寺町東子の発言 (地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会)

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○寺町参考人 本日は、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。
 私は、東京で三十年ちょっと弁護士をしております、寺町東子と申します。
 この二十年余り、子供が被害者となる様々な事件、事故、例えば教育、保育中の死亡事故や虐待、あるいは性暴力被害の事件などを担当してまいりました。また、その経験から、教育、保育現場での安全対策に関する仕事などもしてまいりました。そのような中で、昨年成立いたしました刑法の性犯罪規定の改正に向けて、一般社団法人Springの理事としても活動してまいりました。
 今日は、子供に関わる仕事から性犯罪等の前科前歴のある者を排除する仕組みを提言してきた立場から意見を述べさせていただきます。
 なお、時間の関係もありますので、この子供に関わる仕事から性犯罪等の前科前歴のある者を排除する仕組みを、いわゆる日本版DBSという用語を用いて意見を述べさせていただきます。
 また、本法案については、児童の安全を確保するための措置として、従業員の研修や子供への被害の早期把握の措置、相談を容易にする措置、事実調査、保護、支援の措置についても規定するものであり、その部分についても非常に重要な規定だと思っておりますが、時間の関係上、日本版DBSの部分に集中して意見を述べさせていただきます。
 まず、日本版DBSの必要性について、お手元の資料の一ページ、二枚目のスライドを御覧ください。
 この制度の目的は、究極的には子供を性被害から守るということにありますが、そのためには加害者の再犯を防止することが必要であるということです。加害者の再犯防止に資する制度であるからこそこの制度を導入するんだということを冒頭で確認させていただきたいと思います。
 一部、この制度について、既に刑罰を受けた加害者について二重の不利益を課す制度であって、日本国憲法三十九条の二重処罰の禁止に抵触するかのような御意見もございますが、そうではなくて、あくまでも加害者の再犯防止の制度だということを最初に確認したいと思います。
 続きまして、スライドの三枚目を御覧ください。
 まず、前提認識として、性犯罪の累犯性の高さが挙げられます。有識者会議において、再犯率や再入所率の指摘がございましたが、検挙されて処罰された者に関するデータ以上に実際には累犯性が高いということは、我々法律実務家にとっては、日々見ているところでございます。
 例えば、性犯罪の捜査過程において捜索、押収された大量の写真であるとか動画であるとか、そういうものから、余罪がたくさんあるということが明らかになります。しかし、この余罪の中から、証拠上、被害者が特定できて、犯行日時が特定できて、かつ被害者の捜査協力が得られて、なおかつ公訴時効の経過していない事案のみが立件されて、処罰の対象になっているということで、再犯率、再入所率以上に累犯性が高い犯罪なんだというところをまず申し述べさせていただきます。
 この点については、やはり法務省や警察庁の方できちんと実証的なデータを積み上げていく、そういう調査研究を行っていただきたいところでございます。
 その上で、現在でも、刑務所や民間の治療機関で、性犯罪の再犯防止プログラムが実施されております。この再犯防止プログラムは、認知行動療法をベースにして、トリガーを特定し、トリガーを避けるということが中核になっています。
 性犯罪のトリガーとして、子供などの脆弱な人というのがトリガーの一つになっているということです。性犯罪歴のある人を子供に関わる仕事から排除するということは、トリガーを避けることを制度的に担保するということですので、まさに犯歴者の方の社会内での更生、再犯を起こさないということに資する制度ということが言えるかと思います。
 スライドの四枚目になります。
 日本版DBSの制度が憲法二十二条の職業選択の自由に対する侵害であるという指摘がございます。
 一定、制約があるということは事実でありますけれども、他方で、性暴力は被害者の性的自由や個人の尊厳を根こそぎ傷つけるものでもございます。これは、被害者の人生に重大な影響を及ぼす、憲法十三条で保障された個人の尊厳を傷つける、そういう犯罪でありますので、加害者の職業選択の自由の対立利益は、被害者の個人の尊厳、憲法十三条であるということで、規制の必要性や手段の合理性が認められれば、この規制自体は許されるというふうに理解をしております。
 今回、日本版DBSの制度は、先ほど申し述べました、性犯罪の累犯性の高さ、子供に与える性被害の重大性、再犯防止プログラムの有効性に照らして、導入自体は合理的な制約として許されるものと考えております。他方で、後に申し述べますが、手段の相当性については、幾つか問題点もございますので後に述べさせていただきます。
 スライドの五枚目を御覧ください。
 日本版DBSの対象犯罪等の照会期間に関して、刑法三十四条の二の刑の消滅の規定に反するのではないかという指摘がなされています。
 これにつきましては、拘禁刑について、刑の執行の終了等から十年、罰金刑の場合に五年の経過で刑が効力を失うということに抵触するんじゃないかという御指摘であります。
 しかしながら、さきに述べたとおり、日本版DBSは、認知行動療法ベースの再犯防止プログラムの一環として、トリガーに触れさせない、そういう制度です。なので、刑罰ではないということが大前提でありますので、この刑法三十四条の二の射程範囲外であるというふうに考えております。
 そして、性犯罪加害者の方のインタビュー等を拝見しておりますと、やはり、十年、二十年経過したから再犯のリスクがなくなるものではなくて、日々、一日、一生、再犯をしないように日々を積み重ねていっているということをおっしゃっておられます。
 そういう観点から申しますと、十年、二十年で終わらせるということではなくて、できるだけ長期に子供に関わる仕事に就けないようにすることが、加害者自身が社会の中で更生していくということの利益にかなうものだと考えております。
 その際に、参考になるものといたしましては、判決書の保存期間が、刑事確定訴訟記録法で、有期拘禁刑について五十年、罰金刑について二十年の保存期間とされております。これに合わせていくということは、一つ、現段階で可能なことなのではないかというふうに考えております。
 スライドの六枚目を御覧ください。
 この制度についての立法事実は何だったのかということを振り返っておきたいというふうに思います。
 二〇一四年に起きたベビーシッターによる強制わいせつ及び殺人の事件がございました。また、二〇一五年には、神奈川県平塚で、認可外保育施設で子供にわいせつを繰り返していた人が、実は前に都内の方で強制わいせつでの処罰歴があった、前科があったということが分かっております。この辺りから日本版DBSの導入ということが議論されるようになってきたというふうに私は認識しておりますが、最近も、ベビーシッターのマッチングアプリの大手での事件や、あるいは大手学習塾での事件などが問題になって、非常に関心が高まってきているということだと認識しております。
 そうしますと、本法案は立法事実となった事案をカバーできているのかということです。
 法案の対象としましては、学校教育法一条校や、幼保連携型認定こども園、あるいは児童福祉法の対象施設等が挙げられています。加えて、一定の要件の下で認定を受けた民間事業者が対象とされています。
 しかし、認定を受けようとしない事業者、先ほど申し上げたような、認可外保育施設で、一人で夜中に子供を見ていたというような事案は対象になってこないと思われます。
 また、一定の要件の下で認定を受けた民間事業者については、第二条五項三号のニで、政令で定める人数以上の従業員がいることとされておりまして、一人でやっている事業、ベビーシッターであるとか、ピアノ教師であるとか、ファミリーサポートであるとか、個人塾であるとか、そういうものについては対象外というふうになっています。本来立法事実だったはずの事案というのが全て漏れてしまう、全てとは言いませんけれども、訂正します、漏れてしまうのではないかということが非常に懸念されます。
 この点について、認定を受けている事業者かどうかを保護者がチェックするという仕組みでは、保護者のリテラシー、あるいは選ぶ可能性があるかどうか、切迫した方が選べないということもありますので、そういう、保護者によって子供の安全が脅かされる、子供に責任がないにもかかわらず子供に自己責任を押しつけるような結果になるのではないかということが非常に問題だと思います。これについては今後の見直しの中で検討していただきたいというふうに思います。
 スライドの七枚目を御覧ください。
 私どもの方で内閣府やこども庁に対して対案としてお示ししてきた、日本版OFSTEDの考え方をお示ししております。
 私どもとしましては、子供に関わる仕事に就く人、個人を全員登録することを義務づけていただきたい、その要件として犯歴照会や研修等を義務づけることが必要ではないかというふうに申し上げてきました。それによって、ホワイトリスト化することで、犯歴を国家の外に出さないという制度を御提案してきました。
 しかし、今回の法案では、事業者を認定し、認定した事業者には犯歴そのものを出すんだというたてつけになってしまっています。このことから、認定事業者という枠組みにこだわらなきゃいけなくなって、そのことによって個人事業主が排除されてしまっているという結果になっています。そういう意味で、立法事実となった事件をカバーできる制度にするために、今後見直しをしていただきたいというふうに考えております。
 続いて、スライドの八枚目です。
 トリガーを避ける必要がある人たちをこの法案でカバーできているのかというところで、今後検討していただきたい類型について申し述べます。
 まず一つは、不起訴事案です。不起訴事案には三種類ございます。嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予です。嫌疑なし、嫌疑不十分を入れてはいけないというのは当然のことでございますが、犯罪事実を認めて示談をして、そして起訴猶予になった事案というのは、この制度に入れていく必要性がある類型ではないかというふうに考えます。
 また、児童生徒性暴力によって懲戒解雇となって教員資格が失効した者、これについては、別の法律で、懲戒処分歴を四十年間、官報検索情報ツールで遡れるようになっています。また、文科省の方にもデータベースがございます。これについても対象にしていくことを検討すべきではないか。
 あるいは、今回の法案の第二条五項三号で、技芸又は知識の教授を行う事業ということで、習い事等が入れていただけています。そこのことについては大変ありがたいというふうに思うんですけれども、他方で、標準的修業期間が六か月以上のものということで、サマーキャンプであるとか、一日の教室であるとか、そういうものがみんな外れてしまうということが問題だと思っております。
 さらに、昨日、おとといですかね、ストーカー規制法や下着窃盗、あるいは、私どもが見聞きするものでいいますと、制服等に精液をかけたものが器物損壊罪になるというような辺りが対象となっていないことについて再考していただくことが望ましいのではないかと思います。
 続きまして、スライドの九枚目に移ります。
 濫用のおそれが除外できていないのではないかというところです。
 冒頭で、日本版DBSの導入自体は合理的な制約として許されるものと考えるけれども、手段の相当性について問題があるのではないかということを申し上げました。
 今回の法案は、犯罪事実確認として、生の犯歴を出すことを前提にしています。しかし、最高裁判例では、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するというふうにされています。また、個人情報保護法も、犯歴については、自ら、本人に関する情報であっても開示されないということになっております。これは、犯歴情報が濫用のおそれがある、自らのことであっても、犯歴があることを他人に知られることによって、それが脅迫の材料に使われたりということが容易に想定されるため、究極の個人情報として外に出さないということでたてつけているものでございます。
 そこで、今回の法案を拝見いたしますと、第四条、第三十三条などで、特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認というふうにされています。該当者であるか否かということなので、ある場合には、該当していますというその犯罪の事実が、犯歴自体が生のものが外に出てしまうというたてつけです。
 ここについては、特定性犯罪事実該当者でないことの確認というたてつけに文言をちょっと変えることによって、犯歴そのものが出るということは避けられるのではないかということを申し上げます。
 それから、二点目、第三十五条の五項ですけれども、犯罪事実確認書を交付するときは、あらかじめ通知して、その上で、三十七条で規定する期間を経過するまで開示を行わないということになっています。三十七条の期間、二週間なんですけれども、これを経過すると自動的に開示されてしまうというたてつけなんですね。
 やはり、次に述べる成り済ましの危険との関係では、この二週間の間に申請従事者からの積極回答がなければ交付しないというようなたてつけに改めるべきではないかというふうに考えます。
 そして、最後のスライドになりますけれども、仮に犯歴を出すという仕組みを維持する場合であっても、犯歴の事実の確認手続において、三十三条七項で、事業者による代理申請を可能としております。しかも、その申請書に記載する住所は、住民票上の住所でもなく、居所でも足りることになっておりまして、かつ本人確認書類が戸籍抄本等で足りるということになっています。
 居所で戸籍抄本を取って成り済ますということができてしまうと、濫用のおそれが防げていないのではないかというのが非常に危惧するところでございます。これに対する対応として、代理申請を認めない、三十三条七項の削除か、あるいは、本人確認の手段を、戸籍抄本ではなく、より厳格なものに変えるということを御検討いただくべきではないかというふうに思います。
 ちょっとオーバーしてしまいました。申し訳ございません。
 引き続き、子供たちを守るためのいい制度をつくっていっていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 寺町東子

speaker_id: 3969

日付: 2024-05-16

院: 衆議院

会議名: 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会