山本隆三の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(山本隆三君) それでは、私から御説明をさせていただきたいと思います。(資料映写)
私の説明は、まず、エネルギーの安全保障という問題は歴史的にどういうふうな扱われ方をしてきたのかというお話から進めたいというふうに思います。
これは、産業革命以来のエネルギー安全保障というのを簡単に表にしておりますけれども、図にしておりますけれども、産業革命までは、我々人類使っていたエネルギーというのは、バイオマスと言っていますけれども、まあいわゆる薪とかまきですね。それから水、水車ですよね。それから風、これは帆船とかそういうふうなものですね。で、一番使っていましたのは化学エネルギー、と言っても何のことかよく分かりませんけれども、食べ物です。人間とか牛とか馬が食べ物を食べて、その力でエネルギーにしていたというのがありますね。
ところが、産業革命が始まってから石炭の利用というのが本格的に始まります。我々はよく、十九世紀は石炭の世代、二十世紀は石油の世代というふうに言うんですけれども、実は石炭の時代というのは二十世紀の半ば以降まで続いていました。一九五〇年代まで石炭がエネルギーの主力だったんですね。
ところが、石油は軍事的にどうしても必要になるわけですね。それは、第一次世界大戦で石油を使った船艦が出てきて、石炭をたいていた船艦よりはるかにスピードが出るとか、あるいは航空機が登場した、戦車が登場した、こういうことで石油の調達というのは軍事的には大変な問題だったんですけれども、実は一九五〇年の、この一次エネルギーというのは電気ですとかガソリンとかに転換される前の素のエネルギーですけれども、それを見ますと、実は日本のエネルギー供給の八五%は石炭でした。一一%ぐらいは水力がありました。ということは、日本はほとんどエネルギーを自給していた国だったわけですね。
ヨーロッパを見ても、実は日本とほとんど同じでした。石油の消費量が日本よりちょっと多いんですけれども、ただ、一九五〇年の世界を見ると、石油と天然ガスの消費量が結構あるんですね。これはなぜかというと、一九五〇年、世界のエネルギーの半分近くはアメリカ一か国が使っていたんです。アメリカは戦前から石油とか天然ガスを民間で利用していたわけですね。戦前から天然ガスのパイプラインを国内に引いていた国なんですね。世界全体で見ると、アメリカの影響で石油とか天然ガスが多いんですけれども、まあアメリカ以外の国、アメリカも含め、石炭に依存しているということが続いていたわけです。
ところが、五〇年代、六〇年代から七〇年代にかけて経済が急激に成長します。これは、日本はその典型ですけれども、ヨーロッパも戦後復興で経済成長が著しくなるわけですね。そこで必要になるのはエネルギーで、石炭は相反して一九六〇年頃をピークに、日本ですと、一九六〇年から一九六一年にかけて、非常に有名な三井三池大争議という総資本対総労働の対決と言われる事件がありました。あの頃をピークに、日本の石炭生産は急坂を転げ落ちるように落ちていきます。その石炭生産を埋めるのが、非常に安価で中東から豊富に出てきた石油だったわけですね。
これは日本とヨーロッパとアメリカの石油の輸入量を示していますけど、日本は、一九五〇年、石油の輸入というのはほとんどありません。七三年になると、とんでもない量を輸入しています。一九七三年というのは、御存じのとおり、五十一年前ですけれども、第一次オイルショックというのが起こって、まあこれは第四次中東戦争を契機に起こるわけですけれども、石油の値段が四倍になる、それから、石油を売らないぞというふうな脅しも出てくるということですね。世界は、これは大変なことになったということになるわけです。
一九七三年、実は日本の一次エネルギー供給の七五%以上は石油でした。もう石油にどっぷりつかっている。ということは、一九七三年ぐらいまで、日本を含め世界のほとんどの国はエネルギー安全保障なんというのは考えていなかったと。それはなぜかというと、最初は国内に豊富にある石炭で自給率一〇〇%ぐらいで賄っていたのが、中東にある石油は安価でいつでも出てくると、みんなそういうふうに思っていたわけですね。ところが、七三年に石油が大変なことになって、それから世界は何を始めるかというと、エネルギーの分散を始めます。
分散の一つはですね、ごめんなさい、その前に自給率見た方がいいですね。一九七三年、日本は自給率もう一〇%切っています。一九五〇年には自給率九六%の国が、石油に依存するようになってから自給率はあっという間に落ちるわけですね。でも、不安は感じていなかったんですけれども、オイルショックが起こって、日本を始め主要国はみんな不安になるわけです。
エネルギー供給の分散を始めて、二〇二一年見ますと、非常にうまく分散が進んでいます。日本は石油、石炭、天然ガスですね。それから、世界全体もそういうふうに分散が進んでいるということなんですけれども、ここでちょっと見ていただきたいのは、世界は依然として化石燃料に依存しているんです。世界のエネルギー供給の八割は二酸化炭素を排出する化石燃料です。これをあと三十年ぐらいで本当になくすることができるのかということは大きな問題ですね。
こういうふうに分散ができて、しめしめとみんな思っていたところに出てきたのがロシアということなんですね。どういうことかというと、世界の化石燃料生産、それから輸出。世界で石炭も天然ガスも石油も全部自給できる国というのは、多分アメリカとロシアしかないんですね。このアメリカとロシアは二大エネルギー大国なんですけれども、後でお話しするように、実は中国もエネルギー大国になってきているんですけれども、それは後でお話しします。
このエネルギーの生産を見ると、確かに石炭も天然ガスも石油もアメリカとロシアが大変大きな生産を持っているんですけれども、輸出を見ると、アメリカは国内消費が多いものですから、ロシアが、特に天然ガスは世界の輸出量の二〇%を持つ、石炭ですと世界の輸出量の一八%ぐらい持つ。要は、化石燃料の輸出で世界一になった国はロシアなんですね。
日本はロシアから輸入していますけれども、それほど大きな、石油にせよ、石炭にせよ、輸入量ではありませんでした。ロシアにどっぷり輸入を依存してしまったのがヨーロッパです。これは、ウクライナの戦争が始まる前の二〇二〇年、二一年のシェアですけれども、ヨーロッパは天然ガスの生産も減って輸入依存率が九割ぐらいになっていたんですけれども、そのうちの半分近くはロシアから買っていたんですね。ということは、消費量の四割ぐらいをロシアに依存していたわけです。石炭は消費量の四分の一ぐらいをやっぱりロシアに依存している。原油は、輸入量、ほとんど輸入ですけれども、やはり四分の一ぐらいをロシアに依存している。こういう状態で、ロシア依存が非常に高まっていたところに戦争が起こったということですね。
戦争が二〇二二年二月の二十四日に起こります。それ以前から、ロシアは実はヨーロッパ向け天然ガス輸出量を減らします。これはなぜかというと、輸出量を減らすと値段が上がるからです。値段を上げるということは、ロシアの収入は増えたんですね。これは、ロシアの収入を増やす目的は、多分戦争を始めるために戦費をためようと思ったと。
そういうことをやっているうちに戦争を始めるわけですけれども、戦争が始まると、ヨーロッパはロシアから購入する化石燃料を減らそうとするわけです。一方、ロシアはヨーロッパを脅すためにもっと減らそうと。要は、エネルギーを切らしてヨーロッパが音を上げるのを待つという戦略に出るわけですね。それがこれに表れています。
こういうことをやると何が起こるか。化石燃料の値段が高騰します。その結果、ヨーロッパの主要国の電気代はとんでもないことになります。
これは消費者物価指数から取っているイタリア、ドイツ、フランスの電気料金ですけれども、イタリアの電気料金、これは政府補助を行った後ですけれども四倍になっています。月一万円の電気料金が四万になるわけですね。これは大変な問題ですね。じゃ、ドイツ、フランスは余り大したことなかったのかというと、大したことあるんですね。依然、ドイツ、フランスの電気料金はやっぱり五〇%ぐらい上がったままということで、非常に大きなエネルギー価格の高騰ということを、高騰がヨーロッパを襲うわけです。
なぜイタリアの電気料金がこんなに上がったのか。それはイタリアの電源構成です。実に電源の半分を天然ガスに依存していた。イギリスも天然ガス依存が高いんですけど、イギリスは、実は北海で国内需要の半分以上を掘っています。それほど輸入に依存していなかったということなんですね。で、イタリアは、天然ガス価格の高騰の影響をもろ受けると、こうなるわけです。
日本なんですけど、日本を見ると、天然ガスも石炭もヨーロッパの国以上に依存して、化石燃料依存が非常に高いわけです。じゃ、日本の電気代はなぜ三割上昇で済んだのか。それは化石燃料価格の上昇率が違うということなんです。
ヨーロッパの天然ガス価格、この黄色い線ですけど、見ていただくとお分かりのとおりですね、コロナ禍の頃から比べると、天然ガス価格は四十倍とか五十倍になっています。これは大変な問題ですね。それに対して、日本のLNG、日本の液化天然ガスの価格はそれほど上がっていません。これには理由があって、ヨーロッパは二〇〇〇年代の初めに、天然ガスを安く買おうと思って、それまで長期契約で買っていた天然ガスをその都度その都度値段を決めるスポット契約に変えていくんですね。日本はスポット契約が依然二、三割はありますけれども、長期契約で七割から八割を買っている。長期契約の値段というのは、一応原油価格を基に決まることになっています。そうすると、ヨーロッパはそれがなかったものですから、ロシアのおかげで天然ガスが価格が高騰したら、それを買わざるを得なかったということですね。
石炭の値段ももう天然ガスに釣られて上がってますけど、これはヨーロッパが天然ガスが余りに上がり始めたので、天然ガスをやめて石炭火力をたき増したんですね。で、石炭の値段が史上最高まで上がりました。これも十倍ぐらいまで上がっているということですね。この石炭の価格上昇の影響は日本の電気料金にもあったわけです。
もう一つ我々注目しなきゃいけないのは、実は脱炭素、脱石炭、あるいはコロナ禍、こういうふうなものも化石燃料価格、電気料金の上昇に大きな影響を与えたということです。
これは、世界の大手エネルギー企業と書いていますけれど、基本的には石油と天然ガス生産企業の資本支出額、投資額の推移ですね。脱炭素と言われて、こういう大手は投資額を絞り始めるんです。そこに、コロナ禍になって燃料消費量があっという間に落ちます。飛行機が飛ばなくなる、車乗らなくなるということで燃料消費は落ちるので、この大手は更に生産を絞ります。それがなかなか、やっぱり需要が回復しても回復しなかったんですね。
例えば、アメリカの原油生産量を見ますと、ようやく二〇一九年のレベルに回復したのが去年です。ということで、供給もこういう影響で減ったということも化石燃料価格の上昇に大きな影響を与えたと思います。
今、G7国は全て脱ロシア、脱化石燃料を図らなきゃいけないということです。その一つの方策は再生可能エネルギーを増やすと。これは去年のG7の首脳宣言ですけれども、洋上風力を七、八倍、太陽光を三倍ぐらいにするということですね。
もう一つあるのが原子力。これはヨーロッパで最近あった原子力の動きを書いておりますけれども、まあ多くの国が原子力発電をやりたいと。ヨーロッパでは、フランスが中心になって原子力同盟というのが去年発足しましたけれども、EU二十七か国のうち十四か国が参加しています。イタリアがオブザーバー参加ということになっています。イギリスもEU外でオブザーバー参加。なぜこういうふうに原子力が注目されるようになったかというと、その一つの理由は当然、脱炭素、脱ロシアということにあるんですけれども、もう一つ見逃せないのは大きな世論の変化だと思います。
プーチン大統領が戦争を始める前、EU二十七か国では原子力反対というのが四一%いたんですね。今それがどれぐらいになっているか。一五%です。EU内で一番原子力反対が多かったドイツは脱原発支持が六五%いました。これはヨーロッパではずば抜けた数字です。今、ドイツで脱原発支持は二〇%です。電気料金が上がる、暖房ができないかもしれないとなると、非常に皆さん心配しているということですね。
こういう中でインフレが起こります。日本も消費者物価が上がっていますけど、日本はヨーロッパに比べると大したことありません。インフレの影響というのを、我々これから安全保障上も考えなきゃいけない。どういうことかというと、これ発電設備に必要な鉱物量なんですね。再生可能エネルギーが必要とする鉱物量というのは大変大きいものがあります。それから、コンクリートとかセメント、コンクリート、それから鉄鋼、こういうふうなものも、再生可能エネルギーというのは大変大きな資材を必要とするんですね。資材を必要とするということは、インフレの影響を大変大きく受けるということになります。もう一つ大事なのが、こういうふうな資材の基になる鉱物を供給している国は中国ということなんですね。脱ロシアをやった結果、中国依存になるという大きな問題を我々抱えるかもしれません。
こういう中で、日本は二〇三〇年の脱炭素目標、二〇五〇年脱炭素に向けて、二〇三〇年の一次エネルギー構成、それから電源構成で化石燃料の使用を減らそうという目標を立てています。この再生可能エネルギーが増えるというのは悪いことではないんですけれども、例えばこういうふうに自給率が今、日本は増えていますけれども、これは再生可能エネルギーが三%から四%寄与しているわけですね。
ところが、電力供給は不安定化します。なぜか。これは、夏はいいんですね、電力需要と一致しています。冬は太陽光発電がなくなった後に電力需要のピークが夕方に来ています。これは発電設備がないと停電するんですね。毎年のように、冬、関東地区停電危機と言われるのは発電設備が減ってきたからです。これは、二〇一六年に電力市場完全自由化システム改革を行った結果、もうからない石油火力を電力会社は閉めざるを得ない、そのために石油火力が減ってきています。そうすると、太陽光がなくなった後、電力を供給する設備が不足すると、こういうことになるわけですね。
それと、もう一つの問題は再生可能エネルギー、コストがやっぱり高いと。さっき、二〇三〇年の資料で再生可能エネルギーが大変増えるとありましたけれども、二〇三〇年、例えば大型太陽光を作るときのコストは、第六次エネルギー基本計画の参考資料で十二・二円とされています。ところが、空間的に再生可能エネルギーを遠いところから運ばなきゃいけない。あるいは、時間的に、さっきありました、夕方電気がないときに何とかしなきゃいけない。そういう問題を考えると、統合費用という費用が必要になって、参考資料では大規模太陽光のコストは十九・九円になっています。これは統合費用がそれだけ掛かるということですね。
こういう設備を導入すると、また中国依存という問題が出てきます。これは、太陽光設備を導入している国、モジュールを作っている国は中国が圧倒的にシェアを持っています。世界の四分の三近く。洋上風力設備、これから日本政府は力を入れると言っています。今、世界一は中国、設備を造っているのは六割から七割、もはや中国です。ということで、我々、中国依存が増えてくるなという問題があります。
最後に原子力の話を少ししたいんですけど、日本で原子力発電、これだけ動いています。その結果、地域別の電気料金を見ると、原子力発電が動いている九州、関西がやはりずば抜けて安くなっている。原子力発電については、新設するとコストが高いとかいろんな問題が指摘されていますけれども、考えなきゃいけないことは、世界で原子力発電を安く、工期、工費を予定どおり造っている国があるんですね。中国、ロシア、韓国です。
なぜアメリカとかフランスが造れなくなったのか。それは、建設が二十年あるいは三十年中断しているんですね。で、人材がいなくなる、技術の継承ができなくなる。で、発電所を造ろうとするともうとんでもないことになって、工期も工費も間に合わない。それに対して、やっぱり中国であれば、既に原子力発電所五十五基あります。今日現在、中国で建設されている原子力発電所は二十六基あるんです。フランスが手間取ってフィンランドでやっと動き始めましたヨーロッパ型加圧原子炉というのは、ヨーロッパより先に中国がさっさと造って、中国というのはフランスとアメリカの技術で原子力発電所を造っていますのでもう運転開始しているんですね。
そういうふうなこともあって、我々、将来のこと考えると、多様な電源を依然維持する必要があります。これは、いざというときに一つの電源に頼っているととんでもないことになる。ただ、その多様な電源を維持する中で、コストの問題、脱炭素の問題を考えながら維持しなければいけないというふうなことなんだろうと思います。ここを最後よく考えてほしいなということで、私からの説明を終わらせていただきます。
ありがとうございました。