機会をつくっていただきましたことを大変ありがたく思います。
 私はメモを作ってまいりましたので、それを見ていただければありがたいと思います。
 まず、簡単に全体のことをお話しして、今どうなっているかについて私の意見を述べさせていただきます。
 今、拓也さんもお話がありましたけれども、この問題は長くかかり過ぎています。なぜなのか。端的に言うと、立ち上がりが遅かったからです。物事は、事件の発生直後が一番解決しやすいんです。拉致対策本部は、横田めぐみさんたちが集中的に拉致されてから三十年たってできました。今は国を挙げて助けようとしていますが、余りにも遅かったんです。
 それについては、恐縮ですけれども、与野党の先生方にも責任があると思っています。マスコミにも責任があると思っています。私のような専門家にも責任があると思っています。日本人が拉致されていることについて、もっと早く真剣に取り組まなかったということがあります。だから、政府は今、最優先課題とおっしゃってくれているんだと私は理解しております。
 次に、現時点での日朝の対立点でありますけれども、二〇〇二年までは北朝鮮は拉致がないと言っていました。我々はあると言っていました。そこで一度勝ちましたが、しかし、彼らはそのとき、拉致したのは十三人だけだと主張しました。そして、五人とその家族を帰し、八人は死亡している、だから解決したと。今、彼らは解決したと言っている。
 しかし、日本政府は、八人の死亡の客観的証拠は一切ない、北が認めない曽我さんのお母さんたちを含む四人についても拉致の確実な証拠があると主張しています。そして、認定被害者以外にも被害者がいる可能性があるから、認定の有無にかかわらず全被害者の帰国を求めるという方針が今の日本政府の方針であります。私たちの方針ではありません。日本政府の方針です。
 二〇〇六年にできました最初の拉致対策本部がその直後に作ってくださったパンフレットにこう書いてあります。被害者の死亡を裏づけるものが一切存在しないため、被害者が生存しているという前提に立って、被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うように求めています。この文言は、その後、民主党政権になっても変わりませんでした。その後、第二次安倍政権になってもずっと変わっていません。
 私たちが生存を前提に助けてくださいと言っているんじゃなくて、対策本部ができてからの日本政府の一貫した方針は、死亡を裏づけるものが一切ないので、生存を前提に助けるということだった。このことをもう一度先生方にここで確認していただきたいと思っております。
 次に、どのように助けるかということでありますけれども、一、実力による救出、二、核開発を阻止することを目的とした米国の圧力を背景にして日米が連携して行う交渉については、時間の関係で省略いたします。
 今起きていることは、私は三だと思っています。核問題と切り離して日本単独で行う交渉であります。私たちの理解は、岸田政権もこの戦略を取っていると思っております。
 岸田政権は、おととしの十月、初めて拉致問題だけに時間的制約という言葉をつけました。それまで、安倍政権も菅政権も、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するとだけ言っていました。岸田総理は、おととしの十月に、そのことを言った上で、「が、」とつけて、とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間的制約のある人権問題ですと、拉致問題だけに時間的制約という言葉をつけました。早く解決しなくちゃいけないのは拉致問題だというメッセージを出されたのであります。
 そこで、先ほど拓也代表もおっしゃいましたが、去年の二月に、私たちは、全被害者が帰ってくるなら人道支援をすることに反対しないという運動方針を決めました。岸田総理が一歩踏み出したので、私たちも一歩一緒に踏み出したということであります。
 そして、去年の五月の国民大集会で、岸田総理が、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたいとおっしゃったところ、二十七日が土曜日でした。二十九日、月曜日の朝、北朝鮮の外務次官が、岸田総理の発言をまず引用して、ある集会で朝日首脳間の関係を築いていくことが大変重要であると発言し、早期実現のために高位級協議を行おうという意思を明らかにしたと。そして、朝日両国が互いに会えない理由がないと言いました。
 土曜日に岸田総理が話したことを月曜日の談話に出すということは、週末に金正恩委員長の決裁を取ったということです。最優先でこのことを自分に報告しろと言っていなければ起きないことであります。この内容もそうですが、この期間が短かったことが、岸田総理の拉致問題を切り離すというメッセージに対する北朝鮮の関心の高さを表していると私は理解しております。
 その後、十一月の国民大集会で、岸田総理は、様々なルートを通じて様々な働きかけを絶えず行うとおっしゃいました。しかし、表面には何も出てきませんでした。
 一月になって、一月五日に金正恩委員長は能登半島の地震のお見舞いの電報を出しました。岸田文雄閣下で始まる電報でありました。北朝鮮の最高指導者が日本の地震に対して電報を出すことは初めてのことであります。
 そして、二月十五日に金与正副部長が談話を出しました。幾つかの前提条件はつけています。正当防衛について不当な言いがかりをつける悪習を捨て、これは核、ミサイルのことだと思います。また、解決済みの拉致問題を障害物としてのみ据えないならばということですけれども、両国が親しくなれない理由がなく、首相が平壌を訪問する日もあり得るだろうという表現までしました。
 一つ飛ばします。
 そして、私たちは金与正談話を受けて新しい方針を出しました。先ほど拓也代表が説明したように、昨年の、人道支援に反対しない、プラス、独自制裁解除にも反対しないという方針であります。
 そうしましたら、三月二十五日にまた金与正氏が談話を出しました。異なるルートを通じて、可能な限り早いうちに国務委員長に直接会いたいという意向を我々に伝えてきたと。交渉をしている、少なくともコミュニケーションを取っているということを明らかにしました。表に出ていない秘密交渉があるということがここで明らかになりました。そして、異なるルートと言っているので、複数のルートがあるのかと推測される表現でもありました。
 一つ飛ばしまして、その後、次の日にまた金与正副部長が談話を出しまして、二十五日の内閣官房長官の記者会見で、拉致問題は既に解決されたとの主張は全く受け入れられないという立場を明白にした、何の関係もない核、ミサイルといった諸懸案という表現を持ち出したと。そういうことを理由に、我が政府は日本の態度をいま一度明白に把握した、したがって結論は、日本とのいかなる接触にも交渉にも顔を背け、それを拒否すると言いました。
 そして、その週の金曜日に中国大使が、メールで日本大使館から接触しようと言ってきたけれども断ったというのをわざわざ朝鮮中央通信が出しました。これは朝鮮語だけじゃなくて、日本語、英語、中国語、スペイン語まで翻訳されるものです。なぜこんなことを出すのか。
 そして、崔外務大臣が、岸田首相が従来の方針の下、引き続き努力を続けるという立場を明らかにしたということを理由にして、もう日本とは会わない、対話は我々の関心事じゃないというふうに言いました。
 この動きをどう見るかでありますが、先ほど省略しましたが、二月十五日の金与正談話のときも、林官房長官は、拉致問題は既に解決されたという主張は全く受け入れられないとおっしゃっているんです。林官房長官の解決されたということは受け入れられないという発言が問題なら、二月十六日に談話を出して、もうやめると言えばいいんです。それなのに、三月二十五日に、別のルートから話が来たと言っているんです。岸田首相の発言に至っては、従来の方針に基づきと言っているんです。何も変えていないのに、二月十五日から三月二十五日の間に何かがあったということであります。表の理由は理由ではないということがこの分析から分かります。したがって、私は、まだ交渉が続いているのではないかと推測しております。
 北朝鮮は首脳会談をするときにいつも条件闘争をします。南北首脳会談も、米朝首脳会談のときも、一度やめるということを言いました。それは、条件をよくするためであります。
 全拉致被害者を取り戻すという条件を下げてもらっては困る。北朝鮮が被害者を帰さない段階で制裁を緩めたり人道支援をしてもらっては困る。しかし、全員が帰ってくるなら制裁を緩めたり人道支援をするということは守るという今の岸田政権の姿勢を続けてほしいと思っております。
 以上であります。(拍手)

発言情報

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発言者: 西岡力

speaker_id: 5754

日付: 2024-05-28

院: 衆議院

会議名: 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会