庄司昌彦の発言 (行政監視委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(庄司昌彦君) 武蔵大学の庄司です。
 私は、専門は情報社会学、情報通信政策、行政のデジタル化などについて研究をしております。また、デジタル庁、総務省その他、また地方自治体などで行政のデジタル化の委員やアドバイザーなどを務めさせていただいておりまして、今日はそういった立場からお話をさせていただきます。タイトルとして「行政DXから考える「国と地方の関係」」というふうに資料にお書きしましたけれども、先ほどの横尾市長のお話と一部重複しますが、その内容を掘り下げるような形でお話をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 おめくりいただきまして、なぜ自治体DXは必要なのかというふうにお話を進めます。特に、行政のデジタル化、DXの中で今一番大きな問題だと思われるのが自治体のDXであります。それはなぜなのかということで、二つ、過去の反省と将来への備えというふうに整理をしたいと思います。
 過去の反省といいますのは、コロナ禍の中で、保健所が病院からファクスで送られてきたものを手で入力をしているですとか、あるいはオンラインでの給付金の手続がなかなかやりにくいですとか、そういったいわゆるデジタル敗戦と言われたような事象がありました。また、そういった保健行政だけではなく、行政全般あるいは医療、福祉、また教育、そういった分野で、昭和の仕事の仕方というふうに書いていますけれども、古い物事のやり方をずうっと維持してきた。そのために、人と人が対面で会ったりしにくい状況の中でデジタル化の遅れが認識されるようになりました。
 これは、コロナのときに失敗したというだけではなく、まさに、IT革命と言い出していた二〇〇一年頃から二十年にわたって私たちが物事のやり方を変えてこなかったツケが現れているのだと思います。
 そして、将来への備え、こちらは、先ほど二〇四〇年問題というのが指摘されておりましたけれども、まさにその話であります。二〇四〇年代、団塊ジュニア世代が大量に退職するわけですけれども、特に地方公務員においてその影響による人手不足が深刻になると言われております。大量に退職した後、補充しようにも、生産年齢人口は少ないですから補充が難しいという状況になります。
 そこで、総務省の自治体戦略二〇四〇構想研究会の報告書では、二〇四〇年代には従来の半分の職員でも自治体として機能する必要があるというふうに言っています。半分の職員で仕事をするということは倍仕事しなければならないということになるわけですけれども、それは到底無理なわけですね。しかも、二〇四〇年というのはあと十六年です。十六年切っているわけですね。これが自治体によっては私は最大の課題だろうというふうに思います。ですから、共同化できるものは共同化し、人でなくてもできる仕事は機械にやらせるようにしていきましょうと、これが自治体DXが必要な大きな要因だというふうに言えると思います。
 行政のデジタル化、DXというのは、国と地方の関係を変える行政改革であるというふうに書きました。つまり、自治体が人手不足になる中で、担える仕事というのを減らしていくか、あるいは大幅に共同化、共通化していくか、そういったことが必要になっていくわけですね。ですから、国が支える部分と自治体が独自にやる部分との線引きを変えていく、どこが自治体が独自性を発揮し、どこは国が担うのか、支えるのかというところの見直しをしていくというのがこの十六年間だろうというふうに思います。
 ただ、じゃ、なぜ元々ばらばらだったのかといいますと、それは地方自治の領域だからであります。どのように事務を進めるのかというのはまさに地方自治だったわけですけれども、そこをこれからのその二〇四〇年問題に合わせて見直していくという改革が進んでいます。
 次に、じゃ、どのような自治体DXが必要であるのかということでありますけれども、様々な取組が既に行われておりますけれども、自治体の現場では時によってはかなり不評であったりします。
 それはなぜかというと、右側に漫画的に描いてありますけれども、住民に対しては、こんなこともできるようになりますと、まあ分かりやすい派手なデジタル化施策を次々と打ち出すわけですけれども、中ではまだ昔ながらのやり方が残っていて、簡単に言えば、例えば、生成AIを使います、こんなことをやりますといいながら、中ではまだ判こを押していたりするというような状況が残っているわけですね。ですから、仕事の仕方、組織文化の見直しをというふうに書いてありますけれども、横断的に物事のやり方を変える地味な改革に時間を掛けて取り組んでいくことが必要であります。
 技術的な水準をピラミッドで考えますと、これまで私たちは、先端部分を伸ばすような、先端技術を使って新しいことをやろうということをやってきたわけですけれども、どちらかというと、必要なのはピラミッドの底を上げていくということですね。ファクスを送ったり、判こを押したり、手書きの紙をまだ提出求めていたりするようなことをやめていくということが必要なんだと思います。一言で言うと、デジタル改革に必要なのはアナログの改革、アナログ改革であるということです。
 続きまして、国の取組の中から自治体情報システムの標準化のお話をしたいと思います。
 自治体DX推進計画の概要というページで、あと二年という吹き出しを付けております。二〇二〇年から二〇二五年度末まで五年計画で進めようということで取り組まれているこの自治体DX推進計画ですね、残りあと約二年というふうになっております。
 特に、この中で一つに、今日は時間が限られていますので絞って注目したいのが自治体システムの標準化であります。
 おめくりいただきまして五ページ目ですが、自治体システムの標準化、その課題と目標ですね、どんな背景があって何をしているのかということをまとめておりますけれども、先ほど申し上げましたように、自治体ごとにそれぞれ創意工夫を凝らして、ばらばらにシステムをつくって事務を処理してきたわけですけれども、元々同じ制度を実現するためにやっているわけですが、長い時間掛けてつくってきたものですから、もう完全にばらばらのシステムになっているわけです。そういったところに税制改正ですとか何か制度改正があったりとかしますと、そのそれぞれの自治体のシステムの改修をしなければいけない。これはもう独自システムですから、そのシステムの直すべきところはどこなのかということを自分たちで考えて、自分たちで用意して短期間に対応しなければいけないというようなことが起きていて、特に小規模自治体、システム担当が一人しかいないとか、そういった自治体ではこれは非常に負担になっているわけです。そういった自治体、特に小さな自治体の今後のシステム対応というのをできるだけ引き取れる部分は引き取って軽くしていくというようなことが大きな目標だと私は理解しています。
 六ページ目になりますけれども、標準化の目的や前提の確認、整理が必要ということで、令和七年度末、二〇二五年度末に向けて進んでいるわけでありますけれども、いろいろ批判の声や悲鳴のようなものも自治体の現場から上がってきています。
 それは、標準化ということをする際には付き物というか、仕方がないものもあるかもしれません。例えば、最大公約数的なシステムをつくるわけですから、それぞれの自治体に最適化されていた現状のシステムに比べると使いにくいシステムになるわけですね。そこに業務を合わせていただく必要が出てくるわけですけれども、それが大変であると。業務を合わせることができないんであれば、じゃ、独自にまたそのカスタマイズしていたものの代わりとなるシステムをつくらなきゃいけない、それはできるのかといった問題もあります。
 また、左側の三つ目ですけれども、この標準化だけをやっていればいいわけではないわけですね。少子化対策ですとか定額減税ですとか制度改正というものが、これは政策的に必要だから、まあ言い方悪いですけれども、割り込んでくるわけです。当然その割り込みの方を先にやらなければいけないわけですけれども、しかし、標準化の期限はそのまま維持します、令和七年度末ですということに今なっています。それがまた自治体の現場と、それからIT企業、ベンダーの現場を今苦しめているという声が上がってきています。
 そういった困難な場合には、移行困難なシステムというラベリングをして、その個別対応を考えましょうということになっているのですけれども、そういったものがたくさん出てくるということはこれ全体の取組が失敗ではないかというふうな批判も出てくるわけですけれども、しかし、現実を見て、その期限を間に合わせることと、きちんとシステム移行をすることと、どちらが大事かといえば、絶対に後者なわけですね。
 特に今回移行している基幹二十業務のシステムというのは、住民記録ですとか介護保険ですとか生活保護ですとか、本当に住民の生活に密着した、あるいは人の生き死にに関わるようなシステムであるわけですから、期限に何とか間に合わせろとお尻をたたいてゴールさせることで、しかし、結果、幾つかエラーが出ましたというのは余り許されない領域なわけですね。ですから、現実的に考えていくという必要があると思います。
 また、最後に、何のためにやっているのかということを書きましたけれども、今いろんなことが同時に動く中で現場混乱しています。したがって、これ何のためにやっているんだっけというそもそも論というのが時々立ち上がってきます。
 これは二〇四〇年問題のためですというのもそうですし、また、そのシステムをある種共通化、標準化して、そしてクラウドに載せていくことによってスピーディーにバージョンアップしていけるようにするわけです。そうなったときに、制度や業務の在り方をもっと現代的なというか、あるいは将来を見据えた高度なものに転換もしやすくなるわけですね。ばらばらの千七百のシステムを転換させるのは大変ですけれども、一つの標準仕様に従ったものを転換するのは簡単になっていきます。
 そういった、じゃ、どういう将来の制度やシステムにするのかという一歩先の議論をまだ余り着手できていないんですね。現在のところは、これまでの制度を踏まえて最大公約数をつくるということにどうしてもなってきていますけれども、次世代、この先にどんな、生活保護であったり子ども・子育てであったり介護保険であったり、そういったものがあるのかという、そういうことを議論、骨太な議論をしていくべきだろうというふうに思います。
 七ページ目ですけれども、「昭和十六年夏の敗戦」に学ぶというふうなページですが、標準化の取組、また、デジタル庁さんが中心となって、国が主導となって絵を描いて先導していくという取組が、戦中の日本政府であったり軍部のやり方と似ているんではないかとか、あるいはその教訓に学ぶべきではないかという指摘をされることが度々あります。
 何を言っているかといいますと、この右側ですけれども、ここまでやってきたのだからもう後戻りはできないとかサンクコストの問題ですとか、あるいは縦割りの問題、あるいは国と自治体のメンツとかそういうのもあるかもしれませんけれども、全体最適の視点で本当にベストな選択をするということができていないんじゃないかという問題が指摘できると思います。
 総力戦研究所、これ日本の敗戦を予測していた研究所ですけれども、今日評価されるとしたら、客観的なデータを全てさらけ出して、事態を曇りない目で見抜いた点であるというふうに書いています。つまり、行政のデジタル化を進める際に、どのようなリソースが今あるのか、余っているのか、そしてロジはうまく回っているのか、そして現状どうなっているのかということを把握し、そして機動的で柔軟な見直しをしていくことが重要だと思います。何とか間に合わせろという精神論ではなく、現実的に進めるには情報をオープンにし客観的に議論をする必要があると思います。
 まとめです。
 課題認識として、過去の反省と将来への備えの観点から行政DXが重要ですよということを申し上げました。また、国と地方の役割分担を変える、関係を変える行政改革だということを申し上げました。そして、自治体システム標準化からの考察、提案ということで三点、データを公開してオープンに議論したいということと、それから今後のバージョンアップ後の骨太な制度論を議論するべきであるということを指摘しました。そして、まとめますと、国と地方との関係、またこれからのデジタル時代の立法プロセスにおいては、システム対応のコストとか時間を十分に考慮する必要があるということを提案して、終えたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121314281X00120240219_013

発言者: 庄司昌彦

speaker_id: 27341

日付: 2024-02-19

院: 参議院

会議名: 行政監視委員会