筒井淳也の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
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○参考人(筒井淳也君) よろしくお願いします。
資料、お手元の配付資料並びに前のスクリーン、同じものが映し出されますので、お好きな方を御覧になっていただければと思います。(資料映写)
まずは、スライドの四ページ目から御覧になってください。
しばしば女性労働力参加に関しましてM字型というものが注目されるわけですね。そのM字型というのは、未婚のときには就職、就業していますが、一旦、結婚、出産に合わせて就業離れて、再び、子供がある程度育った場合に再就業する、それがM字型に結び付くというふうに言われてきたわけです。
ただ、このM字型という見方、これは数値としては非常にシンプルで、そもそもその集計対象になっているのは、未婚か有配偶かも区別していませんし、フルタイムかパートかも区別していないという、若干大ざっぱな数字になっているわけですね。ですので、もうちょっと細かく見ていく必要があるかな。具体的には、配偶状態、それからフルタイムなのかパートなのか、あるいは賃金率とか、そういったことを実は詳しく見ていかないと女性の就業の実態は分からないということをお伝えしたいと思います。
今回見ていくのは、結婚してフルタイムで働くようなライフスタイル、ライフコースというのが果たして増えてきたのかという話をしたいと思います。結論から申しますと、増えていませんということですね。
次のページを御覧になってください。
五ページ目ですが、これは、いわゆる行政の報告書等ではここまでは詳しく報告されることがあって、これは配偶関係別の労働力率、労働力参加率ですね。見ていただけると分かりますが、この配偶関係別、要するに結婚しているのかどうかということで女性の労働力参加見た場合には、M字型というのはもちろん見えません。見えてくるのは、未婚の方は就業継続、結婚している方はそれよりかなり低い。もちろん、令和になりまして、かなり有配偶の就業者数も、就業率も上がっているんですが、それでもまだ無配偶の方には追い付いていないという格差があるということです。このことは非常に見やすく分かるんですね。
ただ、じゃ、この有配偶の方で働いておられるというのはどういう働き方をしているのかというところまでは、なかなか行政のデータでは、行政の報告書等では示されないところになります。
そこで、我々社会学者のグループがSSM調査といって非常に大規模な調査を行っていまして、非常に詳しい労働の実態について調査をしています。そのデータを用いながらもうちょっと詳しく見ていこうということなんです。ただ、ちょっとグラフが煩雑ですので見にくいかと思います。お手元の資料だと一段階見にくくなっていまして、前のスクリーンのがまだ区別が分かりやすいとは思うんですが。
ただ、ここで示しているのが、まず、有配偶と無配偶それぞれ一〇〇としたときに、どれぐらいのパーセンテージの方がどういう働き方をしているのか。正規雇用なのか、非正規雇用なのか、無職なのか。この場合、自営等はデータからは外しておりますが。
見ていただくと、一九九五年から二〇一五年の二十年間の変化において、まず目立つのは有配偶の無職の方はかなり割合が減っているんですよね。ただ、これ、青が未婚の方、赤が有配偶の方なんですけど、この青と赤のそれぞれの正規雇用の差を見た場合に、実はこの差は、縮まってはいますけどまだ非常に大きいです。三〇ポイントほど違うわけですよね。有配偶の無職の方、いわゆる専業主婦の割合は減ったんですけど、その分、じゃ、どういう方が増加しているかというと、増加幅でいうと圧倒的に非正規雇用の方の方が大きいわけですね。
つまり、結婚しても働く女性が増えたというときに、実はかなり多くの割合は非正規雇用であるということですね。それはいつの時代の話だというふうな実感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、全国的な平均で見ると、もう圧倒的にそうであるということです。なかなか、東京にいるとフルタイム共働きというのがかなり目立つようにはなってきていると思うんですけど、全国的に見るとそんなことはないということですよね。
そして、次の七ページ目のスライドに行きたいと思います。これは男性について見た場合です。
男性について見た場合に非常に目立つのは、上の方に二つ線がありますね。これは、先ほどと同じで赤が有配偶、青が無配偶、未婚なんですけど、この正規雇用の差が広がっている。これはどういうことかと申しますと、要するに、未婚の正規雇用の割合、男性です、男性の割合というのが非常に下がっているということなんですね。これは、女性と今度は逆の動きになりますよね。女性は有配偶の就業率は非正規雇用だけでも上がっているんですけど、男性の場合は、正規雇用に関して見れば、未婚の方の非正規雇用率が格段に増えているということなんですよね。
実は、働き方について見る場合には、この配偶関係と併せて考えないと、結婚していることを前提と考えてしまうと、そうじゃない方が見えてこないので、その点は少し、一段階下がったデータというのも見ていただく必要はあるかなと思います。
後でまた小括ということでお示ししたいと思いますので、取りあえず次の八ページ目なんですけど、今度は、非常に恐縮なんですけど、またこれグラフがたくさん線があって、一体どこを見たらいいんだというような感じなんですけど、多分前のスクリーンのが少し見やすいと思うんですけど、太い赤い線に注目していただきたいんですね。
このグラフは、先ほどのグラフと違って、女性全体を一〇〇としたときに、その中にいろんな方がいらっしゃいますよね、未婚の正規雇用の方もいらっしゃるし、有配偶の非正規雇用の方もいらっしゃる。そんな感じで全体を一〇〇としたときの内訳のグラフです。先ほどは配偶関係、それぞれの配偶関係を一〇〇としたときですよね、未婚一〇〇、有配偶一〇〇としたときなんですが、今回は全て合わせて一〇〇にしている。ということは、未婚化の影響がよく分かるグラフになっております。
その上で御覧になっていただいて、今回はもう一つだけ指摘しておきたいと思うんですけど、この真ん中にある若干太めの線で、スクリーンの方は恐らく見やすいと思うんですけど、要するに、有配偶正規雇用ですね、有配偶フルタイムで働いていらっしゃるような方が二十年間で割合として増えたのかというと、ほとんど増えていないです。その一つの原因は、結婚しない女性が増えてきているということですよね。結婚している女性の正規雇用率は若干上がっているんですけど、それでもやっぱり非正規雇用の上昇幅の方が大きい。
この二つの理由、要するに、そもそも結婚しない人がフルタイムで働き続けるという方多いですよね。なんだけど、結婚してフルタイムで働き続けるという方の数は余り増えていないということが分かるわけです。ということは、その女性の、いわゆる女性活躍という言葉で何を目指すのかというのは、なかなか、いろんな目標があり得るんですけど、もし結婚してもフルタイムで働き続けるということを一つの目標とした場合には、これは達成できているのかというと、できていないということになります。
次、男性について同じグラフなんですけど、これもいろいろ指摘できるところはあるんですけど、一点だけ、二〇一五年でいうと、上から三番目の青い線なんですけど、これ要するに未婚の非正規雇用の方ですよね、非正規雇用の未婚の方の割合が今、特に二十代、三十代ではもう非常に目立つ上昇の仕方をしているということです。これがよく分かるかなと思います。
ちょっと小括の方で少し頭を整理していこうかなと思うんですけど、スライド十ページ目を御覧になってください。
まず、女性についてです。女性について、結婚した後も正規雇用を続ける女性の割合は徐々に増えてきているんですけど、ただ、未婚者の水準、未婚者が正規雇用を続けるような水準ですよね、そこまでは行っていない。まだ、やっぱり結婚した場合に、その正規雇用の格差、正規雇用の方のその割合の格差というのは非常に大きい。つまり、簡単に言ってしまうと、もう結婚というのはやはり女性のフルタイムの継続就業に対してはいまだに高い壁のままであるということです。
二番目です。女性は未婚化が進んだために、全体に占める有配偶正規雇用女性の割合はこの二十年間余り増えてこなかったということです。この二番目のことをどういうふうに受け止めていいのかというのはなかなか難しいと思うんですよね。というのは、多くの政策というのは、どうしても有配偶の方を出発点に考えてしまうんですよね。なんですけど、未婚化は間違いなく進んできました。最近、徐々に未婚率というのは上昇幅が減ってきて、少し落ち着いてきてはいるんですけど、落ち着いてきているということは下がっているということではないです。つまり、未婚率が高いままキープされてしまっているということですね。ですので、余り現状変わっていないということです。この方たちを少し視野に入れていただくと、ああ、そうか、結婚して働き続けるというのは、結婚を出発点として考えるだけではなくて、そもそも結婚していない方が増えているんだと。そこら辺の正規雇用率は高いですので、その点も考え合わせていくと少し別の視点も見えてくるかなと思います。
三番目ですね、男性です。未婚化の中で、未婚の非正規雇用男性が増加してきました。これ、女性とは逆の形での正規、非正規と配偶関係の結び付きが目立ってきたということです。簡単に申しますと、女性は結婚すれば非正規になりやすいし、男性は非正規だと未婚継続しやすいということです。これは、就業と、働くことと結婚することの関係の影響の向きですよね。女性に関しては、やはりまだどちらかといえば結婚した場合にフルタイムを続ける障壁が大きいということ、男性に関しては、そもそも非正規で未婚時代を過ごしてしまうと、その後の結婚確率が大幅に減ってしまうということですね。この点が見えてくるかなと思います。
いずれにしろ、結婚して正規雇用を継続するというキャリアパスは男女共に増えてこなかったということが言えるかなと思います。女性はほぼ変化なし、男性は実は減ってきましたということですね。
そして、次の十二枚目のスライドです。ここからはちょっと文章中心になります。
有配偶女性に注目しますと、継続就業を阻む壁というのがいっぱいあって、一つは雇用システムになります。日本的雇用システムというのは、労働時間、職務、勤務先を自分で決めることがすごくやりにくいという、そういう特徴があります。いわゆるこれメンバーシップ型雇用と言われているんですけど、このメンバーに入れるのは大抵男性、もうちょっと厳密に言うと、主婦がいる男性、主婦付き男性と言われている方ですね、が非常に多いということですね。これはもう徐々に変わってきてはいますけど、まだちょっと支配的な地位にあるかなと思います。
海外だと、そもそも職務と等級が同じなら、性別、年齢、企業規模が異なっていても賃金率は近似するという傾向があるんです。これをジョブ型雇用と申します。同一労働同一賃金というふうにも言いますが、これは、同じような職務を経験してやっているのであれば、男性でも女性でも、二十五歳でも五十五歳でも、トヨタでもそこら辺の、そこら辺のというか、比較的規模の小さい企業でも、同じ職務であれば大体賃金率がそろってくるという、これがジョブ型雇用と言われていることなんですね。このジョブ型雇用だと、キャリア中断や転職、時短労働がキャリア形成に依存しにくいですので男女均等になりやすいと言われているんですけど、日本では余り一般的ではないですのでなかなか難しいということです。このジョブ型の導入というのは非常に難しいんですけど、近づけていくことはできるのかなと思います。
そして、もう一つの壁ですね、こっちは制度ですけど、高度成長期から安定成長期に男性稼ぎ手モデルに合わせた各種制度が定着してきました。配偶者控除と第三号被保険者制度ですね。これ、実は現在だと、もうやっぱり社会保険、こちらの制度の壁の意識が非常に強いと思いますが、その後修正されつつもいまだに女性の就業に制約を課しているのは明らかで、この制度を見据えつつ就業時間を調整している女性はかなり多いというデータがございます。
他方で、じゃ、このいろんな壁があるんですね、右の方のグラフに書かせていただいたんですけど、この壁を全て説明できる人がこの世に何人いるのかというぐらいややこしいです。私も実はこの場に来る前にもう一回復習してきたぐらいですね、ちゃんと把握できているのかというと、なかなか怪しいものがあると思います。そもそも複雑な制度というのがあって、その複雑な制度の根本的なところを変えずに少しパッチを当ててきたみたいな歴史があるんですよね。余計分かりにくくなっているということですよね。
ただ、他方で、この制度の壁を撤廃しても、賃金率が低い非正規雇用であれば継続的なキャリアアップとか賃金増は見込めません。最初の報告でもありましたように、非正規雇用と正規雇用の賃金格差、日本では非常に高いですよね。ですので、就業調整が撤廃されたら、じゃ、これはもう問題解決かというと、そんなことはないということですよね。やっぱり雇用システムの改革、働き方改革というのはいろんなところで大事になってくるということです。
そして、次、家庭ですね。これは私どもが、今、十四ページになります、十四枚目になります。
なかなか東京とか首都圏にお住まいの方だと、今どき家のことをしない男性なんてまだいるのかというようなリアリティーをお持ちの方もいるかもしれませんけど、びっくりするぐらい日本の男性は家のことはしません。これはもう日本全国の平均で見た場合に、下の数字を見ていただければ分かるんですけど、これは、このデータはちょっとややこしいです。フルタイムの有配偶女性に限ったデータなんですよね。そのフルタイムの有配偶女性が家事、育児、下に書いてあるような家事、育児をほぼ毎日行っているという人だけを集めた場合に、じゃ、その夫はどれぐらいやっているのかというデータなんです。
少し補足させていただくと、要するに、男性と、妻と夫が比較的対等に働いている共働き、フルタイムの共働きというふうに考えていただければ、フルタイム、共働きなので、もう家事とか育児も均等化しているだろうというふうに思いきや、圧倒的な格差がまだあるということなんですね。同じぐらい働いていても、やっぱり男性は家事、育児参加しません。見ていただければ分かるんですけど、食事の用意に関してはもう六六%の方がほとんど行わないという、男性はですよね、後片付けに関しても半数、子供の身の回りの世話に関しては、若干これは低くなりますが、それでもまだまだ四割近くですよね、ほとんどしていないという方がいらっしゃるということですね。
ということで、これもうほぼ時間が来ましたけど、十五ページ目です。
有配偶女性の継続的な就業を阻む壁、今回、三つポイントをお話ししてきました。
一つは雇用システムです。この雇用システムはなかなか行政が変えることが難しいです。民間の企業が蓄積してきたものですよね。難しいんですけど、ただ、やはり、長期的、総合的、持続的に変えていく必要があるのかなと思います。この雇用システム、どうしても、家のことをやってくれる男性じゃないと活躍できないような、そういう働き方ですよね。こういう雇用に関して、これはなかなかお金を使えば変わるというものではないので、仕組みを変える必要があります。この仕組みに関して変えていくという機運を、これやっぱり簡単に言うと働き方改革になるんですけど、働き方改革なんだけど、仕組みについても少し手当てするということですね、それが必要になる。
それから、制度もそうですね。こちらはまさに行政ですよね。政府が設定している制度ですので、こちらも、今のところは、基本やっぱり男性稼ぎ手モデルのときにつくられた制度にパッチを当てている状態なんですね。パッチを当てるんじゃなくて、もうちょっと根本的なところで変えていく、そういうことが男女賃金格差、あるいは女性の長期的な継続就業においては必要になってくる、制度改革が必要になってくるということです。
それから、家庭ももちろんそうだと思います。家庭に関してはなかなか行政が介入するのは難しいですけど、ただ、先ほど山口先生が報告されたように、制度が波及する効果というのはもちろんありますので、こちらはやれることはあるかなと思います。
ただ、最重要としてはやっぱり働き方ですよね、雇用システムの改革というのが重視できるのかなと思います。
最後のスライドです。十六ページ目になります。
有配偶女性の継続的キャリアの問題というのは、女性が結婚できていることが出発点になっているんですけど、ただし、かなり多くの方、男性についてはもちろんそうですけど、出発点に着いていない人が増加しているということも意識しておく必要があるのかなと思います。
これは、もう無配偶であろうが有配偶であろうが必要になってくるのは、若者が五年後、十年後の生活の安定が予期できる社会というのが私は大事になってくるかなと思います。十年後に、ああ、自分は安心して働けているんだなという実感が今の若い人は非常に難しいですね、そういう実感を得るのが難しい状態です。これを改善していけば未婚化も緩和できるでしょうし、結婚してからの働き方にもプラスの影響があるのかなと思います。
具体的には、例えば不本意な転居ですよね、転勤とか、転勤というのは非常に日本独特の慣習ですので、これまだまだ改善する余地があります。それから時間外労働、それから賃金率ですよね、が現状の非正規雇用より高い仕事の就業を増やすことが大事になってくるかなと思います。
可能ならば、今回、実は地元と都市部の話ができなかったんですけど、地元に居続けながら上記のような仕事が継続できる環境があるといろんな点で望ましい効果があるのかなと思いますが、ちょっとこの点に関しては余りお話ができなかったので、また後ほど時間があればということでお願いしたいと思います。
私の報告は以上です。