秋元圭吾の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(秋元圭吾君) 地球環境産業技術研究機構、RITEの秋元でございます。(資料映写)
本日、このような機会にお招きいただきまして、ありがとうございます。
時間も限られておりますので、私からは、本日、カーボンニュートラル実現への展望ということで、理想と現実のギャップを理解しつつ柔軟性を有した実効性ある対策をという副題を付けさせていただいております。
早速始めさせていただきます。
まず、世界主要国のCO2排出量の推移でございます。
御承知かと思いますが、まず左側のグラフでございますが、世界のCO2排出量、全体の基調としては増大を続けているということでございます。若干下がっている部分がございますが、このときは世界のGDPも相当下がったということでございまして、GDPとCO2排出量のカップリングは引き続き続いているという状況でございます。
右側のグラフ、御覧ください。
主要先進国と途上国ということで記載がされていますが、米国、そして欧州、下がってきております。また、日本においても、ここに来てCO2が順調に下がってきているということでございますが、一方、上のグラフ、もう一回、目を転じていただきますと、中国、その他、インド、ほか途上国が猛烈に排出を伸ばしてきていると。結果として見ると、世界のCO2排出量は減るようにはなっていないということでございます。
続いてこちらでございますが、一人当たりCO2排出量で、生産ベースと消費ベースということで書いております。
生産ベース排出量というのは、その国の煙突から出てきているCO2排出量をカウントしたもので、通常の国家の排出量でございますが、消費ベースCO2という数え方もありまして、これは、例えば中国で鉄を造ると、中国の鉄を欧州が輸入して使ったとすると、それを欧州側に付け替えてカウントするというものでございます。
そうしますと、この赤いグラフの方が消費ベースCO2で、青いグラフが生産ベースCO2でございますが、若干というか、特に欧米中心に見え方が大分違ってくるということでございます。日本も消費ベースCO2の排出量の方が多いわけでございますが、先進国、欧米でとりわけ、例えばスイスであるとかスウェーデン、フランスと、英国もそうでございますが、消費ベースCO2排出量の方がかなり多い国が多いということでございます。
これは、エネルギー多消費産業、CO2原単位の高い産業が国内から海外に移転して、物の形で代わりに買っていると。要は、代わりにサービス業、例えばコンサル業であるとか保険、金融といった業界が強くなってきていて、そこでGDPを稼いでいるという構造になっているためということでございます。
よって、申し上げたいのは、見かけのCO2排出量にだまされてはいけないということでございます。我々、考えないといけないのは、グローバルにCO2をどう削減するのかということが重要なわけでございますので、そういう視点で何をすべきなのかということを考える必要があるということでございます。
続いて、横軸に世界のGDP、縦軸に世界の発電電力量を取ったものでございますが、明確に強い線形の相関関係がございます。GDPが増えるときには必ず発電電力量の増大が伴っていると。逆に言うと、発電電力量の増大なくして経済は発展していないというのがこれまででございます。
これは、世界全体ではこういうことが起こっていると。先ほど申しましたが、主要先進国に限って見ると、日本もそうでございますが、若干これは変わりつつあるわけでございますが、ただ、それは、先ほど申しましたように、エネルギー多消費産業、電力多消費産業が国内から海外に移転しているだけということでございまして、世界全体で見ると非常に強い相関関係が引き続き見られているということでございます。エネルギー、特に電力というのは非常に重要な財だということでございます。
続いてこちらのグラフでございますが、世界のCO2排出量、二〇一九年実績値と将来の展望ということで、気候変動に関する政府間パネル、IPCCが二〇〇七年に出した報告書と二〇一四年に出した報告書、これ最新の報告書は二〇二二から二三年ぐらいに出ているわけでございますが、少し古いものをあえてここでは記載しています。過去にIPCCがCO2排出量がどう推移すると見込んでいたのかということでございます。
左上のグラフは二〇〇七年のものでございますが、このときに、ベースライン、ベースラインといいますのは、仮に温暖化対策を世界が取らないとした場合にどうCO2排出が推移するだろうということを推計していたものでございます。見て分かるように、我々、今二〇一九年の数字をプロットしておりますが、そのときの予想の最も高いぐらいに来ているということでございます。これだけ温暖化対策を世界で取り、これだけお金を掛けてきたのに、当時予想していた最悪ケースぐらいにしか位置していないということでございます。これも主要先進国から途上国に排出が移転している結果でございます。先進国の方がCO2原単位が小さいわけでございまして、途上国はCO2原単位が高いと、そういうことが、移転が起こるために、予想していた以上に世界のCO2排出量は増えてしまっているということでございます。
続いてこちらでございますが、皆様御承知のとおり、パリ協定の下で、二〇三〇年、NDC、国別貢献という目標を出しているわけでございますが、今NDCを世界で積み上げたとしても、パリ協定の長期目標である二度目標、一・五度目標とは大きなギャップがあるというのが左側のグラフでございます。右下のグラフは世界エネルギー機関の見通しでございますが、今目標として出しているものを、政策的なものを積み上げてもこのブルーのラインぐらいしか行かないということでございますし、仮にNDCが達成したとしても、大体、最悪ケースで行くとプラス二・九度ぐらいになるんではないかということでございます。
一・五度目標という目標を掲げて取り組むのはいいわけでございますが、ただ、非常に大きなギャップがあり、このギャップを埋めることは、我々、世界で見ると、中国、インドといったような非常に大きい排出国が大幅な削減をしない限りこのギャップは埋まらないというふうに見られるわけでございます。
こちら、各国目標はいろいろな目標を出しているわけでございます。日本においては、御承知のように、二〇一三年比で、一三年度比で四六%減ということでございますが、米国は二〇〇五年比五〇から五二%等でございます。中国においてはCO2原単位目標で出しているわけでございます。原単位目標というのはGDPで割った数字ということでございますので、GDPが成長すれば自動的に減っていくような数字感が出てくるということでございます。
目標の出し方がばらばらでございますので、比較が難しいので、ここではCO2の限界削減費用という費用で比較したというものでございます。限界削減費用という概念でございますが、安い対策からなるべく実施するのが全体の費用対効果が高いわけでございますので、安い対策から順番に積み上げていって、その各国の排出削減目標を最後一トン削減するのに達成するための費用ということでございまして、一般的にはカーボンプライスに相当するという数字でございます。
これで評価しますと、不確実性があることは御承知おきいただきたいと思いますが、モデルで推計したものでございます。日本においては四百五十ドルぐらいと、トンCO2当たり、一トン削減するのに、最後、四六%を達成するのに四百五十ドルぐらい掛かるだろうという推計をしているわけでございます。
そのほか、英国、EU、米国、スイス等も非常に高い炭素プライスでございます、限界削減費用でございます。この辺り、差はあるとはいってもモデルの不確実性がございますので、ここに明確な差があるかどうかということに関しては私も自信を持って主張できるものではございませんが、いずれにしても日本は相当高い限界削減費用の目標を出しているということでございます。
一方、下に目を転じていただきますと、中国は三十七ドルということでございまして、インド等においてはゼロドルということでございます。これはどういうことかといいますと、原単位目標等を出していますので、経済が自動的に見通しどおりGDPが成長してくれると出している目標は自動的に達成できるというものでございまして、CO2を無理に削減するような努力をすることなしに目標を達成できるというものでございます。
これだけ限界削減費用に差があるということは、限界削減費用の高い国から低い国にエネルギー多消費産業、CO2原単位の高い産業がますますリーケージしていくリスクが高いということでございます。そうすると、グローバルではCO2はますます減らないということになりかねないということでございますので、ここをどう調和していくのかということは引き続き重要な課題でございますが、非常に難しい課題だと。
これだけ気候変動問題に取り組んでいますが、うまくいっていないということでございますし、ますます今の状況でいくと分断された世界になっている中で、これまではまだ東西冷戦終結の下、世界協調の時代だったわけでございますが、ますます今の時代になって難しくなってきているということでございます。
続いてこちら、IPCCの報告書でございますが、そういう中、次期NDC、二〇三五年目標の提出が求められてきているという状況でございますが、COP28の決定では、IPCCのこの、ちょっと数が多くて申し訳ございませんが、C1というシナリオが一・五度を超えないシナリオということでございまして、しかもオーバーシュートをしないと、気温がオーバーシュートせずに一・五度で安定化していくというシナリオでございますが、このときに、二〇三五年に世界で求められる数字として二〇三五年六〇%減という数字が出てきて、これがCOP28の決定、GSTの、グローバルストックテークの決定でも言及されたわけでございますが、実際にはなかなか、一・五度、もう既にほぼ一・五度に達しているわけでございますので、現実にはこの一・五度を達成するというのは難しいだろうというふうに見られるわけでございます。しかも、IPCCのシナリオ評価でも、左側は数でございますが、このシナリオはこの中では最も少ない数になっていると、それぐらい難しいというふうに見られているわけでございます。
一方で、一・五度でも若干気温がオーバーシュートしていくと、例えば一・七度ぐらいになって二一〇〇年に一・五度に戻ってくるというのがこのC2のシナリオになりますが、こうなりますと二〇三五年の排出量は少し緩やかになってきて、恐らく、具体的な三五年の数字はIPCCは記載しておりませんが、四〇%台ぐらいになってくるだろうということで大分見え方が違ってくるということでございます。そういうことも意識しながら今後の気候変動政策を考えていく必要があるかと思っています。
他方、長期的に考えますと、やはり気候変動は非常に大きなリスクがございますので、気温の安定化ということは重要でございますので、そうすると、カーボンニュートラルの達成ということはいずれ目指していくべき道であるわけでございます。そのときに、どういった対策でこれを実現し得るのかというオプションをここで整理しているところでございます。
一番上でございますが、省エネルギーでございます。相変わらず省エネルギーは一丁目一番地だというふうに考えています。ここをしっかりやっていくということが重要でございますが、ただ、日本の場合は個別の企業、特にエネルギー多消費産業においては相当もうエネルギー消費量を絞っておりますので、省エネが相当徹底しておりますのでなかなか難しいということでございます。
ここの、ただ、オプションは、もう少し社会全体でエネルギー構造を変えていくとか産業構造を変えていくという手段はあるだろうというふうに考えているところでございます。例えば、シェアリング経済であるとかサーキュラー経済というのはこれまではなかなか難しかったわけでございますが、デジタル経済、デジタルを使って、DXを使ってそれを実現していくという道はあるわけでございますので、そういったものをしっかり追求していくということは重要だというふうに思います。
残るエネルギーでございますが、原則三つしかなくて、原子力か再エネか、化石燃料を使うにしても、CO2を回収して貯留するというCCSを使うかという原則三つしかございません。これをどう組み合わせていくのかということでございますし、それぞれのエネルギーに関しては一長一短あって万能なものは一切ないということでございますので、それをどう組み合わせていくのかということが大事だと思っています。
ただ、三つしかないと申し上げましたが、この絵は若干複雑に描いておりまして、一番下、CCSなしの化石燃料という部分も残っておりまして、こういったものが残るケースもあり得るということでございます。カーボンニュートラルというのは、脱炭素ではなくてカーボンニュートラルでございますので、オフセット手段が存在しているということでございまして、オフセット手段としては、植林であるとかブルーカーボンであるとか、その上に書いていますBECCS、DACCSといった手段がございます。
BECCS、DACCSというのは聞き慣れないかもしれませんが、BECCSはバイオエネルギーを使うんですが、出てくるCO2を回収して貯留するので負の排出になるというものでございますし、DACCSは大気中のCO2を直接工学的に回収して地下に埋めるというものでございます。もちろん、いろいろな、コストの問題等、難しい問題があるわけでございますが、カーボンニュートラルを達成しようと思うと、こういったものも含めて考えていかないといけないということだと思っています。
ただ、回収したCO2は地下に長期的に埋めるという必要がございますが、日本国内でどれぐらい埋めれるのかという課題はあるわけでございまして、埋め切れない場合は回収したCO2を海外に輸送して貯留するという手段もあるわけでございます。
もう一つ、真ん中辺りに書いていますが、あと、原子力、再エネは必要なわけでございますけれども、真ん中辺りに、もし国内で再エネが十分使えないと、若しくは高いと、若しくはCCSについても国内ではなかなか埋める余地が少ないということであれば、海外の再エネ若しくは海外のCO2の貯留層を使うという手段がございまして、この場合、再エネ由来の場合はグリーン水素若しくはグリーンアンモニアに変えると。これは、水素に窒素を付加すればアンモニアに変わるわけでございまして、より利便性を増すといったこともございますし、CO2を合成してEメタンにするとかEフューエルにするという手段もあるわけでございますので、こういったものを組み合わせていくということが必要でございます。
また、CCSについても、ブルー水素系、ブルーアンモニアという手段もございますので、これもカーボンニュートラルの手段になるわけでございますので、いずれにしても、ここに記載のものをどう組み合わせてロバストにし、リスクを分散させながらCO2を減らしていくのかということを考える必要があるということでございます。
こちら、水素系エネルギーについていろいろありますということを書いておりますが、ちょっと時間の関係上飛ばします。
こちらも同様でございますが、少しイメージとして、自動車燃料のカーボンニュートラル化ということで書いています。カーボンニュートラルというと純電気自動車一辺倒のような印象を持たれる方もいらっしゃいますが、それは一つの重要なオプションで、電気自動車化というのは大変重要でございますが、ただ、オプションとして見ますと、ハイブリッド車でなるべく下げておいて、一部、先ほど申しました負の排出技術というものがありますので、それでオフセットしてカーボンニュートラルを達成するというのもございますし、プラグインハイブリッドで削減していって、最後オフセットするという手段もございます。あとは、合成燃料を使うと、Eフューエルを使うという手段もございますので、いずれにしても、いろいろな手段がありますので、なるべく費用対効果の高い形を追求していくということが重要かと思っています。
こちら、IPCCの最新の報告書でございますが、ここで申し上げたいのは、カーボンニュートラルという手段は全部の各部門の排出量を全部ゼロにするというだけではなくていろいろな手段がありますよというのが左で示しているものでございまして、これはカーボンニュートラルを達成するときに残余の部門別排出量とそれをオフセットするシナリオということで、典型的な五つのシナリオを記載しているわけでございます。
真ん中にあるLDと書いているシナリオがございますが、これがローディマンドというシナリオでございまして、このシナリオで行くとかなりCO2排出量を減らしていて、オフセットする部分の下に出ている部分はグリーン部分、これは植林でございますが、植林だけでオフセットできているという絵姿で、非常に美しい絵姿でございますが、この姿は実はIPCCのシナリオの中ではほとんどないと、これ唯一と言ってもいいぐらいのシナリオでございまして、ほかのシナリオは、なかなかそれは難しいので残余の排出量を認めておいて負の排出でオフセットすると、それはBECCSであるとかDACCSであるとか植林といったものを混ぜ込んでいくということを記載しているわけでございます。
一方、国際エネルギー機関、IEAもネットゼロエミッションということで示しているわけでございまして、よくこれもCOP等で参照されたり、今金融機関がよく参照したりしているわけでございますが、実はIEAのシナリオというのはかなり極端で、先ほど申しましたLDのシナリオに近いということで、見て分かりますように、各部門の排出量が二〇五〇年でほぼゼロになっているということで、オフセットの手段が非常に小さいコントリビューションになっているということでございます。
ただ、繰り返しでございますが、これがスタンダードなシナリオということはなくて、実はIPCC、気候変動の科学者が集まっているシナリオ分析ではむしろこれは極端なケースでございますので、もう少しいろいろ幅を持って検討するということが重要ではないかというふうに考えています。ちなみに、ただ、国際エネルギー機関、IEAは非常に優秀な分析官を有していますので、そういう面で世界のエネルギー情勢をよく見ているということでもあるわけでございます。
これが、二〇二一年にネットゼロエミッションのシナリオを出したときと、今回、二〇二三年版ということで更新版が出されたわけでございますが、そのときの比較をしたものでございます。要は、二〇二一年から二三年にかけて国際的なエネルギーの情勢がどう変わってきているのかということをちょっと反映したような絵になっているかと思います。
見ていただきますと、上に出ている部分が、以前よりも目標、シナリオとしての量を増やした技術でございます。下に出ているのは減らした技術ということでございますが、上に出ている部分でいきますと、オレンジ色でございますが、太陽光発電でございます。非常に多く増やしているということでございます。これは、この間も順調に太陽光発電が世界で展開してきたということを反映したものでございます。もう一つは原子力でございます。原子力については、二〇二一年の見通しよりも二〇二三年を上積みしているわけでございます。この二年間で世界的な原子力の見方が大きく変わりつつあるということを反映したものでございまして、そういった見方をIEAがしているということでございます。
逆に減らしたものが下に出ているわけでございますが、一番大きいのは風力でございます。風力発電も順調に増えてはきているわけでございますが、思ったよりは増えてきていないと。ここに来て足踏み状態になっているということでございまして、そういうものが反映されているということでございます。あとは、水素、アンモニア、そしてCCSというところに関しては、なかなか普及が思ったように広がってきていないということを反映して下方修正したというようなところでございます。
原子力についてはもう少し詳細にということで、こちらの絵でございますが、左側が設備容量、右側が新規の導入量という見通しでございますが、IEA、NZE、二〇五〇年にゼロエミッションを達成するためにこれぐらいの原子力は最低必要だというような見通しを出しているわけでございますが、アドバンストエコノミーズと書いている水色の部分が主要先進国でございますが、設備容量としては若干微増から横ばいというところでございますが、右側見ていただきますと、今後新設という部分では主要先進国においてもかなり戻ってくるんではないかという見通しを出しているわけでございます。これまでは中国等の増大というものは見通していたわけでございますが、主要先進国においても、カーボンニュートラル対応で原子力の重要性というものが増してきているという反映でございます。
再エネでございます。再エネは非常に、先ほども申しましたように、太陽光、順調にコストが下がってきて非常に喜ばしい状況でございまして、左側でございますが、グレーの帯があるところが化石燃料発電の平均単価の帯でございますが、太陽光発電、風力共にこれを下回る水準になってきているということでございまして、もう競合的、競争的な電源ということは間違いないわけでございます。
ただ、右側見ていただきますと、日本と世界とのギャップということでございまして、太陽光、風力共にギャップがまだまだ大きいと、倍以上するというような状況でございます。これは自然環境の条件も重なっているわけでございますので、どんなに努力をしてもこれを超えることができない部分があるというふうに考えています。
このギャップが残るということは、先ほど御説明しましたように、海外の再エネを使って水素やアンモニア若しくは合成燃料系に変えて日本に持ってきた方が経済効率的な可能性もあるということでございまして、よって、日本としては、そういうオプションも含めてトータルで全体最適を考えていくということが何より重要だというふうに考えています。
再エネ、今後も拡大していくということは必須でございますが、ただ、日本の場合、系統が非常に細い形になっていますので、欧州、米国等と一緒の議論ができるわけではございません。
これ、再エネ五〇%のときの試算ということでございますが、系統増強等に六から七兆円掛かるということでございます。こういったものを必要な投資だということは私も理解するわけでございますが、ただ、余りにこれを拡大し過ぎると、特に再エネの場合は設備利用率が非常に低いので、そのために系統を増強してしまうと、要は高速道路に車が走っていないものを、道路を造るようなものになってしまいますので、非常に効率が悪くなってしまうということで、ちゃんと費用便益分析をしっかりした上で必要な増強をしていくということが重要だというふうに考えています。
IPCCの報告書でもポテンシャルということを記載していまして、ここで、ちょっとグラフ見にくいんですが、一番上に太陽光、風力ということがあって、ブルーのところが負のコストで、削減できるポテンシャルということで書かれていて、再エネかなり安いというメッセージがあるわけでございますが、ただ、これは単独の再エネ、太陽光、風力単独のときのコストでありまして、系統を連系したときのコストはここには含まれていないわけでございます。とりわけ日本においては、系統の増強等ですね、系統を連系したときに掛かる統合費用と呼ばれるものがかなり大きく掛かってくるということでございますので、こういう情報は重要ではございますが、日本でどういうコストが本当に掛かってくるのかということをよく理解しながら適正な展開を図っていくということが重要だというふうに考えています。
ちょっと時間の関係上、少し飛ばさせていただいて、続いてこちらのページでございます。
済みません、ページ番号がちょっと見えにくいんですが、日本の二〇五〇年の部門別・技術別の排出削減ポテンシャル・コストということで、これは我々の研究機関が推計したものでございまして、横軸にベースラインからのCO2削減量を示していて、縦軸にそれぞれの技術のコストを示しているものでございます。そうすると、左から安いものから順番に並んでいますので、なるべく左の方の安い技術から順番に使っていくと、この面積が全体のコストになりますので、面積をいかに小さくするかということが重要なわけでございます。
ちょっとグラフは複雑でございますので、右側に代表的な技術をピックアップして記載しているわけでございます。原子力が大体二十から五十ドルぐらいのレンジ、その上にCCSがあり、その上に水素・アンモニア発電という部分が若干重なるような形であり、最後、上の方の限界的な部分にDACCSという大気中からCO2を回収して貯留するという技術が存在している。あと、Eフューエル、Eメタンというところもあるわけでございます。
太陽光、風力に関しては、安価なところもあるわけでございますが、量が増えてくると、先ほど申しましたように、系統の統合費用等が条件の悪いところを使っていかないといけませんので相当高くなってくるという、このレンジが非常に幅広いということを理解する必要があるわけでございます。時折、太陽光、風力は化石燃料よりも安いし、原子力よりも安くなったという主張をされることがございますが、それは正しいわけでございます。正しいんですが、量を使っていくともっと高いところがいっぱい出てくるわけでございますので、この原子力の余りコストにレンジの幅がないところをどう増やせるかということは、この面積を小さくする上でかなり重要なところでございます。これは太陽光、風力がもっと削減した場合というケースも計算しているわけでございますが、同じようなことは、まあ若干、太陽光、風力の方がコストが安いということは分かりますが、ただ、いずれにしても、いろいろな技術を組み合わせないとコストを安くできないということでございます。
今、二〇五〇年の話をさせていただきましたが、トランジションのプロセスをどうするのかということも非常に重要でございまして、トランジションのところをどうやっていくのかという、一足飛びにカーボンニュートラル実現できないわけでございます。そこをしっかり適切な技術の展開を、時間を考えながら展開していくということが重要でございまして、我々としてはそういう分析を提供しているところでございます。
こういったものを、企業、そしてもちろん国もそうですが、企業そして金融機関も含めて見ていただくことによって、適正な投資をしっかりやって、目標だけを切り上げるんではなくて、実効ある排出削減をしっかりやっていくと。しかも、日本と世界のコスト差をしっかり意識しながら、カーボンリーケージを起こすことなく、しっかり着実にやっていくという材料にすべきかと思っているところでございます。
こちらは例としてガス、鉄鋼部門を示していますが、一遍に直線的に下がっているわけではないということが分かるかと思います。これは費用対効果の高い対策を取った場合にどういう推移を取るのが合理的なのかということを示しているわけでございまして、ガスにおいても、部分的にはCO2原単位が小さいので、一時的に上がってもそれは二度目標、一・五度目標と矛盾するものではないという結果でございますし、鉄においても、一遍に高炉法を電炉に替えたり鉄をなくすわけにはいかないわけでございますので、そういったプロセスをしっかり理解していくということが重要かと思います。
最後、まとめさせていただきます。
正味ゼロ排出を実現するということは非常に重要なわけでございますが、一方で、国際的に一・五度目標はほぼ絶望的だというような状況になってきていますし、少なくとも気温のオーバーシュートなくしてこれを実現するというのはほぼ不可能だというふうに思います。目標を掲げておくというのは必要でございますけれども、ただ、ある程度柔軟性を持った戦略が必要だというふうに考えています。
主要先進国、日本もそうでございますが、排出量が下がってきておりますが、これは、エネルギー多消費産業、CO2原単位の高い産業、プロセスが途上国へ移転しているという結果の可能性が非常に強いということでございますので、そうすると、本当にグローバルにCO2が減らないということもありますし、日本におけるエネルギー安全保障、産業の安全保障、若しくは経済安全保障の関係で大丈夫なのかという問題も意識しながら戦略を考えていくという必要があるかと思っています。
カーボンニュートラルのためには、省エネ、再エネ、原子力、CCUS、CDR、そして水素系燃料、電化といったようなこと、いろいろな技術が必要でございまして、これをどれも排除することなく我々はやっていかなければいけないというふうに考えています。
とりわけ日本は資源がないという状況でございまして、何か技術のより好みをしているような状況ではないというふうに思いますので、しっかりこういったものを全方位で考えていく必要があると思いますし、当初は欧州も電化プラス再エネというような一辺倒の感じがありましたが、ここに来て急速に変わっています。全方位に変わっていますので、ようやく欧州もやっぱり減らないということが気付き始めている状況でございますので、日本はいつも言うことは慎重でございますが、ただ、実現していることはいつも欧州よりも立派にやってきているというふうに思っていますので、是非しっかりやっていくことが重要かなというふうに思っております。
あと、最後でございますが、移行過程が重要でございますので、そういう面では、例えばEメタンであるとかEフューエル、アンモニアというのは混合比率を既存インフラ使って変えていけるので、そういった技術もやっぱり柔軟性のある戦略という部分では大変重要だというふうに思いますので、そういったものも含めて戦略を総合的に考える必要があると思います。
どうも御清聴ありがとうございました。