亀山康子の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(亀山康子君) ありがとうございます。
 今日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、二十分というお時間をいただきまして、私のレジュメの言えるところまで申し上げたいと思います。カラーのスライドでございます。
 気候変動に関して私のイメージをマップのようにしたものが二枚目のスライドになります。二枚目のスライドで緑色の四角が横に四つ並んでいるのが気候変動の流れになります。
 私たちが石炭や石油などの化石燃料を燃やすことによって二酸化炭素の排出量が増え、その結果、大気中の濃度が増えて、今、地球が暖まっている、これが地球温暖化でございます。その結果として、とても暑い夏だったりとか、あるいは干ばつ、あるいは洪水、台風など、そういった異常気象が起きる、これが気候変動でございます。今これが問題となっているわけでございます。
 気候変動が起きると、私たちが被害を被る。被害を被るところで終わればいいんですけれども、それが地域によっては紛争ないし暴力といった形につながっていく、ここが安全保障に関係する部分と理解しております。
 なお、私たちは、温暖化対策という名前で、この黄色く色塗った三つのタイプの対策を取っております。
 一番左にあるのが緩和策。これが言ってみれば予防策でございまして、これ以上温室効果ガスの排出量を、できるだけ出さないようにするということが緩和策でございます。カーボンニュートラルですとか二〇五〇年ネットゼロといったのは全部緩和策になります。
 二つ目の適応策。これは、もう既に温暖化してしまった地球において、私たちができるだけ被害を減らすために工夫することが適応策でございまして、例えば、より温暖な気候に適した農作物の品種に改良していくことでありますとか、あるいは堤防をより高く設定していくこと、こういったものが適応策となります。
 適応策を私たちは取るわけですけれども、それでもなお洪水などで被害を受けます。家屋が流されたりするわけです。そういった被害を受けてしまった方々に対してサポートしていくことがロス・アンド・ダメージという対策になります。
 ですので、温暖化対策は今この三つの種類に分けることができます。この三つが今日のテーマである安全保障にどう関わってくるのかということを三つの色に示してあります。
 赤い色がエネルギー安全保障に関係すると思われるものでございまして、これは当然、緩和策に関係してくるわけであります。化石燃料の需要がどんどん減っていく、石油を今までよりもみんなが買わなくなっていくということで、国際的な地政学のバランスが変化していきます。
 あるいは、今後、電気自動車なんかは増えていくわけなんですけれども、電気自動車にはバッテリーが必要です。バッテリーの中には様々な、クリティカルミネラルというふうに呼ばれますけれども、レアアースですね、が使われると。そうすると、それの争奪戦というのがもう既に始まっております。こういったものがエネルギー安全保障あるいは経済安全保障と呼ばれる部分になります。
 二つ目、適応策、それから気候変動の影響の部分に関しては、食料安全保障というふうに水色で書きましたけれども、例えば、日本は海外からいろいろな食料を輸入しているわけなんですけれども、海外で小麦とか大豆とかが取れなくなったときに価格が高騰します。そういったときに、いかに国家として食料安全保障を確保していくのかという話。あるいは、企業レベルでは既に原材料の獲得が困難になっております。今まで捕れた魚が捕れないですとか、小麦、カカオ、コーヒーなどの値段が上がっているという話はもう御存じかと思います。
 緑色で書いたのが人間安全保障に関係する部分なんですけれども、こちらは、緩和策においてもあるいは適応策においても、やはり値段が上がっていくということは、すなわち経済的に困っている方々が一番最初に被害を受けるわけでありまして、そういった格差の問題というものが生じてまいります。
 また、特に海外ですけれども、紛争、暴力というところまで至りますと、やっぱり干ばつ等を発端とする地域紛争、あるいは干ばつや海面上昇などを発端とする気候難民の発生、こういったことが海外ではもう既に大きな問題となっております。
 ですので、これが私なりの全体のマッピングでございまして、今日、ほかにお二人の参考人の方々が、それぞれの御専門分野、非常に詳しいですので、そこを避けて、ちょっと私の方で、まずちょっと、安全保障に入る前に、残りの時間、気候変動の現状について御紹介したいと思います。もう既にもしかしたらほかのところで聞かれているかもしれませんけれども。
 三枚目のスライドの上の方の左のグラフだけ見ていただきたいんですけれども、左の方のスライドは、過去二千年にわたる地球の平均気温をプロットしたものでございます。これで明らかになっておりますように、やっぱり一八五〇年、人々が産業革命で石炭を掘って燃やすようになってから明らかに気温は上がっている。そして、その上がるスピードが非常に、今までの歴史の中でも、と比べてもとても速いということであります。
 このIPCCという報告書が出たのが二〇二一年ですから、このプロットは二〇二〇年までしか描かれていないわけですけれども、二〇二〇年時点で地球の平均気温はそれ以前よりも一・一度近く上がっているということになっておりました。ですので、これが当時の事実でございます。
 それで、下の方の黒っぽい図に移っていただきますと、これ残念ながら、この一年間、温暖化が更に進んでおります。二〇二三年の赤い線が御覧いただけるかと思いますけれども、やっぱり去年の三月ぐらいからおかしくなってまいりまして、この後、これ以降、過去には見られなかった温暖な状態になっております。去年の日本もとても暑い夏でしたけれども、日本だけではなくて世界中が暑い夏を迎えるようになっております。
 この状況は今年になっても、この黄色で表している部分ですけれども、続いておりまして、それで、去年の三月から今年の三月まで、あっ、去年の四月から今年の三月までの一年間、十二か月を取ると、平均気温は産業化前のと比べて一・五八度、つまり二〇二〇年のときには一・一度上がりましたと大騒ぎしていたんですけれども、もうこういう取り方をすると一・五八度まで上がっちゃっているんですね。
 ただ、これが一〇〇%温室効果ガスの温暖化によるものなのかどうかがまだ分からなくて、もしかしたらこの一部は温暖化以外の自然現象でもって複合的な結果として上がり過ぎている場合もありますから、今この一・五八度のうちのどの部分が温暖化によるものなのかということを検証しているところなんですけれども、もしもこの時点で、ああ、やっぱり一・五度分ぐらいは温室効果ガスの濃度が増えたことによりますねという結果が出てしまいますと、私たちは既にこの一・五度という、当時、三年前に目標としていたはずの温度をもう既に超えてしまったということになります。ですので、ここはすごく、私たちが予想していたよりももしかしたら速いスピードで温暖化が起きているかもしれないということになります。
 五枚目のスライドです。この辺りからまたIPCCの報告書から図を取ってまいっておるんですけれども、これは排出量をゼロにしても気温上昇は続くというものを示しております。
 真ん中に二〇二〇年というラインがあるんですけれども、これを今日というふうにしますと、皆さんがお生まれになった年代をちょっと御覧になってください。今よりも大分薄い色かなと思います。ですので、私たちが生まれたとき、もう既にちょっと暖かくなりかけていたんだけれども、そのときと比べても、今はもう全然違う地球にいるということであります。
 そして、今後、私たちがパリ協定で目指している排出削減を実現できると、真ん中のインターミディエートというところを進んでいくことになるんですね。ですので、パリ協定の努力だけだと、暖かくなるスピードがちょっと、ベリーハイと比べると遅くなるだけで、暖かくなり続けること自体は変わらないんですよ。
 それで、ベリーローというところが一・五度目標を達成できた場合の温暖化シナリオで、これは二〇五〇年までの排出量実質ゼロという目標を達成できた場合に想定される気温上昇なんですけれども、これでもまだ暖かくなり続けはしないが温度が下がることにはならないですね。それはどうしてかというと、排出量をゼロにしたところで、短期的にはこれ以上は濃度が増えないだけであって、濃度自体が減るわけではないですから、濃度が変わらない以上、そこに含まれる熱量は変わらないわけです。
 ですので、こういう状態が排出量をゼロにしたところで続くということ、そして、二〇二〇年に生まれた子供たちというのは、もうこういう世界の中で生きていかなければならない、これはもう元に戻れないところまで今私たちは来てしまっているということでございます。
 海面上昇も続くというところにありますけれども、今現在、海面の上昇は二十センチぐらいであります。海面の上昇は二つの理由でもって起きます。一つは、北極とか南極の氷が解けることによってお水の量自体が増えるということ、もう一つは熱膨張ですね、お水が熱を、温かくなるとそれ自体が膨張しますので、この二つの理由によって海面は上昇します。
 こちらも私たちが今後どんな対策を取ろうとも上昇し続けることには変わらなくて、下手をすると、二一〇〇年ぐらいでは一メーター、あるいは、画期的、画期的と言うと変ですね、南極の氷が急に解けてなくなったりすると、もう一・五メートルぐらいまで上がる可能性がございます。
 また、次のページですけれども、そのときに生態系にどういう影響が起きるかであります。ちょっと英語で申し訳なかったんですけれども、上の方はリスク・オブ・スピーシーズ・ロスと書いてありますので、生物多様性がどれぐらい失われるのかと、生物種がどれぐらい減るのかということを示しております。
 濃度、紫色になるほど、そこの市はほとんど住めないぐらいの状態になるということなんですね。見ていただくと、この紫色が出てくるのというのは、やっぱり三度、四度だともうひどいですね。二度でも、よく見ると紫色のところがぽちぽちとありまして、なので、私たちは二度を目指す以前に、まず一・五度で温暖化を止められたらいいねと思って頑張ってきているわけなんですけれども、こういったことで、一・五度あるいは二度でも、特に赤道近辺では生物が絶滅するぐらいの気温の上昇が起きることが想定されております。
 似たようなことは、下の方の、人に対する影響でも言えます。人間に関しては、単に気温だけではなくて湿度も関係してくるんですね。同じ気温だと湿度が高いほど不快感あると思います。そして、人にとっては死亡するような、に近づくような状態になっていきます。ですので、気温と湿度の組合せでもって指数を作って、その指数がもう一年中、三百六十五日全部死ぬほどの状態だというのが紫色なんですね。
 これも、やはり二・四度以上ぐらいになってくると、やっぱり赤道辺りでもう一年中人々が死んでしまいそうな状態の気温の日が続くと。やっぱりこういう日って一日や二日あってもつらいじゃないですか。一か月ぐらい続くと本当に亡くなると思うんですよね、一年中続かなくても。そうなってくると、一・七とか二・三度ぐらいのところで抑えてもかなり厳しい国があるということが分かります。
 それで、この図の見方としては、生物種も人間も今住んでいるところから動かないということを仮定しております。実際には多分暑くなるとみんな寒い方に一生懸命逃げていきますので、今ここに描かれているそのままのことにはならないとは思いますけれども、人間の場合、移動していくということは、すなわちやっぱり気候難民が更に増えていくということになります。ですので、それが人間安全保障につながっていくということになります。
 それで、ここまでが気候変動の現状のお話だったんですけれども、八枚目のスライドで、気候変動を安全保障につなげてみたいと思います。
 気候変動あるいは地球環境安全保障なんていう言葉が海外で出てきたのは一九八〇年代でございます。ちょうど冷戦が終結して、当時ソビエトのゴルバチョフさんが地球環境安全保障という言葉を使いまして、今まで軍事力に充てていた予算を全部地球環境に充てれば、平和も達成できるし、環境も良くなるんじゃないかというようなスピーチをなさいました。
 こういうときに使われる安全保障という言葉と、別の方々が地球環境あるいは気候変動安全保障と言うときとで、時々ニュアンスといいますか文脈が違うんですね。ですので、どう文脈が違うのかということを調べるためにいろいろな文献をあさっていた時期が私の研究生活の中でございまして、それで、どうやらこの四つに分けられそうだというのが私の当時書いた論文の中にございます。
 安全保障という言葉は一般的には国家安全保障の文脈で使われることが多くて、ほかの国からの攻撃を自分の国、ほかの国からの攻撃から自分の国を守ると。国対国の問題なんですよね、安全保障という言葉は。だけれども、この気候安全保障に関しては、国という主体とは限らなくて、例えば、一番、地球そのものが気候変動のおかげで大変なことになっているから、もう国家の安全保障なんか語っている場合ではなくて、地球そのものを守るべきだというような文脈でこの言葉を使う方がいらっしゃいます。
 二つ目、国家を気候変動の影響から守る、あるいは緩和策による影響から守る、あるいは気候変動影響による紛争から守る、何らかの気候変動に関係するリスクから国家を守るという意味でこの言葉を使うパターンもございます。
 ちょっと分かりづらいかもしれませんので幾つか例を申し上げますと、気候変動影響ですね、台風が来て自分の国の一部が浸水して、そこから人を助けるというのは、日本国内では余り安全保障という言葉は使われないんですけれども、アメリカでは使われています。アメリカの国内の洪水関係ではセキュリティーという言葉を、クライメートセキュリティーという言葉を使います。それから、緩和策による影響、これは、緩和策のために電気自動車をいっぱい造らなきゃいけなくて、先ほど申し上げたような、そのレアメタルがなくなってきてどこから調達しようかというような話になると、これは国家の経済的な意味での安全保障につながってまいります。また、気候変動影響による紛争から守るという意味では、やっぱり、気候難民を受け入れるのかとか、勝手に入ってきてしまう人たちをどうすればいいのかとか、そういった問題が関係してまいります。
 それから三つ目が、個人あるいは集団を守るというようなニュアンスで使う場合がございます。
 人間安全保障に関する議論というのは、多分ここが一番大きいかなというふうに思います。気候変動影響、緩和策による影響、気候変動影響による紛争あるいは暴力から守るときに、気候安全保障あるいは気候と人間安全保障というような話し方をいたします。
 二枚目のスライドで冒頭お話ししましたように、やっぱり緩和策にしても適応策にしても、やはり何らかのイベントが発生すると物の値段が上がります。それで、やっぱりその物の値段が上がったときに一番困るのは経済的に困難な方々ということで、これは、今日の多分その外交の話ですので、先進国と途上国という意味ではもちろん途上国でありますが、一つの国の中でもこの問題は起きていて、やっぱりヨーロッパでは、電力の値段が上がって、それでやっぱり貧しい方々が電力を使えなくなるということで問題となっているんですけれども、その辺りをこの安全保障という言葉を使って議論したりとか、それから、最近ですとクライメートジャスティスという言葉も使いますね。正義という観点から、その社会的な弱者を気候変動の緩和策から、あるいは適応策からもきちんと救うべきだというような議論をいたします。
 それから一番最後が、防衛インフラを気候変動影響から守るということです。
 これは、アメリカが多分この文脈一番強くて、もう既に二〇〇七年ぐらいの論文から、アメリカの国の軍事施設あるいは航空機とかそういったものが、洪水であったりとかあるいは竜巻とかそういうものでいきなり飛ばされたりするらしいんですよね。やっぱりそこをどうやって守っていくのかという文脈で、アメリカの防衛関係の方々が気候変動安全保障というようなことを大分前から言っております。欧州とかアメリカ以外の国では、この文脈で論文はそれほど出ていないか、あるいはその防衛関係の省庁からレポートが出ている程度かなというふうに思いますけれども、やっぱり安全保障の文脈では非常に重要な部分かなというふうになります。
 私のスライドはまだ続くんですけれども、これでちょうど二十分ぐらいかと思いますので、ここで一旦止めさせていただきまして、この後の質疑応答のところで、ちょっとこのスライド気になるというのがありましたら、ちょっと言っていただければ追加で説明したいと思います。
 御清聴どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 亀山康子

speaker_id: 23655

日付: 2024-04-17

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会