井上聡の発言 (財政金融委員会)

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○参考人(井上聡君) 御質問ありがとうございます。
 非常に難しく根本的な御質問、むしろ御意見をいただいたように思いますが、三つございますので一つずつ申し上げます。
 どんなときに使われるのかということは、今後むしろ実務が工夫するべきことだと思いますが、この企業価値に着目して金を貸すということにまず一つ考えられるのは、今日三つ紹介をしたうちの一つ、成長企業について、不動産はない、経営者保証は出したくない、そういうところが、何もない、机と椅子以外は、パソコン以外はないというときに、事業キャッシュフローが拡大していく、それ自体を担保に入れて、俺の将来に貸してくれという担保をつくるというのが一つの目的だと思います。もう一つは、成熟企業の事業キャッシュフローを把握すると。もう一つは、より大規模なプロファイあるいはLBOということだと思いますが。
 先生おっしゃるように、その特に事業会社に対する一つ目あるいは二つ目の融資に関して、破綻したときの借換え、いわゆるそのDIPファイナンスなどに用いるためのファースト・プライミング・リーエン、これを導入すべきではなかったのかという議論は確かにございます。特に、倒産実務家をしている弁護士の間では、この企業価値担保の際にファースト・プライミング・リーエンを導入すべきではなかったかという声はよく聞きます。
 私も、それは一つの考え方で、是非将来的には検討いただいて導入することもありではないかと思ってはいるのですが、私自身は、必須かと言われると、そうでもないのではないかとは思っています。
 というのは、これも恐らく先生御承知のように、各国こういった企業価値に着目した担保制度というのがございますが、代表的と言われるアメリカにおいては確かにファースト・プライミング・リーエンは導入されておりますが、それ以外の国では、全資産担保的な、包括的な担保制度を用意したときに、議論はしたものの結果的には導入しないという決断をした国が多うございます。
 そこはいろいろな考え方がございまして、アメリカのように、ファースト・プライミング・リーエンを出すときに裁判所が既存の担保権者を害しないかどうかを判断して、それでファースト・プライミング・リーエンを付けるというプラクティスの代わりに、裁判所よりもむしろその当該既存の担保権者自体に判断を委ねた方がよいのではないかという考えの下に、ウィン・ウィンの関係をつくれる、つまり、現在DIPファイナンスを受け入れれば既存の担保権者も企業価値を守られることによって守られる、ウィン・ウィンであると考えれば、むしろそんなものを導入しなくても既存の担保権者が自ら任意で最優先を譲るだろうと、こういう制度でほかの国は動かしているところもございます。これは両様あり得ると思いますが、アメリカのようなやり方がよりふさわしいのではないかということを今後も検討はすべきだとは私たちは思っております。これが一点目です。
   〔理事山田太郎君退席、委員長着席〕
 二点目、信託の利用。これも私自身、非常に実は懸念しているところでございまして、先ほども申し上げたように、制度が重くなってしまうと制度というのは誰にとってもマイナスになってしまいますから、ウィン・ウィンの要素を減らす一つの原因にはなり得ると思います。ですので、そのメリット自体はなくはないんですが、やはりどうシンプルなものにしていくのかというのは重要だと思います。
 ただ、御質問との関係で申し上げますと、信託に入っているのは、担保権が信託に入りますので、その意味では、この信託の受益者は担保権のメリットを直接経済的に受ける被担保債権者、すなわちレンダーがメインですけれども、それ以外が、被担保債権者として考えられているのが、将来といいますか、清算あるいは破産に至ったときの残された債権者、これらが受益者ということに法律上はなると思います。
 ただ、もうちょっと広い意味で、担保権者の利益以外の利益として、借入人の利益、あるいは借入人の従業員あるいは取引先の利益というのがありますけれども、そちらを言わば利益を受ける人間という意味では受益者として捉えることは可能ですが、これは信託の受益者というよりは担保制度の言わば受益者としてウィン・ウィンの関係を考えるということかと思います。これが二つ目。
 三つ目は、非常に難しいですね。これは、企業価値担保権というのが、従来の金融検査などでいう財産価値、換価価値に着目して担保適格性を見るという観点からすると、企業価値というのは非常にぶれますので、不動産なんかと比べると担保適格性が低いというふうに考えられ得ると思います。
 ですが、今回の担保というのは、むしろ、そういうその換価して実行して換金して何ぼという担保というよりは、いかにそのモニタリングすることで企業価値を維持して回収を図っていくかというところに着目した担保制度なので、その意味では、先生のおっしゃるように、一定の担保の見方というものに対して転換を迫るものであり、従来の換金して回収するというのとは違って、事業を回させ続けて、それで回収するといったことに担保の価値を見出す一つのきっかけにはしていただきたいなとは思っております。
 済みません、長くなりました。以上です。

発言情報

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発言者: 井上聡

speaker_id: 3953

日付: 2024-05-30

院: 参議院

会議名: 財政金融委員会