清水秀行の発言 (予算委員会公聴会)
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○清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。
本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。
連合は、働くことを軸とする安心社会を目指しており、本日は、働く者、生活者の立場から意見を申し述べます。
冒頭、一月一日に発災をしました能登半島地震の被災地の一日も早い復旧復興に向けて、与野党が建設的な議論を行っていただいていることに感謝を申し上げるとともに、一層の充実した政策論議をお願いを申し上げたいというふうに存じておるところでございます。
それでは初めに、連合の現下の経済、社会の課題認識について申し述べます。
歯止めのかからない少子化と生産年齢人口の減少は、国力に直結する重大な課題であります。加えて、この間の長期にわたるデフレは、格差の拡大と貧困の固定化を助長させ、これに追い打ちをかけるような物価上昇が低所得者の暮らしと中小企業の経営基盤に大きな打撃を与え続けております。
言うまでもなく、予算とは、国の在り方や進路を示すものでございます。日本の構造課題を解決し、安心、安全に暮らせる社会を将来世代に引き継ぐには、財政規律の徹底による歳出構造の抜本見直しと、税と社会保障の一体改革による重層的なセーフティーネットの構築が必須であり、もはや残された時間は僅かであるというのが私たちの考えでございます。
今国会で政治資金問題の真相を明らかにすることも重要ですが、立法府の責任として、政治の停滞を招くことなく、待ったなしの日本の構造課題の解決に向けた審議が尽くされることをまず強く期待をしたいと存じます。
さて、連合は、二〇二四春季生活闘争、現在闘っております。経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を図る正念場と位置づけて取り組んでおるところでございます。その成果の鍵を握るのは、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占める、パート、有期、契約などで働く仲間の賃上げでございます。
資料の三ページを御覧ください。
二〇二三闘争では三十年ぶりとなる高水準の賃上げを実現しましたが、賃上げを上回る物価上昇が続いているため、実質賃金を上昇させるまでには至っておりません。また、中小組合の賃上げは、業績回復の遅れなどから全体よりも低位にとどまっております。
本年、昨年を上回る高い水準での中小企業の賃上げを実現するには、価格転嫁、価格交渉、取引環境の整備が必要でございます。三ページ下の表を御覧ください。価格転嫁状況に対する連合加盟組合の調査でございます。価格転嫁できた組合の賃上げが価格転嫁できなかった組合を上回っており、価格転嫁と賃上げには相関関係が見られます。
次に、資料の四ページを御覧ください。
取引環境の整備に向けて、公正取引委員会から労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が示されたことは大きな前進でございます。あとは実効性の担保が課題でございますが、昨年九月の中小企業庁の調査では、全体として価格転嫁は改善傾向にあるものの、価格交渉が行われたのは全体の六割弱にとどまっています。コスト要素別に転嫁率を見ますと、労務費は原材料費を十ポイント下回っているということでございます。
政府には、中小企業がちゅうちょすることなく取引先へ価格交渉の申入れができるよう、大企業のパートナーシップ構築宣言を促すとともに、指針の実効性を高める一層の取組強化と不利益取扱いの禁止などを求めたいと思います。
次に、雇用形態間の賃金格差の是正も重要であります。
連合加盟組合では、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の賃金が働きの価値に見合った賃金となるよう要求、交渉しておるところでございます。政府には、労働組合のない職場においても同一労働同一賃金が実現されるよう企業への指導を強化するとともに、法定最低賃金の大幅な引上げが実現できる環境整備を期待をするところでございます。
二〇二四春季生活闘争は、三月十一日の週に回答引き出しの山場を予定をしております。先行組合が引き出す賃上げの流れを、労働組合のない企業も含め、多くの中小企業などに波及させることが肝要であり、政労使による社会的メッセージの発信なども検討を求めたいと思います。
次に、政府内で検討が進められているライドシェアについて、一言申し述べておきたいと思います。
本年四月から、タクシーが不足する地域や時間帯に限って、タクシー事業者の運行管理下で自家用自動車を活用した新たな仕組みが導入される予定となっておりますが、新たな仕組みにおいても、既存のタクシー事業と同様に、公共交通で保障されている、利用者、歩行者等の交通参加者、そしてドライバーの安全、安心、車両の管理責任などを十分に確保する必要があると考えます。
特に、ドライバーについては、雇用された労働者でなければ労働関係法令が適用されず、過重労働による健康障害や事故につながる懸念があり、タクシー事業者との雇用契約に厳に限る、そのように述べたいと思います。
なお、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことは、先行する諸外国において様々な問題が指摘されていることに加え、タクシー産業の健全な発展を阻害する懸念があり、極めて慎重であるべきと考えます。
次に、税制改正関連法案ですが、昨年六月に政府が閣議決定をしました骨太方針二〇二三では「税体系全般の見直しを推進する。」と示されていましたが、今回の法案では税体系全般の見直しには全く踏み込んでいないということで、修正案を二点申し上げたいと思います。
一点目は、低所得者への給付と併せて行う所得税、個人住民税の定額減税です。政策目的が、税収増の還元から、物価高に負けない賃上げを実現するための環境整備に変更されたことで、連合の組合員からも、何のための減税なのか分かりづらいとの声が寄せられています。さらに、企業や地方自治体からも、事務費用の増加や申請に関わる人的負担増に対しての懸念の声が寄せられています。
資料の五ページを御覧ください。
連合は、今回のように給付と減税を同時に行うのであれば、マイナンバー制度を活用した正確な所得捕捉に基づく給付つき税額控除の仕組みを早期に構築すべきと考えます。特に、所得税非課税世帯などには食料品など生活の基礎的消費に係る消費税負担分を給付する消費税還付制度を導入し、低所得者の負担軽減につなげるべきと考えます。
二点目は、ガソリン価格高騰対策です。連合は、そもそもガソリン価格の約三割が税金であることも踏まえ、五十年にわたって課税している当分の間税率は二〇〇九年に課税根拠を失っているので廃止をし、ガソリンの価格を引き下げる恒久的な措置を講ずるべきと考えます。なお、その際は、税制全体の見直しの中で、地方財政の根拠にもなっておりますので、地方財政に影響を及ぼさない代替財源の確保も必要であると考えております。
連合はこの間、地方連合会とともに、全国の首長や地方議会から、給付つき税額控除の仕組みの構築と当分の間税率の廃止を求める意見書の国への提出を働きかける取組を行っています。現時点で全国約三十の県や市町村と協議をしており、更に進めていきたいと考えております。
次に、子供、子育て政策について四点申し上げます。
一点目は、新設する支援金制度を盛り込んだ子ども・子育て支援法等改正法案でございます。
岸田首相は、支援金制度については、医療保険料と併せて徴収する額は月額平均五百円弱だが、賃上げと歳出改革により実質的な負担は生じないと述べていらっしゃいます。連合は、子供、子育ては社会全体で支えることが大前提であり、そのために必要な負担について反対するものではありません。しかし、結果として可処分所得が減少してしまうことや医療保険の保険料と併せて徴収されることなどについて、国民の理解や納得は全く得られていないということを申し上げたいと思います。
加えて、支援金制度は、給付と負担の関係が不明確、子供、子育て支援以外にも使途が広がりかねない、労働者の、拠出する側の意見反映の仕組みがないなど、多くの課題があります。これらの点について、国会での徹底した審議を求めたいと思います。
二点目は、検討中の日本版DBS法案についてでございます。
こども基本法の理念の下、子供の最善の利益を実現するため、性犯罪を防止することは極めて重要であります。しかし、検討中の日本版DBSでは初犯を防ぐことはできません。そのため、学校や保育所などで子供が大人と密室で一対一とならないようにすること、あるいは、性加害者への更生プログラム受講の義務化、被害者も加害者も出さないための教育、研修の充実など、十分な予算措置を伴う実効性ある包括的な対応が必要であると思います。
さらに、事業者が労働者の性犯罪歴を照会し、事業者が回答を得る仕組みでは、個人情報の漏えいする懸念が払拭できません。職業選択の自由や個人情報を保護する観点からも、労働者本人の申請に基づき、労働者本人が性犯罪歴がないことの証明を受ける、そういった仕組みとすべきではないかと考えております。
また、性犯罪歴がある者への安全措置が取れない場合は解雇可能とする方向での検討は、解雇権の濫用を促しかねず、断じて容認できない部分がございます。
三点目は、育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案についてです。
男女が共に育児、介護などの家族的責任と仕事やキャリア形成を両立するためには、法改正により柔軟な働き方の選択肢を増やすことに加え、長時間労働を前提としない働き方を実現することが重要であります。また、一人親家庭、障害のある子や医療的ケアが必要な子を育てる親など、労働者の個別の事情に配慮した対応も必要と考えます。
四点目は、民法等の一部を改正する法律案です。
法定養育費の制度化や先取特権の付与により養育費確保の実効性を高めること、これは一人親家庭の貧困解消に向けて一歩前進するものと考えます。
父母離婚後の共同親権に関しては、父母間に対立がある場合などに家庭裁判所が関与する仕組みが設けられました。これまで以上に重要な役割を果たすことになる家庭裁判所の体制強化とそのための財源確保を始め、子の福祉確保の観点から慎重な審議を求めたいと思います。
次に、雇用保険関連でございます。
今国会に雇用保険法等の一部を改正する法律案が提出されています。法案には、労働者の主体的な能力開発を支援し、労働者個人への給付を拡充するための教育訓練給付の給付率の引上げや、こども家庭庁が少子化対策と位置づける育児休業給付の給付率引上げなどが含まれております。
能力開発や子育て支援の充実は重要ですが、雇用保険の本来の目的は労働者の生活及び雇用の安定であり、その目的の範囲を超えるような政策は雇用保険財源以外の一般財源などで実施することが引き続き求められると考えます。
また、育児休業給付の保険料率の引上げを含めた雇用保険料率の引上げは、労使の多大な負担増となります。今回のように、雇用保険勘定の育児休業給付部分をこども金庫に移管したとしても、保険料やその使途の在り方については、保険料納付者である労使が参加する労働政策審議会において議論することが重要ではないでしょうか。
次に、今国会に提出予定の技能実習制度等の見直しに関する法案について申し述べます。
法案検討のために入管庁に設置された有識者会議には、連合も委員として参画してまいりました。政府が二月九日に決定した法改正に向けた方針では、監理団体の厳格化、監理、支援体制の強化、検討プロセスの透明性確保策など、外国人労働者の保護に資するものと受け止めております。
しかし、方針には、有識者会議の最終報告書と異なる記載も散見されます。育成就労制度の職種につきましては特定技能制度の分野に合わせるとする一方、技能実習でしか受け入れていない職種については、当該職種が果たしてきた人材確保の機能の実態を確認した上で、特定産業分野への追加を検討とされております。最終報告書の、就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外とした記載から大きく変更されており、未熟練外国人労働者の安易な受入れ拡大につながりかねないと危惧しておるところでございます。
加えて、改正法の施行前に特定技能制度への分野追加が検討される旨の報道もございましたが、法改正の趣旨である制度の適正化を実現するためには、こうした駆け込み追加が行われることはあってはならないと考えます。両制度の受入れ分野の追加、設定は、改正法の施行後に検討すべきだと考えております。
なお、政府方針には、制度の運用状況について不断の検討と必要な見直しを行うとあります。その際は、公開された公的な場において、労使を含めた関係者等によって検討することが重要であると考えます。また、当該制度だけでなく、他の在留資格を含めた外国人労働者の受入れと共生の在り方全般について検討する場が必要であると考えます。
次に、カーボンニュートラルの実現に向けた対応について申し上げます。
政府が宣言しました二〇五〇年カーボンニュートラルは、気候変動対策としての観点はもとより、我が国の産業競争力の維持強化、グリーンで良質な雇用の創出、地域経済の維持向上の観点からも、あらゆる手段を総動員した取組を進めなければなりません。
今国会に提出されましたCCS事業法案と水素社会推進法案は、我が国の産業競争力の維持強化に資するものであり、早期の成立を求めたいと思います。
一方、昨年成立したGX推進法の理念に盛り込まれた公正な移行を実現するには、国、地域、産業の各レベルで政労使が加わる社会対話の場が必要であります。政府には、省庁横断的な体制の下での社会対話の場の早期設置と、その場での課題の深掘りや複数のシナリオによる政策立案のプロセスをロードマップに織り込み、十分な予算措置を行うことを求めたいと思います。
次に、持続可能で包摂的な社会の実現について三点申し述べます。
一点目は、あらゆるハラスメントの防止です。
連合は、安心して働ける職場環境構築のため、あらゆるハラスメント禁止に係るILO第百九十号条約の批准を求めています。特に、カスタマーハラスメントは、事業主の望ましい取組として指針に定められているにすぎず、法的には何ら措置されておりません。ハラスメントを根絶するためには、ハラスメント自体を禁止する法整備が必要と考えます。
二点目は、選択的夫婦別氏制度です。
住民票やマイナンバーカード、運転免許証など、旧姓併記を認める対象は徐々に増えていますが、公文書などは原則戸籍名しか認められていないケースが多いのが実態でございます。また、G7の中で認めていないのは日本だけであり、国際社会では旧姓使用の通称使用は通用しません。一九九六年に法制審議会が法案要綱を答申してから二十八年がたちました。個人の尊厳や人権の保護のため、今こそ選択的夫婦別氏制度を導入すべきと考えます。
最後に三点目でございますが、差別禁止のスタンダードであるILO第百十一号条約です。
ILO百十一号条約は、ILO加盟百八十七か国中百七十五国が既に批准しており、日本がいまだに未批准であることは大きな問題であると思います。日本が差別を許さない国であることを国内外に示す意味でも、条約の早期批准を求めたいと思います。
以上申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。(拍手)