秋元一峰の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(秋元一峰君) 秋元でございます。
 本日私がお話しさせていただきますのは、食料、エネルギーあるいはその人間の安全保障という概念からは少し離れているかもしれませんけれども、どちらかというと、地政学だとか、最後、パワーポリティクスの方にまで入っていくかもしれませんので、御容赦お願いいたします。
 まず冒頭申し上げておきたいことは、気候安全保障って言葉ができたのは最近のことでありますけれども、気候安全保障というのは、人間の歴史の中でも最初から、実はその安全保障の最初の原点であったんじゃないかと考えております。
 レジュメに沿って話させていただきますけれども、一ページ目の一項で、気候変動の中の人の移動と定住ということで、学説によりますと、六万何千年か前にアフリカを出て、それから三万五千年前ぐらいまでにはもう南アメリカまで到達していたというふうに言われておりますけど、なぜ移動していったのかと。それは、食料を求めるとか、あるいはその人口が大きくなり過ぎたとか、そういうものがあるんでしょうけれども、その中の一つに、やはり気候変動というものがあったことは確かだと思います。
 これは、古くは、信じるか信じないかは別でございますけれども、ノアの箱船だとかあるいはギルガメシュ伝説とかにも出てまいりますけれども、洪水で人が移動したとかですね、そういうものが出てまいります。
 そういう中で、あるときに人口が増えていってもう移動がなかなかできなくなる。それから、食料を確保するために農業と畜産とをやっていくということで定住していくと。定住したところで文化発展していきますと、定住したところだけではなかなか生活ができないので、ほかの定住した人たちと交流をすると。そこで地政学というものが生まれてくるんだと思います。
 今日の地球温暖化に伴う気候変動というものは、大きな原点に返った人間の安全保障というもののパラダイムシフトを起こすようなものではないかなと考えております。
 それから、一つ、先ほど亀山先生からもありました、その大きな自然現象としての気候変動と、それから、いわゆるその産業革命後の地球温暖化というものの区別として、我々の研究では、この大きな流れ、今地球は第三氷河期の間氷期にあると言われておりますけれども、北極海がメタセコイアが生い茂っていたときもあれば、あるいはマンモスがこの辺りを闊歩したときもあると。そういう大きな、何万年、何千年の大きなその地球サイクル、それから、更に近いことでいえばエルニーニョが起こったり、単年度の気候のサイクルですね、それと、いわゆるその産業革命後の人間に起因する地球温暖化というものは区別して考える必要があると思います。もちろん、それは複合作用として生ずるんですけれども、どれがいわゆる地球温暖化と。
 我々の研究では、大きなサイクルのことは、気候、クライメートチェンジを、クライメートバリエーション、気候変動。それから、いわゆるマンメードのようなものについては、これは変動するものではなくて、先ほど亀山先生からもありましたように、これはもう既に一・五度Cぐらい上がってしまっている。それから、二度Cぐらい、これはもう二度Cは不可能ではないかというような、これは変化してしまう状況ですので、そういうものは気候変動ではなくて気候変化と呼んではどうかというふうにして話しております。
 それから、気候安全保障の概念ですけれども、恐らく気候安全保障の概念整理されたのは亀山先生が最初ではないかと思っておりますけれども、気候安全保障とは一体何かというのを具体的に、ちょっと私が考えているところ、六つの類型で考えております。
 一つが自然災害ですね。これは、海面上昇したり、あるいは台風が大型化する。
 それから二つ目が、農耕牧畜地帯、それから、あるいは海洋生態系のその変化によって資源紛争が起こったりなんかすると。それから、飢餓もそうですね。
 それから三つ目が、脱炭素化というのをどんどん今国際社会進めていっておりますけれども、それによって、いわゆる化石燃料地帯の戦略的な重要性というものが減って、レアメタルだとかそういういわゆる再生可能エネルギーに必要な資源地域というものの戦略的なその重要性が高まってくる。そういうことによってその安全保障環境が不安定化すると。これについては、その気候安全保障に入れるものかという疑問を呈する方もおられますけれども、一応私はこれも入れております。
 それから四つ目に、北極海融氷によるシーレーンの連結と。これ、後ほどお話ししたいと思いますけれども、北極海の融氷によってよく貨物が三分の二の航程で届くようになるとかいろいろ言われますけれども、海上交通路ができるということは、皆さんも御存じのとおり、マハンだとかあるいはマッキンダーの世界に入っていくと、シーレーンができるということによって、それによって地政学的な変動が起きます。これも大きな気候変動の一つではないかと、気候安全保障として取り扱うべきものではないかと考えております。
 それから五つ目が、防衛装備、基地機能への影響ということで、これはいわゆる海軍でいきますとその水測ですね、魚雷のその諸元がまた変わってくると。それから、気候で大型化が起こったり、あるいは海面上昇が起こったりしますと、基地機能にも大きな影響が及ぼされると。
 そういうような、その五つと、それによってその相互作用と、六つに類型を分けて一応考えております。
 そのような中で、現在顕在しているものはどんなものか。いわゆる定量評価ができるものかと。定量評価ができて、それに対してその安全保障政策として国家が対応しているもの、どんなのがあるのかといいますと、まず一つは、大規模災害に対する救助。これは、多国籍な救助活動というものが既に類型化され、あるいは慣行化されていっております。
 それから、漁業監視活動ですね、その違法操業に関するもの。これも、明らかに漁業資源というものは変化してきております。例えば、フィジー辺りは大きな排他的経済水域を持っておるんですけれども、それに対する漁業監視というものができないので、フランス海軍がニューカレドニアに展開している船と飛行機でフィジーのその違法操業を監視していると。それから、オーストラリアもそのようなことをやっているというようなことで、これもある程度取組が行われております。
 それから、北極海融氷がもたらす安全保障環境の変化に対しては、これは主にアメリカが非常に重点的にやっておりまして、後ほどお話ししたいと思います。
 それから、国防機能の影響への対策と。これも亀山先生からありましたように、随分前からアメリカは軍の方で、基地機能の低下、それから装備品、それから艦艇、航空機への影響というものの対策を講じてきております。これについては後ほどちょっとお話ししたいと思います。
 それから、二ページ目に移りまして、今後必要となるのは、海面上昇に起因する人口移動への対策ということ。これは、確かに、実際に人口移動に対してどうするのか。あるいはモルディブに対して、あるいは中国だとか、あるいはオランダとかがですね、これはもう難民というんではなくて、その海面上昇に対するいわゆる施設のレジリエンスというところでやっておりますけど、そこは、大きな人口移動、マイグレーションに対する対策というのはまだ手が着けられていないんじゃないかと思います。
 それから、脱炭素化とか、あるいは農耕、それから漁業の変化に伴う資源紛争とか人口移動と。これは、個人的には私はこれは非常に大きな問題になってくると思うんですけれども、これを実施するほどの定量的な評価というのがまだ集まっていないんじゃないかなと思っております。
 それから、地球温暖化が及ぼす国防機能への影響につきましては、これは、私と同じく一緒に研究しておりますジャパン・タイムズの記者が昨年の三月に記事にしましたので、このレジュメの後に付けております。時間がありましたら、補足したいと思います。
 それから、一つ、北極海融氷によるシーレーン連結が及ぼす地政学的な概念への影響。これについては、アメリカ、アメリカがかなり非常に、かなり非常にというのは面白い、変な表現ですけれども、マンパワーを投入していっておりますので、ちょっと紹介したいと思います。
 北極海が船が通れることになるということは、すなわち、地球の海を間断なくぐるぐるぐるぐる回ることができることになるということになります。例えば、北極海通りますと、ユーラシア大陸ぐるっと回る、その船が同じくそのアメリカ大陸をぐるっと回る、八の字にどんどんどんどんもう間断なく回るということができるわけですね。
 三ページ目に移りまして、八字型にぐるぐるぐるぐるサークルが回ると、これは地政学的に大きなパラダイムシフトを起こすわけで、三ページ目の真ん中の地図に書いておりますけど、いわゆるマッキンダーだとか、あるいはスパイクマンの地政学というのは、北極海が氷に閉ざされているのが前提になっております。その前提の下に、そのユーラシア大陸をハートランド、それからインド洋の縁辺をそのリムランドと呼んでいるわけですね。
 ちょっと脱線しますけれども、バルチック艦隊、これは御存じのとおり、日露戦争のときに、一九〇四年の十月にラトビアをバルチック艦隊出港して、何と日本に到達したのが一九〇五年の五月に、日本海で、日本海海戦で沈められてしまう。実に七か月以上を要して日本に来ている。これがもし北極海が解けてしまったら、当時、解けていたら、全く状況は変わっていたんじゃないかなと思っております。
 四ページ目に移りまして、では、そのようなことを考えますと、今、日本は自由で開かれたインド太平洋というものを標榜して、これはもう世界でも同じ言葉がいっぱい使われておりますけれども、そのようなことを考えると、地政学的にもう一つ、北極海というものがいわゆるリムランドになるというふうに考えなければいけないと思っております。
 その北極海というリムランドが、西欧世界からの繁栄、今のグローバリズムの中で経済協力をし、繁栄の基になるのか。あるいは、今のウクライナとかイスラエルと同じように、その西欧世界の紛争がそのままインド太平洋に来てしまうのか。どちらかは、この北極海という新しいリムランド、ニュー・マリタイム・コリドーのその安全保障がどうなるのかということによって変わってくると思います。
 この辺りは、実は北極海に関する国際シンポジウムの中でもかなり取り上げられるようになっております。御存じのとおり、北極評議会というのは安全保障は取り扱わないということになっておるんですけれども、アークティックサークルというのがアイスランドで毎年行われ、二〇二〇年に私も初めて参加させていただいたんですけれども、それでも安全保障の議題が随分出ている。それから、今年、先週なんですけれども、アラスカでアークティックエンカウンター二〇二四というのがあって、このときも海軍の軍人が随分出てきて北極海の安全保障のセッションが随分たくさんできておりました。
 そのような関係で、北極海の安全保障というものが北極海の融氷によってどう変わるかというのは世界の安全保障に大きな影響を与えるものになると思っております。
 これは蛇足になるんですけれども、四ページ目、日本の現在のシーレーンですね、主に、北極海は入っておりません。
 次の五ページ目は、これ原油タンカーが中東から、これ中東から来ているんですけれども、これが、もし南シナ海、東シナ海を有事のときに通れなくなったら西太平洋を通っていかなきゃいけない。で、この赤で描いてある西太平洋を通っていきましても、これによって船舶を補充しなければいけないとか、あるいは石油の量が減るとか、失礼しました、コストが高くなる、バレル当たりのコストが高くなるというのはあるんですが、ある程度許容できるもの、ある程度許容できるものになると思います。
 ただ、六ページに移りまして、もし太平洋も、西太平洋も何らかの紛争によって通れなくなった場合、これは本当に日本経済、その原油とそれからLNGが全く通れなくなるということでカタストロフィーになってくると。そうしますと、北太平洋のそのシーレーンというものを考えていかなきゃいけない。どこから持ってくるかというのは別の話ですけれども、そうしますと北極海というものが非常に重要になってくるので、日本としましても、その北極海のその安全保障というものを、これからどんどんどんどん北極海の融氷進んでいきますので、考えていかなければいけないんじゃないかなと思っております。
 昨年も、そのようなことから、うちの財団でアメリカ・アラスカの方に情報収集に行ったんですけれども、アメリカでは国防総省がテッド・スティーブンス・センター・フォー・アークティック・セキュリティー・ストラテジーというのを昨年の七月に開所しております。これは国防総省がつくった北極の安全保障に関するそのセンターです。
 そこで、もちろん研究もやりますし、各国から海軍の軍人を集めて、失礼、海軍だけじゃないですね、各国の軍人を集めて、そこで北極とは何かという、いわゆるその集合教育のようなものもやる計画を作っております。今やり出したか、もう既にやり出したかどうかというのはちょっとまだ分かりませんけれども、プログラムの中には載っております。
 それからさらに、アラスカ大学、アンカレジにあるアラスカ大学の中に国家安全保障省がアークティック・ドメイン・アウェアネス・センターというのをつくって、これ、北極海のいわゆるそのアウェアネス・センター、ドメイン・アウェアネス・センターですね、それをつくって情報収集を図っていっております。
 そのようなことで、日本としても、その北極海のことに、その安全保障への関心を持つ必要があるのではないかと思っております。
 時間も迫ってきましたので、その辺りにつきましては以後質問があったときにということにしまして、もう一つ、英語で申し訳ないんですけれども、私のレジュメの次にジャパン・タイムズの去年の記事、去年の三月の記事なんですけれども、ガブリエル・ドミンゲスという名の、ひどい名前なんですけれども、若いジャパン・タイムズの記者ですね、安全保障と外交の、やっている人間で、彼が、我々が二〇二一年に「気候安全保障 地球温暖化と自由で開かれたインド太平洋」という冊子をうちの財団で出したんですが、その英語版を読んで興味を持って、日本の自衛隊と、それから日本に展開しているアメリカ軍の、気候、いわゆるその防衛装備だとか基地機能に与える影響はどんなものかというのを調べてくれまして、それをジャパン・タイムズの記事にしてありますので、もしお時間ありましたら読んでいただければ。
 それで、特に基地機能、彼は基地機能のことしか調べられなかったようなんですけれども、先ほど亀山先生からもありましたように、今世紀末にはもしかしたら一メーターぐらい海面上昇があるかもしれない、そういうことの定量的な分析の中で、彼は、沖縄、佐世保、横須賀、この辺りは海面上昇の影響、三十センチぐらいの影響を受けるんじゃないか、で、それがその防衛機能にどのような影響を与えるのかというのは、これはこれからのことだと。それからさらには、海面のその水温が上がったり、そういうものによって、いわゆる、もっと具体的に言いますと魚雷の諸元どうするかだとか潜水艦の機能をどうすればいいかというものにもその影響が及んでくるということで、外国の記者が日本の防衛のことを心配してくれてもおりますので、紹介をしておきたいと思います。
 二十分たちましたので、これで終わらせていただきます。

発言情報

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発言者: 秋元一峰

speaker_id: 89

日付: 2024-04-17

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会