牛山久仁彦の発言 (行政監視委員会)

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○参考人(牛山久仁彦君) この度は、参議院行政監視委員会における貴重な発言の機会をいただけましたことに、大変光栄に存じますとともに、感謝申し上げます。
 私は、大学で地方自治を教えておりますけれども、あわせて、自治体行政の在り方、あるいは各自治体等の審議会で自治体の在り方などを考えているところでございます。私からは、近年の状況を踏まえた上で、国と地方の役割分担をめぐってお話をさせていただければというふうに思っております。
 地方分権改革が一九九三年に衆参両院で決議されまして、自治体の自律的で主体的な在り方を実現することが目指されてから三十年がたとうとしております。この間には、阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災、熊本地震、さらには今回の能登半島地震等、激甚災害が相次いでおりますし、またさらには、新型コロナのパンデミックやウクライナ紛争など、世界規模での災禍が相次いでいるところでございます。そうした中で、地方自治の在り方が問われておりますし、また、内政における国民の安心、安全、これを守るための自治体の在り方も問われているというふうに考えております。
 一九九三年の第百二十六国会の決議では、東京への一極集中を排除し、国土の均衡ある発展を図るとともに、国民が等しくゆとりと豊かさを実感できる社会を実現するとし、このような国民の期待に応え、国と地方の役割を見直し、国から地方への権限移譲、地方税財源の充実強化等地方公共団体の自主性、自律性の強化を図っていくこと、そして、二十一世紀にふさわしい地方自治を確立することが現下の急務であるというふうにうたわれておりました。この二十年の間に、失礼、三十年の間にですね、この目的が達成されているのでしょうか。この問題について意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 二〇〇〇年に成立いたしました分権一括法における改革の特徴は、私の考えでは、国と自治体の役割分担を明確にし、双方の担うべき責任と機能、これを定めたことにあると考えております。それまでの国と自治体の融合的な行政の在り方を改め、双方の役割を明確にすることで、二重、三重行政の無駄をなくすこと、まさに国力を下支えする役割を自治体が力強く担っていくこと、こういったことによって国民福祉の増進を図る、それに資する行政システムを構築しようと試みてきたわけでございます。
 そういった中で、従来から国と地方の関係も、大分以前のことになりますが、これを規定していた機関委任事務を廃止し、そして、今日的には自治事務と法定受託事務といった事務を自治体は担っているところでございます。これはもちろん、もう議員の先生方には、国会議員の先生方に釈迦に説法でございますけれども、自治体の自由度の高い自治事務と、国がその責任において、また法律の下で着実に実行しなければならない事務、これを法定受託事務という形で改めて規定したところでございます。
 皆様のお手元に今日の配付資料で、地方六団体が作成して、現在も更新されているかと思いますが、そこに示されている国と自治体の関係について整理した国の関与のルール、これが配付させていただいているところでございます。
 これによりますと、この法定主義の原則、そして一般法主義の原則、そして公正、透明の原則という形で国と地方の関係が明確に示され、そしてまたさらに、自治事務に対しては、そこにありますような関与の基本的な類型、これが定められておりますし、また、法定受託事務については、国からの指示でありますとか、さらには代執行等、非常に強い措置も規定されているところでございます。
 こうした中で、国の法令を遵守して行政を執行する、そしてさらには自治体にそういったことを遵守させていくような役割もございますし、また、自治体が自らの責任と役割分担において住民に身近な行政を住民の声に基づいて実行していく、そういった体制が整備されたというふうに考えております。
 そういった中で、御存じのように、皆様御存じのように、いわゆる平成の大合併等も行われ、自治体の機能を強化する、あるいは行政能力を向上させるといった試みが行われてまいりました。事前に配付させていただいた資料におきましても示させていただいておりますように、そういった平成の大合併を踏まえつつも、なお自治体がその能力を発揮するために、自治体間の連携、こういったものについても制度整備がなされてきたというふうに考えております。
 そういった意味では、国と自治体がその役割分担を明確にし、相互に連携し補完し合うということで住民生活の安心や安全、そしてできれば快適なその状況が生まれてくるようなことが目指されたわけであります。その意味で、その一方でですね、融合的で重なり合った行政が行政の無駄をもたらし、またあるいは国からのいわゆる指示を待ってからしか動けない自治体、こういったものが解消されるということが期待されていたところであります。
 この今日配付した資料の三番目のところになりますけれども、自治体連携と災害対応というところでございますが、先ほど申し上げましたように、自治体には様々な大きさがあります、規模がございますので、その能力に見合った対応というのが求められるわけですが、それを先ほど申し上げましたような自治体連携によって乗り越えていこうといったことも行われているわけであります。
 そういった中で、大変な災害をもたらしました東日本大震災あるいはそれ以降の災害等におきましても、自治体は様々な形で連携をし合う仕組みをつくり、また、配付資料の中にもございますけれども、杉並区が行ったような自治体スクラム支援でありますとか、もちろん関西広域連合が行いました対口支援等ですね、様々な形で自主的な対応というのを行うということも進んできたわけでございます。
 そういった中で、そういったことも含めてですね、大変大きなその試練でありましたのが新型コロナのパンデミックの問題であったかというふうに思います。ここでは、地方制度調査会でも議論されておりますように、自治体が十分コロナの問題に対応できたのかといったことや、あるいは法定受託事務で規定されている例えばワクチン接種等々、こういったことにどのぐらいしっかりと取り組めたかということが問題にもなったところでございます。
 確かに、こうした国家規模で、あるいは世界規模での大災害、大災禍に対してどのように自治体が取り組んでいくかというのは非常に厳しい、難しい問題であるかというふうには思いますけれども、しかし一方で、やはり自治体が各現場で取り組んだ事柄が国の政策にも影響を与えたり、あるいはその取組の前進を図ることができたということがあるかと思います。
 ダイヤモンド・プリンセス号の問題について配付資料でも少し私は論じさせていただいておりますけれども、神奈川県は、なかなか厳しい状況の中でも、これを激甚災害であるというふうに捉え、また県としての対応、それから横浜市等の対応の中で、いわゆる神奈川方式と呼ばれるようなコロナ対応の問題に取り組んできたかというふうに思っております。その意味で、国と自治体が緊密な協力を行いながら、またそれぞれの役割分担をしっかりと果たしていくことによってこれからの国と自治体関係が進んでいく、進めていければいいなというふうに私は考えているところでございます。
 そういった中で、この新たな国と自治体の関係について影響を与えるかと思われる提案が地方制度調査会からなされているところでございます。第三十三次の地方制度調査会は、大規模な災害あるいは感染症の蔓延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護のため、国、地方を通じ的確かつ迅速な対応に万全を期す観点から所要の見直しを行う必要があると答申しております。
 報道によれば、国の指示権について、地方自治法の現行の国、地方関係の章とは別に新たな章を設け、特例に規定するということが報じられております。自治体間の職員応援派遣に関する国の役割も自治法で明確化し、国による応援の要求や指示、派遣のあっせんなどを可能にするともされております。
 こういった非常時における国の役割を決して軽視するものではございませんし、また、国がその全国自治体に対する司令塔としての役割を果たすことも私は否定するものではございません。
 ただ一方で、先ほど見ましたような国の関与の類型化等の問題を踏まえ、ここにこうした指示といったものを章を設けるということでありますし、また、法案についてまだ明らかにされていないので軽々には申し上げられませんけれども、自治事務、法定受託事務のこの区分、区別をなくするようなことというのはどのような事態の下で行われ得るのか。これは、憲法に規定された地方自治の在り方にも大きな影響を与えるものとして考えておりますので、これについては慎重な審議が必要であると私自身は、議論が必要であると私は考えているところでございます。
 また、そういった中で最も私が危惧いたしますのは、ここまで述べてきたような自治体の取組や努力、あるいは自治体間連携、こういったものが行われてきているわけですけれども、現行でも、自治体の多くが独自に連携し、支援を行い合うといったことが行われております。この能登半島地震の直後にも幾つかの自治体に連絡をしてお話を伺ったところ、国や県の指示がなくても直ちにその被災地に対する支援を行っているという自治体がほとんどでありました。もちろん、私の問い合わせたところの範囲でございますけれども。
 しかし、そういった中で、激甚災害が勃発したときに、これは国からの指示があるんだろうかないんだろうかといったことを考えると、自治体が自主的な支援を行うことにちゅうちょし、現地の被災者の皆様への救援が遅れる、そういう状況が生まれることが危惧されるところでございます。今後、南海トラフ地震や首都直下型地震、激甚災害が予想される中、この指示待ち自治体をたくさんつくるような法改正にならないように私は強く念じるところでございます。またあるいは、首都直下地震が起こった場合に、全国各地からの支援といったものが自主的に行われるといったことも併せて考えておく必要があるかと思います。
 私の方からは以上でございます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 牛山久仁彦

speaker_id: 15009

日付: 2024-02-26

院: 参議院

会議名: 行政監視委員会