小畑雅子の発言 (予算委員会公聴会)
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○小畑公述人 全労連の小畑です。
本日は、二〇二四年度政府予算に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただき、ありがとうございます。
長く続いたコロナ禍、相次ぐ自然災害などにより地域経済は疲弊し、そこに物価高騰が追い打ちをかけています。この間の労働組合などの奮闘により、二三春闘では一定の賃上げをかち取ることができましたが、長く続く日本の低賃金構造を抜本的に転換するには至っておらず、実質賃金は下がり続けており、労働者、国民の要求はますます切実なものがあります。
現在、全労連は、二四国民春闘の取組を進めているところですが、現場の声も踏まえ、働く仲間の要求を実現する観点から、幾つかの点について意見を述べさせていただきます。
一点目です。
元旦の能登半島地震により甚大な被害が発生し、現在も、被災地では、断水が続くなどライフラインの復旧がままならない中で、避難所生活を強いられている皆さんが多数おられます。被災地の皆様に心からの哀悼とお見舞いを申し上げます。
私も、一月二十六日、全国の働く仲間から寄せられた義援金を持って、直接石川県庁を訪問し、また、七尾市の医療機関や労働組合にも義援金や支援物資を届けながら、懇談をさせていただきました。
その中で、御自身も被災されながら地域医療のために必死に頑張る医療従事者の皆さんから、今は使命感で気持ちが張り詰めているが、これが切れてしまったら離職者も出るのではないかとの切実な声を伺いました。
実際、資料に入れてありますが、二月九日には読売新聞、十四日にはテレビ朝日が奥能登地域の四つの病院でおよそ七十人の看護師が退職意向と報じ、被災地に不安が広がっています。
医療体制の確立なくして、地域の復興はあり得ません。地域のために頑張る病院や医療従事者の自助努力のみに任せることなく、医療従事者の皆さんが働き続けられる職場環境づくりのために、最大限の努力を国にお願いします。
その上で、政府がこの間進めてきた公立・公的病院などの削減、縮小ありきの地域医療構想を撤回し、医師、看護師、医療技術職員、介護職員等を大幅に増員し、夜勤改善等、勤務環境と処遇を改善すること、また、公立・公的病院の再編統合や病床削減方針を見直すことなど、安全、安心の医療、公衆衛生、介護、福祉提供体制を確保することを求めます。
医療体制のみならず、能登半島地震の被害がこれほど甚大で長期にわたっている背景には、この間進められてきた自治体の広域合併や公務員削減などにより、地域の実態に応じたきめ細かな施策が取れなくなってきてしまったことがあります。また、広域集約化で地方のインフラを切り捨て、インフラ整備のために欠かせない国の予算を切り詰めてきたこともあると思っております。資料を以下三ページ、四ページ、五ページなどに入れてありますので、御覧ください。
二〇二四年度予算に当たっては、能登半島地震からの復旧復興予算の確保を最優先にするとともに、今後も予想される自然災害への対応と備えとしても、国家公務員の定員合理化計画の廃止を始め、公務員の定数削減をやめ、地域住民が安心して暮らせるきめ細かい公務、公共サービスを提供できる体制を確立できる予算とすることを求めます。
二点目は、大幅賃上げ、底上げについてです。
いよいよ二四春闘が山場を迎えます。全労連は、今春闘に当たって、賃金が下がり続ける国から上がる国への転換を求めて、産別と地方が一体となった取組を強めています。
政府、財界も年明けから構造的な賃上げと言っておられるわけですが、そこで掲げられている三位一体の構造改革、これは、成果型賃金の促進と更なる雇用の流動化政策であり、全ての労働者の賃上げを実現するものではありません。
私たちは、構造的な賃上げというのであれば、政府にできる賃上げのための政策が幾つもあると考えています。
例えば、公務員労働者のみならず、公務、公共関連で働く労働者なども含めて、資料七ページに入れてありますが、全労連公務部会の試算では九百万人以上に影響を及ぼす国家公務員賃金を抜本的に引き上げること、また、診療報酬や障害福祉サービス等報酬、介護報酬など、政府が設定する公定価格に大きく左右されるケア労働者の処遇改善を行うこと、そして、全国一律最低賃金制度を確立し、少なくとも千五百円以上に引き上げることなどです。
本日は、時間の関係で、最低賃金について絞ってお話をさせていただきます。
長期にわたる日本経済の停滞と衰退から経済の好循環に転換させるためには、GDPの六割を占める国民の消費購買力を高める必要があります。そのためにも、最低賃金の改善による賃上げの、底上げが必要だと思っています。
日本の最低賃金は、九ページにありますが、地域別であることが海外と比べても上がらない原因になっています。現行法では、最低賃金決定の三要素、その地域の労働者の生計費と賃金、事業の支払い能力を考慮し、最低賃金額を決めています。地域別である限り、最低賃金が低い地域では、その現状の支払い能力や経済状況を基に最低賃金額が決められ、低いままとなってしまいます。また、最低賃金額の高い地域は、低い地域を考慮し決められています。
このように、地域別制度は、最低賃金額が低い地域は常に低いままにとどまり、引上げを妨げる構造的な欠陥があります。人口の一極集中や若者の都市部への流出を止めることもできません。最低賃金が低い地域は労働者の賃金が低くなり、年金、生活保護費、公務員賃金など、あらゆる生活と経済格差につながっています。最低賃金額が低い地域の経済の疲弊を生み、日本経済をゆがめ、冷え込ませている決定的な原因になっています。
労働者の賃金は、経済の最も基本的なベースです。このベースを一律にしなければ、どんな経済対策を講じても日本経済を再生することはできないと思います。
日本の最低賃金は、十ページにありますが、最も高い東京は時給千百十三円、最低は八百九十三円となっており、その差は二百二十円。この格差は十六年で二倍強まで広がっています。月十二万円から十六万円では、とても自立して生活することができません。
私たちの最低生計費試算調査、十一ページに資料を入れてありますが、健康で文化的な生活をする上で必要な最低生計費に地域による大きな格差がないということがこの調査で分かっています。また、若者が自立した生活をする上で必要な最低生計費は月に二十五万円程度、月百五十時間の労働時間で換算すると時給千五百円以上がどこに住んでいても必要だという結果が出されています。
全労連は、こうしたことから、最低賃金法を改正し、早期に全国一律化と千五百円以上にすることを求めています。
資料十二ページを御覧ください。改定のポイントは四つです。
一、地域別を全国最低賃金にすること。五年の経過措置を設け、公務にも適用すること。二、健康で文化的な最低限度の生活が確保できる水準を科学的な生計調査を基に決めること。最低賃金決定の三要素のうち、企業の支払い能力は削除すること。三、中央最低賃金審議会で全国最低賃金を決め、地方最低賃金審議会では地域別特定最賃のみの審議とすること。そして四、中小企業支援を国に義務づけることです。中小企業支援策として、国の責任で、中小企業、小規模事業所への特別補助を行うことや、原材料費と人件費が価格に適正に反映される仕組みを総合的に整備することなどが求められると考えています。
以上のように、最賃法を改定することで、誰でも、全国どこに住んでいても、普通に暮らせる賃金が保障されることになり、地域間格差を解消し、地域経済を活性化することにつながります。
同時に、全国一律最低賃金千五百円以上の実現は、男女賃金格差を解消し、ジェンダー平等を実現する上で欠かせない課題であるということも申し上げておきたいと思います。
二〇二二年の国税庁民間給与実態調査によれば、男女の賃金格差は歴然としています。グラフを入れてありますが、平均給与は、男性五百六十三万円に対して、女性は三百十四万円。正規雇用の場合は、男性五百八十四万円、女性四百七万円。非正規雇用では、男性二百七十万円に対して、女性百六十六万円です。正規でも男女の格差は一〇〇対七〇ですが、平均では一〇〇対五五と、更にその差が開きます。これは、平均給与の低い非正規雇用に女性が多いことが大きな原因の一つです。男性正規雇用を一〇〇とすれば、女性非正規雇用の平均給与は何と二八にしかなりません。これでは、自立して普通に暮らしていくことは到底無理です。
この間、政府、財界は、男性稼ぎ主モデルの日本型雇用によって、男性に長時間労働、女性には不安定雇用を押しつけてきました。雇用機会の均等や女性活躍を唱えつつ、女性差別を温存して、世帯単位で見れば女性の働き方は家計補助的なものだから低賃金に置かれたままでいい、こうした考え方で、パート、アルバイトなどの非正規雇用労働者、とりわけ女性労働者を低賃金に置いてきたことが根底にあります。
女性労働者の五割を超える非正規雇用労働者の賃金を底上げすることなしに、男女の賃金格差を解消することはできません。そのためにも、全国一律最低賃金千五百円以上の実現は喫緊の課題であると言えます。
女性活躍推進法の改正によって、二〇二二年七月から男女賃金格差公表制度が開始されました。全体としてしかつかめなかった男女の賃金格差の実態が企業ごと、国の省庁ごと、地方自治体ごとにつかめるようになったのは大きな前進だと思っております。その実態をつかんだ上で、企業ごと、省庁ごと、自治体ごとになぜそうなっているのかの分析を進め、改善に取り組んでいただきたいと思います。同時に、根本の原因を取り除いていくことは政府の責任であると考えます。
二月九日には、ILOの条約勧告適用専門家委員会が、同一価値の労働についての男女労働者の同一報酬に関する百号条約、ILO百号条約ですね、この日本での適用に関して、全労連を含む政労使の報告を踏まえて所見を発表しています。その結論部分で、日本政府に対して、日本において顕著なジェンダー賃金格差が引き続き存在していることを指摘した上で、水平的、垂直的な職業的ジェンダー格差、長時間労働と仕事と家庭の調和を含む根底にある要因に対処するために、労働者と使用者組織と協力して積極的措置を継続させること及び男女間の同一価値労働同一賃金の実現を視野に現行法の改正を進め、適切な監視と手続及び是正措置に必要な措置を講じることを要請しているということも申し添えておきます。
三点目に、労働時間、労働法制についてです。
最低賃金のところで申し上げたとおり、日本型雇用の男性稼ぎ主モデルによって、男性には長時間労働、そして女性にはケア労働と低賃金の不安定雇用が押しつけられてきました。ここを変えていくためには、男女共に、労働者が生活時間を取り戻し、家族的責任、ケア労働を担えるように、労働時間そのものの短縮が求められています。資料十四には、家庭内のケア労働時間についての資料を示してあります。
全労連は、そうした観点から、労働時間の短縮はジェンダー平等実現を推進するものと位置づけて、二三春闘から、所定労働時間を一日七時間、週三十五時間とすることを重要な要求の一つとして職場討議を積み重ねてまいりました。
女性部でこのことを議論したときにも、もし一日の労働時間が七時間だったら、正規で働くことを諦めずに働き続けることができた、最初から正規雇用を選択することができたとの意見が多数寄せられました。
男性も女性も家族的責任を果たしながら働き続けることができる条件を確立していく要求として、賃上げと一体に、法定労働時間一日七時間、週三十五時間を目指す運動として更に発展させていきたいと考えています。それは、先ほど御紹介いたしましたILO条約勧告適用専門家委員会が日本政府に要請する内容とも合致するものだと考えます。
ところが、今、政府、財界は、労働時間短縮を求める労働者の声に背を向けて、労働者保護法制としての労働基準法自体を変質させる具体化を急速に進めようとしています。
昨年十月二十日に発表された、厚生労働省新しい働き方研究会報告では、多様な働き方が広がる中で、労働基準法の基本的な概念の社会の変化に応じた検討が必要としました。
さらに、それを受けて、具体化する形で、今年の一月十六日には、経団連が労使自治を軸とした労働法制に関する提言を発表しています。経団連の提言では、柔軟な働き方を労働者が求めているとして、労働基準法による労働者保護のための労働時間規制ではなく、個別企業の労使が話し合い、働き方を選択できる労使協創協議会の創設を法制化する検討をすべきとまで述べています。
それは、これまで労働者の闘いが築いてきた権利としての一日八時間の労働時間規制など、労働者保護のための労働基準法の概念を企業利益優先に変質させようとするものであり、断じて容認できるものではありません。
労働者保護、家族的責任を男女共に果たすことができる労働時間の上限を法律で規定した上で、さらに、働きやすい職場、働きやすい労働条件をつくるために労使対等に進められるのが労使交渉です。柔軟な働き方を実現するためとして個別企業の労使関係の在り方にまで踏み込む議論はやめ、労働者の要求に基づいて、労働者保護、労働時間規制を確固として確立していくことを求めます。
最後に、以上申し上げてまいりました施策を進めるための財源について申し上げたいと思います。
貧困と格差の広がりを是正し、公正な社会に転換していくために、国の果たす役割は大きいと言わなければなりません。私たちは、以上述べてきたような施策は、税の集め方や税の使い方を変えれば可能であるというふうに考えています。
二〇二三年、これほどの物価高騰、資材高騰の下でも、資本金十億円以上の大企業は内部留保を十六兆円余りも積み増しして、その額は五百二十七・七兆円にも膨れ上がっています。この内部留保を、下請中小零細企業への支援や取引価格の適正化、生活できないほどに下げられてしまった労働者の賃上げに使うべきだと考えます。同時に、内部留保への課税や累進課税への転換によって税収を増やすことは可能です。
そして、何よりも、岸田政権は、一昨年の暮れに閣議決定のみで改定した安保三文書に基づいて、五年で四十三兆円ともなる軍事費を使うという大軍拡方針を急速に強引に今進めています。しかも、防衛省が先頃立ち上げた有識者会議では、物価高騰や円安などを理由に、四十三兆円を更に増額する議論までされていることが報道されています。
しかし、物価高騰で苦しんでいるのは労働者、国民の側です。五年で四十三兆円もの予算を軍事費に回すのではなくて、一日も早い被災地の復旧復興、抜本的な賃上げ策、そして、今最も重要な課題の一つである少子化対策にこそつぎ込んでほしいというのが国民の率直な願いです。異次元の少子化対策といいながら、その財源として公的医療保険の保険料に千円も上乗せしていたのでは、いつまでたっても少子化問題は解決しないと思います。
岸田総理大臣は、通常国会の施政方針演説において、憲法改定に関わって、あえて自民党総裁として申し上げれば、任期中に実現したいというふうにおっしゃいましたが、自民党総裁としてやるべきことは、憲法改定ではなく、自民党の裏金問題の真相の徹底解明ではないでしょうか。
改憲ではなく、憲法を生かして、労働者、国民の命、暮らしを守る二〇二四年度予算案の策定をお願いいたしまして、私からの発言を終わらせていただきます。
本日は大変ありがとうございました。(拍手)