池田心豪の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(池田心豪君) 池田でございます。
 本日は、貴重な意見陳述の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。お手元に配付しております今後の仕事と育児・介護の両立支援についてという資料に沿って私の意見を述べさせていただきます。
 初めに、簡単に自己紹介をさせていただきますが、私は、先ほど御紹介いただきました労働政策研究・研修機構という厚生労働省の労働分野の研究機関で研究員をしております。主な業務は、厚生労働省の政策立案に当たりまして、その現場の実態を調査し、これを報告するというのが主な業務でございますが、二〇〇五年に研究員になってから今日に至るまで一貫してこの育児・介護休業法の改正に関わる調査研究を担当してまいりました。
 また、平成二十八年の、本日お話しする介護休業制度について大幅な制度改定が行われたときの厚生労働省の研究会、審議会に先立って行われた研究会、今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会及び今般の育児・介護休業法の改正に先立って開かれました今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会の参集者、委員として意見を、議論に参加したということもございますので、本日は、私が行ってきた調査研究及びこの厚生労働省の研究会での議論を踏まえた意見を述べさせていただきたいと思います。
 一枚めくっていただきまして、まず、育児と介護両方お話しさせていただきますが、まず子育て、仕事と育児の両立支援について、研究会での議論も踏まえた一つ結論めいたことを先にお話しさせていただきます。
 それは、仕事と育児の両立支援制度、一九九一年に育児休業法ができてから幾度となく改正を重ねてまいりまして、相当な制度の充実が図られているところ、で、今もそれでもなお仕事と子育ての両立が難しいという声がやまないことは我々も承知しておりますが、従来の考え方をそのまま延長するのではなく、新しい発想の下、新しいステージにこの両立支援は進んでいかなきゃいけないというのが研究会での主な議論でした。
 それはどういうことかと申しますと、従来どおり、両立支援制度を利用しやすくするということは大事なんですが、やはり制度の利用に伴ういろいろな副作用があるということも分かってきております。
 例えば、主に女性ですが、長い期間の育児休業の取得あるいは短時間勤務が長くなることによってその後のキャリア形成がやはり男性に比べて不利になってしまうとか、あるいは子育てしていない人に比べて、やはりいろいろなチャンスの面でやっぱりそのキャリア形成のブレーキになってしまうということが分かっていますので、制度は必要なんですけど使い過ぎには注意しましょうという、適切な使い方というのはどういうことなのか、あるいは、女性だけじゃなくて男性も使えるような制度の在り方というのを考えなきゃいけないという、そういったことがあります。
 また、もう一つ、今までは子育てをしている当人の方が制度を利用できるようにということでいろいろ給付を付けたり手厚い支援をしてきたんですが、やはり、その方が仕事を休んだり早く帰っている間にその代わりの仕事をする、カバーする同僚の負担ということもやはり問題になってくる。制度を拡充すればするほど、利用者が増えれば増えるほどそのしわ寄せの問題というのがやっぱり顕在化してきておりまして、その同僚の支援ということも視野に入れて考えなければいけない、同僚に掛かる負担ということも考えないといけないということです。
 あともう一つ、今までの仕事と子育ての両立支援は、やはり夫婦がそろっているという前提で、妻だけじゃなくて夫も育児休業を取りましょうという、そういったことでやってまいりましたが、やはりシングルマザーのような一人親家庭、これが、今までは福祉政策の対象として一人親家庭の就業支援ということもやってきたんですが、通常働いている人の中にも一人親家庭というのがやっぱり増えてきている、目立ってくるようになってきていますので、そういった場合は、夫婦で分担できないという前提で考えた場合にどういうことを考えなきゃいけないか。あるいは、今日この後、工藤さんからお話ありますが、やはり、今までは健常者の子供が年齢とともに育っていって親の手を離れていく、そのプロセスをフォローするという発想でしたが、やはり障害児や医療的ケア児の子育ての実態を伺うと、今までの発想の延長ではなかなか難しいところが出てくるという、そういったところで新しい考え方で両立支援制度を考えていく必要があるだろうという、そういった認識になっています。
 そうしたときに、じゃ、どういう発想が必要かと申しますと、ここに定食型からビュッフェ型へというふうに書いてありますが、従来は、法制度は、最低限必要なものをまるで定食のメニューのように主菜、副菜、汁物という感じで、これを全て上手に使っていくと子育てしながら働けますよという、そういう考え方だったんですが、先ほど申しましたように、全ての制度を使うことが果たして、例えば特に女性活躍という文脈で考えたときに望ましいのかとか、あるいは、もっと必要としている人がいるけれども、その制度をつくったからといってみんなが使いましょうという、そういう話でいいのかということを考えたときに、ビュッフェというのはいろいろな種類の料理が多数並んでいますが、これを完食して全て食べるという前提ではないと思います。少ない量で済む人は少ない量、少し多めに必要な人は少し多めな量という形で、制度の利用の仕方というのを少し発想を変えながら制度の拡充をしていく必要があるだろうというふうに考えております。
 その根拠となるデータを少し研究会の資料の中から出していますが、まず一枚めくっていただくと、やはりその短時間勤務や残業免除等の制度を拡充するとやはり制度の利用者が女性に偏るというところで、女性だけでなく男性も子育てに関わりながら働けるということを考えていくときにどういったことが必要かということをやはり考える必要がありますよということです。
 もう一枚めくっていただきまして五ページ目ですが、この今般のその改正において、子供が三歳に達した後の両立支援制度の拡充ということが一つ論点になっておりますが、やはりそのニーズも非常に多様で、短時間勤務のニーズも当然あるんですが、同時にフルタイムで残業のない働き方や柔軟な働き方できるということを望んでいる労働者の方もいらっしゃりますので、先ほど申しましたように、短時間勤務を拡充したからみんな短時間ですよという、そういう話ではなく、当人の事情に応じて柔軟に制度を利用できるようにしていくことが大事だということが言えます。
 また、次のスライドには、短時間勤務をしている理由として、当然、保育園のお迎えが早く行かなきゃいけないとかいろんな子育ての事情があるというのはあるんですが、一つ見逃せないのが、本人が勤めている会社がやはり残業が多くて、フルタイムというのは定時八時間で帰れるわけじゃなくて、その後、十時間、十二時間と残業があるという、それを回避する、避難するために短時間勤務に頼っているという方ですとか、パートナーの方が長時間だから自分がやらなきゃいけない、つまり、残業体質というか残業をすることが当たり前の職場では、なかなか通常どおり働きながら子育てと両立できないがために短時間勤務が発生している、そして、その残業を本人が短時間勤務をしている上で代わりにしているのは誰ですかというと、やはり同僚ということになりますので、やはり同僚のサポートということも含めて、残業削減の取組を同時に進めていくことが大事ですねという、そういった話に、結論になっております。
 次に、介護の方のお話ですが、これは、いよいよ来年、二〇二五年が参ります。団塊の世代が七十五歳以上になって、いよいよ日本は未曽有の大介護時代に突入するということが前々から言われておりますが、この二〇二五年を見据えまして平成二十八年の改正で大幅な制度の拡充と改定を行いまして、介護の始まりから終わりまでカバーする体系的な制度を拡充しました。
 しかし、実は制度の外形が、例えば介護休業がありますとか、介護休暇と子の看護休暇はよく似ていますし、所定外労働の制限が使えるというような形で、非常に子育てとよく似た制度の立て付けになっているので、子育てと同じように使おうとか子育てと同じように制度を拡充すればいいんじゃないかというふうに思いがちなんですが、実は、それをやると介護離職うまく回避できないんですね。子育てと介護は違うというのがここの、前回の平成二十八年の改正のときの研究会の結論でしたので、どういうふうにこの制度を使ったら介護離職を回避できるのかということについて、ノウハウをしっかり労働者の方に伝えていくということが大事です。
 実は、厚生労働省は平成二十五年ぐらいから、やはり何といってもいろいろ予備知識が必要な難しい制度ですので、これをうまく労働者の方に伝えて上手に使っていくためのマニュアルやツールをもう既に作成しております。そうしたノウハウの蓄積の上に、今般、制度周知や雇用環境の整備といったことを企業に義務付けるとともに、実際に介護に直面したときに個別周知、意向確認という形で制度の利用意向を聞いていくということになります。
 実は、先ほど申しました定食型からビュッフェ型というのは、まさに育児よりも介護の方ではまさにそのとおりでございまして、前回の改正でも、制度全て使うということではなくて、必要な制度を場面に応じて、要介護状態、あるいは症例、あるいは家族環境、いろんな状況に応じて使っていくことが必要ですねという、そういった考え方の下に、平成二十八年度にこのような、スライドの八ページにあるような制度をつくりました。
 さらに、今回のその新しい義務化と関係するのがスライドの九ページ目でして、既にその仕事と介護の両立支援の取組方法というフレームを作って、厚生労働省でこれをホームページで公開したりマニュアルとして配布したりといったことでしてきました。
 今回の改正は、ここのチャート図にあります三番と四番に当たるところを企業に義務化していくということになりますが、大事なことは、このワンアクション、ワンアクションで伝えましたよ、意向確認しましたよということではなくて、この一つのフローとして、体系的なシステムとして企業にこの取組を促していくということが大事であります。そういった意味で、例えば一番にあります実態把握ですとか、あるいは五番にある働き方改革、働き方改革というのはこれ、先ほど見たふだんの働き方を介護と両立しやすいものにしていくという、そういった考え方です。
 一枚めくっていただきまして、やはり、例えば介護休業についても、これも介護に専念するためじゃなくて介護のいろんな準備に当てるための休業となっているんですが、そのことが正確に伝わっていないという実態が明らかになっていたり、あるいは次に、十一ページにありますが、介護休業、実は、労働者が申請したらこれを付与するということになっているんですが、実は勤務先に介護のことを話さないという方も結構いらっしゃいます。
 話さないでふだんどおりの勤務時間の中でやれる方もいらっしゃるんですが、いよいよ手詰まりになってきたときに、なかなかこの制度のことがちゃんと分かっていないがために離職してしまう、企業としても言ってくれたらできることがあったのにという、こういったコミュニケーションの擦れ違いでの離職というのもございますので、やはり今度のその制度周知や雇用環境の整備というのは、単に企業からメッセージを発するだけじゃなくて、従業員の方が企業に介護のことを相談しに来やすい呼び水として、労使双方のコミュニケーションを活性化するためのきっかけとして期待されている面があります。
 実際相談されてきたら、やっぱり休みたいんですと言われたら休ませてあげられるような職場環境をつくっていないと相談しがいがないということになりますので、十二ページにありますように、やっぱり介護のためにいろんな事情で休みたいというときに休められるような環境を、例えば年次有給休暇を取るとか、残業の免除も、ふだんから残業のない働き方をするとかという形で職場環境も整えていくことが大事だということが既に調査で分かっております。
 十三ページ目に、最後、締めとして、これまでの考え方とこれから、どういった違いがあるかということを図にしてまとめておりますが、従来の仕事と育児、介護の両立支援は、トップダウンで、みんなが共通して持っているニーズに応えましょう。だから、育児休業の取得率が典型ですが、みんなが育休を取れるように、女性が取れるようになったら男性も取れるようにということで取得率の向上に取り組む。また、短時間勤務制度が義務化されたら、その利用率はどうなっているかというのをチェックして、利用率を上げていくようにという形でやってきました。
 しかし、先ほど申しましたように、まず子育てにおいては、やはりそのキャリアの在り方あるいは子育て家庭のいろんな事情に応じて多様なニーズに応えていくことになってきますので、個別的なニーズに対して、ボトムアップ型というのは、当人が何を望んでいるかということをしっかりと聞き取って制度を運用していくということが大事になってきます。既に子育てについては制度周知とか雇用環境の整備、個別周知、意向確認というのは義務化されておりますが、まさにこのコミュニケーションの部分をしっかりやっていくことによって定食型からビュッフェ型に移していくことができるというふうに考えております。
 介護においても、申しましたように、一人一人介護の事情は違いますので、みんなが同じ制度を使うという前提ではなく、一人一人違ったニーズをしっかり聞き取り、その人に合った制度の利用の仕方を企業としては勧めていくということが大事になってきますので、両立支援制度、これ、個別労使関係といいまして、従業員個人の方と企業の方の問題という意味では労使関係の一つのタイプですので、労使の対話がこれまでにも増して重要になっていく、そういった改正になるだろうというふうに考えております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 池田心豪

speaker_id: 17238

日付: 2024-05-21

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会