末冨芳の発言 (地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会)

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○末冨参考人 それでは、お手元の資料、「こども性暴力防止法の効果的運用のために―英国に学ぶこどもの安全保護法制・政策の展望」という資料を基に、参考人として意見を申し述べさせていただきます。
 私は、子供政策、教育政策の研究者として、例えばですけれども、著書の中で日本版DBSについても取り扱ってまいりました。また、ヤフーで執筆権を持ちますエキスパートという、記事を公開できる立場におりますけれども、今日の意見陳述の内容にもなりますが、日本版DBSというのはより広い子供の安全保護法制、政策として進化するべきであるという意見も発信してまいりました。
 二枚目に参ります。
 なぜそのような発信をしているのかと申しますと、私も二十年にわたって日英の教育政策の比較分析をしております。その中で、子供たちを守るということの英国での進化というものを見てまいりました。
 例えば、この資料は二〇二四年三月のイギリスの独立学校での写真ですけれども、エントランスの非常に分かりやすい場所に、この学校の子供の安全保護チームはこの人ですよというのが明示されてございます。そして、右側の方に参りますけれども、子供の安全保護チーム、そして特に校長は、英国の子供基本法、教育基本法等や関連ガイドライン等により、DBSチェックは無論のこと、子供たちに何かあったというときには自治体、警察、児童相談所等に通告、報告義務があるということで、非常にしっかりとした責任体制を取って子供たちの守られる権利を実現しているということでございます。
 それでは、次のスライドに参ります。
 本報告では、英国の事例の概要、そして子供性暴力防止法の効果的な運用のためにという、主に二点について申し述べさせていただきます。
 四ページ、「一、英国におけるDBS こどもの安全保護法制・政策の概要」ということですが、本セクションの作成に関しましては、英国リーズ大学講師のドロシー・ファイナン博士の情報提供と助言をいただいております。
 五ページに参ります。
 まず最初に強調しておきたいのは、英国におけるDBSは、子供の安全保護政策、セーフガードチルドレンという政策パッケージの一つなんですね、ある部分にすぎないということです。本法案に基づいて申し上げますと、第五条から第八条関係の安全確保策の中でDBSが運用されているということになります。
 例えばなんですが、どのように運用されているかというと、地域スポーツクラブの事例で申しますと、日常的に子供たちに関わるコーチや審判等は、最も厳しいDBSチェックを受けた上に、安全保護研修の受講義務があるということです。逆に、右側の方を見ていただきまして、例えばなんですが、試合のときにワゴン販売者ですとか、あるいは、ふだん子供に接しないけれども、事務局の担当者やグラウンド整備員も含めて、やはり基礎的なDBSチェックと安全保護研修を受けてねと推奨もされているんですよね。つまり、子供に関わるあらゆる大人たちが、DBSチェックを受けると同時に、安全保護の知識を得て実践をするという枠組みになっております。
 六ページに参ります。
 英国におけるDBSについては、このように非常に包括する職が広いんですが、右下を御覧ください。先ほど寺町先生もおっしゃいましたけれども、英国でも個人間の契約はDBS利用できないので、この点については英国政府も繰り返し、そうなんですよ、気をつけてくださいねということを発信しておられます。
 七ページ目に参ります。
 英国では四段階のDBSが運用されておりますが、基本、標準、拡張DBS、就業禁止者リストチェックつき拡張DBSという四段階になっておりますが、日本の今次法案は、拡張DBSというのは一番根幹に関わるDBSチェックに相当するものであり、まずここを起点としていくということについては大変重要な構成になっております。
 ただ、網羅される犯歴の範囲は確かに日本の今次法案とは比較にならないぐらい広いということで、今後、この点を、どのように子供を守るための仕組みとして拡張し、かつ、犯歴がある方の尊厳や人権を守るということと両立していくかということが重要かと思われます。
 では、八ページに参ります。
 八ページですけれども、実は、英国のセーフガーディングシステムは、子供だけではなく、障害者や高齢者など社会的に脆弱な立場の人たちに対しても運用されています。
 その上で、子供については、英国子供基本法や子どもの権利条約、そして膨大な関連法制を逐次改正しながら、子供、若者に特化したセーフガーディングチルドレンの政策パッケージが作られているということです。
 特に重要な起点となっておりますのが、二〇〇四年の英国子供基本法です。次のページにそのことを詳しく説明してございます。
 九ページに参ります。
 二〇〇四年に英国子供基本法が改正されまして、これは特に守られる権利の実現のために体系的に整備されたものでございますが、そこから二〇一二年のDBS運用までには八年の時間を要しました。特にその大きな転機となったのが、英国版のジャニーズ事件とも言われる、サビル事件という大変深刻な子供の性暴力事件でございます。その後に、英国教育省が、学校園に対して十八歳未満の子供、若者の安全保護ガイドラインを導入して、校長や教職員の責務を明確化しているということです。
 ただし、それも本当に良好に機能していますかということで、二〇二一年にOFSTEDが特別監査を実施し、英国の子供コミッショナー等の勧告も踏まえて、二〇二三年に子供たちの安全保護のためのガイドラインが改定されるというふうに、DBSだけではなく、子供の安全保護の仕組みが子供たちの課題に対応してどんどん進化してきているんですよね。
 私たちは、今次法案を起点にして、英国の取組に学びながら、同じように子供たちの守られる権利のための取組を積み重ねていくということが最も重要なことかと存じます。
 次のページに参ります。
 こちらですけれども、簡単に申しますと、DBSチェックというのは入口部分にすぎず、日々の安全保護チームの活動ですとか、あるいは、もしも何かあったときの際の連携協働体制、そしてOFSTEDの監査等が組み合わさって行われていますが、特に重要なのが赤字で示しました政府ガイドライン、そして右側、政府系機関、国の推進体制、そして赤い吹き出しの下側、基礎自治体の推進体制といったものが重要になってまいります。以下、この赤い部分を中心に説明してまいります。
 十一ページに参ります。
 英国の、子供たちの安全保護のための協働、政府ガイドラインでは、十八歳未満の子供、若者を主な対象としておりますが、十八歳以上についても積極対応していこうということになっております。家族内だけではなく、家族外の第三者からの性暴力、虐待等にも対応していくということになっております。
 あわせまして、示唆的でございますのは、下に示しましたように、性的虐待、児童虐待だけではなくて、例えば、インターネットの影響ですとか、子供、若者間の性暴力、日本ではいじめと称されがちですけれども、これも安全保護の一環であるということで、毅然とした対応が取られているという点が日本も学ぶべきところかなと思います。
 そして、十二ページ、政府の推進体制としましては、英国子供虐待防止協会、NSPCCという団体がございまして、例えば子供の安全保護教育、これは英国版の生命の安全教育とでも称するべきものでして、英国の学習指導要領等にも人間関係と性の教育が記載されており、かつ、幼少期から継続的に安全保護ができるように、子供たちも一緒に学びましょうということが当たり前になってございます。下のかわいらしい絵は、歌をユーチューブで公開されていまして、子供たちも大変分かりやすい、覚えやすい歌でプライベートゾーンのことを学んだりしておられます。
 あわせまして、安全保護主任育成コースの情報提供等もされています。ただし、英国ではこれが基本有料になっておりますけれども、日本は、できれば無料でアクセスできる良質なコンテンツをたくさん提供いただきたいなと思います。
 十三ページに参ります。
 こちらが、安全保護主任、DSLと略されますが、研修コースの事例でございます。この責任者は、例えば教員で申しますと、ほかの教員と比べて一割から二割程度給与が高いんですよね。安全保護に責任を果たす教職員ですとか事業所の方たちの処遇の改善といったものも日本でも必要になろうかと思います。
 十四ページですけれども、英国では、実は、芸能界、エンターテインメント産業に対しても基礎自治体が立入調査権を持っているんですね。ただし、日本の場合、芸能界における性暴力被害を防ぐというためには、どの機関がどのような責任体制を持って業界を支援していくのかということを考えなければならないという状況でございます。
 十五ページに参りますけれども、このように継続的な取組を進めておられる英国ですけれども、やはり百点満点というわけではございません。特に、最も最近の課題といたしましては、教育機関による性的虐待の報告義務の不履行、隠蔽が起きているという事案が大変多うございます。そのために、英国における児童虐待防止法に報告義務不履行への罰則を設ける議論も行われております。この点は、直ちに罰則というのは日本にはなじみませんけれども、適切に、各学校園、事業者様が、何か起きましたというときに連携、報告義務を果たしていただけるような支援体制というものを整備する必要がございます。
 ただ、こうした様々な不具合もあるからこそ継続的な政府ガイドライン、関連法制の見直しが行われてきたという点が、やはり私たちが最も学ぶべきことの一つであろうと存じます。
 それでは、「二、こども性暴力防止法の効果的運用のために」ということで、十六ページ、そして次の十七ページに参ります。
 十七ページに要点は六点まとめておりますので、その具体的な内容を十八ページ以降で簡単に説明をさせていただきます。
 まずは、日本版DBSの運用開始というものがとにかく急がれます。私も教員養成の現場におりますが、わいせつ教員対策法とは比較にならないぐらい、子供性暴力防止法の効力、そしてその範囲は大きいんですよね。私自身はそのことをずっと教えているんですけれども、子供性暴力防止法案について話をすると、やはり学生たちは、そんなに厳しくなるのか、絶対に性暴力なんかしては駄目だというふうな意識が高まる効果が把握されております。だからこそ運用は急がれるなと思っております。
 そして、次、(2)番目ですね。英国の取組に学ぶべきものの一つとしては、学校園等における安全保護チームといったような責任体制の整備、そして責任に見合った国の支援体制が必要かと思います。
 特に学校現場では養護教諭の方の御負担が大きくなることが想定されますけれども、複数配置できる学校をもっと大きくしたり、あるいは、その方たちの処遇に報いられるような国費補助、そして私学助成増額等の措置も必要かと存じます。
 そして、日本では、校長等による性暴力事案も起きておりまして、こうした最悪の事態を想定した責任体制といったものもガイドライン化される必要があると存じます。
 (3)番。国による子供、若者安全保護研修の提供と適切な連携体制の実現をということで、先ほどの英国の取組にもございましたけれども、無料でアクセスできる、例えば安全保護主任研修あるいは安全保護のボランティアの人向けの研修等も整備いただければと存じます。
 十九ページに参ります。
 十九ページ、(4)。こちらは、渡邉参考人も先ほどおっしゃられましたけれども、教員養成課程の改革、そして保育士等の養成課程の改革というものが必要になります。
 あわせて、五番目ですね。生命の安全教育の周知徹底、そして活動横断的な学習も含めて、その基盤にあるのは、人権教育、性教育、法教育、そして加害防止プログラムであるというふうに考えています。
 私は、私立学校向けの、子供の権利、こども基本法研修もしておりますが、実は、私立学校さんで、私が関わったところで、生命の安全教育を知っていますという方自体がゼロだったんですね。やってくださいというふうにお願いしておりますが、私立学校でも取り組みやすくしていただく工夫は必要です。
 かつ、実施していますという学校でも、被害予防プログラムに偏重しておられる学校が非常に多いです。被害者は悪くないと今政府を挙げてメッセージを発していただいているのに、被害者自己責任論の温床になりかねないという意味でいうと、適切な生命の安全教育が実施されなければなりません。
 最後のページに参ります。二十ページですね。
 その他としまして、やはり、加害者の方の治療ですとか社会復帰の支援、私が把握しております中で最も継続的に取り組まれてきたのは大阪府でございますが、どの自治体でも同じように丁寧な取組が必要かと思います。
 それから、警察、司法の専門性の向上というのが大変重要でして、性暴力被害を受けた子供、若者とその家族が、捜査、そしてその後のプロセスでも何度も傷つけられる、二次加害の事案に私もたくさん出会ってきています。こうしたものをゼロにしていっていただくことも重要かと思います。
 それから、子供の貧困対策団体の理事として申し上げたいのは、子供食堂、フリースクール、サマーキャンプ等の、一時的にせよ、子供たちと関わり、その大切な命を預かる立場にいる人たち全てがDBSにアクセスできるような、更なる法改正あるいは政策の整備をお願いいたしたく存じます。
 あわせて、日本では○○対策、○○対策などが重ねられてきてはいるんですが、こども基本法、そして本法案を起点として、より大きな子供の安全保護の仕組みをつくっていくんだということについて国を挙げて取り組んでいただくと、学校園の負担というものも、またこれか、またこれかではなくて、子供たちが守られるための権利を実現する大きな仕組みの中で、私たちの学校、ここを頑張ろうというふうに前向きな取組が進むというふうに考えております。
 最後になりますけれども、私も、研究者として以上に一人の親として、日本版DBS、そして子供の安全保護法制、政策の展開を願っております。
 以上で参考人としての意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 末冨芳

speaker_id: 830

日付: 2024-05-16

院: 衆議院

会議名: 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会